FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】   作:空吉

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続きです


第11話 〝時の迷宮〟

覚えてるよ君とはじめて

出会った日のことを

なんだか風が優しかった (予感がしてた)

初めて会ったのに懐かしい

もしかしたら君も そう思ってくれたかな なんて

 

 

 幼き頃のルフィは視点の人物──ミラの手を引いて、酒場の女主人と村長の元へ連れて行った。3人はミラに笑いかけ、傷の手当てをし、暖かく迎え入れた。

 そのうち場面が切り替わり、ルフィが楽しそうに村中を走り回るのを追いかける様子が映し出される。

 ある時には、ミラが酒場で手伝いをしているところに、ルフィがやってきて騒がしく食事をしていく。酒場の女主人は笑っていて、ミラも笑っているのか視界が小刻みに揺れている。

 またある時には、ルフィと対面で話すミラ。視点が少し高くなり、ルフィの姿も多少大人びていることから、ある程度時が過ぎて成長したことが窺える。最初はルフィが納得できないような顔をしていたが、次第に拗ねるような顔になり、「わかった」と言ったように口元が動いた。

 場面は切り替わり、ミラはひとり船に乗っている。

 胸元に抱えた本や楽譜を抱きしめて、涙に滲む視界をぐっと上を向くことで堪えている。

 

 ここから次々と場面が切り替わっていく。

 

 

あれから 毎日たのしくて

かなしくて

少しだけさみしい

そのすべてで胸はいっぱい

君の名前で 胸はいっぱい

 

 

 ミラは〝銀河の妖精〟として名を馳せるまでに、島々を転々とし、音楽を学びながら時に小さなライブを開き、時にライブスタッフと称して仲間を作り、時に海軍の護衛の元、様々な国を訪問した。その中にはアラバスタ王国や水の都ウォーターセブンなど、麦わらの一味に馴染み深い島もあった。

 時折、麦わらの一味の手配書を見ては、また笑っているように視点が小刻みに揺れる場面が流れた。懸賞金の額が上がるたびに手配書を新しく入手し、大切そうにしまい込んでいる。

 辛く苦しい時もあった。それでも目を閉じれば、フーシャ村での思い出が蘇り、ミラの心を支えた。

 眠れぬ夜は、麦わらの一味の手配書を手に、歌を歌って自らを鼓舞した。──彼らの冒険の軌跡に勇気付けられているのだ、と示すように。

 フレーズはいつも同じものだった。

 

 

025-8- and S04

この声 聴こえてますか

もっと教えて欲しい

いろんな星のこと

いろんな君のこと

 

025-8- and S04

この声 届いてますか

もっと聴かせてほしい

いろんな星のこと

いろんな歌のこと

 

 

 ──もはや誰も言葉を発しない。ひとつの映画を見ているように、彼らはミラの人生を、過去を、ただ傍観者として見ていることしか出来ない。

 

 また場面が切り替わる。今度はまたフーシャ村にいた頃に戻り、シャンクスとウタがミラの視界に映り込んでいた。

 初めて海賊が村にやってきたことへの恐れ。ただし彼らのひととなりを知ってからは、ミラもルフィもすっかり彼らに懐いていた。

 ウタとルフィのチキンレース。赤髪海賊団と酒場の女主人が、彼らを囲んで笑っている。その後のウタの小さなステージまで、それはそれは鮮明に記憶されているようだった。

 ウタが酒場で初めて歌った場面や、ウタとミラが岬で何かの約束をして、笑い合っている場面。

 酒場でウタにせがまれ、一曲だけね、とミラが歌を披露し、ウタや大人たちが拍手で讃えた(ルフィは見ているだけだった)のを、大したものじゃないというように手を振って、あとはいつものように始まったウタのステージを見る場面。

 そして、ウタとルフィとミラ、3人一緒に村の外れで集まって、ルフィが何かを描いているのをウタとミラが2人で覗き込み、ルフィが描けたものを2人に見せて晴れやかに笑っている場面。

 ──これこそが、3()()()約束した〝新時代〟、その始まり。

 お世辞にも上手いとはいえない〝麦わら帽子〟。

 ウタが息を呑み、左手の服の袖を握った。自分が無意識に仕舞い込んでいたものを、ミラはずっと覚えていたのだと気がついた。

 

 

別々の道を歩きながら

同じ夢を見てた

だからひとりじゃなかったよ

 

 

 また切り替わる。

 酒場の前での、ルフィとふたりの会話。

──ルフィはさ、どんな大人になりたいの?

