昨日は晴れていた天気も、今日は打って変わって雨だった。
流石のマックイーンも大人しく病室で過ごして……いなかった。
今日はテイオーさん、パーマーさん、ゴルシさんがマックイーンの見舞いに来ていた。
そして清一さんとマルゼンスキーさんの姿も。
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「それにしてもあの時はビックリしたねー。あの主治医さん、苗字あったんだね。てっきり主治医が名前かと思ってたよ」
「そんなわけありませんわ、とは言えませんわね。私もそんな風に思っておりましたから」
「あ、マックイーンも? おばあさまは知って……いたよね」
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「そんでよ~。マックちゃんが言うわけだ。甘い物のカロリーは真ん中に集まる性質がありますがドーナツは中央部分がくり抜かれているためカロリーがないのですわ。栄養士さんが提唱した新しい理論だそうですわってな」
「そうですわ! 伊達家の子孫の方がテレビで申しておりましたわ」
「マックイーン、それってあの人たちのお笑いの定番じゃん」
「違いますわ。最新科学ですわ。彰。スポーツ診療医としてこのわからずやさん達にガツンと言ってやってくださいませ」
「嘘言っちゃダメだよ? 苦労するのはマックイーンなんだから」
美少女たちからじっと見られるのも悪くないけど、ここはしっかりと言ってあげないといけないよね。
「マックイーン、残念な真実を伝えてあげよう。そもそもカロリーは真ん中に集まるなんて性質は全くないから。そもそもカロリーは物質じゃないし」
「う……嘘」
「因みにドーナッツのカロリーはここに厚生労働省の資料があるし」
「では、カロリーは潰すと空気中にふわっと飛んでいく性質があるからカステラをぎゅっと潰して食べるとカロリーは無くなってしまうというのは……?」
「つぶしただけでカロリーが空気に飛散したらいいねぇ。太り過ぎなんてものが無くなるし。トレーナーも大助かりだね」
「で、では、カロリーは凍ってしまう性質があるため、アイスのような冷たい食品の場合にはカロリーがなくなってしまうというのも……?」
「カロリーが凍るなんてことはないけど、アイスが溶けてなくなったらカロリーも無くなるよね」
ガーンという擬音が似合いそうな表情のマックイーン。
「う、そ。ですわ……彰は嘘を言ってるんですわ」
信じないぞ。という表情のマックイーンに向かって、
「悲しいなぁ。マックイーンは僕を信頼してないんだ」
よよよ。と泣き崩れる真似をする。
ただ周りからは、50点。だの、甘いぜ、まけて30点くらいだな。だの、ダメだな。俺ならもっとうまくやれる、0点。だのと中々手厳しい声が聞こえてくる。
「彰、目を覚ましてくださいまし。彰は騙されているのですわ。ほら最新栄養学の結果が、このサイトに」
また始まったよ。という声が聞こえたが、何のサイトか興味があったからマックイーンの示した画面を見てみる。
あ、マックイーンからいい香りがする……。
「ああ、これか。いや、確かに良くできているけどさ、ここって有名なジョークサイトじゃん。ほら、よく見て、ここにビタミンTについて載ってるよ。ビタミンTってメキシコの伝統料理だよね。マックイーンが教えてくれたじゃん」
「そう言えば……そうですわね。……では、ワタクシは」
マックイーンの肩にポンと手を置く。
「箱入りお嬢様。もう少し世間というものを知りましょうか」
マックイーンが俯き何やらぶつぶつと呟いている。ブライトさんがどうとかファインモーションさんがどうとか聞こえているけど、何の事だろう?
取り敢えず、話題を転換してもらうように周りをみる。
僕と目が合ったパーマーさんが頷き……。
「マックイーン。昨日は彰さんとデートしたんだって?」
とんでもない爆弾を放り込んでくれた。マルゼンスキーさんがその話題に食いつかない筈もなく。
「あらあら~。二人でデートぉ? お姉さん、ぶっとび~」
一気に正気に戻るマックイーン。
「ふぇ!? コホン。き、昨日のことですわね。ええ。楽しかったですわ。郷を見下ろす草原で彰と二人で昼食を摂って将来計画を語り合って一緒に抱き合って眠りましたわ帰りは手をつないで夕焼けの中を二人で帰りました夕陽が私達を祝福してくれているようでしたわ」
……いや、まだ正気には戻っていないらしい。やってないことがかなり混じってる。
「あらあら。将来計画ね~」
マルゼンスキーさんのニヤニヤが止まらない。
ここは反撃しなくては。
「年長者として何かアドバイスいただけませんか。年の功という奴で。……ね、お義母さん」
いつか、マックイーンの事を私達の娘と言っていたことを思い出し、お義母さんと付け足してみる。
ニヤリと笑みを浮かべる僕に
「年の功って程老けてませ~ん。それにクリークちゃんじゃあるまいしママって呼ばないでくださ~い。それに、まだまだお義母さんって年齢ではありませ~ん。まだまだ華の20代で~す」
30代前半にしては可愛らしく頬を膨らませるマルゼンスキーさん。
って何か衝撃的な言葉が聞こえたような気がする。
20代とか……。
20代!?
その言葉に思わず口走ってしまった。
「え? マルゼンスキーさんって30代前半じゃ……?」
「ひどいわ! 私はまだ花の20代よ! ピッチピッチのギャルよ。卒業してそんなに経ってないわ。ぅわ~ん」
免許証を見せながら、ワッと顔を覆ってあからさまなウソ泣きをするマルゼンスキーさん。
「おめぇ~。いくらなんでも……」
ゴールドシップさんが呆れた声を出す。
「ひどいよーじょせいのとしをまちがえるなんてさ」
テイオーさんもワザとらしくもあきれたような声をあげる。
「私もそれは無いと思うな―」
とパーマーさん。
「……」
マックイーンの氷の視線が……。
「え? だって清一さん、そう言っていましたよね?」
初めて出会った冬に清一さんは確かにそう言っていたはずだ。
「おいおい、俺はそんなこと一言も言ってないぜ。使ってる言葉で想像できるだろって言っただけだ」
「……」
や、やられた……。
思い起こせば確かにあの時清一さんはマルゼンスキーさんが何歳とは明言していなかった。
やれやれ。と清一さんが肩をすくめた。
「マルの本当の年齢はにじゅグオォ」
顔を覆っていたはずのマルゼンスキーさんがノーモーションで花瓶を清一さんに投げつけ命中させた。
「……いきてるか~? ……ん、生きてるな。……トレっとっと。元トレピッピや? 女性の年齢を勝手にばらすのは良くないとゴルシちゃんは思うんだが。そこんとこ、どーよ?」
花瓶の直撃を受け沈黙した清一さんをしゃがんだゴルシさんが突いている。
そんな二人を振り向くことなく
「きちんと言わなかったのが悪かったのよね。でもまさかそんなにおばさんにおもわれてたなんてショックだわ~気分はサゲサゲよ~。私は未だ27よ」
ぷくぅッと剥れ顔のマルゼンスキーさん。
27歳。道理で30代前半にしては若く見えたわけだ……。20代半ばに見えたのも納得だった。
「というとマックイーンと歳の差は一回り位ですか……」
あれ? という事は……僕とほぼ同い年!?
……これ以上墓穴を掘るのは止めよう。
書き終わったらマックイーンと出会う前の「私」表記を「僕」に直さねば。あと清一さんがマルゼンスキーを呼ぶ時はマルにしておかないと。