Destiny Unchain Online 〜吸血鬼少女となって、やがて『赤の魔王』と呼ばれるようになりました〜 作:resn
気を取り直し、キャラクタークリエイトを再開することにしたのはいいのだが……問題が、一つ。
「ところで、キャラクターの容姿の設定は……」
『その項目の設定は完了しています。今から変更はできません』
「あの、俺、まだ自分のアバターの容姿を確認していないんだけどせめて……」
『申し訳ありません、戻ることはできません』
……そんなことってある?
普通、後から戻ってキャラメイクの修正をできるものだろうに、頑なに拒む作成補助AI。
にべもない機械音声に、違和感は覚えつつもしょうがないと諦める。
「……はぁ。分かったよ、どこかで鏡でも見つけたら見るから」
諦めて、初期ステータスの構築へと移動する。
『初期ステータスとして、ベーススキルが各種10ずつ割り振られています。それと、与えられたポイントを、選択可能なスキルへと自由に割り振ってください』
そうガイドAIが告げると、小さなウィンドウが開き、そこに『100』という数字が追加される。
「これを割り振ればいいの?」
『はい。残したまま振り分けを終了もできますが、使用しなかったポイントは消滅しますので、全て使用することを推奨します』
説明を聞きながら、習得可能なスキル一覧を開くと、途端にズラリと出てくるスキル一覧。
キャラクターステータスを決定する『ベーススキル』
悪路の移動や自然回復など、行動するうえで様々な恩恵を受けられる『日常スキル』
武器や防具を有効に使用できるようになる『マスタリースキル』
各種戦闘補助の能力を得られる『補助スキル』
そして、フィールドで採取や採掘、素材を加工してアイテムを製作したりするための『生産スキル』
――というように、概ねこの六種類のカテゴリーに分けられるようだ。
そして、絶対に注意しなければならないことがあった。
それぞれのスキルは、条件に沿った行動……たとえば筋力であれば、重い荷物を運んだり硬い敵に攻撃したり……を取ることで、一定の確率で熟練度が上昇し、それは一律上限100まで。
そうして取得したスキルの熟練度、その全てを合計した数値は、上限である『1200』を超えることはできない、ということだ。
ただし例外として、生産スキルは熟練度30までは、上限を『100』とした別枠で計上されるらしい。
これは、たとえば弓や銃を使用するものが最低限の矢弾を自作したり、前衛職が自分で使用する簡単な薬や食事を用意したりを容易にするためだろう。
キャラクターレベルは存在しない。いわゆる『完全スキル制』という、旧時代のMMORPGで見られた形式である。
「ふぅん……もし、ここで振ったスキルがやっぱり要らないってなったら?」
『その場合、スキルの設定で【▽低下】の設定にしておくことで、別のスキルが上昇する際にその設定にしたスキルが入れ替わりで低下します』
「なるほど、手間はかかるけど、スキル構成を後から組み替えるのは可能なんですね」
『はい、その通りです』
ならば、ここであまり難しく考える必要も無いだろう。上限に達したあとに、あらためて考えればいい。
そもそも……何が良くて何が悪いのか、全てのプレイヤーがまだまだ手探りなのだから。
『それと、満月紅様には特殊な種族が選択されていますので、そちらも忘れずにご確認お願いします』
「俺、選択した覚え無いんだけど……」
不満を呟きながら、内容を確認する。
【ノーブルレッド】
ヴァンパイアの祖であり、王族である純血種。
白い髪、透き通るような白い肌、澄んだ血色の瞳が特徴的な吸血種族。
取り込んだ血を媒介として発動する『血魔法』という固有魔法を有する。
基本的には自然発生した夜の精霊に近い純血種であり、人の血が混ざった場合はヴァンパイアと呼ばれ区別される。
一方で、ヴァンパイアが人の血を得ることで耐性を獲得したいくつかの弱点がそのまま残っており、特に炎と光への耐性が低く、日光に弱いため注意が必要。
稀に、他種族と混じりながらもほぼノーブルレッドの特徴を持つ『亜純血』と呼ばれる雛個体が生まれ、成長と共に純血種へと回帰していくことがある。
「……吸血種族」
紅が複雑な表情で、その一文を凝視する。
「……俺、ベジタリアンなんだけど」
ボソリと呟いた紅の言葉に、今まで鉄面皮を貫いてきた女神様が、微かに目を逸らしたのが見えた。
ベジタリアン……と言うよりは、血生臭いもの全般が苦手なのだ。
父親に食べさせるための肉料理は作るが、基本的に紅自身は口にしないことがほとんどだった。
「まぁ、固有魔法を使わなければ別に問題ないか……さて、次はっと」
この時の紅は楽観的に考えて、それ以外の項目へと読み進めていた。
次に記載されていたのは、種族特性について。どうやらここは、自分でカスタマイズできるらしい。
選択可能なのは『純血』と『亜純血』という、大きく二つの種族タイプ。ちなみにどちらも選ばないことも可能らしい。
【純血】
初期の基本能力に以下の補正を追加する。
生命力・精神力・腕力・魔力にそれぞれ +100
影魔法・闇魔法の初期熟練度50追加
固有魔法『血魔法』習得可能
デメリット:日光弱点(強)を追加する
※強い日光下での行動の際、常に毎秒最大HPの5%のスリップダメージが発生する。また、各ステータスそれぞれ20%の能力低下が付与される。