──そりゃ海賊だろ! だってすげー自由だ!

──そんで〝新時代〟を作りたいんだよね? ウタとの約束だもんね

──そうだ! つーか、ミラだってそうだろ? 〝新時代〟のマークを作った時に一緒にいたじゃねェか

──そう。いた。いちゃったんだよなぁ……

 

 一度暗転。それが明けると、既にふたりはチキンレースに移っていた。ウタとルフィのレースの、焼き直しのような光景だった。

 その後。周囲に人の姿がない、夜の村の景色だけが流れていく。ミラがひとりで村の中を歩いているのだ。

 もう村にウタはいない。月光に照らされる岬や、ただ暗く揺蕩う海が映し出されている。ミラはひたすらに小さな村を歩き回り、ウタとの思い出の場所を巡っている。

 

 

失ってからそこここに

君を見つけてしまう

髪の匂いや後ろ姿

 

 

 今度は再び〝銀河の妖精〟として活動を始めてからの記憶が映し出された。

 満員の会場。眩しいスポットライト。ステージから見る景色。ファンから握手やサインを求められる。ライブスタッフとの打ち上げ。たくさんの人々の笑顔。

 ライブツアー中、〝新世界〟の海で海賊に襲われ、命からがら抵抗し、時折返り討ちにしながら逃げ延びる。

 幼い頃の赤髪海賊団との特訓の日々が断片的に思い出され、ばったりと倒れて仰向けに寝転がった後、安心しながら見上げた夜空の、星々の輝き。

 

 

あれから 毎日美しくて

さわがしくて

少しだけさみしい

ふたりだから

星がきれいで

海は深くて

空が高いんだ

 

 

 ここでもまた、空に手を伸ばしながら歌を口ずさむ。

 

 

021-5- and F09

この声 聴こえてますか

もっと教えて欲しい

いろんな星のこと

いろんな君のこと

 

021-5- and F09

この声 届いてますか

もっと聴かせてほしい

いろんな星のこと

いろんな歌のこと

 

 

 そして記憶はついに、このエレジアでの〝歌合戦〟へと辿り着く。

 ライブ開始から、〝歌の魔王(トットムジカ)〟を操り戦闘に至るまで。視界にはずっと、ウタや麦わらの一味、そして特にルフィが映っている。

 記憶──ミラ視点の映像だけではわからないことが、おそらくまだたくさんあるだろう。しかし、何より歌声が、雄弁に感情を語っている。

 

 

いまの私どうかな

強くなれたのかな

そっと 教えてほしい

 

 

それはほぼ核心といっていい情報だった。

 命の危険がある家から逃げ出し、放浪していたところでルフィに助けられ、フーシャ村が新たな故郷になった。それはまだ幼い少女にとって、どれだけの救いになっただろう。

 だが、そこで過ごすうちに自分がウタに夢を託したことを〝呪い〟と断じ、大切な人を失う未来に怯えた。そして、いつか贖いの時が、禊の機会が必ず来ると信じた。

 その来たるべき時のために、精神的拠り所だった村と幼馴染に別れを告げ、思い出だけを抱いたまま、ひたすらに歌手として、さらに能力者としても研鑽を積んだ。

 〝新時代〟を『呪ってしまった』と信じた彼女が望んだものは、ただ平穏で幸福だったあの頃の日々。

 約束した〝未来〟を捨ててでも、何よりも大切にしてきた〝過去〟へ戻りたいと願った。

 ただそれだけが、『ミラ』という存在を形成する全てだった。

 

 誰もが言葉を失う中、目元をぐいっと強く拭ったウタが、祈るように手を組んで、ひとつの旋律を口ずさむ。

 

 

──神様に 恋をしてた頃は

 

 

「ウタ、お前、それ……」

「そうだよルフィ。たった一度だけ、ミラがフーシャ村で歌ってくれたあの歌。〝歌えば道を示す〟──だとしたら」

 

