FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】 作:空吉
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「シャンクスー! 覇気の使い方おせーて! 25年磨き上げた職人技!」
赤髪海賊団が入り浸っているマキノさんの酒場に駆け込んで、騒いでいるクルーの間隙を縫い、真っ昼間からカウンターで酒を飲んでいたシャンクスに近づく。
それから隣の席に飛びついて、さーつきちゃーん、あーそーぼ! と誘うような気軽さで頼んでみたのが冒頭のセリフであった。
ちなみにルフィはいない。曰く〝シャンクスとは絶交中〟とのこと。あれか、ウタの件でシャンクスと喧嘩したのがまだ後を引いてるんだな。まあ好都合っちゃ好都合だ。
が、声をかけた途端に、がっしゃん!! と食器やグラスが割れたりぶつかったりする音が酒場のあちこちから響く。おい、その弁償しっかりさせたるからな。シャンクスも思い切りワインを噴いている。きちゃない。
「は、覇気ィ!? お前それどこで聞いてきた」
25年には突っ込まないのか。
「見れば解る、お前の強さ。懸賞金10億越えの賞金首だな? その覇気、練り上げられている。至高の領域に近い」
「……」
「あああ冗談だよォ! 武器に手をかけないでください!
まあ、だから覇気の使い方教えてほしいんだけど。あと見れば強さがわかるのはまあ本当。正直シャンクスはわかり辛いんだけど、ベックマンとか他のクルーの人は大体見えるし、離れたところから気配も分かるよ」
俺の今世の体ほんとすごいんだよな、元々見聞色持ちとかさ……覚えてないだけで神様転生だったのかな……。
「……嘘じゃないようだな。戦闘勘でもあるだろうが、〝見聞色〟が使えるのか? 驚いた。天賦の才能ってやつか」
「ままま、自慢じゃあないけど、
別に王の資質はないだろうから〝覇王色〟は扱えないと思うけど、できれば〝武装色〟の方はなんとかしたいな。……いつかウタに会いにいくために」
今度はシャンクスどころか赤髪海賊団全員が黙っちまった。マキノさんも心配そうにこちらを見ている。仕方がないな、と俺は持っていた新聞を広げてみせた。
「〝エレジア壊滅〟の記事は読んだ。元々の〝音楽の国エレジア〟のことも、〝トットムジカ〟の伝承も知ってる。本で読んだから。
それらから推測するに、ウタが〝トットムジカ〟を目覚めさせてしまい、エレジアが壊滅。その罪を赤髪海賊団が被ったから、ウタを残して出航せざるを得なかった、ってところでしょう」
まあ本当は原作知識だけど。
ここまで詰めてやると、ようやっとシャンクスがため息をついた。ちらりとマキノさんに目配せをする。するとマキノさんは心得たように、何も言わずに酒場の奥へと引っ込んだ。
……え? 今の何?
