FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】   作:空吉

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お待たせしました。みなさん本当に、たくさん読んでくださってありがとうございます。FILM RED軸で、エンディングまでは書きたい気持ちはありますので、一応連載に変えておきます。タグもクロスオーバー追加しました。また、今後を考え、前話にもちょいちょい修正を加えています。
まだTV版の連動エピソードのアニメを全部見てないので、影響が少ないように書きましたが、何かあれば修正します。


第1話 VS〝新時代〟

「ルフィはさ、どんな大人になりたいの?」

 

「んん??」

 

「間違えた今のなし。()が過去を尊ぶばかりについぽろっと」

 

いつかの過去。

 日が落ちてしばらく経った頃。未だにマキノさんの酒場からは、明かりと、シャンクスたちが騒ぐ声とが漏れてくる。うすぼんやりとした中で、俺は酒場の前でルフィと2人で遊んでいた。

 もうウタはいない。シャンクスたちがウタを置いてフーシャ村に帰ってきた最初の日は酷いものだった。こんな赤髪海賊団なんてもう2度と見たくねえと思ったものだ。

 ルフィにド正論言われて泣きながら絡み酒してるシャンクスとか、威厳も何もあったもんじゃない。今は大分復活してきたようだったが。

 そしていつもなら、ウタとルフィがチキンレースやら何かしらの勝負という名のゲームをして、俺はそれをマキノさんや赤髪海賊団のみんなと眺めていられた。

 最後にはウタの歌を聴きながら皆で眠りに落ちて、その時間は確かに幸福だったことを思い出す。

 本当なら。本当なら! と思わずどこかの長男みたいな回想に入りかけた、危ない。

 

 

「そりゃ海賊だろ! だってすげー自由だ!!」

 

「知っとるわ。だから今のなしって……。海賊になって、そんで〝新時代〟を作りたいんだよね? ウタとの約束だもんね」

 

「そうだ! つーか、ミラだってそうだろ? 〝新時代〟のマーク作った時に一緒にいたじゃねェか」

 

「そう。いた。いちゃったんだよなぁ……。いや、うん、そう。ルフィは先に進む人だからなぁ」

 

「?? 何言ってるかわかんねえ!」

 

「いいんだよそれで。まあ、()も応援してるよ。自由にやりな。ルフィならできる。私が保証する」

 

 

まるで意味がわからんぞ! という顔をしているルフィを見て、自然とあたたかな笑いが漏れた。

 俺と違って、なんたって主人公様だしな。やり遂げるよ。そういう物語というのもあるが、近くで過ごしてきて分かった。主人公とは、こういう人間のことを言うのだ。だから物語が魅力的になるのだ。某グランドクソ野郎の趣味は、実はちょっと理解できる。

 

 

「ねえ、チキンレースでもしようか、ルフィ。今まで()とはやったことなかったしね」

 

「ほんとか!?」

 

「けど、一回だけな。もう時間も遅い。子供は早く寝なきゃいかんよ」

 

「もうそんな小せえ子供じゃねえ!」

 

「何言ってんの、ウタよりも背ちっこいのに」

 

「ムキーッ!! ミラだってそんな背伸びてねえくせに!! チキンレースで決着つけてやる!!」

 

「はははこやつめははは。──ごめんマキノさん、チキン貰える? ルフィとチキンレースしたいんだ」

 

 

──遠い記憶。結果? もちろん俺の負け。そんな食い意地はってなかったんだ。あの犬め、俺は外見は華奢な女子だったというのに、容赦なく吹き飛ばしおって……。連勝記録もなし。なぜかって、俺がルフィとチキンレースをして遊んだのは、それ一回こっきりだったから。

 

おお、未来の海賊王よ。お前の未来がハッピーエンドだったら、何も言うことはないんだがなあ。

 

 

 

──神様に 恋をしてた頃は……

 

 

 

◆◆◆

 

ライブ〝ニュージェネシス〟にて。

時は少しだけ遡る。

 

 俺はウタに喧嘩を売る前に、自前で雇ったライブスタッフと最終確認をしていた。

 エレジアの会場はウタ側が用意したもので、演出の全てが〝ウタウタの実〟の能力によるものだ。小説版の描写だと、『配信で見ていたライブ会場とは違って』会場はボロボロ、バンドメンバーすら存在しないという話だったはず。つまり、〝新時代〟を歌った時点でもう能力が発動している。

 ()()()()()()()()、そして一欠片でもウタに〝ネズキノコ〟を摂取させるわけにはいかない以上、ウタウタの能力を使われる前に一曲だけでも俺が歌う必要がある。

 たった一曲でも、現実で〝世界の歌姫〟を相手取って歌い、観客の心を掴む・もしくは裏切らないためには、演出にも何もかも気を抜けない。

 まあつまり、端的に言って『一から自力でライブ会場の設営をしなければならない』という、極めて現実的な問題が立ち塞がったわけである。

 めちゃくちゃ大変ではあるが、ウタに先手を取られたら計画もライブ自体も成立しない。くっ、世知辛い。

 まあスタッフごと〝ウタワールド〟に()()()()()()()は、きっちり最新機材を使って想像通りの演出をしてみせるぜ。だってウタがいくら万能でも、こっちの演出までやってくれるわけないからな。ちなみに演出の最低基準はマクロスFの劇場版レベルだ。

