FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】   作:空吉

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「…………こまった、ちょっと書けない…」状態に陥っていました
短いですが許して…許して…


Finale II
第7話・II 〝独白〟


 ────歌ってしまった。そして〝古の魔王〟トットムジカが出現するのを、俺はただ見ていた。しかし、不思議と俺の頭は酷く冷えているようだった。

 それは前世より知識として持っていたこともあるだろうが、「やはりこうなってしまったか」という一種の諦観もあったことは否めない。

 あ〜今頃ルッチが音MADにされそうな『音声が切れません(カチカチ)』をやってるのかな〜、まで考える余裕があった。……うん、ある意味逃避かもしれん。

 だが、もちろんそれだけではなく、俺の頭は冷静に今後のシミュレートを続けていた。

 ウタのことを呼びながらなんとか近づこうとするルフィや、魔王に攻撃を仕掛けるも弾き飛ばされる海賊たちを見ながら、本来であれば〝懐古バフ〟と〝新時代デバフ〟で支援すべきであるが、おそらくそれでも今は攻撃は通らないだろう、と判断する。

 ウソップとヤソップの〝見聞色〟による視界共有を補助することも出来るだろうが、それもまだ先の話。

 ──まず、隙を作る必要がある。

 それにはどんな手を使ったら良いのか。──まあ、メタ的に考えても、そりゃ〝歌〟だろうな。

 攻撃を弾かれて俺のいる位置まで下がってきたルフィに声をかける。

 

「ルフィ」

 

「なんだ?」

 

「多分()なら隙を作れる。その後タイミングを見計らって、ウタをあの〝魔王〟から引っ()がせ。上手くいけばウタだけでも解放できる」

 

「……! わかった!!」

 

そして一度、ウタが〝Tot Musica〟を歌うのをやめる。

 仲間の声を受け、ルフィが再び飛んでゆき、「今なら聞こえるだろ!」と声をかけるも、トットムジカがまたしても彼を弾き飛ばす。

 

「ウタ、話を──」

 

「海賊と話すことなんか、ない!!」

 

ウタがいつか使っていた槍を生成して、ルフィに向けて投擲した。──よし、ここだな。

 俺はゴードンさんがルフィを庇うのを横目に〝武装色〟で手足を硬化させつつ跳躍し、彼にその槍の切先が届く前に柄の部分を掴み取って、勢いを殺しながら向きを逸らすと、そのまま着地した。

 うーん我ながら美しい着地、10点満点。

 

「育ての親と幼馴染に武器を向けるとは、さすがに看過できるもんじゃあないぜ、ウタ」

 

ぐるぐる振り回してから傍らの地面(?)に槍を突き立て、強者っぽく決めてみる。

 ちょっと槍の方がデカくて不恰好な気もするが、まあ許容範囲だろう。

 

「それにゴードンさん。ウタはもう知っているんです。12年前の真実を」

 

「……!? 本当なのか、ウタ!?」

 

彼女が表情を歪めて唇を引き結ぶのが、何よりの答えだった。

 

「ああ、一体いつ……すまなかった、ウタ……!! それにすら気づいてやれず、私は……!!」

 

ゴードンさんがその場に崩れ落ちる。ぼたぼたと涙を流しながら己の不明を恥じ、ひたすらに詫びていた。

 

「そう。12年前の真実も、それを知っていてウタがなぜこんな〝新時代〟の計画を立てたのかも、ここにいる者の殆どが知らない────本当にそれで終わらせていいものか?」

 

見上げれば、昏い瞳のままのウタと視線が交わった。

 ──ああ、彼女にこんな目をさせてしまった全てに。

 (呪い)を託してしまった俺にも、シャンクスとウタの互いを思った結果の悲しいすれ違いにも、無邪気に彼女を祭り上げた民衆にも。

 俺は今、怒りと悲しみと慚愧の念と後悔とが全て入り混じったような、黒い泥のような感情を抱いている。

 物語ではよくあること、といえばそうなのだが。

 俺は基本的にどんな物語でも好きではあるが、超個人的な信条の上で許せないものも、中にはある。

 前世で見た様々な物語の中では、例えば「都合のいい神様にしちゃいけない」と言われながら、作られた続編では結局それが果たせなかったり。

 例えば「死にたくない、生きていたい」と本音を叫びながらも、自分の役割に殉じるしかなかった主人公がいたり。

 自らが選択して紡いだ未来だとしても、そこに紡いだ本人がいなかったり。

 大切なものを誰か1人に背負わせて、それを良しとした──そうせざるを得なかった結果だとしても──環境や人間や、周囲の全てを、俺はどうしても、許せなかった。

 