俺がちょっと動揺してる間に、シャンクスはカウンターの椅子に深く座り直して、俺と正面から向き合ってくれた。
この人はルフィのことをよく子供とからかって遊んでいるし、原作者直々に〝大人気ない〟と言われているが、案外こう、淡々と詰めてくる俺のような〝子供〟にはきちんと向き合おうとしてくれる。ベックマンなんかはルフィにもちゃんとわかるように話をしてくれるんだけどな。
……赤髪海賊団、実は子供相手でもある程度〝対等〟に扱ってくれる度は高いのではないか? とちょっと考えたりもする。海賊は自由だ〜とか無責任に吹き込んだり、ろくでなしなところもあるが、そこは海賊なのでまあ。
何にしても、今の俺にはありがたいことだ、と思う。
「……〝エレジア〟をウタに教えたのはおれだ。……連れていかなければ良かったのかと、思うこともある」
「それは違うよシャンクス、ウタもエレジアには前から興味持ってたの。でもそれ、
「お前が?」
「少し前にね、昔は
フーシャ村に来てから音楽から遠ざかってたんだけど、ウタが歌ってるのを聞いて本当に感動した。まさかあんな素敵な歌手にこんなところで出会えると思わなかったから。
ウタならきっと、エレジアでもトップクラスの歌手になれるって言った」
「……そうか。だがそれでも、お前が話したせいだけじゃない。ウタはちゃんと、エレジアで歌うことを楽しんでいた。
……事故同然だった。ウタは何も悪くない。俺たちは仲間の門出を祝った。置いてくることを、俺たち皆で決めたんだ」
「知ってる。ウタの気持ちやみんなの覚悟まで
でも、
だから教えてくれと、頭を下げて乞うた。
シャンクスは目を閉じて眉間を揉むと、深く深くため息をついて、「わかった」と言ってくれた。
「教えられるのは、俺たちがこの村にいる間だけだ。本来なら、習得には長期間の鍛錬がいる。……時間もあまりないからな、厳しくいくぞ」
「望むところ。──ありがとうございます。よろしくお願いします」
居住まいを正して、しっかりと礼儀を通す。そして、空気が弛緩した。シャンクスたちは苦笑しながら、とりあえず割れた食器の当座の片付けを始めた。
「あ、でもさシャンクス、ウタの将来を思ってのこととはいえ、ひとりでエレジアに残したのはやっぱりちょっと悪手だったと思うんよね。バギー……さん、あたりに預けてくれば良かったのに」
「……お前、本当によく知ってるなァ」
「伊達に新聞を隅から隅まで読んでないよ(しれっ)」
よし、とりあえず上手いこと覇気とかの知識元は誤魔化せたな! ……多分。
「大丈夫だよシャンクス。
──遠い記憶。
というわけで、俺はシャンクスに〝覇気〟の扱い方を教わった。だから友達というよりも、師弟関係というのが正確だと思う。そんでシャンクスだけじゃなくて、ベックマンとかヤソップあたりも〝覇気〟を始めとした戦闘の師と仰ぎ、よく指導してもらったのを覚えている。
頂上戦争後、ルフィがレイリーさんに色々と鍛えてもらった、ああいう感じの。なんとも贅沢だと思ったものだ。……とんでもねえスパルタだったが。今でもちょっとトラウマじみてるんだよな。
オーダー通り〝武装色〟もちろっと使えるようになったが、うん。覇気って確か命の危機に至る程の極限状態で目覚めるとか聞いてた気がするんだが? 目覚めたということはつまり??
まあ結局今に至るまで、彼らほど戦闘ができたり、覇気を上手く扱えている自信はないままなんだけど。
あとは、そうだな。彼らとは……罪を共有した相手かな。〝共犯者〟と名がつくような関係というほど、俺はともかく、シャンクスたちは悪くはなかったと思うがね。
──ずっとそばにいたかった 音楽も聞こえない
あなたから遠ざかる 蒼い 蒼い 蒼い旅路
◆◆◆
──持ってけ 流星散らしてデイト
ココで稀有なファイト エクスタシー焦がしてよ
歌う。
──わたしあなたのうさぎのWhite
跳ねて飛び込む無邪気なグライド
ねえあのキャンディスター食べたいな♪
歌う。
──サヨナラを抱きしめて 愛しさを抱きしめて
君への思いで世界 埋め尽くしたい
歌う。
ライブは終わらない。歌は途切れない。ウタが言う通り今のところエンドレス。彼女、少しも疲れる様子を見せないんだが、アドレナリン出てんのか?
