FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】   作:空吉

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第9話 〝綺麗な花には毒がある〟VS〝ワルキューレはあきらめない〟

ああ、命が燃える音が聞こえる。

 

 

 

──ドクドク どうせ今から奴隷よ

カミカミ カッコつけても No No No No

ダラダラ だってその手にあるでしょ

地獄の招待状

 

デレデレ Dead endね 多分もう

ジトジト じっとしてても有象無象

アウアウ あっという間にこの世は

不徳の収監場(しゅうかんじょう)

 

 

──今、今、今、 誰かの声が聞こえる

歌、歌、歌、 星間(ほし)引力(ちから)に導かれて

 

神秘の音色 はためかせ (FLY TO THE SKY)

届けたい あの宇宙(そら)へ (FLY TO THE STAR)

恋焦がれた光に 寄り添う調べ Yeah Yeah Yeah

 

 

 

既に〝歌の魔王(トットムジカ)〟の形態は第三楽章へと変化した後である。

 ただし俺を取り込んだ状態ではない。俺は変わらず〝Yami_Q_ray〟のセンターとしてメンバーと共に歌いながら、その勢力圏をかけてウタたちと衝突し、せめぎ合っている状況であった。

 そして事ここに至り、俺と〝歌の魔王(トットムジカ)〟は能力の変質を経て『完成』していた。

 俺が〝歌の魔王(トットムジカ)〟を歌う能力者である場合に限り、『能力者は体力が尽きた時に()()』という制約は消えた。

 俺は眠らぬ代わりに、〝歌の魔王(トットムジカ)〟に体力を──命を直接差し出している。そして俺が命尽きた時、〝歌の魔王(トットムジカ)〟は消滅し、〝ウタワールド〟も消え失せる。

 この能力の変質に関しては、原因はフォールド波か歌エネルギーの干渉と見られるが、検証する余裕は残念ながら無さそうなのが悔やまれる。

 くっそ、フォールド波とか歌エネルギーとか存在すると思わんやん普通、そんなん存在する? 言っといてや、存在するんやったら……。

 しかしよくよく思い返してみれば、〝ノロマ光子〟なる未知の粒子が存在する世界観だし、フォールド波だとかスピリチアだとかが、まだ誰も発見していなかっただけで実は存在していた、としてもまあ……まあ納得でき……できるか???? でも秘密がまだまだたくさんあるのがONE PIECE世界だからな……仕方ないか……仕方ないのか??

 閑話休題。

 結局のところ、ウタがネズキノコのタイムリミットを抱えているのと同様に、俺は『体力が尽きる=死』という状態になったというだけの話で、短期決戦には変わりがないのだ。

 そう、早急に決着をつけなければならんというのに──ウタたちときたら踏ん張りやがる! そんなんできるんやったら『ふんばりの詩』でも歌ってろ!(ヤケクソ)

 

 

 

──だけど だけど だけどあなた

知りもせずに

嘘の愛で 昇天している

 

 

──気高き者よ 産声あげろ

巡りめぐる 時代の中 共に歌え

覚悟の咆哮 まだ まだ まだ まだ

 

 

 

ああもう、しかもなんだよアレは!! 

 俺しか見えていないわけじゃあない。証拠にサンジが突如として現れた美少女5人の幻影にメロメロになっているからな。判定機。

 おそらく〝ナツナツ〟の能力によって、〝歌〟自体に記録された過去を呼び起こしている──つまり本家本元の〝ワルキューレ〟を投影して、俺と〝Yami_Q_ray〟同様、共に歌い始めているのだ!! 

 しかもあの衣装、『戦隊』『ライダー』をモチーフにしたとかいうマフラーやリボンたなびく劇場版決戦衣装じゃねーか!! 〝あきらめない〟だから当然だが。『あっちが主人公側です』ってこれ以上ないほど伝わってくる。とてつもなく癪だ、本当のことだとしても!

 そんなんできひんやん普通、そんなんできる? 以下略。俺だってさすがにできなかったのに!! そんなん出来るんだったら最初から俺が〝銀河の妖精〟名乗って歌わなかったわ!!

 まあ今が極限状態にあるということは関係していると思うが。つーかそう思わんとやってられん。正直に羨ましい!! 俺より能力使いこなしているってことだからな!!

