Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜   作:resn

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旧帝都奪還:レドロック解放戦④

 

 ――反撃に転じたクリムたちは、破竹の勢いでメインストリートを踏破して、『傷』のある駅前広場へと到着していた。

 

 

「あれか……」

「うぇえ……また気持ち悪い見た目だねぇ」

「ま、これまで戦ってきた敵の親玉だからね」

 

 今、クリムたちが居るのは、レドロック駅前広場を見下ろせる建物の上。

 

 眼下に展開されている光景を見て、顔を顰めて嫌そうな声を上げるフレイヤに、フレイが肩をすくめながら答える。

 

 気付かれないよう身を潜めて様子を伺っているクリムたちの眼前には……ターミナル前に触手の根を張り、丸い胴体から無数の結晶を生やした、巨大な眼球の魔物の姿があった。

 

 さらにその周囲には、二重三重に蜘蛛の巣のように編まれ、ところどころポコンと肥大した箇所のある太い触手に囲まれており、それらが周囲の建造物に絡みつき、侵食し、あるいは鉤爪のあるその先端を揺らめかせ、不気味に蠢いていた。

 

 

 ――エネミー名、『瘴気の魔物:マザー・クリスタルイーター』

 

 

 そんな、ある種どんな存在なのかわかりやすい名前をしたボスエネミー『マザー』は、地面に打ち込まれた触手を不気味に蠢動させ、魔力らしき光を内部に吸収している。

 

 そして……そんな触手の所々にある瘤の一つが割れたかと思うと、これまで散々見てきたあの『クリスタルイーター』が、べちゃっと湿った音を響かせ地面に落下する。

 

「どうやら、何かから魔力を吸収することで、分体であるあの魔物を生み出しているようじゃな」

「おそらく……駅の地下に保管されていた、魔導列車の燃料である精製済みのマナクリスタルでしょうね。出荷待ちのものが巨大な倉庫いっぱいにあったと聞いています」

 

 クリムの疑問に、側にいた街の住人の一人が回答をくれる。

 

「なるほどのぅ……帝都で使用するマナクリスタルを全てこの街で賄っていたのなら、十分な量があったのじゃろうな」

「って事は、大容量の魔力タンクから生えているようなものか。雑魚たちと違って魔法攻撃の可能性も考えないとな」

「うむ……」

 

 フレイの忠告に少し悩んだ後、クリムは皆に、指示を飛ばしていく。

 

「エクリアスと、街の者らは、ここから援護射撃を頼む、おそらくボスにはその銃では効果も薄かろうし、小さな方を優先的にな。ただし決して無茶はするなよ、生き延びることを第一にせよ」

 

 クリムの言葉に、後ろにいた皆が頷く。その目にはもはや生きる事への悲観はなく、クリムも「よし」と頷いて次の指示を出す。

 

「前衛は、我と雛菊とカスミ。フレイヤもタンクとして前に立ってもらうが、ヒーラーとしての仕事を優先して欲しい」

 

 名を呼ばれた三人が、こちらも頷く。

 

「セツナは後ろの様子も気にしながら雑魚掃除、状況に応じボスに遊撃を頼む」

「了解です、お館様」

 

 さすがに今ばかりは声量を抑えたセツナが、こちらも頷く。

 

「リコリスとフレイは、攻撃に専念。ただ、敵は巨大で攻撃範囲も広い、油断するでないぞ」

 

 二人も、分かっていると頷く。彼ら二人に関しては、その判断力に不安もなく、細かな動きに関してはそれぞれの裁量に任せておく方がいいだろう。

 

 あとは……ジェードとリュウノスケはそもそも戦闘力が低いため街の人たちのサポートとして、残るは。

 

「スザクも、自由に動いてボスの方を頼む。瘴気を防げないハル先輩たちはエクリアスから離れないよう気をつけて、これまで通り街の人たちの護衛。そして……サラさん」

 

 最後に、後ろに控えていたサラに、真っ直ぐその目を見ながら告げる。

 

「後ろの皆は、お主に任せたぞ」

「ええ、任されました、魔王様」

 

 こちらも迷いなく返答した彼女に、クリムは満足気に頷くと……改めて、新たに創り出した大鎌を構え直し、『剣群の王』によって捕まれ浮遊する刀と槍を携えて、ボスの方へと向き直る。

 

 

「では――総員、戦闘開始!!」

 

 

 高らかに宣言したクリムの号令を受けて、皆が持ち場に向けて一斉に散開する。

 

 そうして……このレドロックの街解放を賭けた最後の戦闘が今、開始されたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

「――『サンダーレジスト』!」

 

 結晶の魔物が放った雷光が、直接の標的であるクリムたちだけでなく、後衛であるエクリアスたちの方へも余波を飛ばす。

 

 フレイの予想通り、敵のボスは魔法が主体……それも複数の属性を操る非常に厄介なものだった。

 

 だが……その電撃はしかし、直前にサラが完成させた対抗魔法『サンダーレジスト』によって、背後に居る巫女エクリアスやボスに向けて援護射撃している街の人たちに届く前に掻き消された。

 

「よし……周囲に敵影無し、負傷した奴も居ない。安心して次に備えてくれ」

「ええ……分かってるわ」

 

 そう、彼女が己の仕事に専念できるよう周囲の状況を報告するリュウノスケだったが、しかし、サラが敵を睨む姿勢は、厳しい。

 

 ――対象が放った魔法に合わせて放つことで被害を軽減する対抗魔法は、扱いが非常に難しい。

 

 なんせ、相手の使用した魔法の属性を見極めて、相手よりも遅く詠唱を始め、相手に先んじて発動しなければならない。そのためには素早く、かつ正確な決断が常に求められる。

 

 特に複数属性を操るエネミーやプレイヤー相手の場合はそれに合わせて瞬時に正確な判断を求められ、ミスがあれば最悪の場合パーティーが瓦解する可能性もある。

 

 責任重大だが、しかし目立つ仕事ではなく、評価もされ難い。

 

 そんな貧乏くじ的なポジションでありながら、「自分はクリムたちのように戦うのは得意ではないから」とギルド加入当時から引き受けてくれていたのが彼女、サラだ。

 

 そして……そうやって場数を踏んできた経験に裏打ちされている彼女の抵抗魔法を、クリムたちも信じていた。

 

 本人が何かと目立つことを嫌い、実際その働きは視聴者からも注目はされないが、彼女も確かに『ルアシェイア』の精鋭なのだ。

 

「――っ、『アブソーブシールド』!」

 

 敵の本体である目玉から滅茶苦茶に放たれた赤味がかった閃光を、純エネルギー属性の攻撃を自らのMPへと変換するフィールドを展開し防ぐ。

 

 これで、火、闇、先程の雷に続き四つ目の属性。今のは少しヒヤッとしたが、問題なく防ぐことができた。

 相手の使用する属性が増えれば増えるだけミスを誘発しかねない状況の中で、彼女はそれでも怯んだ様子は無い。

 

 

 ――大丈夫、私の仲間たちは絶対に負けない。私がミスをするより早く、すぐに敵を打ち倒してくれる。

 

 

 そう信じて、彼女はただひたすらに、戦場の向こうにいる敵の姿を睨み続けるのだった。

 





 他に強化魔法を伸ばしておりバフ系も得意なため、あまり目立たないけど居ないと困るタイプ。
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