まあ映画と違って俺と交互に歌ってる分休憩は出来ているのも、多少なりとも影響はありそうだが。
そんな今ウタは音符のフロートに乗って飛び回りながら、観客たちに食べ物や飲み物、果てにはぬいぐるみやら娯楽品、嗜好品の類まで観客に提供していた。
……細かいこって。〝みんな〟に楽しんでほしい、幸せになってほしいという気持ちは嘘ではないのだ。その発露の形が歪んでしまっただけで。
「あ、ミラ、こっち乗って! 操作は自分でできるようにしといたから!」
「うおっ何何何」
そんな折、突然ウタが乗るのとは違うフロートが降りてきて、俺を掬い上げると同時に空中に連れ去られ、ウタの後を付いて移動する。
「ルフィ! みんな! 楽しんでる?」
あ、なるほどね。ルフィたちのところか。気遣いの鬼? まあ久しぶりに3人揃いたいという気持ちもあったのだとは思うが。
音符フロートから滑り降りたウタに続いて、俺も同様に着地し、笑顔で手を振ってみせる。
「こんにちは、皆さん。ええと、ナミさん、ロビンさん、ゾロさん、サンジさん、ウソップさん、チョッパーさん、フランキーさん、ジンベエさん、それに〝ソウルキング〟ブルックさん! お噂はかねがね。お会いできて光栄です」
「はひ!! プリンセス・ウタとミラ様!!」
「なんと、私のことを〝ソウルキング〟としてまでご存じとは。嬉しい限りです」
俺、ウソップからは様付けになるのか。まあブランディングとしては成功か? ちなみにブルックはデビューから引退までガチで音楽シーンを引っ張っていたからな、業界でもそりゃ有名だ。
俺が手を差し出すと、皆ほとんど快く握手を交わしてくれた。ゾロは快くとはいかなかったけど、笑顔でちょっと粘ったら折れてくれた。優しい。その後サンジと喧嘩していた。
「ミラ、本当によく知ってるね。……この人たちもやっぱり有名人?」
「そりゃあもう」
「ふーん……。あ、みんな、ここはどう? 気に入ってくれた?」
サンジとチョッパーは天国のようなところだと、楽しいことだらけだとウタに笑いかける。ウタも楽しんでもらえてよかったと笑うと、何やらコソコソとルフィに詰め寄っていった。俺はその間に正直気になっていたサンジの鍋の方へ寄っていく。
「良い香りだね。美味しそう。差し支えなければ、私も一口だけもらってもいい? ライブ中でなければ一皿ってお願いしたいところだったけど」
確信犯的に上目遣いでサンジに頼んでみると、途端にでろんとサンジの表情が溶けた。うーむ、この転生した体の美貌、便利。
「もちろんですレディ、どうぞ」
磨き上げられた小皿にひと掬い分差し出された。いただきます、と断ってから、ゆっくりと口に含み、味わって嚥下する。
──少量でもわかる、なんという幸福だ、美味すぎる。スピンオフ出るだけあるわな。そうでなくても一流コックとしての描写があれだけあるのだから。WCI編のウェディングケーキも食べてみたかったなあ〜〜ッ!!
それにしても、いやはや。
「うん、最高。夢だったんだよね、あなたの料理をいただくの。本当にありがとう、またひとつ夢が叶った」
サンジが少し不思議そうな顔をした。まあこればっかりは言葉の意味が分かるまい。なんせ前世からの憧れだったのだ。
ファンなら一度は食べてみたいと思うだろう? サンジの料理。俺!! この世界に生まれてよかったァ!!! 美味すぎてブルックになったわね(何もかかってない)。 感動もひとしおだ。
「また機会があればいくらでもお作りしますよ」
「それはありがたい。──機会が巡ってくることを祈るよ」
ご馳走様でした、と小皿を返す。元日本人として食前食後の挨拶が身についてて良かったと思う。食材と料理人への感謝は大事だからな。
さてそろそろかなと思った途端、案の定「俺が183連勝中だ!!」というルフィの大声が聞こえて振り向く。ナミの「勝負って?」という質問に、ウタが昔ルフィと腕相撲やナイフ投げなどの色々なゲームで勝負したことを話している。
