テンプレ神様転生TSチート能力持ち   作:いんやだ

4 / 7
 アッチの方がちょっと詰まったのでこっちを先に投稿しますん。
 いやはや、お喋りな主人公なのに、嫌いな奴が相手だから喋らない喋らない。
 ホント書き難いったらないね。
 あ、あとオリ設定が多数存在しますので注意。

 どうでもいいけど、序盤も序盤だけど、このSSの主人公がKKKに行ったらどうなるか考えてみた。

1、母禮ブースト
 母禮さんの攻守ともにパワーアップ。
 そしてヴァルキュリア成分の増加。
 やったね紫織ちゃん、余計に厄介になるよ!

2、夜都賀波岐の一人になる。
 その特殊性からか、他の夜都賀波岐女性陣よりも対話は可能。
 でも、だからこそ厄介な相手になることは必至。
 むしろ宿儺と一緒で、主人公勢を見極めようとします。
 この場合、もう一人誰か主人公勢に与しないとヤバイ。
 それか竜胆姐さんが超苦労することになる。
 姐さん相手だから切ったはったはしないけどね。
 慎重に答えないとぶった斬られるよ!
 怖いね、前人類って。

 なんて書いても書く気はないと言う。
 ならなんで書いたというツッコミは無しで。

 そして何故か相州戦神館學園八命陣のオリ主を考えてたりしていた。
 こっちはTSとか無しで完全な女オリ主。
 そしてキーラ様と鋼牙勢救出要因。
 その生まれの特殊性故に水希よりも精神的な脆弱さ?が目立つ。
 立ち位置は戦神館側。

 こっちも書く気はない。
 ここで書いてすっきりしたかっただけ。
 反省はしてない。
 むしろ設定やらなんやら教えるから誰か書いてくれ。


閑話的なもの

 そこを一言で表すなら、地獄だった。

 

 大きな火災があったのだろう、見渡す限りの家々は焼け落ち、人間だったものの塊が炭化した姿でそこら中に転がっていた。

 ここで動くものは居ない筈だが、そこら中から怨嗟の声が聞こえてきそうな光景だった。

 まるで現代に現れた地獄。

 ここではある意味、全てに平等があった。

 それは何もかもが終わっていると言う意味で。

 

 だが猛威を振るった火災も下火となり、火災の影響で雨雲が発生し、もうすぐこの地獄も終わるのだろう。

 そう、生存者がいないままで。

 

―――いや、ただ一人だけまだ動く者が居た。

 

 それは年端もいかぬ少年で、この地獄を見ればこの少年がどれだけの幸運の元ここまで歩いてきたのかわかるだろう。

 だが、今にも倒れそうな足取りであり、体中にある火傷を見れば、その少年がどれだけの地獄を歩いてきたか一端でも垣間見える。

 

 だが、その幸運もこれで終わり。

 少年は足をもつれさせ、仰向けに倒れる。

 体力も気力も尽きたのか、少年はそのまま起き上がることは無い。

 だがこれも当然の結果だ。

 誰もが死に絶えたこの地で、ここまで歩いて来れただけでも奇跡だったのだから。

 だからこの少年も、当然の結果として周りと同じ死者となる、ただそれだけの事。

 

 死にゆくだけの少年は今にも降り出しそうな雨雲を見て、ただ空っぽになった心で、空が遠いなあと、ただそれだけを思った。

 そして最後に天へと手を伸ばすと、そのまま誰にも看取られることなくその生を終える、筈だった。

 その手が掴まれるまでは。

 

―――その顔を覚えている。

 

 少年の手を掴んだ男は、何度も良かったと、ありがとうと、そう呟きながら涙を流しながら笑顔で生存者がいることを喜んでいる。

 

―――助かったのはこちらなのに、まるで救われたのは自分なのだと、目に涙をためて喜ぶその顔を。

 

―――そして思ったのだ、何時か自分も彼のように笑えるのなら、それはどんなに救われるのではと。

 

 霞む視界で少年が見えたのはそこまで。

 ここまで生き抜いた代償として空っぽになってしまった心に、その男の笑顔が染み込み、少年の心に根ざした。

 

