FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】 作:空吉
◆劇場版連動TVアニメエピソードの素直な感想
ルフィにシャーレイポジを2人作っちまった、これにはケリィも苦笑い
FILM RED興収100億突破おめでとうございます すごい勢いですね……
あっシャンクスのこと「大切な人を守れなかった100億の男」って言うのやめろよー! シャンクスだってライブの観客は守り抜いただろ! 煉獄さんが規格外なだけだ! 煉獄さんは列車の乗客も大切な後輩も守り切った? それはそう……
そもそもどちらかといえばウタが100億の女と呼ばれるべきなのでは?ボブは訝しんだ
「ねえミラ、また新聞読んでばっかりいるの?」
フーシャ村の海と空が見渡せる岬で、天気も良いのに相変わらずそよ風に吹かれながら新聞を読んでいた
「そういうウタだって、また空想世界に飛んでた」
「ううっ、いいじゃない。だって私の最高のステージは、いつだって心の中にあるんだから」
「こないだルフィが色々連れてってくれたじゃないの」
「まあね。結構良かった。ちょっと見直したわ」
「でしょう。ルフィ、そういうところ外さないんだよ。すごいよね」
「な〜に〜、ミラ、あいつのことそういう風に思ってたの?」
「うん。素直に尊敬してるの」
「うぐっ。……こほん。ところで、なんでほんとにずっと新聞読んでるの?」
「フーシャ村にはあんまり本もないから。新しい活字に触れてないと狂いそう……!(静かなる怒り)」
ウタが、ええ……と理解しがたいという表情でこちらを見る。
フーシャ村には娯楽がほぼないと言っていい。毎日ニュース・クーが届けに来る新聞を読むことだけが、私のただひとつの趣味であり、娯楽だった。
ルフィのようにあちこち走り回ったり冒険したりする体力は私にはない。たまにはルフィに付き合ったりするけど。毎日一緒に行こうと誘ってくれるんだけれど、結局着いていけなくなるから申し訳なくて。
ごめんね、山賊に会ったらすぐ逃げるんだよ、それから……と色々言っていると、彼はお小言はたくさんだとばかりにすぐ逃げてしまうのだ。
「活字中毒……?」
「んん、どちらかというと、文化中毒……? 昔、というかこの村に来る前はね。国の中央部にいたのよ? ほら、貴族が住んでるところね」
「へえ?」
「ウタはゴア王国のこと詳しく知らないよね。というか外から来た人はほぼ知らないからな〜。……けど、まあ、色々あって貴族街から追い出されちゃって。
最初は『グレイ・ターミナル』ってところで過ごしてたけど、私は貧弱で、そこでずっと過ごしてはいけなかった。だからどうせ死ぬならって抜け出して、そこらじゅう放浪して、そのうち、死ぬ前にフーシャ村に運良くたどり着いた。
……なんの話だっけ、そう、文化中毒の話。昔はそれなりに教育も受けられたものだから、読み書き計算は出来るし、なんならダンスや音楽も、貴族の子供がやれることならそれなりに。ワタシハオンガクチョットデキル」
「????」
「あはは、ごめんごめん。……昔はね、本当は、私も音楽家になりたかったのよ」
初耳、とウタが目を丸くする。当然だ、フーシャ村の誰にも言ったことがないから。マキノさんにすら。
「だから、初めてウタが歌うのを聞いたとき、心から感動したの。貴族の中でもあんなに歌える人なんか居なかったわ。〝本物〟だってすぐ分かった。……ウタなら、きっと〝エレジア〟でもトップクラスの歌手としてやっていけるわ」
「〝エレジア〟?」
「そう。〝音楽の国エレジア〟。その名の通り音楽が盛んで、世界中から一流音楽家が集まってる。……いつか行ってみたかったの。私の夢だった」
「……なによそれ。行ってみたかった、なりたかったって、全部過去形ね。諦めたの?」
「うん。残念だけどね。だってお金もツテも、何より才能がないもの。音楽家って才能よ。もちろん努力もいるけれど、なにより芸術はセンスだってわかった。
……音楽家を始めとした専門職は、そうなるために努力できるのが若いうちの期間限定で、時間が経てば経つほど、名乗るのが難しくなるの。そんなこと、もっと早くに気づけば良かった」
「…………ふうん。それじゃ、しょうがないわね」
