FILM RED時空に転生したから〝時代争奪歌合戦〟をやる【本編完結・番外編不定期更新】   作:空吉

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作中でウタの楽曲が歌詞ないのは、普通にみんな聞いてるし脳内再生も余裕だろうからいいかなって……。歌詞で文字数嵩むのも悩みどころになってしまう。
この作品内で知らない楽曲が出てきたら、よければ是非調べて聴いてほしいです。名曲しかないため。


第4話 VS〝逆光〟その②

 音符の兵士が、麦わらの一味を襲い続ける。ゾロが一太刀で切り伏せようが、ジンベエが魚人空手で吹き飛ばそうが、兵士は一時的に音符に戻ってもすぐにまた復活する。俺だったらこんな雑魚敵無限湧きはキレてるな。

 あ、俺の音符フロートいつの間にか消えてる。ちっ、あれ便利だったのに。

 ルフィは小船に乗って「すげェな〜」と何やら遊覧気分だが、フランキーが「楽しんでる場合かァ!」と怒鳴りながら次から次へと兵士たちを撃ち落としている。

 音符の兵士は一応俺にも狙いを定めては向かってこようとしているのだが、俺がそいつらに視線を向けると、力が抜けたように途端にへなへなと萎れて海へと落下していく。

 ついでに一味のサポートになるよう、目につくやつはあらかた落としているのだが、無限湧きのために大して力にはなってないな……。相性が悪いよー。

 

「それ、あなたの能力?」

 

「一応ね。超人系〝ナツナツの実〟の能力のひとつだ。()が対象と定めたものに、能力上昇効果(バフ)、もしくは能力低下効果(デバフ)を付与する」

 

ロビンに尋ねられ、秘密にすることでもないので解説をする。

 俺命名、〝懐古(平成)バフ〟と〝新時代デバフ〟だ。内容は簡単、俺が『汝は平成』と認識したやつにはバフを、逆に『汝は新時代』と認識したやつにはデバフを付与するだけ。なんとガバガバなのでしょう。付与の方法? ──お気づきになりましたか。

 そう、別に今のように『視線を向ける』だけではない。その方法は何でもいいが、俺が直接行うことが第一だ。

 そう、つまりは『声に能力を乗せて聴かせる』だけでもこのバフ&デバフは効果を発揮する。

 だから、最初に俺が先手を取って歌声を聞かせる必要があったんですね(メガトン構文)。

 ウタワールドに入ってからでももちろん効果はあるが、効果がバレた瞬間に全能になったウタに解除されたら困るじゃん?

 なので現状、このライブが始まった瞬間から、俺が勝手に『新時代産』と認識しているものたち──メタ的に言えば、ウタをはじめとしたFILM RED初出のモブを含めたキャラクターはデバフを受けているし、ルフィたち麦わらの一味を始めとした原作登場キャラクターは『懐古(平成)』認識のため、バフを盛られていることになる。俺以外は多分気づいていないがな。

 音符の兵士は紛うことなき〝新時代産〟だし、俺がそう認識したため、能力低下により力を失って墜落しているということだ。

 しかし、これって〝覚醒〟ってコト!? と思ったこともあるんだがどうなんだかね? ある時から急に基本能力である『過去の投影』以外に使えるようにはなったんだが。ただの能力の開花かな? 詳しくないから判断つかないんだよな。

 

「いっそ目からビームが出るとかなら分かりやすかったんだけど」

 

「それは……いらないんじゃない?」

 

「そう? 残念」

 

『真の英雄は眼で殺す』とかやってみたかったんだが。

 そんな会話を交わしているうちに、ウタが小船に乗ったルフィの前に降り立ち、その道を塞いでいた。そして言葉を紡ぐ。ルフィが海賊だからいけないのだと。

 

「私の友達なら、海賊は諦めて」

 

「何言ってんだおめェ──、……やっぱやめた。のらねェ。戦う理由がねェ」

 

一度戦闘態勢をとったが、すぐに気分ではないというように態勢を崩したルフィにウタの表情が歪んだ。

 

「あんたがやらなくても、私はやるよ」

 

〝逆光〟の曲が進むのに合わせ、音符の兵士たちは無限に増え、攻撃を仕掛けてくる。終わりがないのだ。さすがに能力使用にも限界が来る。それを見越したのか、ウタは対象を捕らえるための五線譜を枡席に向けてきた。

