テンプレ神様転生TSチート能力持ち   作:いんやだ

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 遅れて申し訳ない。
 書いても書いても、納得のいくものが書けぬ。
 これで通算4度目の書き直しですが、納得はできないものの、それなりのものは書けたので投下します。

 そしてすぴばるの方が全然書けていないと言う絶望的な事実が…
 そして次も遅くなだろうと言う嫌な予言を残してしまうのだった。


じーくるーね5さい、ぜんせをおもいだしました

 私の名前はジークルーネ・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン。

 何の変哲もない5歳児をやって居る…とは言い難い生活を送っています。

 なぜなら、私ことジークルーネには前世の記憶が有るからだ。

 しかも男性だった時の記憶だ。

 ああそこ、いきなりなに言ってんだとか思わない。

 私だっていきなり前世とか言い出す人が居たら、確実に引く。

 しかも、前世が男性とか誰が得する話なのか。

 

 しかし、現実として私の前世は存在していたし、知識や記憶は引き継がれている。

 だが、生まれた当初からそれが存在していたわけではない。

 双子であり、姉であるベアトリスと遊んでいた時、頭をごっつんとぶつけ合った時だった。

 私が前世の記憶と、生と死の狭間で彼女達、マリィちゃんやレン君に、今世の姉であるベアトリスの前世の魂に出会った事を思い出したのは。

 

 そんな記憶が一気に思い出して、ただの5歳児だった私に耐えられる筈も無く、両親や姉さんに散々迷惑を掛けたのは記憶に新しい、というか、それが一月前なのだから当たり前だが。

 今でも思い出したくない醜態をさらしたが、それも1週間で終わり、記憶の引き継ぎは何とか無事終了した。

 無事とはいっても、それは皆のお蔭であり、異端な存在となった私を受け入れてくれた皆には、感謝してもしたりない。

 そして、前世の記憶を引き継いだと言っても、今世のジークルーネが居なくなったかと言えばそうでもない。

 今世のジークルーネ同様、今の私も両親や姉さんを大好きだし愛している。

 ジークルーネの性格も、今の私に少なくない影響を与えている。

 まあ、簡単に言えば、高度な域で私達は融合しており、今のジークルーネは全く新しいジークルーネと言えなくもないだろう。

 と言っても、前世の記憶が有るだけで、何か特殊な力があるわけではないが。

 

 そうそう、特殊な力と言えば、私にあるわけではないが、私の家は少し特殊な力を持っている。

 聞いて驚いてほしい。

 

――なんと私の、私達の両親は、魔法使いなのだ!

 

 この事を前世の記憶騒動から立ち直った当初、その事を再認識し、驚き喜んだものだ。

 今世の今迄の私は、ずっと魔法使いの教育を受けていたため、驚きや感動と言った感情は全くなかった。

 当然だ。

 それがそれまでの私の常識なのに、どうやって気分の高揚を覚えると言うのだ。

 だが、それも記憶を引き継ぐ前の事。

 それが果たされた今、世界の神秘に触れ、感動すら味わっている。

 

 いや、いたと言う方が正しいか。

 記憶を引き継いで一カ月、初心者用の杖を持たされて半年。

 すっかり魔法使いとして落ち零れとなった私の物語が幕を開ける。

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 さて、この世界に魔法がある、という事を知った私だったが、その才能は限りなく低かった。

 ああいや、恐らく才能はあるのだろう。

 何故なら、双子である姉さん、ベアトリスは初心者用の杖を貰って半月で初級も初級の火を灯す魔法を使えたのだ。

 だと言うのなら、私にもある筈。

 と言うか、あって欲しい。

 念の為、両親に連れられ、専門の医者に診てもらったが、障害のようなものは確認されなかった。

 

 恐らく、これは私に問題があるのだろう。

 何故なら、私は魔力というものが、どういうものなのか全くもって解らないからだ。

 いや、この例えは少し違うか。

 魔力というものが掴めない、と言ったらいいだろうか。

 

「プラクテ ビギ・ナル アールデスカット(火よ灯れ)!」

 