「そう。本当に、しょうがない」
「うん。しょうがないから、私が代わりになってあげる。
ミラがここから出られないなら、赤髪海賊団の音楽家である私が、〝エレジア〟に行ってたくさん歌って、そして世界でも有名な歌手になる。
そしてまた帰ってきたときに、お土産話でもしたげるわ」
そのときのウタの笑顔は、真昼の太陽のように、本当に眩かった。
「任せてよ。ミラの夢は──私が、ちゃんと形にしてあげるから!」
「そっか。そっか……それなら、ああ──安心ね」
──遠い記憶。三つ子の魂百まで……とは少し意味が違うのだが、前世の記憶を思い出すまでの
こんなフラグを立てるな。明らかに会話がどこかで見た流れすぎる、魂に刻まれすぎだろ。
まあそれにしても、あまりにも懐かしい記憶であり、同時に──これは祈りなどではなく、俺の罪と呪いの記憶だ。
──それでも君が笑ったから どうしても捨てられない未来
◆◆◆
「──うん! なかなかにいい歌だ、〝世界の歌姫〟名乗るだけあるね。こうでなくちゃ」
ウタが〝新時代〟を歌い終えて観客の歓声が響く中、にっこり笑って心から讃える。近寄ってがっしと肩を組むと、「うわっ」という声とともに複雑そうな表情のウタと目が合った。そして耳元でこそこそ話しかけてくる。
「あれだけ挑発して……どういうつもり? ていうか、本当にミラ……? なんか雰囲気変わってない?」
「そりゃ時間が経てば人間変わるさ、何もおかしいことはない」
「ウタちゃーん、2人って知り合いなのー?」
観客から質問が飛んでくる。言っていい?と目配せされたので、サムズアップで答える。
「じ、実はそうなの! 小さい頃立ち寄った島で知り合って、でもそれっきり! 今日の企画も知らなかったよ」
「そういうこと。突然で悪いね、ウタのこのライブのことを知って居ても立ってもいられなくて!
では観客のみんな、改めて。アルナスル・ミラだ! 今日は心ゆくまで楽しんでいって!」
「何でミラが仕切るのよ! ──ちょっと順番がおかしくなったけど、みんな! やっと会えたね! ウタだよ! 今日は集まってくれてありがとう!」
2人で揃って観客の声援に応えていると、ふいにステージに影が落ちる。幾許もしないうちに、文字通り
ステージから降りろだの邪魔だの至極真っ当な野次が飛び交うが、その男──ルフィはウタと
「やっぱりそうだ。ウタとミラ! お前ら、あのウタとミラだろ?」
ぐりとぐらみたいに言うな。
「え?」
「おれだよ、おれ!」
手を広げてオレオレ詐欺みたいなアピールをするので思わず軽く噴き出してしまう。
「ふふ、うん、さっき歌ってる時に気づいたよ。久しぶりだねぇルフィ。懐かしい顔だ」
「…………ルフィ!?!?」
驚いた後に喜色を浮かべたウタとルフィと3人で、それぞれハグをし合っていると、しん……としていた会場から「あれ、5番目の皇帝?」だとかルフィに気づいた観客をはじめとして騒めきが広がっていく。
一方でプレミアムシートからは、前世で随分と聞き慣れた声の叫びが聞こえてきた。
「プリンセス・ウタだけじゃなく、あの〝銀河の妖精〟様とも知り合いだとー!?」
「◎$♪×△¥●&?#$!!?!??!!」
「ウワーーッサンジが怒りのあまり見たことないほど混乱してる!! 何喋ってるかもわからねえ!! ルフィーー説明してやってくれーー!!」
ポケモンかな? サンジのあまりの様子にチョッパーが医者としての面を優先した、うーんさすがの名医。
「だってウタはシャンクスの娘だし、ミラだってシャンクスと友達だもんな」
あっけらかんと
その中で
それにしても、だ。
「ウタはその通りだが、
「えー? 仲良かったじゃねェか」とルフィが口を尖らせるが、ウタの表情が強張ってきてるからやめて差し上げろ。
しかし本当にそんなに親しくなった覚えはないのだが……。確かにそれなりに付き合いは長かったけど、長かっただけで……俺としては結構シャンクス好きなんだけどな、前世の記憶込みで。
思わず首を傾げている間に、何やら近づいてくる不穏な者どもがいるのに気づく。観客の騒めきが収まらぬ間に不届きを行おうとする者たちがいるようだ。