 迷ったが、能力で少々抵抗してみるか、と思い、麦わらの一味を守るよう先頭に出て、視線を向ける。

 が、なんと五線譜は俺の頭上を飛び越えて、なんとも器用に一味のメンバーだけを巻き取って上空に拘束してしまった。

 さすがに「ハァ!?」という某なんかちいさくてかわいいうさぎのような声が出る。素。

 それを見たルフィが怒り、何かを叫んでウタに近づこうとしているが、音楽にかき消されてしまい、さらには彼もレーザービームに貫かれて動きを止められ、一味の仲間達と同様に五線譜で運ばれ、ステージへと落とされる。

 

「ダメだよ。ルフィが海賊王になるのは」

 

 一曲歌う間に一味全員を拘束するという芸当をこなしてみせたウタが、「放せー!」と喚くルフィに暗い表情でそう告げる。そしてパッと表情を切り替えて「みんなはさァ! 海賊をどう思う!?」と観客に問いかけた。当然、返ってくるのは「海賊はいらない」「追い出せ」という声だ。思わず舌打ちが漏れる。

 おっと〝銀河の妖精〟のイメージに対して良くないな。反省。

 するとウタが、未だに音符の兵士に囲まれた升席にひとり立つ私を見つめて、挑戦的な表情で笑ってみせた。

 

「さあ、ミラも歌ってなんとかしてみせてよ。〝歌合戦〟なんだよね?」

 

「──いい顔になったじゃあないか。上等だ」

 

俺にターンを与えるとは、ウタめ、〝逆光〟入ってちょっと強気になったんか?

 ええい、こうなったら丹念に負けを認めさせて能力を解除させる方面に舵を切ってやる。〝わからせる〟って大事だよなあ!? まあ喧嘩を売ったのは俺なんですけど。

 空気がアウェーに偏ってはいるが、それを覆してこそ〝銀河の妖精〟の面目躍如というもの。

 

 ──マクロス曲で相手をすることも考えたが、〝逆光〟だってクラップしてたし、ここはガッチガチにクラップもコーレスもある曲を選択した。

 歌詞もタイトルも〝逆光〟と対照的なポジティヴなもの。

 かの〝銀河の妖精〟の名を借りる俺は、当然のようにマクロス曲を中心に歌い、代名詞としてもありがたいことに元祖(シェリル)の曲を挙げてもらうような活動をしてきたが、他の曲のレパートリーだって持っている。

 なぜならば、マクロス関連楽曲はアニメ関連音楽において大きな割合を占めるが、当然のことながら〝平成〟はマクロスのみにあらず。

 この曲は、規模の大きなフェスで歌ってもトリも務められるだろうポテンシャルのある曲だ。実際某夏のアニソンフェスでもトリ前にこれをやられて観客側としては嬉しい悲鳴を上げたものだ。

 歌っているアーティストだって、まあ……令和になってからだけど……社会現象アニメの主題歌で爆発的に知名度を獲得したのだ。それこそONE PIECE並に。

 この歌手が主題歌を担当したそのアニメの劇場版の興行収入だって、今後しばらくは抜かされないと思う。

 ……FILM REDが興収的にどこまで行くかわからんうちに死んじまったからあれだけど!!

 

 マイクを構えて、合図を出す。──ピアノの音から始まるイントロ。

 いくぞ観客、ブチ上がる準備は十分か。

 

 

──握ったメッセージ that's rising hope

 

 

〝Rising Hope〟──俺の声が瞬間的に広がった感覚を覚えた。ライトは赤から爽やかな蒼へ。よし、手応えがある。

 すかさずコールを煽り、その間に升席から思い切り跳躍し、ちょうど良い具合に音符の兵士が並んでいるのを足蹴に──ン゛ン゛、足場にして空中を駆け抜けて、上手(かみて)側スタンド席の観客の目の前でブレーキ。足元には当然()()()()()()兵士に簡易空中ステージになってもらう。

 

──揺るがない世界 非情な現状 続く壁は何重層?

イメージ通りなんかじゃない 静かに騒ぎだした本能

 

ここまで歌いながらクラップ。

 ──俺がおそらく『海賊側の味方なのか』と戸惑っていた観客もいたようだが、この曲のスピード感と、俺の促す演出で一気にライブに没頭させられたようだ。

 よし観客! それでいいッ! それがBEST!

 

──迷路みたい 行き止まりなんだ もう思考はディストーション

容赦ないね いつの間に 見失ったルート、暴れだす

 

──pay attention!

を合図に怒涛のコールタイム。いいぞーよーく叫べ。よし、フェスらしくなってきたな! 