 

021-5- and F09

 

 

「……! 声が……」

 

 

──思ってなかったよ

 

021-5- and F09

この声 届いてますか

 

021-5- and F09

──F09

この声 届いてますか

──F09

もっと聴かせてほしい

いろんな星のこと

いろんな君のこと

 

 

ウタのコーラスに合わせて、再び〝魂の井戸〟が鳴動する。中央の装置から新たな光が照射され、ウタの全身が燐光を纏った。

 

「やった──これなら!」

 

ウタが今度は自らの〝能力〟を使い、これまでの白いワンピース姿から、黒いジャケットを基調とした姿──所謂〝ジャケットウタ〟である──に衣装を変化させた。

 そして、〝世界の歌姫〟たる実力と、天使の歌声の本領を発揮する。ミラの歌に即興でピタリと合わせて、この〝歌〟を奏でる。

 

 

──神様に

025-8- and S04

この声 届いてますか

──恋をしてた頃は

もっと聴かせてほしい

いろんな星のこと

 

025-8- and S04

(025-8- and S04)

この声 届いてますか

025-8- and S04

(025-8- and S04)

もっと聴かせてほしい

 

025-8- and S04

──S04

この声 届いてますか

──S04

もっと感じていたい

いまあなたといること

 

025-8- and S04

──S04

この声 届いてますか

──届いて

もっと感じていたい

 

いまあなたといること

いまあなたといること

(いまあなたといること)

いまあなたといること

(いまあなたといること)

 

 

ウタとミラの歌声が重なり合い、美しいハーモニーが完成する。

 それに共鳴しているのか、〝魂の井戸〟が加速度的に光で溢れていき、宙には光が渦巻く門が、そしてその下には輝く粒子で出来た階段が形作られる。

 それと同時に、ルフィだけがウタと同じように燐光を纏っていく。

 

「な、なんだァ!?」

「──きっと呼ばれているのね。彼女に」

 

素っ頓狂な声を上げたルフィが、微笑んだロビンにそう諭されて、首を傾げる。

 

F09(エフオーナイン)と、S04(エスオーフォー)。何を示す呼称かは分からないけれど……呼ばれているのが2人なら、きっとあなた達以外にはいない」

 

足元を見ればルフィとウタの前に階段が降りてきており、上空を見上げれば光の門が、誰かを待っているかのように開いている。

 

「行けルフィ、ケリつけて来い」

 

「ミラさんをひとりにさせんな」

 

仲間達の声を受け、最後にウタがこちらに拳を向ける。グータッチの構えだ。

 

「行こうルフィ。ミラのところに!」

 

「おう!!」

 

その拳と仲間達の声に応えると、ルフィはウタと共に輝く階段を駆け上がり、光の階段が導く門の中へと飛び込んだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ここは不思議な時の迷宮〝魂の井戸〟……の中の、道が示された時だけ開く謎空間。

 〝魂の井戸〟含め原理は簡単、全て〝歌の魔王(トットムジカ)〟が俺の記憶と心象風景を読み取って一瞬で作ってくれました。すごーい! 固有結界みたーい! 実質そんな感じ。

 〝魂の井戸〟内にあった装置とかそういうものは一切無いが、天から地平線の彼方まで、ものすごーく見覚えのあるステンドグラスが広がっている。

 つまり、いわゆる『天の逆月』。ガチャから出るの見飽きたよな〜わかる〜。本当はいいシーンなんだぜ。知ってる? 知ってるか。

 そこに至る階段まで外側に出来ているって、もうそれ『スパイラル・ラダー』だよ。別に月まで伸びてないけど。〝魂の井戸〟に加えてこれ、俺の願望と性質の反映が忠実すぎてめちゃくちゃ恥ずかしいわ。

 それにしてもすんごく恐れ多いな。確かに俺はステンドグラスは絶対割れないタイプなんだけど。永遠に4日間を繰り返す自信だけはある。

 

 それはともかく、うん、あのさ。言いたいことは色々あるんだけど、〝歌の魔王(トットムジカ)〟くんさ。

 

「過去とかそういうのは一切を言わないか匂わせる程度なのがいいんだろうがァ〜〜!!!! 伝説のジジイがボスの映画を見てこなかったのか!?!?