 だからその先にあった事を少年は知らないし、きっと知ったとしてもどうしようもなかっただろう。

 少年は治療のしようも無いほどの致命傷を負っており、男の技量では治療は不可能だった。

 そして、事態は一刻を争った。

 だから男は藁に縋るしかなかった。

 例えそれが、自身にとって致命的なものなのだと分かっていても。

 どんなに愚かな選択なのだとしても。

 

 そして男は少年を助けた。

 代償として、男は余命幾許もなくなった、ただそれだけのお話。

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 少年が目を覚ますと、そこは病院だった。

 一瞬、何故自分がそこに居るか解らない様子だったが、自身の状態と周りの何処か安堵に満ちた空気から、此処が病院であり、あの大火災は終わり、自身が助かったのだと実感した。

 

 とはいえ、少年も助かりはしても、やはり怪我の影響があるからか、しばらくは入院生活となったが。

 

 少年が目を覚ましたことに気が付いた看護師が、医者を連れてきて、2,3簡単な質問をした後、後日検査をすることになった。

 というのもこの少年、命が助かった代わりに、自分の名前以外が無くなってしまったらしい。

 

 その際、あの地区で助かったのは少年だけだと、そう言われた。

 それは無事を祝う言葉であったが、少年には言葉の刃となっただろう。

 何故なら、あの地獄を生き抜くと言う事は、他者を見捨てると言う事に他ならないのだから。

 助けてと手を伸ばす誰かを見捨て、この子だけでもと言った誰かの言葉を無視して歩いた。

 でなければ、今頃きっと、その彼等と同じようにあの日、あの時に無残に倒れていただろうから。

 

 質問を終えた後、やはり疲労が溜まっているのだろう、うとうとしていると、医者に横になるよう勧められた。

 勧められるまま横になり、しばらくそのまま眠気に身を任せていると、少年が眠ったと判断したのだろう、少し離れた場所で医師と女性の看護師が周りに配慮しながら小声で話し始めた。

 

「この子の両親もやはり――」

 

「はい、遺体も見つけられ――」

 

 聞こえて来るのは断片的だったが、それでも聞こえる言葉はあった。

 

 

 

――――両親?

 

 

 

 

 

       何だそれは――――

 

 

 

 

 

 それからも少しだけ2人の話は続いたようだが、疲労と眠気に負けたのか、話を聞くことなく眠りに落ちた。

 

 それからしばらく経って、ようやく傷も癒え、子供ながらにこれからの事を心配し始めた時、一人の男が少年の元を訪ねてきた。

 

 

「こんにちは、君が士郎君だね。突然だけど、孤児院に引き取られるのと、知らないおじさんに引き取られるの、どっちがいいかな?」

 

 突然そんなことを言いだした男は、僅かな期待を乗せて少年を見る。

 少年はその視線を受け、僅かに考えた後、男に付いて行くと告げた。

 どうせどちらも知らない場所だと考えたのだろう。

 或いは、その男だったから付いていったのかもしれない。

 

 少年が付いていくと決めた途端、男は喜ぶと、荷物を纏めだした。

 男はそう言った作業をしたことが無いのか、もしくは苦手なのか、ぐちゃぐちゃにバックへと無理やり押し込んでいく。

 そうして無理矢理詰め込んだ後に、男は少年、士郎に向かって。

 

「そうだ、大切なことを言い忘れてた。うちに来る前に、一つだけ教えなきゃいけないことがあるんだ」

 

 まるで何でもない事を告げるように、それこそ今夜の夕食を告げるような気軽さで男は言った。

 

「――実はね、僕は魔法使いなんだ」

 

 男は笑顔でそんな夢想じみたことを堂々とした態度で言う。

 化学が発展したこの世の中で、確かに世界で魔法じみた事は増えていった。

 だが、それを他者に言えば笑われるだけだろう。

 けど、士郎は純粋に子供の心で瞳を輝かせながら信じると。

 

「うわ、爺さん凄いな」

 

 それから士郎は男、衛宮切嗣に引き取られ、衛宮士郎になった。

 血は繋がってはいない養子だったけど、それでも彼等は家族となったのだ。

 