 ステージ上の映像もスタッフが上手くやってくれているようだ。合わせて『過去の投影』も駆使し、立体映像的に、スモークや明滅するライト、空から降る白い星──そんなイメージをバラバラと撒き続ける。

 もちろん演出もあるが、観客と、できればウタの注意もなるべくこちらに逸らしておきたいのだ。

 

──視界まだ眩んでる それでも行かなくちゃ

キミが信じてる僕を裏切るわけにいかない 

強くクラクションが鳴る

 

ぐるっ、とメインステージの方を向いて、ビッとウタを指差す。一気に俺の色に塗り替えられたステージを呆気に取られたように見ていたようだ。

 ルフィは未だに、拘束を解こうとして芋虫のようにもぞもぞ動いている。うーん、デバフかかっててもウタワールドの支配は結構強いな〜。

 

──孤独なまま時が経ったって 逃げる事覚えたって

新しい今日が来ちゃうけど

 

音符の兵士を階段に足場から飛び降りて、中央ステージに着地。観客を見渡しながら、熱を込めて歌を届ける。

 フェスなんだから、音楽を楽しまないなんて嘘だもんな。ウタワールドに閉じ込められていることは──もちろん些事ではないが、この際は俺だって忘れていたいよ。

 なあウタ、お前はどうだろう? 歌を楽しむことは忘れてしまったか?

 

──この願い例え魔法が無くたって叶えなきゃ、誓った

僕はキミと まだ見たい未来 あるんだよ

泣きそうでも悔しくても止まっていられない

握ったメッセージ that's rising hope

 

拳を掲げて一瞬静止。go ahead!で振り下ろして再度コールを煽り、2番に入る。歌いながら花道を歩き、観客に手を振り、また中央ステージへ戻る。

 ちらりとメインステージに目をやる。あ、ルフィが解けないからとなんか転がり始めた。無理だって。そろそろかな?

 先程観客席の前で歌ったり見渡したりしながら見聞色で探り、見つけておいたバルトロメオを()()()、バフを盛る。相手が気づくように。……よし、俺に気づいたな。次にローとベポ。こっちも気づいた、OK。

 ウタにはわからない程度に、ジェスチャーでルフィを指す。やはりこのままではまずいと思っていたらしく、()()()()ルフィの救出に協力してくれるらしい。

 ここまで来たらもう大丈夫だな。

 

──聞いてよ 辿り着いた正解 言わなくちゃ

キミがくれる想いの全部を 信じていける

それが 嘘かどうかなんて わからなくてもいい

 

ここまで歌って、サビに入ったところで、舞台装置でスモークを段階的に流させ、薄く重ねて段々と濃くなっていくようにしていく。会場全体に行き渡らせて、ウタと観客の視界をなるべく奪う。

 俺の歌う声とライブサウンドだけが響いて、どことなく神秘的な雰囲気へと変化する。

 そしてラスサビに入ると同時、ウタに気づかれないようルフィにはバフを、ルフィを捕らえている五線譜が変化した拘束具にデバフをかけて緩めてやる。

 本当ならば上空に囚われている一味ごと助けてやりたいが、あれはルフィの拘束と違い〝ギミック付き〟のため、単純なデバフだけでは時間がかかりすぎるため断念した。

 ルフィが気づいたのか、不思議そうに拘束から抜け出した。瞬間にバルトロメオたちに合図して、ルフィを保護し、即〝シャンブルズ〟で会場から離れてもらう。──よし行ったな。あとはまず、俺が歌いきらなくては。

 

──僕の右手 キミの左手 そっと繋いで

握ったメッセージ that's rising hope

離さないから that's rising hope

 

アウトロまできっちりとパフォーマンスで引き付け、観客の大きな歓声を受ける。息をある程度整えて、スモークを止めさせながら、次の手の準備をする。

 

「──さて! そろそろみんなも疲れたんじゃないかな? ウタ、休憩はどうだろう。()はちょっといただいてくるよ」

 

「──はっ!? え、ううん、みんな疲れるはずは、だって──あっ、ルフィがいない!!」

 

ルフィの代わりに置かれていたのは大きな瓦礫──何者かがルフィを助けたのだ、ミラと協力して!