俺が「勝負って?」と訊かれていたら間違いなく「ああ!」って反射で答えてたから、訊かれなくて良かった。
「今日の種目はこれにしよう、チキンレース!! ミラ、カウントやって!」
「これカウントいるゲームだった????」
俺の言葉が聞こえているのかいないのか、ウタは上空でコースにローストチキン、ついでに牛を作り出し、ルフィとスタンバイしてしまった。仕方がないのでフロートに乗って、カウントをかける。
「はい、じゃあ3カウントで始めまーす。3、2、1」
グッドラック! の掛け声と共に2人はチキンの皿を跳ね上げる。
ちなみに俺は某RTAイベントキャラクターちゃんの
ルフィは流石に大食いなので序盤からリードしているが、うう、手加減してんなぁ……。お前直前にあんな漫画肉ばかすか食べといてローストチキンに手間取るわけねえもん……。幼馴染……。
そこでウタが巨大ジョッキに入ったジュースを渡し、ルフィが飲んでいる間にチキンを詰め込み退避。そしてルフィは牛に跳ね飛ばされる、と。
はいタイマーストップでーす、
「あ、海はマズイ」
というウソップの声を通り過ぎ、海に落ちそうになったルフィをフロートで即追いかけてTシャツの襟元を上手くキャッチ。「ぐえっ」と声がしたがまあ許せ。
「ありがとな〜ミラ……」
「お安い御用ってもんよ」
ルフィを抱えて升席に戻ると、麦わらのクルーたちが心なしか安堵した表情を見せた。絆……。
まあ能力者は海水に濡れないに越したことはないし、落ちたら流石に危ないからな。
「海ポチャはさすがにマズイよウタ、ルフィだって悪魔の実の能力者なんだから」
「そうだった、ごめんごめん」
「もう一回だ!」と喚いているルフィを地面に降ろし、「出た、負け惜しみ〜」と手をにぎにぎしているウタをしっかり目に焼き付けたところで、「
「早くない? ライブはまだまだ続くんだから、もうちょっと話していけばいいのに。ミラもルフィとは久しぶりでしょ?」
「まあ、そうなんだけど……私はフーシャ村を出る時にちゃんとルフィと話してから行ったからさ」
暗にウタはそうじゃないだろうと伝えると、む、と口を尖らせる。結われた髪が心なしか下がったな。気分で髪の毛が上下するのもマクロスなんだよな……と考えたのを思い出した。
それにさ、とウタに近づいてこそりと耳打ち。
「お前本当に体力保つか?
「……あっ!? 嘘、そういえば……待って、どうしてどこにもないの!?」
うん? やはりネズキノコ食べてないのか。それにしては体力の消耗がさほど見られないのが気になったが……。
まあ言うても2人の歌手が歌ってそろそろ3時間と考えれば、通常の──ここでは現代日本の、という意味だ──歌手の単独ライブ換算としても時間は短いが。
「くく、残念。計画を知ってるって言ったろ〜? むざむざ食わせるかっての。
ま、せいぜい体力温存しときなよ。〝ウタワールド〟の維持も大変だろ? 代わりに歌っててやるからさ」
そう言ってマイクを手に離れようとしたのだが、ウタは冷や汗をかいたり口をぱくぱくさせたり、目に見えて動揺している。
予想外の事態に弱すぎるな……いやまあ過去を考えれば当然なんだけど……。仕方ない。
「……こらっ、そんな不安な顔しない! 動揺を態度に出さない! 観客に不安が移るだろ!」
ぺちん。と軽くデコピンをお見舞いしてやると、「痛っ」とウタが額を抑えて、こちらを見上げた。
「まず落ち着け。ここは
……あとな。大衆の思いを受け止めるのはエンターテイナーの役割のひとつだが、そのためにエンターテイナーやってるんじゃあない。
本当のことを言えば、ウタには考え直してほしい。歌合戦を仕掛けた理由の一つがそれだ。しかし、ウタにもどうしたって譲れないものはあるはずなのだ。
だから今の時点で俺ができることは、歌手というエンターテイナーとして、
「仮にも〝歌姫〟名乗ってるんなら、いずれは解るようになりなよ。