「誰も彼もが、勝手に願い、勝手に託すんだ」

 

「願われた側が、託された側が、どんな結末を迎えるのか、知りもしないから」

 

「願ったことは、憧れたことは、間違いなんかじゃない──だとしても、だからこそ、()の罪から始めて、全ての『過去』を見せよう。でないと不公平だよな」

 

静かに〝ナツナツ〟の能力を発動する。俺を起点にふわりと風が渦を巻いた。

 対象は俺の声を聞いている者たち。電伝虫は対象に取らないが、ウタワールド自体は現実側にもおそらく流れていると思うから、俺の声も結局聞こえているとは思う。

 まあそうじゃないとシャンクスたちや観客に伝わらないからなぁ。不特定多数が見ることになるのはアレだが、自らの行動が引き起こした結果について省みるべきじゃないか、とは思うんだよな。再三言うが俺ほどじゃないけど。

 今から俺は、特定の『過去の記憶』を全て吸い上げ、それを今この場に集う全ての人──観客も含む──にそれを見せる。

 ちょっとしたショック映像(イメージ)だな。まあ、俺も耐えるから耐えてくれや。

 曲は新時代(令和)産だけど、元の話が作られたのは平成だったからいいってことで目を瞑ってくれ。

 『この曲に描かれた存在』よ、どうかあなたの物語を利用してしまうことを赦してほしい。1500年もの後悔を、これからこの人たちが抱かないようにしたいのだ。

 〝古の魔王〟トットムジカも、お前が『負の感情の集合体』というのなら、俺のこの醜い泥のような感情を受け止めてくれなきゃ、その名が泣くだろう?

 何かを始めるつもりだと勘づいたウタとトットムジカがこちらに拳を振り下ろす。ルフィたちが声を上げるが、それを手で制して。

 拳が到達する前に、俺はその旋律を紡いだ。

 

 

終わりを拒み続けた

 

 

ピタリ、とトットムジカの拳が止まる。

 

 

愚かな旅人の物語

愛する人を失う未来に怯えていた

 

 

眼前のその拳にそっと触れて、俺は歌い続けた。

 既に〝ナツナツ〟の能力は発動している。彼らにも俺にも、とある『過去の記憶』が見えている。

 俺とルフィとウタが、〝新時代〟を誓った過去と。シャンクスたち赤髪海賊団が、涙を流しながらもウタの門出を祝ったあの夜を。

 

 

焼きついて離れなくて 遠い昔の約束

許さないで 振りほどいて 残酷なその瞳で

今さらあまりに遅すぎると 突き放して

 

 

トットムジカの拳から視線を移すと、ウタの瞳が揺れるのを見た。俺はそれに静かに目を細める。

 まあ、色々と御託は並べたが。

 結局のところ、これは子供じみた八つ当たりで。

 ただ懺悔を聞いてほしかった俺自身こそがなによりも愚かで、エゴの塊というだけの話だ。

 

 古い映写機が映す映像のように、セピア色をした『過去』が、他人の脳裏を流れていくのが解る。

 ウタに赤髪海賊団と、そして俺やルフィが楽しげにフーシャ村で過ごした記憶。

 ある航海で赤髪海賊団が〝エレジア〟にたどり着き、ウタの歌が彼らにも絶賛されて、国をあげてのパーティーを楽しんでいたのに、それが一瞬で破壊され、ウタには何も告げずにシャンクスたちが離れていった記憶。

 その事件が掲載された新聞をフーシャ村の酒場で見て、取り落とす俺。動揺しながらも、必ず罪を贖わなければと真っ先に決意したその時の記憶。

 