 母さん監督の元、何度も試行するが、やはり何も出ない。

 何度も試すうちに魔法が、魔力というものが掴めると言うらしいのだが、何度初級魔法を唱えても、さっぱり出来なかった。

 もう何か月も試しているが、小さな火が付く気配がない。

 

「ほら、ルーネ。こうだよ、こう!ボワァーって感じ!」

 

 姉さんも、私に何とか魔力の使い方を教えようとしているのだが、5歳児の言語力では伝わるものも伝わらない。

 両親も、もしもこのまま魔法を使えないとしたら、医療関係の魔法のプロを呼んで長期治療に移るか、それとも、魔力とは別のアプローチ、自身の内から生じるが故に、魔法発動体も必要とせず、それなりに安易に使える、しかし魔力と反発する“気”へと移行するべきか。

 或いは、魔法そのものから離れて、娘の将来の為に魔法とは無縁の道を歩ませるか、と話していた。

 

 魔法という、自分達の人生そのものから遠ざけると言う決断。

 継いで欲しいだろう想いを堪え、私の為に道を探ってくれている今世の両親には、本当に頭が下がる思いだ。

 

 そんな両親の為にも、一生懸命伝えようとしている姉さんの為にも、あと、実は魔法を使ってみたい自分の為にも、早く魔法を使えるようにならなくては。

 

 そも、魔力とはなんなのか。

 簡単に答えるならば、自然に漂い、万物に宿るエネルギー。

 それを私たち人間は体に取り込み、魔法発動体=杖を使い、自己の精神力と才能でもって魔法を使う。

 

 だが、自然のエネルギー?体に取り込む?

 そんなもの、どう自覚しろと言うのだ。

 前世、そんなものとは無縁で過ごしてきた。

 幼少時はそう言った漫画やアニメなどに夢中になりはしたが、大きくなるにつれ、そう言ったものとも疎遠となって行った。

 子供の柔軟な頭なら比較的難易度が低くなる筈だと、確か医者が言っていたような気もするが、生憎とそれは私の場合は当て嵌まらない。

 子供の脳が柔軟なのは、物事を知らないからだ。

 そこに様々な知識と体験、色々なものを詰め込むことで、一人の大人としての価値観が出来上がっていく。

 そして私はと言えば、一月前に前世の二十数年分の知識と体験を持った私という存在が上乗せされて、5歳分しか持っていなかったジークルーネの価値観を固めてしまったのだ。

 

 要は固定概念に振り回されず、自由な発想を出来る子供の思考は期待できないと言う事だ。

 前世でも、私はそれほど器用な方ではなかったし。

 

 そこまで考え、はたと気が付いた。

 

――私という存在はどういったモノだったか。

 

 私の前世は男で、融通が利かず不器用で、しかし、何故か前回のベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンの最終決戦の記憶を不完全ながら持っている。

 そしてその時、私は魔導の最高峰とも言うべき術理に、触れていなかったか。

 

 そう、カール・クラフト=メルクリウスが編み出した、永劫破壊(エイヴィヒカイト)に。

 

 なら話は簡単だ。

 私は不器用だが、体験したものならばマネ程度は出来る。

 エイヴィヒカイトを使うつもりで、魔法というものを体験すれば、なんれ掴めるだろう。

 私とて前世は男であり、こう、バーンとかドカーンみたいな派手な魔法の一つも使ってみたいと、幼少の時に思ったこともあった。

 そんな、子供の頃の夢が実現できるかもしれないのだ、魔法を使いたいと言う気持ちも解るだろう。

 それに、魔法には攻撃魔法だけじゃなく、回復魔法や防御魔法に、補助魔法まであると言うのだ。

 そういったモノもまた、前世で成人した私が求めてやまなかったものでもあった。

 もしもあの時、魔法が使えていたら、どれだけの人を諦めずに助けられただろうか。

 そんな詮無い事を、何度思ったことか。

 

 とまれ、これが成功すれば、私もまた、魔法という神秘を扱う事が出来る。

 周りから自己を切り取り、記憶に埋没していく。

 思い出すのは歴戦の勇士達。

 その中に居た(ベアトリス)