 そもそもウタだってゴードンさんからの伝聞とかだけで、こんな……こんなガッツリ上映会みたいにはならなかったろ!?!?

 何を全部上映しちゃってんの!? これじゃただの晒し上げなんですけど!? カッコ悪いだろォが!?」

 

何お前『関係ないです。自分は望みを叶えただけです』って顔してんだよ!! ミニキャラ化した上にメンダコみたいに空中ふよふよしやがって!! くそっ地味に捕まらねえ! かわいこぶっても許されんからな!! ちいかわにはなれねーぞ!!

 

「ミラ!!」

 

あ〜〜〜〜ほらもう来ちゃったじゃ〜〜ん!!!!

 

「…………何してんの?」

 

「恥ずかしい。穴があったら入りたい」

 

謎空間で、端なんかないけどなるべく小さくなる。すみっコになる。

 

「ミラ、あのね!」

 

「あーっ、ストップストップ! ……わかったよ、その辺で座って待って。あ、ウタ新衣装かわいいな。()そっちのが好みだ。

 えーととにかく…………本当にさ……恥ずかしくて仕方ないんだよ今……あーどっこいしょ」

 

「あ、ありがとう……」

 

顔を半分覆いながら、目に入ったウタの新衣装はしっかり褒めて、彼らの前へとずるずる身体を引っ張っていく。

 

「ミラ、お前右目が……」

 

「それにその……なんか浮いてるんだけど……」

 

「あ〜、これはほんと気にしなくていいよ。メンダコムジカは悪さしないし、()の右目が赤いのも、この空間作った時に〝歌の魔王(トットムジカ)〟が()と同化して、最終楽章に形態変化した時の名残ってだけだから。

 『〝歌の魔王(トットムジカ)〟の最終楽章ってのは────()自身が〝魔王〟になることだ』ってな具合でな」

 

えっ最終楽章……? 何それ知らない……ていうかじゃあそこのメンダコムジカは……? とウタが複雑そうに呟いているのを聞かなかったことにし、再度どっこいしょ、と唱えてから腰を落ち着ける。

 

「……さて、何から話したものか、ああ、まずは謝らなくちゃな。ウタにもルフィにも……。

 ええと、ウタ。()があの日、無邪気に夢を託したことが、お前がエレジアに来る理由のひとつになったと、思う。

 それで、あんなことになって……()はそれを、()の罪だと思って……。

 だから、お前が逆に〝歌の魔王(トットムジカ)〟を倒す力になったら、精神的にも形式的にも、禊になるかと、思ったんだ。……本当に、ごめんな」

 

「……ミラのばか。……ううん、馬鹿なのは私もだよね。でも、一つ訂正させてよ」

 

ウタが俺の手を握って持ち上げ、額につけて、泣きそうになりながら言葉を絞り出す。

 

「罪じゃない。呪いなんかじゃなかったよ。〝夢〟を託してくれてありがとう……!!」

 

んぐ。と思わず嗚咽を堪えて変な声が出てしまった。……うん、と俺が頷くと、ウタがそっと手を離す。……そしていよいよ我らが主人公殿に向き直る。

 

「そんで……ごめんな、ルフィ。……本当は、()は最初から〝新時代〟なんていらなかった。

 だって()には、フーシャ村での思い出と、ルフィたち麦わらの一味の冒険譚があれば良かったから。

 確かに〝大海賊時代〟はたくさんの人を苦しめる側面があったのは事実だ。でも、()には……みんなの〝冒険〟の方が大事だった。

 〝大海賊時代(を生み出した平成という時代)〟がなかったら、ウタやシャンクス達……みんなとも出会えなかったし、お前は冒険にも出ず、()の大好きな〝麦わらの一味の冒険譚〟は聞けなかったろう?」

 

「──だったら最初からそう言ってくれりゃ良かったんだ。

 そんなにおれたちの冒険が好きなら着いてくりゃよかったのに、変にごちゃごちゃ考えてよー、トットムジカ? まで使って話広げてよー。

 お前の話は難しいんだよ!! 許す!!!!(ドン!!)」

 