 そしてここからが本題。

 衛宮切嗣は、本当の意味で魔法使いだったのだ。

 そして士郎も魔法に憧れてか、それとも魔法を扱う切嗣に憧れてか、弟子入りを志願した。

 当然、切嗣も快諾、はしなかった。

 むしろ士郎が関わらないようそれを拒絶した。

 

 だが士郎も頑固なもので、何度も頼み込み、ようやく切嗣が折れたのが士郎を引き取って2年後の事だった。

 それから暫くして、士郎がこの生活に慣れたと判断したのか、切嗣は外出することが多くなった。

 外出と言っても近所じゃなく、国内全体や海外と言った広範囲にわたってだ。

 子供一人残して飛び回るのは通常では考えられないが、お隣が少し変わっているため、安心?して出掛けられたのだろう。

 そして帰ってきた際には、士郎に旅の話をして楽しませていた。

 

 だが、それも数年後には無くなった。

 

―――それは月の綺麗な夜だった。

 

 頻繁に出掛けていた切嗣も最近では何をするでもなく家にいるようになり、何処へ行くでもなくぼんやりと過ごすことが多くなった。

 それをまるで死期を悟った老人のようだと、士郎はその時気付くことが出来なかった。

 

―――俺と切嗣は何をするでもなく、ただぼんやりと月を眺めていた。

 

 その日の冬木は時期的に冬にも拘らず気温はそう低くなく、少し肌寒かったが、けれど月見をするには確かに良い夜だった。

 彼等は何をするでもなく、本当の親子のように隣り合って座っている。

 

「子供の頃、僕は正義の味方に憧れていた」

 

―――俺にとって正義の味方そのものだった切嗣は、それを否定するようにそんな言葉を零した。

 

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」

 

 それを否定するために士郎は怒ってでも言い返した。

 だけどそれは切嗣を困らせるだけだった。

 なぜなら、その事実は、彼にとって何度も何度も確認してきた認めがたい事実だったのだから。

 

「うん、残念ながら、ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ。そんなこと、もっと早くに気が付けばよかった」

 

―――切嗣がそういうのなら、きっとそれはそう言うものなのだろうと納得した。

 

「そっか、それじゃあしょうがないな」

 

「そうだね。本当に、しょうがない」

 

―――だから、俺の答えはとっくに決まっていた。

 

「しょうがないから、俺が代わりになってやるよ。爺さんは大人だから無理だけど、俺なら大丈夫だろ」

 

 この日、この時に、衛宮士郎の人生は決定した。

 

「任せろって、爺さんの夢は俺が―――」

 

 形にしてやっから、とそれを聞くまでもないという風に、切嗣は笑って。

 

「ああ―――安心した」

 

 そう言って、切嗣は眠るように息を引き取った。

 それが本当に眠っているかのようだったからだろう、士郎は騒ぎ立てることはせず、ただ切嗣を見つめて涙を流した。

 それは泣き声も無く、悲しみもなかったが、それでも士郎は月が無くなるまでただただ一人、泣き続けたのだった。

 

 切嗣を失った士郎はしかし、立ち止まっている暇などないと一人立ち上がった。

 そう、道は果てしなく遠く、どこがゴールかも解らないのだから、立ち止まっていては辿り着けないと思ったのだろう。

 正義の味方になる、それを叶える責務をただ一人抱えて、見果てぬ理想(ユメ)へと。

 

―――だって覚えているのだ。

   誰も助からなかった、自分さえ助けられなかった地獄の中。

   たった一人だけその願いを叶えてくれたその人の笑顔を。

   その笑顔に報いる為にも決して立ち止まらず、その果てまで歩いていこうと誓った。

   例えそれが、破滅へと進む道だとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『素晴らしい!』

 

 それを遥か高みから見下ろしている者が居た。

 その男は拍手喝采を挙げて、眼下の光景を祝福していた。

 

『ああ、なんと美しい光景か。たった一人助けられた無力な子供が、助けた親の理想を追って成長する姿。これぞまさに王道。これぞまさに絆。その道が決して優しくない事も、生涯を賭しても辿り着けるか解らない事も知っていよう。だが、それでも追い求める。いいや、追い求めなければならない。なぜなら、それだけが彼に残された救いの道なのだから。他の道を探すには、少年はあまりにも失いすぎた』