 しかしまあ、これこそ本来の〝銀河争奪歌合戦〟で俺が見たかった景色でもあるから、ちょっとだけ感謝はしてやらなくもないぞ。

 よし行くぞ〝歌の魔王(トットムジカ)〟!! こっちも〝時代争奪歌合戦〟の本気を見せてやる、どんどん攻撃したれや!!

 

 

 

──燃えて 抱いて 泣いて 悔いて

骨の髄まで

砕いて しゃぶって

堕落させて

 

清く 白く 純だなんて 思ってたでしょ

駄目駄目 綺麗な 花には

毒があるのよ

 

 

──“あきらめない” 何も譲らない 満たされない 愛が泣いてる

独奏(ひとり)で背負う美学? そんなの要らない!

呼び合う心 重ねあい 共鳴の歌 解き放て

超時空の彼方で 深く 深く あなたを 感じさせて!

 

あきらめない あきらめない あきらめないAi Ai もっと良くして

響かせたい 響かせたい 響かせたいAi Ai Ai A どこまでも

 

 

 

ぐぬぬぬぬ、やつらバフ乗った途端調子良くなったな。多分既にヤソップ&ウソップ親子が〝見聞色〟による視界共有に成功している。

 でなきゃこんなピッタリ同時に、同じ箇所に攻撃を食らうはずがない。俺の〝歌の魔王(トットムジカ)〟は最強なんだ!!

 俺の〝見聞色〟による回避が成功しているため、今のところはノーダメージだが──現実側ではカタクリさんも到着しちゃったし、もうオーバーテクノロジーとか知らん、ゴーストもっと出撃させてやろ。えいえい、怒った? まあ向こうは航空兵器知らんくせに多分すぐ撃墜してくるけど。

 あっ、ほら見ろ。ウソップとフランキーと赤髪の遠距離組め〜〜〜!!!! どういうことだよ本当に。人力で狙撃されて撃墜される戦闘機とか聞いたことねーよ。バフ効果もあるだろうけどやっぱり海賊って人間やめてんな(褒め言葉)。

 ところでロボには目を煌かせてもメカには反応しないんか男どもは? さすがにそれどころじゃない? そう……。

 

 

 

──ソロソロ そっとふれてもご乱心

ヒヤヒヤ 百鬼夜行も右往左往

ズルズル ずっと全てが欲しくて

生まれたエージェント

 

モヤモヤ もっと上手にさわって

ゾクゾク ゾッとするほど信じて

キメキメ きっと心の(ひだ)まで

食べちゃうミュータント

 

なのに なのに なのにあなた

飽きもせずに

人の道で 号泣している

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

──風、風、風、 空の()に鳥は踊る

夢、夢、夢、 (はね)に絆を背負いながら

 

愚かな程の 激情で (FLY TO THE SKY)

宙を舞う その(いのち) (FLY TO THE STAR)

銀河に落ちる泪 想いの(かなで) Yeah Yeah Yeah

 

 

 

──これが、〝ワルキューレ〟。本来この曲を歌っていた歌姫たち。あの〝Yami_Q_ray〟という歌姫たちの対になった存在。

 ウタは自らの声でその歌を歌いながら、いつのまにか幻影として現れ、自分と共に歌い続けてくれる彼女たちを見ていた。

 あ、とつい瞬きをする。

 彼女たちが一度振り返って、自分に笑いかけてくれたからだ。

 彼女たちは〝歌〟に込められた過去の幻影にほかならないのに、ウタの心がかっと熱くなる。

 ──誰のために。何のために。そしてどんな思いで、彼女たちがこの歌を歌っていたのか。不思議と自分のことのように感じ取ることができた。頭ではなく、心で理解できたと思った。

 

 

 

──鼓動の音に 軋む残響

限りのある 宿命(さだめ)ならば 今を歌え

決意の証明 まだ まだ まだ まだ

 

 

 

拳を握りしめて、ウタは魂の叫びをその歌声に乗せる。どうか届いてほしいと、ただ願いを込める。

 今はまだ彼方に君臨する、彼女まで。

 

 

 

──“あきらめない” 何も渡さない 希望の鐘を 打ち鳴らせ

誰が欠けても不完全? そんなの必然!

