Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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大晦日前日

 

 ――刀祢神社に滞在二日目。

 

 この日は一日中、明日に向けての研修会という予定が詰まっていた。

 

 

 紅たち助勤巫女の主な仕事は、授与所での御守りやお札、絵馬などの授与をする奉仕となる。つまるところ売り子さんなのだが、やはり販売と言ってはならないそうで、言葉の使い方は注意された。

 

 御守り等の初穂料(神社でおこなわれる行事の際に納める謝礼のこと)の遣り取りは、一昔前は全て暗記と暗算だったそうだが、幸い今はNLDがある。

 プライベートモードで画面表示している限り、値段を記したメモをカンニングしても他者からは見えないため、使用してもいいとのことだった。

 

 紅は暗記でも特に問題無いが、聖や佳澄はまるで地獄から救い出されたように安堵しており、紅は深雪やルージュと共に苦笑するのだった。

 

 その一方で、他人事ではなく大変だったのが、言葉遣いの是正を始めとした巫女の助勤独特のマナー関連だ。こちらは午後いっぱい掛けてみっちりと叩き込まれる事になった。

 

 授与所などで参拝者を迎えた場合は「いらっしゃいませ」ではなく「明けましておめでとうございます」や「ごくろうさまです」と。

 

 値段を告げる際は「初穂料、何円のお納めになります」と。

 

 参拝客がお帰りになる際は「ようこそお参り下さいました」等々の、独特の挨拶をする事になる。

 

 また、言葉遣い以外に授与品をお渡しする時なども、右手に持ち、左手を添えるようにして丁寧にお渡しする、という決まり事もある。

 

 とにかく普段とは違うルールで覚えなければならないことが大量にあったため、一同皆必死になって、桔梗や雛菊が見せてくれる手本を凝視するのだった。

 

 それもひと段落すると、今度は初詣の華、巫女装束の着衣の方法と、畳み方の方法。

 

 参拝客として見る分には華やかなそれらも、着用する側としては一大事だ。神聖な衣服である装束を粗末に扱うなど許される事ではないために、これもかなり厳しく指導を受ける事になった。

 

 また、髪型に関しても頭の後ろで水引を使用し束ねる事になるのだが……足りない場合ウィッグが必要となるのだが、それが黒髪しかないという。

 幸い髪色の関係で問題となる紅と聖の場合は、自前で腰まである長い髪があるので特に支障は無く、ホッと安堵するのだった。

 

 ……興味津々といった様子で紅の真っ白な長髪を見つめる先輩巫女さんたちに、まぁいいかと許可を出した途端にたくさん触られたのは、まあいつものことである。すっかり慣れ切ってしまっている紅なのだった。

 

 

 

 ちなみに唯一男性である昴は当然ながら紅たちとは別であり、当日は社務所からの伝令や荷物運び、境内の清掃、駐車場整理などの雑用となるらしい。

 結構な体力勝負となりそうで、若干顔が引き攣っていたのだが、それは見なかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 そうして刀祢神社滞在二日目は、覚える事に追われる形で瞬く間に過ぎ去った。

 

「あなた達は、物覚えが良くて本当に助かるわねぇ」

 

 この一日中、指導役として厳しく叱責していた桔梗からまさかのそんな褒め言葉を貰い、紅たち一同が照れる羽目になったりしながら……この日の研修は、無事に終了となったのだった。

 

 その後は、明日に向けての英気を養うためと用意された精進料理を、先輩の巫女さん達と食卓を共にして頂いて、質素ながらも手の込んだ料理の滋味に舌鼓を打ち……そして。

 

「はぁ……今日も疲れたねぇ」

「ずっと座学だったから、全身バキバキだよ……」

 

 温かな湯に浸かり、全身の疲れを絞り出すような溜息を吐きながら、紅と聖がぐったりと浴槽に身を預ける。

 

 

 

 ――ここは、宿舎内にある大浴場。

 

 紅たち一同全員がゆったりと足を伸ばせるくらいの大きさの浴槽には、佳澄と深雪らも、似たような感じに脱力していた。

 

「あー……ねぇ紅ちゃん、明日は何時からだっけ?」

「ええと……朝の八時までに潔斎を済ませるようにって事だから、今日は早めに休んだ方が良さそうだね」

 

 とろんと眠そうな目をしている聖の質問に、同じくだいぶ睡魔に侵食されている紅が、明日のスケジュールをどうにか思い出しながら答える。

 特に大晦日である明日に限り、紅たちも夜の奉仕に参加するため長丁場になると、皆に忠言もしておく。

 

 

 ――潔斎とは、湯を浴びて身を清め、下着も清潔なものに替える……本物の神職の人はそれにも色々な決まり事があるのだが、臨時手伝いの紅たちにはそこまで厳密に求められてはいないため、つまるところお風呂だ。

 

 身を清めることも大切な巫女にとって、入浴も大事なお役目の一つであり、疎かにはできない。

 

 

「朝ごはんなんかも考えると、六時起きくらいかなぁ……うぇえ」

「あはは……お姉さん達、頑張ってくださいなの」

 

 困ったような声を上げる佳澄に、まだ中学生ということで早朝の用事は免除されている深雪が、苦笑しながら慰めていた。

 

 

 

 その後、入浴を済ませた皆は早めに布団に入り、滞在二日目の穏やかな夜が過ぎ去って――翌日はいよいよ大晦日、紅たちの新米巫女として初仕事の日がやって来たのだった。

 

 

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