 思い出せ。

 あの時はどんな想いを抱いていたのか。

 思い出せ。

 あの時はどんな感覚で使っていたのか。

 思い出せ。

 エイヴィヒカイトとは一体どういったものだったのか。

 

 完璧な再現は無理でも、劣化でも模倣は出来る筈だ。

 無理な筈はない。

 何故なら、この身、この魂が覚えているのだから。

 

 次第にその術式の全体像が見え始め、その細部が見え始めた。

 さあ、いざ魔法を行使し――

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 掴んだと、そう思った瞬間、私は真っ暗闇な場所で居た。

 そこは本当に何もなく、私はその空間に上下も無く漂い、茫洋とした意識のまま佇んでいた。

 

「此処、は?」

 

 その問いに答える者は無く、私の声は暗闇に吸い込まれ消えた。

 直前に何をしていたか思い出そうとして、顎に手を当てて考えようとした時、不自然なまで長い腕に気が付いた。

 

「…ん?」

 

 私の体は5歳児のものであるから、こんなに大きくはなかった筈だ。

 だが、だからといって前世の私のようにごつごつとした男然としたそれではなく、柔らかい少女然としたそれであった。

 一体どうしてと視線を下していくと、

 

「ひゃぁっ!?」

 

 寝ぼけた頭が一気に覚醒した。

 

「な、なな何で裸!?」

 

 しかも体は成長している訳だから、おおよそ15~18歳くらいの、前世と今世の狭間で見たベアトリス程に成長した裸体があった。

 程よく成長した胸と、下半身に生えている金の毛を見た瞬間、両手を使って体を隠す。

 だが、咄嗟に胸と下半身を腕で隠しても、当然隠しきれるわけも無く、要所要所が見えてしまっている。

 

「ああもうっ、なんでこんな事に」

 

 羞恥で頬が赤くなるのを感じながらぼやいていると、何処かからか堪え切れないと言った感じの嫌な感じの笑い声が聞こえてきた。

 その声を、何処か聞いたことがあると思ったが、何時、何処で聞いたかは思い出せない。

 

「…誰だか知らないけど、趣味が悪いですよ」

 

 自然、拗ねたような声音になるのは仕方ないだろう。

 

『ああ、すまないね。あまりにも君が“らしい”ものでね』

 

 声は四方から聞こえてきており、何処に居るかは掴めない。

 姿も探しても何処にもおらず、闇が広がり続けるばかりだ。

 

「人と接するときは正面から、相手の目を見て話すのが基本的な礼儀だと習わなかったんですか?」

 

『…くくっ、あぁ、確かにそれが礼儀だ。だが、既に君の正面に居るのだが、どうしたものかね』

 

 声の主はそう言ったが、正面を見ても誰も居ない。

 いや、丁度成人男性を覆えるほど少しだけ闇が深くなっている場所がある。

 そこを注視して、姿をなんとか見ようと試みたが、

 

「――つっ」

 

 一瞬だけ何処かで見た事のある男性の姿が見えたが、それも一瞬の事、すぐに闇に覆われて見えなくなってしまった。

 それと同時に激しい頭痛と、鋭い痛みが眼球を襲い、これ以上見ようとすることを断念する。

 まるで、決して見てはならない深淵に潜むものを見てしまったかのような感覚。

 

『ご覧のザマでね。女神の治世から弾かれた影響か、残念ながら、君の目を見て話すと言う事が出来ぬのだよ。すまないね』

 

 少しもすまなそうか声音ではないが、少なくとも目を見て話すと言う事は出来ないのだから、仕方ないと思う事にしよう。

 それに私自身、失礼な話だが、彼?を直視したいとは思えなかったから余計にそう思ったのだろう。

 なぜなら、ただ存在しているだけというのに、不吉と解ってしまう。

 関わってはいけないと否応なしに解ってしまう。

 例えるなら、致死量を超えた水銀。

 それが間近に存在するが如し。

 

『つれないな。私は君に感謝をしているからこそ、こうして止めに入ったと言うのに』

 

「止めに入った?」

 

