Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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境内散策

 

 ――まずは、これから働く場所をきちんと知っておきたい。

 

 おにぎりとお漬物という簡単な昼食後、そんな意見で一致した紅たち。ならば一緒にと、ルージュを呼ぶための中継機を宿舎にセットして、彼女をこちらへ呼び出すのだった。

 

 

 

『ここが、雛菊さんのお家なんですね!』

 

 呼び出され、NLDによりAR投影されるなり、物珍しそうに窓に齧り付き、外の風景にキョロキョロと視線を巡らせるルージュ。

 さもありなん、『Destiny Unchain Online』では和風の神社などは無かったため、彼女にとって目に写るもの全てが初めて見るものだろう。

 

 だが……紅には、それよりも一つ、気になって仕方がないことがあった。

 

 

「あの、ルージュ……その巫女装束は、何?」

『あ、はい、神社にお手伝いにいくお姉ちゃん達についていくならと、天理さんが用意してくれました!』

 

 紅の目の前で嬉しそうにクルッとターンして、白衣と緋袴という格好……巫女装束を纏った姿を見せてくるルージュ。その出来栄えは飾り紐などの細部まで実に精巧にできており、素晴らしいものに仕上がっていた。

 少女の嬉しそうな笑顔も相俟って非常に愛らしいのだが、一方で『おのれ……またか母さん』と、何も知らされていなかった事に微妙に恨みがましく思う紅なのだった。

 

「うん、すごく可愛いよ」

『ありがとうございます!』

 

 そう言って、ポン、と妖精さん形態になったルージュが紅のNLDにアクセスを要求してきたので、当然のように許可。彼女が嬉しそうに紅の肩に座ったのを確認し……

 

「お待たせ、それじゃあ明後日から働く場所の下見に行こうか。雛菊、案内は任せていい?」

「はいです、お役に立てるように頑張ります!」

 

 張り切って先導する雛菊、その後に続き、紅たちは宿舎から境内へと移動するのだった。

 

 

 

 そうして雛菊に案内され、主に職場となる社務所や授与所、それに境内社と祀られている神様などについて説明を受けながら、神社周辺を練り歩く紅たち一行。

 

「あら、新しく助勤に入った新人さん?」

「あ、はい、今日からお世話になります!」

「至らないところもあると思いますが、ご指導ご鞭撻、お願いします!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「寒いし人も沢山来るから大変だけど、一緒に頑張りましょうね?」

 

 すれ違った巫女さんたちに声を掛けられたりして、大学生と思しき年上のお姉さん達に緊張しながらも、受け答えする紅たち。

 

 そんな紅たち年少者の初々しい様子に、「可愛いー」とクスクス上品に笑いながら嫋やかな所作で立ち去っていく、先輩巫女さん達。

 流石はこうした伝統に触れられるアルバイトを選ぶだけあって、どうやら穏やかで優しい人が多いみたいだと、紅たちも感心する。

 

 もっとも、中には……

 

「あれ、もしかしてクリムちゃんじゃない!?」

「え、うそっ……本当だ、きゃー、生まおーさまー!」

 

 と、先輩巫女さんの中に『Destiny Unchain Online』ユーザーが混じっており騒ぎになり掛けたりしたが、それはそれ。

 

 その中にはもうこの助勤(アルバイト)も三年目だというベテランの巫女さんも居て、寒さを凌ぐための重ね着のアドバイスなんかも貰えたりと有意義な午後の時間を過ごす事ができたのだった。

 

 そうして瞬く間に時は流れ、陽も傾き始めた三時過ぎ。境内の裏手で見つけた建築物に、つい紅たちは引き寄せられるのだった。

 

 

「これは……剣術道場?」

 

 そこにあった建物……紅たちが通っていた支倉道場よりも小規模ながら、それは確かに剣術の道場だった。建物の手入れもきっちりとされている。

 

 しかも裏手には、しばらく使われていなかったのか、だいぶ激しく風化している試斬用の巻藁や竹を設置するための台や、斜めに鋭く断ち切られた竹の残骸がひとまとめにされて放置されていた。

 

 

 ――昔、誰かが真剣で稽古していたのかな?

 

 

 そんなことを考える紅だったが、それはさておき。

 

「もしかして、雛菊ちゃんが剣の稽古をつけて貰ったのってここ?」

「はいです、今も時々、母様が稽古を付けてくれますです」

 

 聖の質問に、そう答える雛菊。

 

 中も見てみますかと提案する彼女の言葉に甘え、所持していた鍵で入り口を開けてもらい、入れて貰った道場内。

 ひんやりと澄んだ空気に満ちるその道場の片隅に架けられていた、彼女が使っているという竹刀は……たしかに頻繁に使い込んでいるらしく、柄の部分が汗などで黒ずんでいた。

 

 そんな竹刀を手に取り、年齢に似合わぬ堂の入った素振りを披露する雛菊だったが。

 

「……一度、真剣を使ってみたいと母様に頼んでみてあたるのですが、残念ながら『あなたにはまだ早いわぁ』の一点張りで、一切触らせてもらえませんのです」

 

 そんなことを桔梗の喋り方を真似て曰う彼女に……グッジョブです桔梗さん、どうか是非、彼女に真剣を持たせることが無いようお願いしますと、紅たちの心は一つになったのだった。

 

 

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