……あ、劇場版ゲストキャラたちか。こいつらの中の人、演技普通に上手くなかった? ブエナ・フェスタの中の人並みに。俺全然気づかなかったんだけど。誰が中の人やるか知ってたのに。
「赤髪に娘がいたのか?」
「なんだお前ら!」
「確か……クラゲ海賊団?」
ルフィがウタとまとめて庇ってくれる中、一応両手を上げて〝敵意はないですよ〟アピールしつつ記憶から引っ張り出してきたそいつらの名前をぼそりと呟く。
それを聞き止めたのか、ニヤニヤ笑いながらひとりがこちらに刃を向けた。ごめんさすがに個人名までは覚えてないのだ、てかアピールが見えんのか。黄猿もベックマン相手にやってたろ。
「俺たちの名前を知っているとは、貴様少しはやるようだな」
こ……小物! あまりにもテンプレート!! ちょっと感動しちまうぜ。
赤髪の娘もそっちの歌手も有力海賊に渡せばいい金になる〜だのライブは中止だ〜だのと述べている間に、おお、オーブンお兄ちゃんと圧倒的妹萌えを見せて一躍インターネットで話題になった(※前世の俺調べ)ブリュレちゃんの登場だ。
映画の冒頭らしく「歌手2人を捕まえてママへの土産にする」だとか、こちらもテンプレートな説明乙である。
「ビッグ・マム海賊団までお出ましとは、有名になったもんだねえウタよ」
「え、ミラ、この人たち全員知ってるの?」
「いやそりゃ新聞読んでたらさ……。むしろウタが知らなさすぎだな。まあ興味がなけりゃ覚えないか?」
「う、うん……」
「……まあそのうち読んでみな。元国王にでも頼んでさ。映像電伝虫だけじゃなくて世界の知識を広く入れること。視野を広げるのにいいよ。おっと」
のんびりとウタと話しているうちに、いつの間にか海賊団三つ巴の戦闘に入ってしまっていた。
目の前で有名な技の数々を見られるの、U○Jのアトラクションかな? 俺の小学生男子の心と厨二の心が、生で一味を見られることにめちゃくちゃ興奮している……!
ウオーーッ魚人空手! JET
このように、ありがたいことに〝麦わらの一味〟が守ってくれているため(ちょっとファン心が感極まった)、俺とウタは安全圏のはずだったが、流れ弾? 流れ攻撃? が飛んできたため、つい〝武装色の覇気〟を纏わせた拳で払ってしまった。それにオーブンがピクリと反応する。
「!? あの歌手、今覇気を使ったぞ」
「おっと気にしないで。海を渡ってツアーするのには必須だっただけさ」
さすがにそちらまで遠征してライブするとなると、覇気を身につけて自己防衛おじさんにならざるを得なかったのだ。
けどまあ実際、俺の覇気はそんな質の高いものじゃあないし。
「──はーい、そこまで!! ルフィとみんな、守ってくれてありがとう。でも喧嘩はもうおしまい!」
ここで、海賊団三つ巴の戦場には場違いなほど明るい声と笑顔で、ウタが静止をかける。そしてそれこそ演説めいて〝平和で幸せな、楽しいこといっぱいの世界での暮らし〟を説き始めた。
まあ当然、海賊たちがそれを聞き分けるはずもなく──始まるのは、ウタの〝私は最強〟にのせたチートプレイ。鎧を纏った戦士姿に変身し、五線譜で海賊たちの動きを封じ、そのまま上空に張り付けて、〝私は最強〟の譜面を作り上げる。あの譜面が〝私は最強〟の譜面だって初見で分かったやついる? 俺は小説版でやっと気づいた。
しかし何とも鮮やか。後方腕組み彼氏面にもなるってもんだ。あ、ウタが「すげぇ強くなったな」ってルフィに言われて嬉しそう。後方腕組み彼氏面終了。主人公には勝てなかったよ……。
憎き海賊を鮮やかな手腕で拘束したウタに称賛が贈られ、ウタも当然のようにそれに応える。平和になったから安心してね、ふむ。……おいたわしや兄上。違うウタ上。
「ここでみんなに嬉しいお知らせがあります!」
\な〜〜に〜〜!?/
「いつもの配信ライブは眠くなっちゃうからすぐ終わっちゃうけど、今回のライブはエンドレス! 永遠に続けちゃうよ! そう、みんなとずっと一緒にいられるってこと!
本当は1人でやるつもりだったんだけど……ミラが来てくれたから、みんな絶対退屈なんてしないよね!?」
どう、と歓声がさらに大きくなる。ウタコールの他にミラコールまで聴こえてきて、それは素直にありがたいし嬉しいため、手を振って応える。
それにしてもエンドレス、永遠。うむ、知ってた。先輩、今永遠って……?