「イィ〜ン器が大きいよ〜……未来の海賊王が寛大すぎる……。でも()も譲れなかったんだよ〜、冒険が……したいのは嘘じゃないけど当事者になるのは信条的にちょっと……。

 あ、あとすっかりお返しするの忘れてたんですけど、ウタ、ほれ、麦わら帽子」

 

「あ! そうだった……ごめんねルフィ」

 

「おう」

 

俺がめそめそと涙ぐむ中、ルフィはフン! と鼻息荒く胸を張っていた。主人公殿〜……。

 その後俺が指パッチンで麦わら帽子を出してウタに渡し、無事ルフィへと返還された。これでとりあえずは忘れ物はないだろう。

 

「だから〝歌合戦〟まで仕掛けたし、〝歌の魔王(トットムジカ)〟まで乗っ取って戦ったんだけど、今回は全部()の負け。

 だから、お前達の望む〝新時代〟を受け入れて、大人しく待つことにする。

 本当は、…………………〝大海賊時代〟そのものじゃなくて、〝麦わらの一味の冒険〟が終わってほしくないんだけど………!!

 でもお前の夢が〝海賊王〟だから、何よりそれを応援する。あと〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟の正体も気になるし……〝古代兵器〟の全貌も知りたいし……!!

 だって()(前世)は『正当な読者』だったから……!! ちゃんと本誌を定期購読してたし、単行本も買ってたから……!!」

 

俺はギギギギギ、と(外見が)美女にあるまじき歯軋りをして、本音をなんとか噛み殺しながらそう言った。

 ルフィたちには何を言ってるのかわからないところももちろんあっただろうが(ふたりして同じように首を傾げて頭上にクエスチョンマークを出していた、幼馴染……)、とにかく応援されているのは伝わったらしい。

 そしてこの話をした途端、なんかローが『全て理解している』というように、腕を組んで頷いている姿を幻視した。

 お前が分かるの『ジェルマ』の話であって定期購読とか本誌とかないだろ、でも『正当な読者』の気持ちはわかってくれるか……とは考えたが、口には出さなかった。

 

「……2人がいなかったら、()はここまで生きてこられなかったよ。本当にありがとう」

 

きちんと頭を下げる。2人が顔を見合わせて笑った気配がした。

 

「しかしこれで油断するなよ。()を倒しても、第二、第三の懐古厨が現れるかもしれないからな。気をつけろよ……」

 

「懐古厨って何なのよ……」

 

俺の他には…………黒ひげとか? ちょっと違うか?

 

「そういやロビンが、すげェこの……遺跡? のこと気にしてたぞ。〝プルトン〟とかと同じじゃねェのか、とかなんとか」

 

「んなわけあるかこれ全部()の心象風景でできてるだけです〝古代兵器〟にもましてや〝空白の100年〟にも何も関わりないですなんならベガパンク産ですって言っといてくれマジで」

 

「? ……????」

 

多分覚えきれてないな。当然だけど。

 いや待てよ、原作で今後宇宙進出とかしてこの時空含めたパラレル時空も引っ張られたりとかすると……しかもここの世界観〝歌の魔王(トットムジカ)〟の力の影響でマクロスに寄っちゃった可能性あるし……。

 ワンチャン古代の文明とプロトカルチャーやらが普通に世界観レベルで引っかかる可能性が……なきにしもあらず……??

 それはそれですげー面白いけど俺が世界政府に消されそう。それは今も? 確かに。

 

「というわけで、反省会……はおしまいです。この〝魂の井戸〟も閉じます。()もみんなも元に戻るから、心配はいらん。でもルフィたちには先に出てもらうな、()まだ挨拶する相手が残ってるからよ。

 あ、あと元の世界に戻ったら、お詫びじゃないけどウタと海賊団の音楽家の方々に贈り物がありますので、忘れずにライブスタッフからお受け取りください。多分ちゃんとスタッフも生きてるので。

 では、ここから出るための儀式なので……ルフィさんは、ステンドグラスを割ってください」

 

アナウンスめいた口上を述べた後、立ってすっと掌でステンドグラスを指し、ぺこりと頭を下げる。

 

「ん? 普通に割ればいいのか?」

 

「はい。ただのイメージなので、殴るだけで十分です」

 