 

 その男にとって、衛宮切嗣の死も、衛宮士郎の成長の為の布石でしかない。

 正義の味方という愚者の道を歩ませるためだけの役割を持った駒だ。

 

『確かに、人によっては少年の生き方は愚かに見えるだろう。だが、賢しらに生きた所でなんになる。その生は本当に輝いていると言えるだろうか。否、賢者の生き方もただ目を逸らしているにすぎぬ。ただただ己を偽るだけの毎日に何を見いだせる。己が願いから目を背けて、一体どんな道を魅せると言うのだ』

 

 脚本はこの男であり、演者は既に決まっている。

 悪役も、彼女を覚醒させるに丁度良い塵芥がある。

 昔、男が廃棄した残り滓とそれに従う者達だが、役には立つだろう。

 だからただの駒である衛宮切嗣には早々に退場してもらわねば、脚本そのものが狂ってしまいかねない。

 これは女神の為の物語。

 いつか女神に侍る戦乙女の物語。

 

『さあ、その調子で彼女にも魅せておくれ。君の願いを。君の想いを。その為に君を■■■のだから』

 

 そして男が少年に与えた役割は少年にもできる程単純だ。

 いや、単純だが、それでも少年にしか出来ない重要な役割だ。

 

『彼女を愛し、彼女を憎め。彼女を守り、彼女を壊せ。なぜなら君は、彼女に送る英雄(エインフェリア)なのだから』

 

 最後に男は切嗣を見下ろし。

 

『ああ、これだけは訂正させてくれ。アレの因子を排除する一因を担った事、それだけは君を評価しよう。安心したまえ。ここは女神の世。前世界ではない故、来世は期待すると良い。きっと、君が報われると信じているよ』

 

 彼と彼女が出会う日は、まだ遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麻帆良学園の理事長であり関東魔法協会の理事である近衛近衛門は、目の前で報告を受けた部下の前で、危うく深いため息を吐いてしまう所だった。

 威厳を保つべき立場である近衛門がそんな醜態を晒しては、その後の部下との連携に問題が生じる。

 さらに言うならば、人の口に戸は立てられぬとも言う。

 これが関西にまで飛び火すれば、外交上の不利益ともなるだろう。

 さらにさらに言うならば、目の前の私情を交えまくりながら報告をする部下に対しての苛立ちも含まれていたが。

 

 だが、その他諸々を合わせても尚上回る溜息の元凶が、今目の前に居る部下に報告させている事柄だ。

 

「――で、ですね。やはりあの男、『衛宮切嗣』は我等の手で裁くべきだと思った訳です。あのような悪を為した愚物を放っておくのは危険です。死んでしまったのはしょうがないですが、やはりこの手で」

 

「のう」

 

「さば、はい、なんでしょうか」

 

 我慢に我慢を重ねて聞いていたが、近衛門の我慢は限界を突破してしまった。

 

「もう報告は充分じゃ」

 

「は?いえ、ですがまだ半分も、っ」

 

「聞こえなかったかのう。直ちに報告を終了して、退室しなさい」

 

 近衛門から放たれる重圧に、この好々爺にしか見えない老人が、関東最強の魔法使いなのだと、男は思い出し、言われた通りに報告を終了して慌てて退室した。

 

「ふぅっ」

 

 男が退室した後、近衛門は深いため息を吐いた。

 人事の見直しを真剣に検討しなければならないと眉間を揉む。

 

「ほう、随分と憂いを帯びた溜息を吐くではないか。ジジイ、貴様の身内に不幸でもあったか?」

 

 何処から出てきたのか、小柄な女の子が腰まである金の髪を靡かせながら突如として現れた。

 それに近衛門は咎めるような視線を送る。

 

「くくく、なんだジジイ。見られて恥ずかしい年でもあるまい」

 

 何処までも優雅に、客用の椅子に座りながら近衛門をからかう少女。

 

「…年に付いてお主に言われたくないがのう。それにの、お主は表向き、魔法を使えぬと言うことになっておるんじゃ。このような事はあまりしてほしくないのじゃが」

 

「ふん、女性に年齢のことを言うなと習わなかったのかジジイ。それにな、この学園に居る程度の連中になど、見破られるほど温くは無い」

 