 

「他にも海賊が隠れてたのか……」

 

「あれ? そういえばステージにいた海賊は?」

 

「待って、ミラさんもいつの間にかいないわ」

 

観客たちが顔を見合わせる。ウタは無表情にただその場を眺めていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

バルトロメオとロー、ベポと共にライブ会場裏の水道橋に移動していたルフィは、こうなるまでの経緯を説明されていた。

 

「はー、ミラがそんなことやってたのか。あとでお礼言っとかないとな。トラ男もロメ男もありがとう!」

 

「ルフィ先輩のためならお安い御用だべ」

 

デレデレと照れながら頭をかくバルトロメオと対照的に、ローは「笑ってる場合じゃねえぞ、麦わら屋」と釘を刺した。

 

「ミラという歌手の能力も詳細はわからないが、俺たちは確かに助力を受けた。今は敵ではないと判断……するしかない。

 一方でウタの方の能力は見当がつかねえ。それを解き明かさない限りは……」

 

「任せろ、ウタには184連勝中だ!」

 

「あっ、いた!」

 

背後からウタの声がして、振り返ると彼女が音符のフロートに乗ってこちらを追いかけてきていた。

 

「一旦退くぞ」

 

その様子を見たローが素早く判断を下し、ベポを引きずって駆け出す。

 ルフィは最初こそウタにもう一度勝負を挑もうとしていたが、慌てたバルトロメオに回収されてそのまま運ばれていった。

 ウタはそれを見て、楽しそうに「海賊狩りをやろう!」と連れてきた観客達に促す。

 マーチングバンドの楽器を全て合体させたような不思議なフロートを先頭に、そのフロートから奏でられる演奏に合わせ、観客たちはぞろぞろとパレードめいて歩き始めた。

 

 その中に混ざっていたコビー、ヘルメッポ、ブルーノがこそこそと会話しながら作戦を考えている。

 俺はそーっと背後に近づいて、「コビーた・い・さ」と声をかける。

 近づいてきていたのが分かっていたのか、コビーとブルーノは驚いていないようだが、ヘルメッポだけちょっと驚いたようだ。見聞色鍛えろ。しかし振り向いたコビーも少し目を見張る。

 

「ミラさ……、コホン、どうしたんですかその格好」

 

「変装用投影。便利でしょ、特殊メイクで顔も変えた時のやつなの。

 経験しててよかったわ」

 

「なるほど……諜報任務にはうってつけですね。少し羨ましいくらいです」

 

「おいおい、こんなところにいていいのかよ。いくら姿変えられるからって……」

 

「ご心配なく、ヘルメッポ少佐。下手はうちませんので」

 

にっこり笑ってみせると、反論もないのかぐぬぬ……と顔を顰めている。

 

「用件はなんだ」

 

「おっとブルーノさん、こんにちは。ウォーターセブンでのライブの時はお世話になりました。

 用件も何も、戦力がご所望でしょ? あれ、お力になれると思いまして」

 

そう言って会場上空の、五線譜に貼り付けられた麦わらの一味をくいっと親指で示す。

 

「言いましたよね。〝世界政府〟の邪魔も〝海軍〟の邪魔も(多分)しないって。

 ()もウタにはこれ以上好きにさせたくはないし。何よりあそこに捕まってるのは幼馴染の仲間ですから、助けたいんです。

 力を合わせようじゃありませんか。ウタの能力の概要は()も知ってますし」

 

「……そうですね。戦力は多い方がいい。お願いします」

 

「交渉成立ですね」

 

隠れてそっと拳を合わせる。コビーはやってくれるけどヘルメッポとブルーノ、ノリ悪いな。相手は〝銀河の妖精〟だぞ? ブルーノなんかこれからマスコットキャラと化すくせに。

 

まあともかく、今後の方針を決めた俺たちは、誰にも気付かれないままそっとパレードを抜け出した。




◼️ナツナツの実の能力まとめ(ざっくり)
1.過去の幻を見せる/投影する。対象は問わない。
2.能力者が定めた新旧という基準により、対象にバフorデバフを付与する。


マクロス曲期待してた方はすみません! でもこれもいい曲なので知らなかったらぜひ聞いてほしいんじゃ。あとノーザンクロスとかオベリスクは「あのメドレー」に入ってるからいいシーンで使えそう……じゃん……!?
そしてその②なので少し短め。基本的に他の話も映画と特に変わりがない部分は端折ってます。
次話は一話に収めたいので長くなる……といいなあ……。
次回は土日に更新を予定しています。予定。
いつも閲覧、お気に入り、感想、評価、ここすきなど本当にありがとうございます! 作者のモチベです。今後もお付き合いくださるとめちゃくちゃありがたいです。完結まで頑張ります!
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