「どんな形であれ、これからも……」
ウタが硬い表情のまま俯く。ふうと息をついて、フロートに戻る。が、そこから動く前に、振り向いて麦わらの一味に笑いかけた。
「せっかくのプレミアムシートだ、
照明スタッフに合図し、一旦照明を落とさせ、俺にだけスポットを当てさせる。
「さて、今日は随分ガンガン歌ってきたからね。ここらでちょっと趣向を変えよう。ライブはまだまだ続くそうだからね」
ヒールを鳴らして拍子をとって、タイミングを合わせて、1.2.3。そしてイントロ。
わっと観客が沸いたのが分かった。反応を確認して少し笑みを浮かべながら、それまでとは声の調子を変えて歌う。
──〝放課後オーバーフロウ〟。放課後って通じるんか? という問題は置いといて、もちろんこの後にくるだろうウタとの訣別、〝逆光〟に対抗した選曲。ウタが
あとは、まあ。単純にルフィにもウタにも、大切な人に置いて行かれたやつには効果的面じゃあないか? とね。
歌は、聴いた人によって受け取るものが違うと思う。本来ならこの歌にも当然原作があって、その文脈に沿っているが、この世界ではその原作が存在しないため通常のポップソングに聞こえるだろう。
だけど俺は、その〝文脈〟に〝メッセージ〟を込められる。そうすると、気持ちが乗る。気持ちが乗ると、伝わりやすくなる。
だからどうか、と願うだけはタダだ。
──君はとても優しいから 痛みを自分に置きかえる
支え演じるうち本当になって
弱さに傷ついても きっと何も言わないんだね
◆◆◆
「ミラってあんな風にも歌えるんだ……」
「さすが〝銀河の妖精〟、表現が多彩なのね」
「ヨホホホ、まさか有名な歌姫ふたりの歌声が一度のフェスでどちらも聴けるとは。長生きはしてみるものです。私、耳ないんですけど」
ナミとロビン、ブルックが感心したようにミラの歌声に聞き入っている。チョッパーとウソップはペンライトを振りながらすっかりライブに没入している。
「……ルフィ、ミラっていつ村を出たの」
「ん? そうだな〜、たしか……シャンクスがフーシャ村を出てすぐくらいだったか? ちょうど来てたじいちゃんを頼ってた気がすんな」
「そうなんだ……」
ミラのパフォーマンスから目を離さないまま、ウタの髪がへにょりと力を失って垂れる。明らかにテンションが下がったウタに、ルフィは首を傾げた。
「……じゃあ、さっきのチキンレース、私が勝ったんだから教えてよね。シャンクスはどこ? その麦わら帽子どうしたの?」
「どこにいるかなんて知らねェよ。帽子は預かってるだけだ」
「あ、ねえ、そういえば、ミラとウタ、ルフィってどこで知り合ったの? 幼馴染なんでしょ?」
思い出したように、ナミが振り向いて尋ねてきた。
それに対してルフィが「こいつはフーシャ村にシャンクスたちと一緒に来てたんだ」と彼らの過去を語り始める。12年前の思い出を。
◆◆◆
歌い終わって来てみたら空気が若干お通夜。主にウタ。何? この空気。
「あら、おかえりミラ」
「素敵だったわよー!」
「ありがとうナミさんロビンさん、光栄です。……何したのウタ」
「…………ルフィが、海賊王になりたいって話。他のみんなも仲間ってことは、海賊なんだね。ミラが知ってたのもそういうこと?」
ソンンンン……(某蘆屋並感)。戻ってくるタイミングが悪かった。いや良かったのか? 映画の根幹とも言える名シーンに遅れなかったと言えばまあ……。
「まあね。
「……ミラは海賊、嫌いじゃないんだね」
「人によるね、そんなものは。ルフィたちみたいな海賊は好きだけど、嫌いな海賊もいる。それは海軍の奴らだとしても同じだよ。好きな海兵もいるけど心底嫌いなやつもいる。一括りってわけにはいかない」
「…………そっか」
俯きがちだったウタが、強張ったままの顔を上げ、ルフィを真っ直ぐ見つめた。
「ねえルフィ、海賊やめなよ」
ウオーーーーーッ!!!!!!!!