 何処までも自由奔放に、かんらかんらと笑う少女。

 それに、今度こそ疲れた様に溜息を吐く近衛門。

 

「一応、麻帆良学園の魔法使いも、世界的に言えば練度で言えば大したものなのじゃがなあ」

 

「くだらんな、そんなもの、本当の裏の世界に潜れば何の役にも立たん。たとえ私と言えど素のままでは死を覚悟するほどだ。戦争も知らん奴等では死ぬよりも悲惨な目に合うだろうよ。それにな、最初の質問に答えていないぞ、ジジイ。【悪の魔法使い】衛宮切嗣が死んだにしては、随分と憂いているではないか」

 

「……すまんが、あの子をそんな風に呼ぶのは止めてくれんかの」

 

「ふん?」

 

 この老人にしては珍しく本気で落ち込んでいるらしく、声は悲しみに満ち、隙間から見える瞳も何処か元気がなかった。

 それを見て、少女は何を思ったのか、ふざけた雰囲気を無くした。

 

「――知り合いだったか?」

 

「元教え子じゃよ。と言っても、魔法関係のじゃがな」

 

「ほう」

 

 初耳だったのか、少女は意外そうな顔で近衛門を見つめる。

 事実として、この事を知っているのは極限られた魔法関係者だけだった。

 

「あの子がああいった事をするようになって、わしがあの子を教えていたと言う事実は闇に葬られてしまったんじゃ」

 

「だろうな。貴様があの衛宮切嗣を師事していたと知られたら、スキャンダルどころではあるまい」

 

 衛宮切嗣。

 その名は魔法関係者の中では忌み名として口に出すのも憚られる存在だった。

 介入した戦争の数は数え切れず、ついで直接的、間接的に殺した人の数も数えきれない。

 魔法使いの中では、彼が介入しなければ穏便に済ませられた事件も数えきれないともっぱら話題だった。

 さらに最悪だったのが、彼が手段を問わなかった事。

 現代兵器の使用は勿論、一般人を巻き込んだテロを起こしたり、対象を殺害するために人質を取るなど、汚い事はなんでもやった。

 だがその目的は一切が不明で、何のために戦争に介入していたかを知る者はいない。

 口さがない者は金の為と言ったが、冷静に見れば割に合わないと解る筈だ。

 まあ、正義感の強い魔法使いに冷静に見れる者が居ればだが。

 だが、近衛門にとって、彼は何時まで経っても大事な教え子だったのだ。

 彼を止めることを出来なかった事を、彼が変わることを止めることが出来なかったことを、近衛門は悔やんでいる。

 恐らく、一生悔やんで生きて行く事になるだろう。

 

「彼はのう、元々純粋な子じゃったんじゃ。だけどの、ある事件が起きた後、彼は変わってしまった」

 

「どんな事件だったか知らんが、軟弱な」

 

「彼の想い人がその事件で亡くなってしもうたんじゃ。明るくて、まるで太陽のような娘じゃった。誰もが彼女を好いとったよ」

 

 その言葉に少女も思う所があったのか、不意に黙り込む。

 

「それ以来じゃ、彼が変わったのは。少女との約束を守るために駆けずり回り、手段を選ぶことなく戦争に介入するようになったのは」

 

「…約束?」

 

「うむ、正義の味方になるという約束らしいんじゃ」

 

 その言葉に少女は目を見開くと、何処か呆れた様に近衛門に視線を向ける。

 

「はっ、やっている事は正反対だがな」

 

「――いや、ある意味で彼は人を救っておったよ?」

 

「――なに?」

 

「戦争を早期に終わらせるために戦争に介入し、手段を問わず戦争を終わらせておった。もしも彼が介入しなかったら泥沼になっておった戦争も数知れずじゃ」

 

 関東魔法教会の長がまさかの認めるような発言に、少女は呆れるような思いだった。

 

「いいのか、そんな発言をして。私は詳しくは知らんが、衛宮切嗣は相当だったそうじゃないか」

 

「じゃが、人知れずじゃったが、彼は誰よりも効率的じゃった。わしたち魔法使いが二の足を踏むしかない状況で、彼じゃから踏み込めたこともあったし、彼が介入したことで被害が減った事も事実じゃ」