それはさておき、肝心なのはウタの能力。配信ライブではすぐに眠くなると言っていたが、実際、能力の範囲によって削られる体力の多寡が決まるのかそうでないのか、結局そこは分からずじまいだったんだよな。
ウタはすっかり忘れているようだが、あいつは今ネズキノコを口にしないままステージに出ているはずだ。能力範囲をエレジアに限定しているわけでもなし、どこまで持つかは彼女の体力次第なんだが……。
続いてウタが、海賊、海軍、世界政府たちにライブの邪魔をしないよう映像電伝虫を通して発信する。
そう、ここで少々無視できない要素がある。
海軍と世界政府の動向だ。俺は別に
ウタがああは言ったものの、彼女が能力を発動させた時点でこっちに向かっているだろうし。
まあ俺は用意周到なので、コビー見つけて根回しをしておいたんだけどな。
『ウタの能力は止められないが、革命を起こす気もない。むしろ邪魔をしに行くので、
──嘘は言ってない、と判断されたと思うが、さて。
「私は新時代を作る女、ウタ! 歌でみんなを幸せにするの!」
「ウタぁ、高らかに宣言してるところ申し訳ないんだけど、
「ちょっ……もう何なのぉ!?」
「そりゃお前、いくら万能でも
……よしサンキュー……あーあー、聞こえますかー。準備いいですかー」
『ライブスタッフとバンドメンバー一同、準備完了してます』
「OK。じゃあ海賊が捕まったところで
「あっこら、勝手に〜! もう! ……まあ、いいんだけど。観客のみんなも楽しんでくれてるみたいだし」
それに、この世界にいる以上、私に勝てるわけはないんだし。と呟いたのを聞き逃さなかった
それはどうかな!? カン☆コーン、と脳内で鳴り響いたがそれはまあ後々で。ていうかついさっき
「ウタが〝最強〟か。それなら私はこうだな。──〝歌〟にされた海賊の皆々様も、
確かに
片目を閉じてニヤリと笑うと、客の歓声と共にイントロが始まり、髪色と衣装を〝ゴ〜〜ジャス〟仕様にチェンジ。やっぱり
この外見変化の仕組みは簡単で、〝ナツナツ〟の能力で自分自身に『この衣装を着た/この髪色だった=この外見だった過去の幻』を投影するだけだ。ホログラムもどきとして、演出用によく使う。ものすごく便利だ……俺がなぜこの実を食べたのかわかる気がする……気のせいか……。
まあ単純に、投影できる幻というのはホログラムと効果としては実質同じだろう、知らんけど。
──It's me あたし高くつく女
永遠てちょっと物足りない
先回りご機嫌取りもNO
お、ウタめ、ちょっとむっとしたな。わかりやすい。
歌詞だよ歌詞、めくじら立てるな。まあもちろん対抗でセトリ組んだんだけど。歌合戦だって言ってるだろ!
──ちやほや あたしが歩けば
みんなそれを見るのが大好き
それにつけても ちょっと一言いいかしら?
能力を発動しながら歌って舞えば、花が降る、星が降る。愛をもっと、全部ちょうだい、と歌って手を差し出せば、観客が思い思いにポーズを作ったハートが形を成して、掲げた俺の手に吸い込まれる。
色とりどりのレーザーライトが煌めき、水面に映り、まるで蜃気楼、それは真昼の夢心地。
──誰と見る 薔薇と星 真昼の夢
──このONE PIECE世界で俺が確立した〝銀河の妖精〟像は、そのまま〝歌のカリスマ〟である。侵略者から世界を守る〝戦士〟とは性質が異なるが、しかし自分の歌で勇気と希望、前に進む力を与えることのできる〝英雄〟性のもの。
一方で〝世界の歌姫〟のカリスマは〝辛い世界から救い給う救世主〟性に少なからず担保されている。暴力、貧困、世界に溢れる辛い現実からの逃避を赦し、受け入れる。力を持たない民の心の拠り所。
だからこそ、大衆の願いの器になり得たのは、大衆が共に夢を見たいと託しているのは、
だが、それを俺は許さない。最初に彼女に
そして、〝平和で自由な世界でずっと一緒に〟と彼女は言った。その〝新時代〟とも、絶対に相容れない。
俺だって、自分が愛した〝希望と浪漫に満ちた美しき
平成コソコソ噂話
回想時の歌詞について:作者の中で、令和もその先も、ずっと存続してほしかったボーカルユニット第1位だそうですよ
SS作者の黒ひげ「全然話が!! 進まねえ!!!」
すみません……すみません……遅くとも週一ペースでできるよう頑張ってますので……