名場面(?)につい内心叫んでしまったが、普通にそんな状況ではない。ウタの言葉を聞いていた一味のメンバーが驚いて彼女に視線を向ける。
「一緒にここで楽しく暮らそう! お友達も私のファンなんでしょ? みんなでいた方が楽しいよね!?」
そんな無理に作ったような表情と声で、ウタ自身、彼らを説得できると思っているはずがない。それでも言わざるを得ないのだ。
彼女は力を持たぬ民たちの、歌姫という名の〝救世主〟。〝海賊嫌いのウタ〟。──ファンを裏切ることはできない、優しい女の子のままだから。
そんな中で、ルフィはウタに何も言わずにすたすたと升席下の小船へと続く階段を降りていこうとした。ウタが聞いているのかと怒りながら後を追うが、ルフィはそんな彼女と、そして俺にもニッと歯を見せて笑いかける。
「飯も食ったし、おれサニー号に帰って寝るよ」
俺たちに久しぶりに会えたこと、夢を追いかけられていることを喜ぶと、じゃあなと挨拶をしてルフィは歩き去ろうとする。
──タンッ、とウタが苛立たしげに足を踏み鳴らした。
「──帰らせないよ。ルフィも、仲間のみんなも、それに──ミラだって、ここで私とずっと永遠に楽しく暮らすの」
「ウタ、あなたの歌は好きだけど──」
宥めようと声をかけたナミを有無を言わさず音符で吹き飛ばし、それを助けようと追いかけたサンジまでもが五線譜に磔にされる。
「みんな! 新しい海賊を見つけたよ!」
どうしよう!? と問えば、民衆から帰ってくるのはウタコール。彼女に賛同する民の声。
正直、俺には気持ちの良いものではない。彼女をそうして祭り上げ、自分達の偶像へと仕立て上げる。そのような機能を持った神ならばいざ知らず、彼女はただの歌が好きな女の子だった。──本当なら。
だけど彼女はその役割を、機能を受け入れてしまった。ネズキノコを食べていなくても、たとえ性格が凶暴化しなくても。その決意は決して翻らない。
照明が落ち、レーザーライトが明滅する。赤い照明が彼女を背後から照らし出す。流れ始めた曲に合わせてクラップを煽れば会場は呼応し、音符を集めればそれは兵士の形を作って、〝麦わらの一味〟を攻撃し始める。
そんな中で、ウタが俺に暗い声で問いかけた。
「ミラ、あなたは別に海賊じゃない。──でも、ルフィたちのことは好きなんだよね、海賊だとしても。
……邪魔をするなら、残念だけど容赦はできない。海賊たちみたいに、しばらく動けないようにする。〝新時代〟が完成するまで、ずっと一緒にいてもらうから」
ウタの表情が見えにくい。けれど笑顔ではない。
「今更それか?
ウタは何も言わずに、ヘッドセットのマイクと、背からは翼を顕現させた。
彼女は世界を作り変えようとしている。怒りに満ちたように見える表情で、赤い光を背にしたまま。
その曲の名は〝逆光〟──〝時代争奪歌合戦〟第二幕が、始まる。
名前:アルナスル・ミラ
年齢:22歳
誕生日:12月1日
星座:射手座
身長:171cm
出身地:〝東の海〟ゴア王国
異名:〝銀河の妖精〟
悪魔の実:ナツナツの実
一人称:地の文(内心)は〝俺〟、話す時は〝
↑めちゃくちゃブレてて見つけるたびに直していますが、気づいたらそっと教えていただくか脳内変換お願いします……
ちょっとだけランカ曲回。曲数が多いと調べるのも大変だった……