 

正しくありたいと願うほど

自分の小さな不純に気づいてしまった

ぜんぶ捧げて与えることで 満たされてたのは僕のほうだった

 

 

絶望したウタが、ゴードンと共にエレジアで暮らしていた記憶。

 もはや音楽しか残されていなかった彼女を、シャンクスとの約束通り世界最高の歌手とするために、ゴードンが育てたその記憶。

 俺が島を転々としながら、ウタへの罪を贖う力をつけるために、血反吐を吐く思いで歌手としての研鑽を積んでいった記憶。

 様々な民衆が大海賊時代の煽りを受け、虐げられる苦しみと怨嗟の声を吐いた記憶。

 そんな時にウタが映像電伝虫を拾い、歌を届けるようになり、民衆がウタを〝救世主〟と崇め始めた記憶。

 それにウタもそれに応えなければと奮起した。応えなければと思ってしまった。

 そして、そんな彼女はある時、ひょんな偶然から真実を知ってしまう。12年前に、本当は何がこの島を滅ぼしたのか。

 

 

憧れて 待ち焦がれて やっと目にした楽園

踏み荒らして ぶち壊した もう跡形もないほど

僕らが絆と呼んだ細い糸

手繰り寄せてしまう前に 断ち切って

 

 

ウタが暗い部屋で1人、罪の重さや絶望と戦いながら、もう引き返せないと震える姿。

 繰り返し映る、ウタがシャンクスたちの船を見送らざるを得なかった時の記憶。

 その一方でシャンクスが何を思ってウタをゴードンに託したか。そして船上で、残った赤髪海賊団の仲間たちと、エレジアに残したウタを思って泣きながら酒を酌み交わした記憶。

 

 

さよなら 口にすればなんて短い音の響き

さよなら その言葉で愛を示せるなら あなたへ

 

 

そして、ライブ〝ニュージェネシス〟。ここからは俺の記憶。俺は歌いながら、ずっとウタを見つめていた。視界に収めていなくても、ずっと彼女を思って歌った。

 選曲も歌声も、全て彼女へ向けたもの。『ウタを救う』という望みを叶えたいだけの、とんでもないエゴだった。

 ただ、それに似たものを抱えていたのは、俺だけではなかったのだ。歌っていて、やっと気づいた。

 

 

焼きついて離れなくて 遠い昔の約束

泣き疲れて 崩れ落ちて やっと手にした結末

許さないで 振りほどいて 残酷なその瞳で

 

 

ゴードンの記憶に映る、ウタとシャンクスたち。

俺の記憶に映る、ウタとルフィ。

シャンクスの記憶に映る、幼い頃のウタとルフィ、俺、ウタを託したゴードン。

そして、ウタの記憶に映るシャンクスとゴードン、そして幼い頃の俺とルフィ。

 

 

今さらあなたへ告ぐ資格もない

誰にも届かない独白

声にならない僕の叫び

渦巻いた嵐の目を貫いて

 

 

 それぞれの記憶が示す、誰かの姿。

 考えてみれば当然のことだった。

 たとえそんな資格が無いとしても。伝えないと自分で決めたのだとしても。届かないと知っていても。何もかもが、遅くても。

 誰もが本当は、こうなってしまう前に、大切な人に思いを伝えたかったのだ。

 

 ウタの頬を涙が伝うのを、見た。

 

 ああ、そうだ。逃げたいなら、救われたいなら、俺にできる限りいくらでも場所を用意するから。

 何もかもを俺のせいにしたっていいから。酷いエゴだと詰ってくれたっていい。

 それでも、現実(ここ)で生きていてほしいんだよ、ウタ。




「エゴだよそれは!」「それでも!」という話(?)でした
あとは文字通り色んな人の「声に出さない/出せない心」を歌詞に重ねた選曲です。あと坂本○綾曲使わないと、Overtureでの台詞に偽りありになっちゃうから……

グッドエンド「ルート」とか言っちゃったんですがあと2話くらいで終わると思います
普通に「グッドエンド」と言えば良かったのではないか?
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