 

「ほう、それは良い事だな。だがジジイ、それは救われぬ者を足蹴にした結果だろう?ならばやはり、衛宮切嗣は悪の魔法使いだよ」

 

 私が認めるのだからそうなのだと皮肉気に少女は言う。

 

「誰にも救われぬ絶望の中、さらなる絶望に落とされて命を落とす。しかも相手はその絶望を知った上でだ。例えそれで救われた人間が居たとしても、そいつは正義の味方なんか決してない」

 

 例え無様でも、例え救えなくても、暗闇の底にいる救われない誰かに諦めず手を差し伸べてくれさえすれば、その身体は救えなくても、きっと心は救われるだろう。

 正義の味方というのは、きっとそういう事を本気でやる愚か者のことを言うのだろう。

 だから、衛宮切嗣がやったのは、人という種の天秤を守る行為だ。

 それで救えるのは、きっと絶望の淵に沈む誰かとは無縁の人間だけ。

 

「…お主が言うと様になるのう」

 

「なにせその悪の魔法使いさまだからな。対になる正義の味方のことは嫌でも解る」

 

「ふむ、ならわし達はどうかの」

 

「くくく、聞きたいか?」

 

 近衛門は嘆息して首を横に振る。

 部下のあのような有り様を見た後で、胸を張れるほど厚顔無恥ではない。

 ましてや少女、いやもう面倒なんでぶっちゃけるが、【悪の魔法使い】【吸血鬼の真祖】【闇の福音】などと恐れられているエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル相手にそんな見栄を張ったとしても無意味どころか墓穴を掘るだけだ。

 

「話が逸れたな。それで、衛宮切嗣が死んだからどうした。その手紙が関係しているのか」

 

 エヴァンジェリンは近衛門の座っている執務机の上の隅に置いてある手紙を見た。

 

「うむ、彼からの手紙じゃよ。どうにもの、彼の死後届くようにされておったようじゃ」

 

「ふん、死後の手紙か。手の込んだことを」

 

 エヴァンジェリンは面倒くさそうに手紙を見やったが、中身については言及しなかった。

 それも当然、死者からの手紙を贈られた人間以外が読むと言う事は、その者の尊厳を侵すと言う行為に近い。

 送られた人間が読んでいいと言うのならともかく。

 近衛門も読んだ形跡があるが、見せる気は無いようだ。

 

「うむ、実際問題、割と面倒なことが書かれておったよ。その一つが、彼の子供のその後についてじゃ」

 

「なんだ、引き取れとでも書かれていたか?」

 

「その通りじゃ」

 

「はぁっ!?」

 

 エヴァンジェリンは驚いたように立ち上がる。

 まあ、彼女のこの反応も仕方のない事だろう。

 つい先ほどの近衛門の部下の反応を見るだけでも解る通り、衛宮切嗣はここ麻帆良でも相当嫌悪されている。

 その子供ともなれば、いくら正義を名乗っていようと、手は出ずとも悪感情は抱いてしまうだろう。

 そしてもしも大人がそんな反応をすればどうなるか。

 同年代によるイジメや疎外の対象となるだろう。

 

「…おい、ジジイ。まさか私に面倒を見れとでも言うつもりじゃあるまいな」

 

「それこそまさかじゃ。仮に引き取ったとしても、それによって生じた問題はわしらのものじゃろう。お主に背負わせるのは筋違いじゃて」

 

 エヴァンジェリンはここまで話をすんなり聞かせたのはそう言う事かと邪推したが、予想に反してそれは否定された。

 それに近衛門もエヴァンジェリンに全てを話したわけではない。

 その子供が養子だと言う事はわざわざ言うほどの事ではないと判断して言わないし、数年前の冬木市での大災害に衛宮切嗣が関係していると言う事も話していない。

 そしてその被害者が養子の衛宮士郎だと言う事も。

 そして何よりも、その子供の魔法が特殊だと言う事も話していないし、話すことはないだろう。

 目を付けられたらその子供が可哀想だ。

 

「しかし、衛宮切嗣とてそんな事は解って居る筈だろう」

 