 

 

「あー、あー、こちら銀河の妖精。首尾は? どうぞ」

 

『こちらライブスタッフA、赤髪海賊団の船を発見。一応こちらに向かっていますが、天候不順のためか、まだ時間はかかりそうです』

 

「了解。チッ、娘のウタの晴れ舞台だぞ、()が直々にタレ込んでやったのに何やってんだシャンクスは。まだ引きずってんのか。だから〝失せろ一筋25年〟とか言われンだ」

 

『こちらライブスタッフB、舞台袖にて〝ネズキノコ〟発見。カゴに山盛りになっており、〝対象〟ウタがそばにいる模様』

 

「お、見つけたな。よし、ウタを舞台に引っ張り出してる間に燃やし……、……まずいかな。万が一、煙とか吸って効果あるなら困るしな……。いやでも確かサンジが普通にゴミに捨ててたか……。うん、早急にまとめて焼却処分でいい」

 

『了解(サンジ……??)』

 

『こちらライブスタッフC、D、E、F。照明、音響、舞台設備、映像電伝虫、セッティング完了。いつでもいけます』

 

『〝銀河の妖精〟バンドメンバーも準備完了』

 

「よし。今のところはセットリスト通り行く。出来るだけ沿うつもりではあるが……何かあったら、〝高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処〟で」

 

『有事の際は〝行き当たりばったり〟、了解』

 

「オブラートに包んでやったのに! よし、じゃ──〝銀河の妖精〟()()()()()()にして初対バン、行ってみよう」

 

並べた電伝虫の受話器を置いて、あらかじめスタッフ内で決めていた所定の位置に隠しておく。あとで誰かしらが回収に来てくれる手筈だ。

 こういう時にワノ国製のスマシが欲しくなるが、入手出来なかったので仕方がない。使用にも色々制限があるようだし。

 

 そして現在、ここまでやってから、『なんだこのチンケな会場は!』と、思い切りウタに喧嘩を売ったというわけだ。正直全然チンケじゃなかった。そうじゃなけりゃあここまで設営に苦労しなかった。いや、確かにボロボロだったけど。

 

閑話休題。

 

 

『悪いが先手は貰うよ、保険も兼ねてね。──客席のみんな、突然で驚かせたと思うけど、対バンライブとでも思って楽しんで! さあ、いくよ!』

 

 

俺の合図でイントロが流れ出す。お、この曲が何か知ってる客も多いな、ざわめきが聞こえてくる。マジ? というやつだ。

 息を吸って、おっと忘れずに〝ナツナツの実〟の能力を乗せて、そして歌い出す。ところで自分が歌った瞬間に声帯がM○y'nになるの、正直ビビらない? 俺はビビった。

 

──Can you hear me? My lovely boys & girls.

滑り出した奇跡は 今 

(I) already catch your heart.

 

スポットライトを一身に浴びて、ゆっくりと客席の階段を降りてゆく。自前で用意した照明担当のライブスタッフが、上手い具合にライティングの演出をして盛り上げてくれる。

 ううっ、わざわざゴードンさんに交渉してウタにバレないよう前乗りで準備した甲斐があったってもんだぜ……。

 選曲? まあ、〝新時代〟かつ〝世界の歌姫〟に喧嘩を売りに来たのだから、これくらいは、という。分かりやすいだろ? トライアングラーと迷ったんだけどな……。

 

──さぁSTAND UP!

5G(ファイブジー)くらいで飛ばせ!

私は 今 I realize that I live. ここにいるわ

 

カン!とヒールを鳴らして仁王立ち。同時にすっと天を指して。

 

──FEEL! I'm a shinin' STAR!

 

ぐわり、音の波が大きくなる。同時に観客の爆発的な歓声が響いてくる。

 〝Welcome To My FanClub's Night!〟──全てのマクロスの歌姫たちよ、あなた方もこんな気持ちを抱いていたのだろうか。なんと得難い体験だろう。何度ライブを開催しても、この時の気持ちだけは忘れることはない。

 

──星座ミラーボールカラー 舞って

プラネット・ホーム三番街で

盛り上がれ! エンジン・オンビート!!

 

 

観客も俺も、最初の一曲にして気分は最高潮(クライマックス)だ。

 俺は周辺のスタンド席の通路を駆け抜け、観客にファンサービスを行い、そしてスタンドから飛び降り、中央の枡席/プレミアムシートと花道を囲む海──の上のボートに着地。続いて華麗なる八艘飛びを披露する。ボート並べてくれたの舞台設備担当ライブスタッフかな、良い仕事をしてくれる。この間、当然、歌声は切らさない。

 ONE PIECEの世界、鍛えれば鍛えるほど能力が上積みされるので、このくらいならできるようになるの怖すぎない? が、便利は便利だ。

 主に身体への反動を少なくするクッションの目的で〝武装色の覇気〟も上手く使いながら、会場と身体を使ったパフォーマンスで盛り上げる。

 

──Welcome to my fan club's night! S.O.S!