 心を読まれた動揺よりも、変な言い回しに困惑する。

 そこでふと思い出す。

 私が此処に居る前、魔法の練習をしていて、そして永劫破壊の術式を模倣しようとしていて――

 

『まったく、君には驚かされる』

 

 目の前の存在は苦笑と共に呟く。

 

『いくら君のようなある種イレギュラーな魂と言えど、いきなりあのような愚行。さすがの私も焦らされたとも。もう少し止めるのが遅かったならば、君は死んでいただろう』

 

「なっ!?」

 

 まさかそんなに危険な行為だったのか。

 

『然り。アレはそこらの凡百が造ったような魔術ではなく、この私、カール・クラフト=メルクリウスが考案し、作成した秘法なのだから。生半可なものでは最初の位階ですら発狂死するだろうよ。魔力を扱うなどと言った目的で使おうとするなど論外も論外だ』

 

「くっ」

 

 自分がいかに危険な事をしていたのか、説教付きで教えられ、しかし反論することも出来ず呻く。

 

『まったく、君には借りがある故、死んでもらっては困ると言うのに』

 

「借り?」

 

『あぁ、そうだとも。我等が女神を救う一因となった事、私は忘れることなどあり得ぬとも』

 

 …その一言で、目の前の存在が誰だか理解した。

 サン・ジェルマン、パラケルスス、トリスメギストス等、数多の名前を持ち、私自身が模倣しようとした術式の考案者。

 カール・クラフト=メルクリウス。

 女神の信奉者にして、それ以外を破滅へと(いざな)う水銀の王。そして超越に双頭の蛇(カドゥケウス)

 

 私の前世が死した後、回顧していた記憶の中で語りかけてきた誰か。

 最悪の悪神を相手に、女神(マリィちゃん)を守ろうと力を振るっていた3柱の覇道の神が1柱。

 私がマリィちゃんに起こされていた時に聞こえてきた力を貸すと言っていた声の主。

 

 なるほど、確かに借りというのなら解ったが、それで安心して気を許す、という気が起きないのは、やはり目の前の見えない人物が不審者すぎるからか。

 ともあれ、借りというならこれで十分返してもらった。

 これで用事もないだろう。

 

『何を言うのかね。この程度で返しきれるものではない。それに、君にはちゃんと贈り物も用意している。受け取って貰わねば、私が困るのだよ』

 

 何故だろう。

 ただ贈り物があると言われただけなのに、その言葉にゾクリと背筋が凍えた。

 

『少し早いが、受け取ってくれたまえ。君の想いを形にするための一つ目の贈り物(・・・)を』

 

 そう言った正面の闇が何かを取りだした。

 それは、巨大な剣だった。

 現実世界の私とは違う、今現在の私がほとんど隠れてしまうほどの大きさの、140㎝以上はあるだろう長大な剣。

 ただし、装飾の類は欠け、刃の部分も罅が入ったりと酷い有様だった。

 にもかかわらず、不思議と錆びたりはしておらず何処か幻想的な雰囲気を感じさせ、ボロボロの様相を呈している今もまだ、担い手を待っている様に見える。

 

『さあ、受け取るがいい。まだ君は役者としては2流どころか3流も良い所だが、まだまだ君も若輩の身。今後に期待するとしよう』

 

 声の主はそう言うと、その剣を私の胸の内に突き刺す。

 いや違う。

 その長大な剣は、徐々に私の内へと吸い込まれていく。

 

『強くなりたまえ。でなければ、君の業が君を喰らい尽くすことになるだろう』

 

 得体のしれない何かが私の中に入って行く感触に、体が痺れた様に動かせなくなり、それを見守る事しかできなかった。

 そして大きく古い幻想的な大剣は、たっぷりと私を苦しめた後完全に消え去った。

 

「ぁ、っぅ」

 

 消え去った後も私を苦しめる違和感。

 それに、呻くように耐えていると、

 

『もう一つ、君に贈り物があるのだが、そちらはまだ準備が整っていなくてね。すまないが、もう少しだけ我慢しておくれ』

 

「…っ、い、らない。私は貴方からの贈り物なんて、何一つとしていらない」

 