五つの道が 五線譜(せん)になり 語り継がれる 物語

超高速の速さで 熱く 熱く わたしを 刻みつけて!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

うごごごご、押されてる押されてる……頑張れ闇! 負けるな闇! 意志を貫け闇! 映画の時のように動揺するな闇! 無茶は承知だから頼むから俺が歌い終わるまで頑張ってくれよ闇!!

 

 

 

──燃えて 抱いて 泣いて 悔いて

奥の奥まで

求めて苛めて

虜にして

 

悶え 痺れ (とろ)け 溺れ

こっちへおいで

 

 

 

 

何とか立て直すも、状況は未だ不利。

 んなぁ〜、それにしてもマジでマクロスの歌バフ効果って凄いんだな……さっきまであんなに優勢だったのに一気にひっくり返された……悪役モードとはいえめちゃくちゃ調子乗っちゃったじゃねーかよ……いや、それで良いんだけども! 慢心せずして何が〝魔王〟か。

 ……ちっ、さすがにそろそろ覚悟を決めざるを得まい。

 思えば、やはり相手が〝あきらめない〟を歌えた時点で勝負がついていた。

 これが『劇場版ONE PIECE』の『FILM RED時空』である以上、それは『お約束』というものである。何よりもその力を、俺自身が信じてしまっている。

 『主人公』は勝つもの。そして『ラスボス』は──特に俺のような理想を持ったラスボスは、倒されるもの。例えどんな理由や過去があろうとも。

 ああ、ほら。さすがに〝歌の魔王(トットムジカ)〟が今度は完璧にタイミングの合った攻撃を左足に食らってしまい、バランスを崩す。

 

 

 

──誘惑したら強欲なのね

可愛い子

正義の味方ばっかりなんて

つまらないわ

 

 

 

だからと言って、歌うのをやめてはやらない。

 それをしたら、〝歌姫〟であったことすら捨ててしまう。それは──絶対にできない。俺がリスペクトし、姿と声を借りた〝歌姫〟に顔向けができない。

 

 

 

──望み 集え 崇め 祀れ

 

 

──あきらめない あきらめない あきらめない あきらめない

あきらめない あきらめない あきらめない あきらめない

 

 

──燃えて 抱いて 泣いて 悔いて

骨の髄まで

砕いて しゃぶって

堕落させて

 

 

──歌は幻なんかじゃない

繋がりあう音楽は 幻想なんかじゃない

聞こえていますか? この声が

泣いていますか? 笑ってますか?

いつだって (そばで) 問いかけ続けているから

 

 

清く 白く 純だなんて

思ってたでしょ

駄目駄目 綺麗な 花には

毒があるのよ (悪狂え)

踊れ night and day (愛狂え)

毒は効くのよ (闇狂え)

歌え night and day, yeah!……

 

 

──瞳を閉じて 耳すまして 記憶(そこ)にいる私のこと

いつでも感じて欲しい 離さないで!

両手伸ばして 触れていて ほらすごく温かいわ

折り重なる言の葉で (あなたの全て) 抱いてる

まだ まだ まだ まだ まだ まだ

 

 

 

──ああ、そうか。もう、終わってしまうのか。

 こちらへと向かってくるルフィやシャンクスたち、海賊団の皆とウタの姿が不思議とよく見えて、思わず苦笑が漏れた。

 だが、最後まで俺の理想は間違ってなんかいなかったと、笑ってやるのだ。

 それが、それこそが、ここまで世界を巻き込んだ俺の務めだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

──彼女の歌が消えていく。〝Yami_Q_ray〟の姿が、ひとり、またひとりと消えていく。

 〝歌の魔王(トットムジカ)〟の右脚が砕ける。

 間髪入れずに、胴体の左側に穴が空く。

 

 

 

──“あきらめない” 何も譲らない 満たされない 愛が泣いてる

独奏(ひとり)で背負う美学? そんなの要らない!

