FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】 作:空吉
〝そんなに怖いか? 「新時代」が!!!〟
これに対する俺の返答としては、
「普通に怖い。まあ新しいもの全てを受け入れないわけじゃないが、それはそれ。
原点こそ頂点。俺たちの〝
というか慣れ親しんだものを失うことに恐怖を感じないことがあるか? 価値観の相違」
である。
結局のところ、転生したとて前世の記憶を持っていればそれの延長でしかない、という部分が大きい気がする。
まあもちろん世界が変われば生き方も変わるが、俺の場合それらに付随する『信条』は変わらなかったというだけのこと。
過去に戻るか、永遠に楽しかったその時その感情を繰り返すことができて、紡いだ思い出を突き刺されて涙を流して喜ぶこと。やり直せるものならやり直したいと強く思う。
これらを端的に、そして少々露悪的に表現すると〝懐古厨〟となる。
つまり、俺の信条・属性・願望の全てである。
だから〝あの実〟は俺の前に現れて、そして俺が口にする運命だった。
ロジャーの一言が人々を海へと駆り立てたように、〝
この世界では色々な人が〝
気持ちの強さは関係ないかもしれないが、単純に規模の問題だ、と思う。
〝ナツナツの実〟を食べた〝
歌と音楽の才、そしてかの〝銀河の妖精〟に似た美貌に恵まれた貴族の『女』。ただし家庭環境に問題あり、既に出奔済み。
現在の住処はフーシャ村で、かの偉大なる主人公モンキー・D・ルフィの友人(幼馴染とも言う)。
何故かONE PIECE世界に転生した俺の、今生のステータスである。
◆◆◆
「この帽子を、お前に預ける。おれの大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな」
シャンクスはそう言って、ルフィに帽子を預け、長く拠点にしていたフーシャ村を旅立った。原作通りのイベントで、全ての始まり。
以前、ちょっとした好奇心から、ルフィがゴムゴムの実()を食べる前に声をかけてみたのだが。
────その実を口にする前に、きちんと考えた方がいい。それを口にしたが最後、君は人間ではなくなるよ
────お前何言ってんだ??(もぐもぐ)うわっまじぃ!!
────うーんノータイム……さすがは海賊王になる男……
で終わってしまった。まあここで俺の言葉に耳を貸すような存在ではないしな。
そんなルフィは今、涙でぐしゃぐしゃの顔を拭って、シャンクスの船を見送っている。そんな姿を見ていると、前世で聞いたとある曲を思い出した。
遥か空の星が ひどく輝いて見えたから
僕は震えながら その光を追いかけた
俺が口ずさんだ旋律に、ルフィだけでなく、赤髪海賊団を見送りに来ていた街の人々がそっと耳を傾けてくれた。響くものがあったのかもしれない。
それは、これからシャンクスを追いかけていくルフィの姿であると同時に、紛れもなく、輝かしき主人公を見つめる俺の姿でもあった。
割れた鏡の中 いつかの自分を見つめていた
強くなりたかった 何もかもに憧れていた
そして、ルフィはガープさんに連れられてコルボ山を訪れ、そこを根城にする山賊・ダダン一家に預けられる。そして出会うのが、近い将来義兄弟の盃を交わすことになる、エースとサボだ。
これからのルフィを形作ることになる、とてつもなく重要な出会いであった。
────だって他に!! 頼りがいねェ!!!
────……おれがいれば辛くねェのか…、……おれがいねェと……困るのか
────お前らには悪いけど、俺は親がいても独りだった!
物語の始まりは 微かな寂しさ
君の手が触れた それは引き合う孤独の力なら
誰がどうして奪えるものか 求めあえる 命果てるまで
最初は彼らに邪険にされていたルフィも、お宝を巡って一悶着あった後はすっかり3人組として行動することになる。
彼らがぐんぐんと強くなる中、俺は現在の保護者代わりであるマキノさんと時折彼らの元を訪れながら、その修行に混ぜてもらったりした。〝覇気〟の特訓のためだ。
覇気の基礎のところはシャンクスたちに教わっていたものの、やはり実践経験を積んでおきたかったのだ。
どうやってシャンクスに教わったか? ……まあ、頭猗窩座にしてちょっとけしかけてみたのだ。その時は案の定〝覇王色〟だけで殺されかけたが。
俺の転生したこの体は、元々素養があったのと、そして
だから彼ら赤髪海賊団には、他の2色の〝覇気〟の手ほどきを受けた。まあそれはそれとして。
そのうちエースたちとも会話に困らぬ程度には仲を深めた。が、時は待ってはくれない。
サボが生家に連れ戻され、〝
俺はとある〝未来〟のことを考えていた。そして丁度この国に戻ってきていた革命家ドラゴンにこっそり接触し、──まあ原作からして言わずとも助けてくれるのは分かっていたが──少々頼み事をした。
そしてその後、原作通りに──サボの乗った船は天竜人によって撃沈された。
その先は、特に俺も何かに介入することもなく、粛々と時は流れた。自分の能力と覇気を磨いたりはしたが、その程度だ。
そしてエースが先に海へ出て──一緒に海に出ないかと軽く誘われたが断った、エースもダメ元だったようで、そうかと笑って旅立った──ついにその日がやってきた。
ルフィの旅立ちである。
「なあミラ、エースの時は断ってたけど、本当におれと海賊になるのも嫌か?」
「うーん。別に海賊は嫌いじゃあないけど、少しやりたいことがあるからな。でもひとつ、約束をしよう」
「?」
手を伸ばして、少し風に攫われそうだった彼の麦わら帽子に触れた。不思議そうなその表情に、出会った頃の面影が重なる。
君は風に吹かれて 翻る帽子見上げ
長く短い旅をゆく 遠い日の面影
「きっとお前はこれから、たくさんの素晴らしい仲間に出会うだろう。仲間と一緒なら、乗り越えられないこともほとんどない。
だけど、どうしても……例えば、
お前の大切な仲間の代わりに、
君が望むなら それは強く応えてくれるのだ
今は全てに恐れるな 痛みを知る ただ一人であれ
ルフィはヒーローに憧れない。ヒーローにならない。
だったら俺が、ルフィたちだけのヒーローになる。──いや、ヒーローなんて主人公じみたものじゃなくてもいい。助けになれるなら、例えば王の側にいる謎の魔術師みたいな存在だっていいんだ。
ルフィや、将来の麦わらの一味がヒーローでないと称していても、それでも現代日本に生きた俺にとっては紛れもなく、彼らはヒーローだったから。
そして今この時代に生きる俺には、ルフィこそが海賊王になる男だから。
「だから覚えていてほしい。お前が絶望に打ちひしがれ、心根がどうしようもなく削れてしまうようなとき、
「────そうか! ししっ、わかった!」
そして、彼は海賊王への一歩を踏み出す。
風が吹き、村のまだ動く風車がくるりと回る。彼の旅路は祝福されたものになるだろうという、予感があった。
……うーん、予感というより確信だったかな。俺の〝
久々に書いた上に短いですすみません。完全原作時空におけるプロローグ的な話でした。これを起点かつ基点とする。
完全原作時空におけるミラは、本編時空よりちょっとプロトマーリンとかウォズ的イメージかつ立ち位置にいる感じです。
あと選曲については、縛りを緩くしました。使いたかったため。
作曲者の活動時期が平成と被ってたら平成!くらいに思っといてください(ガバガバ)