 強烈な嫌な予感を感じた私は、それを拒絶するが、目の前の闇はそれを笑って否定する。

 

『あぁ、誤魔化さなくてもいい。私は君の生前の記憶を知っている。何に憧れ、何に絶望し、本当は何を望んでいたのかを。君自身も知らない願いを、私だけは知っているとも』

 

 さも私の理解者と言った体で語りかける目の前の闇に、苛立ちが増すが、文句を言いたくても剣を体に入れられた所為か、徐々に意識が薄れてきた。

 

『では、いずれまた会おう。次に会うときは、君から私に合う事を望んだときだろう』

 

「…絶対に思わない」

 

 薄れ行く意識の中、せめてもの仕返しとして、それだけは言い返した。

 だが、目の前の闇は苦笑するだけにとどまった。

 

『これは嫌われたものだ。だが、予言しよう。君の業が、必ず私を呼び、頼ることになるだろう』

 

『――では、一時の別れだ。君の道に女神の祝福が有らんことを。我が教えの最後の薫陶者にして、我が女神を信奉する同胞、可憐な■■■■■■■よ。何故君がその姿なのか、それは君の魂の原型がそれ(ヴァルキュリア)なのだと言う事を、努々忘れぬよう』

 

 その言葉を最後に、カール・クラフトは消え去り、私の意識も消え去った。

 いつか私を殺すだろうその祝福(呪い)を残して。

 最後に告げた名前(魔名)に対して、反論する事さえできずに。

 

 私が目覚めた数か月後、日本の冬木市という土地で酷い災害があった事を、私は知らなかった

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 目覚めるとそこは私達の寝床で、自分のベットの上で私は眠っていた。

 どうしてここに居るか解らず、直前まで何をしていたか考えるが、普通に魔法の練習をしていたとしか思い出せなかった。

 もしかして、熱中するあまり倒れたのだろうか。

 そこまで考え、ふと人の気配を感じた。

 

「すぅー」

 

 横を見ると、姉さんが私のベットに腰かけるようにして眠っていた。

 恐らく、寝ている私に遠慮してベットの中に入ってこなかったのだろう。

 苦笑して頭を撫でると、嬉しそうに顔を緩める様を見て、本当の笑みが浮かぶ。

 それにより、先ほど見た胸糞の悪い夢の残照が解けていくのを感じる。

 本当、私には過ぎた家族だよな。

 

 それはそれとして。

 

「…これが魔力」

 

 私の体内を廻るなにがしかのエネルギー、それを私は感じていた。

 何故これが感じられるのかと言う疑問は、あの声を思い出すだけで解ってしまった。

 きっと、カール・クラフトが原因だろう。

 恩とかなんか言っていたが、不吉な予感しか感じさせない。

 胸にそっと手を当てる。

 何かが入っている気配はしないが、あの馬鹿でかい剣はきっと私の中にあるのだろう。

 今後、気を付けなければならない。

 

 大きなため息を吐くと、姉さんも目覚めが近いのかむずがるように呻いて体を揺する。

 うむむ、こんな体勢で寝ていたら体を悪くしてしまう。

 だからと言う訳でもないが、起こそうと姉さんの体を揺すろうと肩に手を置く。

 だが、

 

「んぅ、るーねぇ」

 

 私の手を潜り抜け、布団の中へと潜り込み、私の体をガッチリとホールドしてさらなる眠りに入ったのだった。

 

「ば、ばかな」

 

 あり得ない光景に目を疑う。

 まさか察知して掻い潜っただと!?

