Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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旧帝都奪還:レドロック解放戦②

 

 第一目標であった西門までの道程は順調に進み……今、無事制圧した西門の上に退避した皆が見守る中で、クリムは一人で門下に降りて、レドロック市街のメインストリートを見つめていた。

 

 

「しかしまあ、いつぞやは怒られたコレを、よもや今度は『やれ』と言われるとはのう」

 

 苦笑しながら手を掲げたクリムが、手の内に武器を生成する。

 

 その手に現れたのは、魔法武器生成系スキル最上位である『無形の剣匠』を全開にして制作した……普段使う大鎌の五倍以上の大きさという、巨大な鎌だ。

 

 更に……その鎌を捧げ持ち、残りMPを全て費やして極大魔法を完成させる。

 

「――『グリムサイズ』!!」

 

 クリムがそう叫んだ瞬間、手にしていた大鎌が形を失い、濃密で巨大な闇の大鎌へと変貌した。

 

 そんな異形の大鎌を、ゆっくりと振りかぶり……

 

「では……この街を作った先人達よ、もし草葉の陰より見ていたら、あらかじめ言っておく……本ッ当に、申し訳ないッ! アイツがやれと言ったのじゃ!!」

 

 そう、さりげなく責任をフレイになすり付けながら、巨大な大鎌を振り切った。

 

 

 ――疾る、一閃。

 

 

 一瞬だけ間を置いて、クリムの胸の高さあたりからまるで世界が分たれたように、視界全ての建造物がズレて滑り出す。

 

 やがて……落下し崩壊する瓦礫が更に周囲の建造物を巻き込み連鎖的に崩壊させて、見る間にレドロック西区画は見渡す限りの瓦礫の山と化したのだった。

 

 

 ――市街地戦では、常に包囲される危険が伴う。

 

 向こうは多勢で、こちらは無勢。

 

 しかもあの魔物……皆は触手蜘蛛などと呼んでいるエネミー『瘴気の魔物:クリスタルイーター』だが、柔軟に動くあの触手の脚は非常に走破性が高く、自在に建物を登ってくる。

 

 加えて、死に際に自爆される可能性もあるため……先ほどまでのように縄張りの外縁部で少数相手にするならばともかく、市街で本格的に近接戦闘になれば、間違いなく圧殺されるだろう。

 

 だが、射程はこちらが上。

 ならばアウトレンジから迎え撃てば良い。ゆえにクリムたちは高所へと陣取り、迎え撃つ構えを取っていた。

 

「さて、フレイ。お主が存分に力を振るえるフィールドは用意してやったぞ」

「ああ、助かる。あとは任せて、お前もこっちで魔力の回復に努めてくれ」

 

 そんな軽口を叩き合いながら、極大魔法の消耗のためにMPが空となったクリムは翼を振るい、フレイたちが居る門の上へと跳び上がる。

 

 そうして後退したクリムは、インベントリから狙撃銃『ガングニール』を取り出して初弾を薬室に送り込み、準備を始める。

 

 入れ替わりで変わって門から飛び出して行ったのは、遊撃手として敵の数を減らしに行った雛菊とカスミの二人。

 

 どちらかと言うと足を止めての防衛が得意なサラには門前の守りを頼んであるため、後詰めとして留まっているスザクたちと共にすぐ下にいるが、セツナは姿を隠し遊撃手としてフィールドに潜んでいるはずだ。

 

 壁上で盾を構え仁王立ちしているフレイヤは、壁の上でクリムやリコリス、ヒーラーとして協力を申し出てくれたエクリアス、そして胸壁に身を隠し銃を構える志願した男たちの護衛。敵が遠隔攻撃を持っている以上、迂闊にエクリアスらから離れるわけにはいかない。

 

 そして……フレイは、そんな姉のすぐ前で魔導書を掲げて、足元に展開した補助スキル『オーバーリミット』の魔法陣が放つ光の上にて、広範囲魔法特有の長い詠唱に入っていた。

 

「……来たようじゃな」

「はい、射撃準備に移りますなの」

 

 射程の長い狙撃銃を持つクリムとリコリスが胸壁から身を乗り出して構え、それを見ていたエクリアスや街の男たちに緊張が走る。

 

 クリムらがスコープ越しに見た街の東側からは……巣となっていた街の一角を破壊され、激昂して飛び出して来た大量の魔物たち。

 その先頭にいた個体を、クリムの銃弾が、リコリスの光弾が、ほぼ同時に貫いて……第二ラウンド、拠点防衛の持久戦が幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 ◇

 

「だい! しゃ! りぃぃいいん!!」

 

