Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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三日目終了

 ――結局、クリムとスザクが五つ目の黒星を重ねたところで、闘技場が解散となった。

 

 すっかりとヘロヘロになっていた紅は、心配そうな聖に付き添われて、この日の汗を流すために、すっかり日課になっている露天風呂へと来ていたのだった。

 

 

 

「はぁぁあああ……疲れた……」

「あはは、紅ちゃんお疲れ様」

 

 昼間はゲレンデで遊び倒し、夜は格上二人相手にずっと鍛錬。思えば非常に濃い一日だったなぁと思いながら、紅は適度な暖かさの湯に、肩まで浸る。

 

 スキーで疲弊した身体と、戦闘で疲弊した精神に、じんわりと沁み入ってくる暖かさ。お湯の中で思い切り伸びをすると、そんな疲労もまとめて溶け出していくようだった。

 

「聖の方はどうだったの?」

「うん、綾芽さんは優しく教えてくれたよ。紅ちゃんたちの方に比べるとだけど」

 

 そう、こちらも若干疲れが滲む表情で笑う聖。

 

「でも、今まで判断に迷って上手く回せなかったスキルの回し方も、色々と考えてくれたよ。あの人、すごい頭の回転が早くてビシビシ私の問題点を洗い出してくれるの」

「そっか……後で、一緒にそれらについて練習しようか」

「うん、お願いね!」

 

 そう、二人笑い合っていると……新たにもう一人、露天風呂のほうにやって来る人物がいた。

 

「やっほー、満月さん、古谷さん。こっちに居たのね、探しちゃったわ」

 

 そう言って入ってきたのは……

 

「あ……(はる)先輩」

「先輩も今お風呂ですか?」

「うん、朱雀君を慰めてたらこんな時間」

 

 困ったもんだと肩をすくめる桜に、紅と聖はスペースを空けて隣を勧める。

 

 ……ちなみに、芸能科で常日頃から美容だレッスンだと忙しい日々を送っている彼女は、無駄なく引き締まり、かつ女性らしい曲線はしっかり残る完璧なスタイルをしているのだが……そんな彼女の生まれたままの姿を見た程度ならば照れなくなってきているあたり、紅もすっかり慣れて来ている間がある。

 

 尤も……

 

「あの、桜先輩、近い……」

「えー、いいじゃん、せっかくのお風呂なんだから。わー満月さんすべすべだー」

 

 ……密着されると、さすがにガチガチに緊張するのだが。

 

 あと、桜とは反対側の隣に座る聖が向けてくる笑顔が怖くて内心では冷や汗ダラダラである。

 

「先輩、紅ちゃんを揶揄(からか)うのもそこまでですよ?」

「ん、ごめんなさい」

 

 聖に諭すように怒られて、素直に少し距離を取る桜。

 どうやら自分だけが揶揄われていたらしいと察し、紅が頬を膨らませて口元までお湯に沈む。

 

「それで……朱雀先輩の様子は?」

「うーん、さすがにめちゃくちゃ凹んでたねー」

 

 いつもの優しい顔に戻った聖の質問に、桜は肩をすくめて苦笑しながら答える。

 

「ですよねー。慢心していたところに横っ面を引っ叩かれた感じでしたから」

 

 しみじみと語る紅。その言葉は当然ながら、朱雀だけでなく紅自身のことも指している。

 

「でも、目は折れてなかったよ。なにくそー! って感じだった」

「はは……それは良かった」

 

 大仰な身振りを交えての朱雀の真似をする桜に、申し訳ないが紅も聖も笑ってしまうのだった。

 

 そんな話もひと段落して、三者三様の心地良さげな吐息だけが空気を震わせる、ゆったりと流れる時間に身を委ねていると……

 

「――あ、こんなところにいた!」

「む、雪那か。それに皆も」

 

 静寂をぶち破ってぞろぞろと露天風呂に入ってきたのは、いつも通り初手サウナに突撃していた雛菊と深雪、そして佳澄と雪那の四人。

 

 気づけば今日の露天風呂は、『ルアシェイア』の女子学生組が集合していたのだった。

 

 

 

 

「でも、本当に凄かったよね、あの人たち」

 

 肩まで湯に浸かり、「はぁ……」と気持ち良さそうな声を上げていた佳澄が、不意にぽつんと呟く。

 

「私、正直に言うとクリムちゃんは最強で、誰にも負けないんだって心のどこかで思っていたの」

「あはは、さすがに委員長は私を過大評価してると思うけど……でも、上には上が居るものだね」

 

 そう、佳澄の発言に対してあっけらかんと返答したつもりだったが……そんな紅の頭に、聖がそっと手を置く。

 

「紅ちゃん……悔しい?」

 

 そんな見透かすような聖の言葉に、紅の身体がピクリと小さく震えた。

 

「聖にはバレバレだよね……うん、凄い悔しかった。でも、まだまだリベンジする機会もあるだろうし」

「あの人たち、しばらくはこっちに居るんだっけ」

「うん、イリスさんの入院までは、『DUO』の方もログインしてるって」

 

 そして、望むならばいつだって挑戦を受けると、玲史と悟は言ってくれた。

 

「残り二ヶ月……その間に、あの人たちから吸収できる事は、可能な限り吸収していきたいんだ」

「それは……あの子を助けるため?」

「うん、放っておけないよね、あの場面を見るとさ」

 

 雪那の問いに、紅は目を閉じて世界樹セイファートでの一連の出来事を回想しながら、頷く。

 

 二ヶ月と少し先に解放されるという旧帝都、そこに自らを封印した少女『ダアト=クリファード』を救う手段があるという話だが、しかし何が待ち構えているかの情報は、今のところ無いに等しい。

 

 であればプレイヤーにできる事はただ一つ、何があっても対処できるように準備を進めておく事だけだ。

 

「うん、私もダアトちゃん、助けたいの」

「私も全力で頑張るです!」

「うん、ありがとう、深雪ちゃん、雛菊ちゃんも」

 

 意気込む対面の少女二人にクスッと笑い声を漏らすと、紅は空を見上げる。

 

「絶対に、バッドエンドになんてさせてたまるか」

「うん……そうだね、いつも通り気持ちよく終わりたいもんね」

「うんうん、ちゃんとハッピーエンドでクリアできるように、皆、頑張ろー!」

「「「おー!!」」」

 

 湯煙の向こうに広がる星空を見上げ呟いたそんなクリムの決意表明と、それを受けての桜の発言、そして聖の激励に――今この場に揃う女性陣皆が揃って拳を突き上げ、鬨の声を上げたのだった――……

 

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