【亜純血】
初期の基本能力に以下の補正を追加する。
生命力・腕力にそれぞれ +15
精神力・魔力にそれぞれ +30
影魔法・闇魔法の初期熟練度20追加
固有魔法『血魔法』習得可能
デメリット:日光弱点(弱)を追加する。
※強い日光下での行動の際、各ステータスそれぞれ20%の能力低下が付与される。
その他、世の中の様々な伝承にある吸血鬼の弱点一覧から好きなものをデメリットとして付与可能な代わりに、好きなベーススキルに +10の補正が加わるらしい。
紅も、最初見た時は「デメリットを選べって何……」と思った。
だがよく見ると、これはどうやら、本来ならば最大100までしか鍛えることができないベーススキルに、更に上乗せされる数値らしい。
つまり……限界突破が可能である、ということ。しかも、合計熟練度上限の『1200』にも引っかからないらしいことが、調べていて分かった。
……これは、突き詰めていくといつか頭打ちになるであろうステータス面で、他者よりかなりのアドバンテージを取れることとなり、とても魅力的ではある。
それに、つい、こう思ってしまったのだ――ロールプレイ的においしい、と。
せっかくのユニークユニットなのだから、能力的だけでなくロールプレイ的にも、可能な限り取得してしまいたいのがゲーマーの性だ。
だが……
「さすがに、『純血』は無い。絶対に無い」
内容を読み進め、紅は溜息と共にそう断じる。
確かに、強力ではある。そのステータスに対する補正値の極端な高さは魅力的だが、日光弱点(強)のデメリットが強すぎる。
なんだ毎秒5%のスリップダメージって。せめて三秒とか五秒ごとじゃないの。死ねって言っているのも同然じゃないか。
……というわけで、後ろ髪は引かれつつも、亜純血のほうを選択する。
あとは……選択式の弱点から『鏡や映像に映らない』も却下する。
――VRのゲームは、完全一人称視点。
つまり、自分の正確な外見を知るには、鏡、あるいはなんらかの物体に自分の姿を反射させなければならない。
だというのにこれを取ってしまうと……まだ見ぬ自分の姿を知る術が無くなってしまう。それはあまりにも悲しい。
同様に、日常に支障が出るという理由で、『流れる水を渡れない』『招かれないと建物に入れない』も却下。下手をしたら色々と詰む。
他、様々な吸血鬼の伝承に見られるような様々な体質が並んでいたけれど、最終的にはこのようになった。
■基本能力(ベーススキル)
HP:400
MP:165
生命力(VIT):10/100(+15)
精神力(MND):10/100(+30)
筋力 (STR):10/100(+35)
魔力 (MAG):10/100( +50)
■所持スキル
影魔法 30/100 ↑10
闇魔法 20/100
血魔法 50/100 ↑50
落下耐性 20/100 ↑20
自然治癒 20/100 ↑20
合計 180/1200
■特性
『亜純血』
『×:銀に弱い』
『×:聖書・十字架に弱い』
『×:火属性に弱い(強)』
※火耐性を-100で固定、装備品以外での補正不可。
『×:光属性に弱い(強)』
※光耐性を-100で固定、装備品以外での補正不可。
本当は、武器種毎のマスタリースキルなども欲しかったのだけれども……そちらは基本的に武器や魔法を使用していれば上がるらしいため保留。
それよりかはと、高所から落下により大ダメージを受けると上昇する落下耐性と、敵から大きなダメージを受ける事で上昇する自然治癒……共に成長させるうえで大ダメージを受けることが必須だそうで、上げるのが厄介そうなこちらを優先する。
ただし、影魔法には熟練度30で欲しい魔法があったため、少しだけ増やした。
血魔法を大量に盛ったのは……新たに血を得るのが困難な紅にとって、鍛えるのが難しいからだ。
現時点では比較対象が無く、これが強いのか弱いのかは分からないが……
「まぁ、なんとかなるよね」
そう楽観的に呟くと、最後にキャラクターネームの登録。こちらは、いつも通り名前の『紅』より『クリムゾン』の頭三文字を取り、『クリム』と入力して決定のボタンを押すのだった。
瞬間、周囲を覆うドームに亀裂が入り、砕け散る。無数の砕片がキラキラと宙を舞った。直後、眩い光が周囲を満たし――
――徐々に光が収まって、やがて視力が回復した頃。
目を開けた紅の目に入ってきたのは、賑やかな街の喧騒……ではなかった。
「……遺跡?」
横たわっていた場所……どうやら石棺らしい……から起き上がり、周囲を見渡す。
ボロボロに朽ちた石材の祠は、よほど長い時を放置されていたのか、侵食してきた植物にあちこち食い破られており見るも無残な様相だ。
屋根などは半分以上が崩落し……しかしその穴から青空などは見えず、あるのは鬱蒼とした樹々の枝葉のみ。
「えぇと……ここ、どこ?」
取説を見た限りでは、キャラクター作成が終わったプレイヤーは皆『始まりの街ウィンダム』という、スタート地点となる街へと転送されると書いていたはずだ。
だが、周囲を見渡す限り広がっているのは、どう好意的に解釈しても明らかに人里ではありえない、この光景。
呆然と呟いた紅の言葉に……返ってきたのは「ギャアギャア」という、不気味な
本当はスキル熟練度は小数点以下も描写するか考えたのですが、煩雑になりすぎるのでこのような形になりました。