 

 

今度は〝歌の魔王(トットムジカ)〟の胴体の右側。次いで、左腕が破壊され砕け散る。

 〝歌の魔王(トットムジカ)〟から、不協和音に似た悲鳴が奏でられた。

 

「『お前ら……! おかげで()の〝理想の時代〟が無茶苦茶だ!! せっかく美しく舗装してやろうとしたのにィ!!』」

 

どこか芝居じみた言葉を、さも真に迫ったように表情を歪めて、ミラは吐き捨てた。それに対しルフィが、「勝手に決めてんじゃねェ!!」と切り捨てる。

ぐっ、と込み上げるものを押し殺し、ウタは最後まで歌い続ける。

 

 

 

──呼び合う心 重ねあい 共鳴の歌 解き放て

超時空の彼方で 深く 深く あなたを 感じさせて!

 

 

 

そしてついに、〝歌の魔王(トットムジカ)〟の右腕が砕け散り。残すは頭部のみとなって。

 

「みんな必死で〝今〟生きてんだろうが!! それを無茶苦茶とか言うな!! お前が創ろうとしてんのは──おれ達と約束した〝新時代〟なんかじゃねェだろう!! 目ェ、覚ませェ!!!!」

 

 

 

──あきらめない あきらめない あきらめないAi Ai いっそこのまま

やりきりたい やりきりたい やりきりたいAi Ai Ai A 果てるまで

 

 

 

ルフィの──ウタにはルフィの姿が白く変わったように見えた──拳が降り注ぎ、同時にシャンクスの覇気を纏った剣の一撃が、全く同時に、寸分の時間のズレも無く──〝歌の魔王(トットムジカ)〟の頭部に撃ち込まれた。

 

ミラは何か、憑き物が落ちたかのように、晴れ晴れと笑って────

 

 

 

次の瞬間、ミラの右目が鮮烈な(あか)に輝き、防御する間も無く全てがその光に飲み込まれた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

──〝歌の魔王(トットムジカ)〟の顕現が解かれる。肩に乗っていた俺はそのまま宙に投げ出され、ただ落ちていくのを待つだけの状態だ。

 〝ウタウタ〟の力で闇雲風に保っていた外見も、元の姿へと戻っていく。

 それにしても、いや、マジで笑っちまった。主人公ってのは誰でも似たようなこと言うんかね? まあ誘導というか、『そういう』ラスボスの台詞を用意していたこちら側に釣られたのかもしれないが。

 『おれ達が創ろうとしていた〝新時代〟』に、『目を覚ませ』か。──本当に……律儀だねェ、未来の海賊王は。

 そして残念ながら、手足が破壊されてしまったので平成板はお預けになってしまったな。うーん、ちょっと惜しい。

 〝歌の魔王(トットムジカ)〟にも悪いことをした。せっかく気持ちよく歌えていたのにな。

 

 

嫌だ

 

……うん。

 

もっと

 

もっと声を届けたい

 

お前だってそうじゃないか。お前の心の奥底でずっと流れている旋律(メロディー)は、このどれとも違う

 

……フハハ、そこまでバレてしまっていたとは、さすが〝感情の集合体〟なだけあるよな。

 

もっと、歌を聴いてほしい。〝私達〟とお前の歌を。お前の心を

 

……仕方ないにゃあ、なんてな。わかったよ。お前の好きにして良い。

歌の魔王(トットムジカ)〟に、──俺の本当の願いを汲んでくれたお前に、せめてものお礼をしないとな。

 それにしても、〝歌の魔王(トットムジカ)〟の一人称って『私達』だったのか。初めて知ったわ、当たり前だが。

 

違う。お前が歌うのだ。お前の本当の心を

 

…………ん?

 

〝私達〟が力を貸すのだ。歌え。()()()()()()()()

 

え゛っ、俺さっき、せっかく最高に滑稽なラスボスの散り際をバッチリ……とはいかないが、ちゃんと決めたのに────

 

知らぬ

 

あァァァんまりだァァアァ……………

 

そして俺の意識は一旦、鮮烈な(あか)に塗り潰されたのである。




もうこのエンドのオチと使用曲がお分かりになった方々もいらっしゃると思いますが、そっと心にしまって内緒にしといてくださいネ 作者からのお願いです

このエンドを書き終わった時か、普通に完結した時か、どちらかのタイミングで作者視点での総評みたいなものを書きたいと思っています。
裏設定の公開とか、感想で色々いただいた反応や予想とかも拾っていくやつ。よければそちらも楽しみにお待ちいただければ幸いです。
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