 実は目を覚ましているのかと疑ったが、寝た振りという感じはしない。

 嬉しそうに顔を緩ませる光景を見せられると、可愛いなぁという気持ちが先行して、引きはがせなくなってしまう。

 仮にも惚れた相手と同じ顔で、今は姉妹なのだ。

 無碍に扱えないのはお察しである。

 抱き着かれ、動けずにいると、まあいいかななんて気分になってくるのは、相手が姉さんだからだろう。

 抱き着かれながら体から力を抜いていると、ガチャリとドアが開き、母さんが入ってきた。

 

「……」

 

「……」

 

 目と目が合い、状況を理解したのか、母さんは苦笑して一言。

 

「お父さーーん!ルーネが目を覚ましたわよーー!」

 

 いきなりの大音量で叫ばれ、私は驚きで硬直し、父さんも母さんの声で駆け付け、部屋に辿り着くなり、

 

「ルーーーネーーーー!」

 

 母さん以上の声で叫び私の傍に寄ってきた。

 私はいきなりの事に目を白黒していて、まったく状況に対応できない。

 

「大丈夫かい?どこか痛いところは?気持ち悪かったりしないかい?」

 

 余程心配なのか、体のあちこちを触られながら質問をされる。

 それを母さんはさりげなく退かしながらも質問してくる。

 

「お父さんったら、ルーネが驚いて硬直しちゃってるわよ?ところでルーネ、喉乾いてない?お腹は空いてない?何処か辛い所が合ったら言ってね?」

 

「…えっと、ごめんなさい。一体何が?」

 

 こうまで心配されているのだから、余程の事があったに違いない。

 聞けば、私は魔法の練習中、突然大量の魔力を放出した後、倒れたのだそうだ。

 

「それはもう驚いたわ。突然倒れてちゃったんですもの」

 

 表現はオブラートに包んでいるが、実際は白目向いて泡吹いて倒れたそうだ。

 しかも、あれから丸一日、私は眠っていたらしい。

 それは、心配にもなるだろう。

 姉さんも泣きながら付きっ切りで看病をしていたと言うし、私が下手くそな所為で、本当に頭が下がる思いだ。

 

「お医者様に見せても、急激に膨大な魔力を使ったことによる身体の疲労と、精神力の過度の消耗による気絶だって事しか解らなかったんだ」

 

 大丈夫だって医者に言われたが、それでも凄く心配したと言われた。

 父さんも、仕事を中断してまで駆け付けてくれたそうだ。

 

「けど、無事で良かった」

 

 そう言って、安堵の表情で両親は私を抱きしめてくれた。

 その事に私は泣きそうなくらい、嬉しかった。

 そして再度実感する。

 私は彼女(マリィちゃん)のお蔭で、こうして喜びを感じることが出来るのだと。

 彼女への感謝の気持ちが高まった時、ドクンと体の奥底で何かが鼓動した気がした。

 

 ところで、姉さんはよくこんなに騒いでも起きないね。

 

「それでねルーネ。私達二人で話し合ったんだけど、魔法から離れましょう?」

 

「――え?」

 

 姉さんに向かっていた意識が、一気に引き戻される。

 

「ルーネが私達の為に気を使ってくれているのは解っているの」

 

「確かに、ルーネが僕達の後を継いでくれると思うと嬉しい。けど、道はそれだけじゃないんだよ。ルーネには、もっと広い視野で多くの道があるってことを、知ってほしいんだ」

 

「ルーネはきっと、それしか道は無いって思ってる節があるわよね?」

 

「―――」

 

 両親の言葉に返す言葉が出ない。

 どう答えたらいいか分からないからではなくて、図星を指されたからだ。

 私は、将来大きくなったら前世のように慈善団体に所属し、覚えた魔法によって活動の幅を広げると、そう考えて、いや違う。

 そう思考を停止していたのだ。

 

 前世の道を踏襲する。

 聞こえはそれなりに良いが、結局はそれは楽な道を行っていると言う事に他ならない。

 だって、既知は楽だろう?

 それに、悠久の風という慈善団体に所属している父さんの後を追えば、恩を返すような行為になるだろうし。

 そうなれば一石二鳥だと、心の中で思ったことは無いだろうか。

 

「少し、考える時間を下さい」

 

 だから私が辛うじて言えたのは、それだけだった。

 分かったよと告げて、言葉通り時間を与えてくれるのか、2人は慰めるように私の頭を撫でた後、母さんは何故かウインクをし、父さんは苦笑をした後、部屋を出て行った。

 

「――――はぁ」

 