超空間で 誘惑 流星デート?

 

このあたりで花道に着いたので、プレミアムシートの方を見上げると──いた。麦わらの一味だ。ウソップやチョッパー、そしてサンジやナミまで、目を丸くしてもはや落ちる勢いで身を乗り出している。

 サンジなど目がハートになるどころか、顔面全部がえらいことになっている。まあ昔から外見も似てはいると思ってたんだが、音楽活動をやるにあたり、容姿や体型がもろシェリル(元祖)レベルになるよう頑張ったからな。髪色はウタと対称になるよう染めなかったが、元からユニバーサル・バニーの時のような紫ががった濃い青色だったし。

 しかしこれからウタのステージもあるぞ、そんな状態で大丈夫か? おや、気づいたのか、ルフィがこっちを向いた。

 まあしかし、この世界だけでなく、前世からずっと社会現象レベルで有名な、かの〝麦わらの一味〟に自分を知ってもらえているというのは、正直本当に嬉しいことだ。ファン心というやつ。

 

──Welcome to my fan club's night! S.O.S!

超高速ロマンティック! あなたへ!

 

ウインクしながら右手で銃の形を作って、ばーん、と彼らに向けてファンサを投げてやる。あ、サンジがしんだ。この人でなし! ルフィがポカンとした表情で見下ろしているのに、思わず〝あの頃〟のような笑みが溢れた。それを見たルフィが目を丸くしたような気もするが、ここでずっと立ち止まっているわけにもいかない。

 

──Vibration 今ひとつに 心揺らせ

トキメキを超えて

 

ゆっくりと花道を進み、時折立ち止まってパフォーマンスを入れながら一曲すべてを歌い上げて、ステージの手前で立ち止まる。

 そして、今の今まで、ステージの中央に立ったままだったウタのことをより近くで見据える。

──ああ。懐かしいなぁ、ウタ。きみは〝フーシャ村にいた頃の〟俺のことを覚えていても、〝その後の〟俺のことは知らなかっただろう。

 きみに並ぶために、俺は結構、自分で言うのもなんだけど、死に物狂いで頑張ってきたんだよ。

 きみが背負うものを、知識としては理解している。その歪んだ願いの器と化してしまったきみに、それが完全に成される前に。

 

 全てを幸せだった過去に戻す。きみが素直に、大好きな家族(シャンクスたち)と笑っていられた、あの頃に。

 

そうだ。俺が〝時代〟を舗装してやる。

 

『さあ〝世界の歌姫〟ウタ、これは〝時代〟を賭けた歌合戦。()が勝てば〝時代〟は()の望む通りにさせてもらう。〝新時代〟が作りたいなら、お前の〝歌〟で勝負しな!』

 

発破をかけたその先で、ウタはさまざまな感情の色をないまぜにして、俺をじっと見つめていた。

 

 

◆◆◆

 

 

──どうして急に、ミラが。それに、あんな素敵な歌を……歌手になっていたなんて全然……私のファンのみんなも、彼女のことは当然知ってるみたい……

 

自分は、この島の外のことをあまり知らない。

 

ウタはぐっとスタジャンの裾を握りしめた。

 この場所に現れたミラは、ウタの計画を知っていると言った。疑う気持ちと、『彼女ならそうかもしれない』という気持ちとがある。

 彼女はフーシャ村にいた頃からずっと、全てを見通すような聡明な瞳をしていた。ひとつ歳上なだけだというのに、まるで大人のように振る舞っていた。

 ウタが、あの村にいた男の子……ルフィと遊んでいるところを、微笑んでずっと眺めていた。ウタの歌を聴いて、すごいねえと心から褒めてくれた。

 

──過去は、思い出したくない。だというのに、あたたかな思い出ばかり浮かんでくる。これが彼女の能力なのだろうか? それでどうして、私の能力に対抗できると思っているんだろう?

 

『……やっと、私の歌を必要としてくれるファンに会えたんだ。これは私のライブ。私の夢。みんなのために、私が平和で幸せな〝新時代〟を創ってあげるの。──何を考えているかは知らないけど、ミラもきっと一緒に幸せになれる。だから──私の歌を、聴いていて!』

 

 

そうして始まる、ウタが望む〝新時代〟。その歌声。伸びやかで鮮やかな、人々の心に希望をもたらす旋律。世界が色付き、色とりどりのライトがあたりを照らし出し、ファンが熱狂し、声援を送る。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ミラと、そして会場から離れた場所にいるゴードンだけが、静かにその様子を見守っていた。

 




プロローグ(前話)の裏話みたいな感じになってしまった。頑張って話進めていきたいです。
それにしても、自分も声出しOKのライブ行きてえなあ……。
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