「わかった! 〝ゴムゴムの〟ォ〜〜……」

 

ルフィが思い切り腕を振りかぶる。普通に殴るだけでいいって言ったのに……おおっと、しかしこれはもしや……

 

「〝(ピストル)〟!!!!」

 

ウワーーーーーッおれのパンチは(ピストル)より強い〜〜〜〜〜ッ!!!! 全ての原点……。

 うむ、『FILM RED』を締めるのにはこれ以上ないほどの技ですな。もう映画の原型ないけどな。

 

粉々に砕け散ったステンドグラスが降り注ぐ幻想的な風景の中、ルフィとウタが先に落ちていく形で〝魂の井戸〟から脱出していく。

 

「ウタ、世界が全部元に戻ったら、薬ちゃんと飲むんだぞ〜。決闘者(デュエリスト)でもない限り自分で体内の毒は焼き尽くせないからな〜」

 

「なぁにそれェ!? ……ミラ!!!! 私、ずっと待ってるから!!」

 

ウタが困惑しながら俺に向かって叫んでいる。にっ、と笑って手をひらひら振って送り出す。

 ──よし、2人とあと下に残っていたみんなはちゃんと現実世界に戻ったな。

 ふわふわ浮いていたメンダコムジカが、俺の右肩に我が物顔で乗ってきた。お前ほんまに。

 

 ここで、ゆっくりとした足音が2人分、彼方から聴こえてくる。

 

「随分洒落たところだな」

 

「お前が考えたのか?」

 

「ちげーよ。()のセンスじゃこんなん無理だよ。()は好きな作品を永遠に温め続ける人間だぜ」

 

シャンクスとベックマンだ。まあこの人たちにも挨拶は必要だろうと思い、ルフィがいなくなった後にこの空間に入れるようにした。

 

「ええと。かの赤髪海賊団に後始末なんか頼むのも申し訳ないんだけどさ、海軍とサイファーポールはなんとか退かせといてくれよ。

 ()の方は別に気にしなくていいんだけど、ウタがな……。

 あと、ちゃんとウタに薬飲ませて、連れて行くんだぞ。……2度も娘を置いていくなよ」

 

「忠告痛み入る。……お前ももう気が済んだなら、しばらく大人しくしていろよ。馬鹿弟子」

 

「黄猿の真似がもっと上手くなったら見せに来てもいいぞ」

 

「チッッッ(クソデカ舌打ち)、嫌味かよ、てか別にモノマネ極めてるわけじゃねェんだけど……。

 ……ありがとう、()師匠。……()、あなた方のことも憧れだからさ。未来の海賊王たちとの決着も、楽しみにしてるよ」

 

感謝の気持ちを込めて頭を下げると、シャンクスたちはフッと軽く笑ってから、拳骨で俺の頭を揺らし、ベックマンはライフルの銃床を軽くぶつけていった。……え? 普通に脳震盪起こすかと思った。コワ〜……。軽くであの威力なの? しぬが?

 そして、俺がこの空間からの退場を許可するッ! したので、サーヴァントのようにキラキラシュイーンと消えていったシャンクスたち。……クラスはグランドライダーとアーチャーかな……。

 

 さて、益体もないことを考えていたが、さすがに空間も保てなくなった。そんな中でもメンダコムジカがぺちぺちと俺の頬を面白そうに叩くので、指先でちょいと構ってやる。

 さて、俺も目覚めたらやることが山積みだ……何からやるべきかなァ……。

 

 え? 結局『ミラ』がルフィに恋をしていたかどうか? ……まあ、前世の記憶を取り戻す前も『俺』で『ミラ』だからなぁ。

 ひとつ言えることは。

 トライアングルは始まる前に終わってしまった、ってことかなァ……。

 

 砕けたステンドグラスが煌めきながら闇に消え、俺の意識もゆっくりと沈んでいった。

 




平成コソコソ噂話
ミラの過去編上映時のイメージは〝ゆめうつし〟。今年リバイバル上映もされたポケモン映画『水の都の護神 ラティアスとラティオス』でやってたやつです。見たことない人はよければぜひ見てくださいね。(n回目)

次話のエピローグで〆てトゥルーエンドルート終わりです。
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