 少しして、盛大なため息を吐く。

 結局、今迄、前世今世も含めて、私は何も考えてなかったのだろう。

 そのツケが、今ここで形になった、それだけなのだ。

 どうしようか、そう考えても、私には全く考えもつかなかった。

 だって、今までそうやって生きてきたのだから、そう生きていくのが私にとっての当たり前だったのだから。

 

 とそこで、すぐ隣からジーッと私を見てくる視線を感じた。

 驚きで思わずビクリと体が反射的に跳ねる。

 姉さん、目を覚ましていたのか。

 もしかして、二人はそれに気付いていて、あんな動作をしたのだろうか。

 

「―――」

 

「―――」

 

 無言の時間が続く。

 姉さんの事だから、私が目を覚ましたのなら、飛び起きて抱き着くくらいの事をしそうだと思ったのだけど、予想に反し、真摯な瞳で、何かを見極めようと私を見つめてくる。

 私は、今だけはその純粋な視線に耐えられない。

 自分が無知で、何より知った後も動こうとしない愚か者と知ってしまった故に。

 

 そう、あろうことか、そんな事を思い知った後でさえ、前世の道を歩むことを諦めるどころか、更なる意欲がふつふつと湧き上ってきているのだから始末に負えない。

 こんな愚か者、本当は家族に顔を合わせることさえ烏滸がましい。

 

「――あの」

 

 俯き、必死に何かを言おうと考えながら言葉を探していると、不意に頭を撫でられる。

 

「もう、しょうがないなぁルーネは」

 

 顔を上げると、そこには5歳とは思えないほどの理性の輝きを持った瞳が、優しく私を見つめていた。

 

「大丈夫、貴女がどんな道を選んだとしても、私がその道を光で照らして、決して迷わないよう切り開くから」

 

「っ」

 

 息を飲む。

 まさか、そんな奇跡と言葉に出来ずに呆然としていると、

 

「だからね、どんな道を選んでも良いのよ。貴女がその道を誇りに思っているのなら、迷う事なんてないんだから」

 

 そう言って、まるで子供にそうするように撫でられ、私はそれに身を委ねるように目を瞑る。

 あぁ、この人がそう言ってくれるなら、私は迷わず胸を張って、この道を進むことが出来るだろう。

 

 ありがとうと礼を言う為に目を開けると、そこには先ほどまでと同じように眠っている姉さんがいた。

 それに苦笑して、ありえない邂逅に感謝する。

 寝ている姉さんを見ていたら、一日中寝ていたにもかかわらず、眠気が襲ってきた。

 きっと、もう二度と会う事は無いだろうと確信しながら、夜に眠れなくなることを心配しながらも我慢できず私も姉さんに習って横になる。

 恐らく、起きたらきっとこの事を姉さんは覚えていないだろう。

 

 今はこの陽だまりと、ありえない出会いの機会を作ってくれた彼女(マリィちゃん)に感謝して、今だけは夢の事も悩みを忘れ、この瞬間だけは幼い子供のように眠りにつくのだった。

 何もかもを融かしてくれる午後の光に、身を委ねながら。




 今更ながら、Fateの桜ルートが劇場版でやっほう!
 自分自身、Fateではセイバールートが一番好きなんですが、桜ルートはもちろん、凛ルートも大好きです。
 やっぱり3ルート揃ってこそのFateなわけでして、劇場版とはいえ、桜ルートが映像化されると分かった時はよっしゃあという掛け声と共にガッツポーズしてました。
 凛ルートも初映像化されるみたいだから、本当にうれしい限りです。

 え、凛ルートの劇場版?
 なんですかそれ?

 と言うのは冗談ですが、映像自体は悪くなかったんですが、やっぱり時間と予算が無さすぎたのが一番の敗因なのでしょうね。
 色々な描写を省かざるを得なかったのが痛かった。
 桜ルートは別けてでもいいから、丁寧に描写してほしい。
 円盤買うから。
 兎も角、今から映像化が楽しみすぎる。

 あ、あと、戒兄さんは出ません。
 出たら彼がキルヒアイゼン姉妹を落とす話になってしまうから。
 中の人的にも、原型となった人的にも戒兄さんのような人が好きですからね。
 姉妹丼など、させんよ。
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