「うむ、その子自身、少しだけ特殊なのじゃよ。それにの、その子がどうも、理想を継いでおる可能性がある」

 

 手紙には、もしも士郎が自分の理想を追うようなことがあったら、自分のようにならないよう導いてくれと書かれていた。

 近衛門は、この話を受けようと思っている。

 先ず理由の一つとして、切嗣を止められなかった罪悪感。

 次に本当に理想を継いでいるのなら、邪道に走るのを止め、エヴァンジェリンの言っていた【本当の正義の味方】へと彼を導く為。

 そして最後に打算的な想いだが、彼をこの麻帆良の試金石とするため。

 もしも彼に酷に接するような者が居れば、それこそ再教育を施さねばならない。

 それにエヴァンジェリンが麻帆良に居る事を良くないと思う人間は少なくない。

 それの改善も兼ねた意味で、今回の事は渡りに船ではあった。

 エヴァンジェリンには、彼の者への最終的な防衛という意味で此処に居てもらわなければならない。

 彼女が此処を出て行ってしまわぬよう絆でも何でも利用しなければならない。

 彼の者相手では、関東最強と言われる近衛近衛門でも恐らく勝てないだろうから。

 

「ふぅ、まったく、わしも汚くなったものじゃ」

 

近衛門は理想に燃えていた在りし日の自分を思い返し、思わずと言った感じで呟く。

 

「ふん、何を考えているかしらんが、生きると言う事はそう言う事だ。今迄生きてきた自分の荷物の重さに膝を付き、転んで土塗れになったとしても、無様に足掻くのが人間だ。そう言った意味で言えば、ジジイ、貴様は正義の味方としては落第点だが人間としては及第点だ」

 

「これだけ生きて及第点って、採点基準が酷すぎじゃないかの」

 

 近衛門のこの言葉に、エヴァンジェリンはにやりと笑う。

 

「馬鹿め、貴様ら魔法使いはいつまでたっても理想ばかり見ているガキが多いからな、むしろ基準は低く設定しているさ」

 

「そうかの。…すまんのぉ。気を使わせてしもうたか」

 

 近衛門は少しだけ黙った後、小さく感謝の言葉を述べた。

 長く生きてきて、沢山の者を守るために自身の手を何度も穢してきた。

 今では増えすぎた守るものの為に、昔は汚いと思えたことも自然と考え付くようになってしまった。

 きっとエヴァンジェリンも、近衛門が何かを隠していると言う事は解っているのだろう。

 そしてそれを分かった上で、近衛門の事をそれでこそ人間だと評価したのだ。

 

「ふん、どうするかは知らんが、精々生き足掻けよ人間」

 

「そうさせてもらうかの。お主もナギを待つのは良いがの、アレ相手にあまり過剰に期待せんほうがええぞ」

 

「ぶっ!?な、何のことだ、くそ爺!」

 

「千を超える齢の吸血鬼が初恋とはのう」

 

「死ねクソ爺!」

 

 その日、麻帆良学園の理事長室は大層賑やかだったそうな。

 ともあれ、衛宮士郎が麻帆良學園の中等部に入る事になるのは、そんな会話があった約1年後の事だった。




 衛宮切嗣は正義の味方ではなかったけど、最後に助けた子供にとっては誰よりも正義の味方であった。
 なら、きっと彼は最後の最後に本当の意味での正義の味方になれたに違いない、とおいちゃんは思ってます。
 士郎君にしか知られていないけどね。
 けどまあ、正義の味方なんてそんなもんでしょうね。
 知ってる人が知ってればいい。
 そしてその人達の笑顔を守れれば、きっとそれこそが正義の味方に違いない。
 なんてね。
 正義の味方談義なんてすると、赤い弓兵さんがもの申してきそうだから止めておきますけど。

 そしてFateのアニメ放映始まった―――!
 最高じゃないか!
 やっぱ三枝さんは癒しやでぇ。
 戦闘シーンも迫力あるし、これはDVD購入必至ですな。
 Fate/ZEROも面白かったけど、セイバーの性格が違ったのが残念でしたしね。
 あのセイバーではブリテンの危機は救えなさそうなんだよなあ。
 今回は期待できそう。
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