 竜巻が巻き起こるほどの凄まじい勢いで、手にしていた槍を回転させていたカスミが、その回転の勢いを推進力に変えて敵陣を斜めに貫く。その強烈な追い風を受けて、あまり重量は無い魔物たちが吹き飛んでいった。

 

 ――対集団相手の突破力に特化した、両手槍特化スタイル『ファルコンナイト』の戦技の一つ『大車輪』。

 

 迫って来ていた敵先頭集団が軒並み吹き飛ばされて戦線が敵側へと後退する中で……その間隙に飛び込む小柄な人影があった。

 

「月輪の型、『黎三日月(くろみかづき)』、です!」

 

 魔物の大群を前に臆さず立ち塞がり、鞘に納めた刀を大上段に構えた少女……雛菊が、チン、とその鯉口を切った。

 

 直後――三日月を描いて放たれた神速の剣閃から迸った衝撃波が、直線上の敵を薙ぎ払う。

 

 その衝撃により、一直線に開いた間隙。そこに素早く身を躍らせ踏み込んだ雛菊は、更に鞘に納めた刀を、チン、と再度鳴らした。

 

 だが――抜く手も、返す手も見せず。

 

 抜き放たれたと思ったその斬撃は、既に終わっている。

 

「月輪の型、『紅望月(べにもちづき)』」

 

 雛菊が、最後にチン、と納刀の音を響かせた直後――雛菊を中心として全周囲に放たれた衝撃波が、周辺にいた魔物たちを自爆する余裕さえ与えずに吹き飛ばした。

 

「はぁ……雛菊ちゃんすっごい」

「ふふん、です」

 

 カスミの感嘆の溜息を受けて、自慢げに胸を張る雛菊。

 

 雛菊が新たに取得したその技は、刀の派生特化スキル『月輪の型』。特徴は、集団戦向けの広範囲攻撃が多いことだ。

 

 そんな雛菊とカスミは瞬足を生かしながら敵に囲まれぬよう縦横無尽に駆け回り、敵の群れを完璧に抑えていたところに、長い詠唱を終えたフレイの魔法が完成する。

 

「雛菊ちゃん、委員長、そのまま待機! 薙ぎ払え、『フォトンブラスター』!!」

 

 直後、魔法を完成させたフレイから指示が飛び――素早く身をかがめた雛菊とカスミの頭上を、フレイから放たれた莫大なエネルギーの奔流が駆け抜けて、魔物たちを飲み込みながら廃墟と化した街の一角を灼きながら舐めまわし始めた。

 

 

 フレイの使用した補助スキル『オーバーリミット』……プレイヤー間の俗称『儀式魔法』。

 

 それは、詠唱時間を延長しMPを大量に消費することで、攻撃魔法の威力と範囲を大幅に拡張するスキルだ。

 

 魔法を全くの別物にしてしまうほど激甚なその効果は、通常の戦闘ではあまり使われないほどに火力過剰かつ負担の重いスキルだが、その分こうした大規模戦闘では重宝する。

 

 

 

 だが、攻撃範囲が広がるほど、フレンドリーファイアの危険性は上昇する。それが、ただでさえ大出力の『フォトンブラスター』ならば尚更のこと。

 

 しかし……フレイはその照射範囲を精密にコントロールしながら二十秒の照射時間をフルに活用し、効率的に魔物の大群を薙ぎ払っていく。

 

 そうして光の奔流が収まった時にはもう、あれだけ大量に迫って来ていた魔物たちは、今は下で雛菊たちが交戦中の数体と、遠くから向かって来ている者しか存在しなくなっていた。

 

 が、しかし。

 

「フレイお兄さん、もうちょっと私たちの見せ場も残して欲しいです!」

「ふむ、次から気をつけよう……それに」

 

 ほとんど敵を根こそぎ焼かれ、残る交戦中の敵は瞬く間に斬り伏せ暇を持て余した雛菊からの抗議に、フレイは眼鏡の位置を直しながら返事をすると……先ほどクリムが破壊した街の向こうを険しい目で睨み、次の『フォトンブラスター』の詠唱に取り掛かる。

 

「……どうやら、仲間を大量に殺されて相当におかんむりらしい。次は的には事欠かないよ」

「口は災いの元でした、ごめんなさいです!」

「あはは、息つく暇も、無くなりそうだね」

 

 フレイのお小言に、うげ、と顔を顰めながら素直に謝る雛菊と、そんな二人に苦笑しながら偃月刀を構え直すカスミ。

 

 そんな彼らの視線の向こうには……先ほどまでの数倍、街を埋め尽くし行軍してくる魔物たちの群れが、瓦礫を踏み越え向かって来ているところだった。

 

 

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