カゲロウデイズ -Mekaku City Plain daze- 作:せんと凪
これで私も普通の人の様になれるって思ってた。
普通に友達と話して、普通に出かけて買い物して遊んで。
ごく普通のありふれた女子高生になれるって。
散々な今日が少しはいい方向に行くかもしれないと思ったのに……
……まさかこんな事になるなんて私は、想像もしていなかったし、思ってもいなかった。
*
時刻は、爆発が起きる数分前に遡る。
如月side
私は、ぶつかってしまった先輩に謝って話をしてる時、カノさんに団長さんに呼ばれていると聞き皆さんが居る場所まで戻ってきた。
「キド〜キサラギちゃん呼んできたよぉ〜」
「ああ、たすかる」
「すいません、団長さん長く話してしまってて……」
「いやそれは別にいい………それより、キサラギお前、さっきのぶつかった奴と随分親しげな様子だったが知り合いなのか?」
「はい………あの人……私が通ってる高校の先輩でして……私の体質の事とかでたまにですけど相談に乗ってくれるんですよ」
「へぇーそうなんだ。僕はてっきり彼氏かと思ったよ」
両手を頭の後ろに回して、ニヤニヤとするカノさん。
「ち、違いますよ!………そういうのやめてくださいカノさん!」
「ごめん、ごめんて〜」
と謝りつつもニヤニヤしているのが窺える。この人は……湧き上がる怒りをグッと抑え込む。
「カノ、チャカスな。それはそうとして高校の先輩……そうだったのか…………キサラギ」
「はい?」
「その先輩は、お前と同じように何か特殊な能力を持っていたりとかはするのか?」
その質問に私は目を見開き驚いた。まさかそんな事を聞かれるとは思わなかったから。
「えっ?! 先輩がですか? えーっと多分無いと思うんですけどね」
私の記憶が正しければ、先輩に私やキドさん達のような能力は無いはず。そもそも先輩自身からそんな話も聞かないし。
「そうか……」
「でも一体どうしたんですかそんな事を聞いて?」
「いや、ないならいいんだ。余り気にしないでくれ」
団長さんは腕を組んで何かを考え込んでいるみたいだった。
ふと視線を外してある事を私は思い出す。
「あっ! そうだマリーちゃん! さっきはごめんね、どこか怪我してない?」
「ううん。ちょっと痛かったけど、怪我はしてないよ」
「そ、そっか……でもごめんね……」
「うん、もう大丈夫だよ」
優しく笑うマリーちゃんの笑顔がとても可愛らしくて心に沁みてくる。
ううやっぱりごめんね。
「さてと、話は済んだからキサラギちゃん、先輩の所に行って用が済んだって言いに行かないと」
「ですね」
「なに!? 待たせているのか?」
「えーだってキドがキサラギちゃん早く呼んでこいって言うから話途中で連れてきたんだよ」
「俺は、話が終わったら呼んでこいと言ったんだ」
「えーそんなの聞いてな────」
言葉の途中でカノさん様子が急に変わった。何かを見た様にピタリと止まって。
「……カノさん? あっ……」
その理由を私も数秒で悟った。視界の先にいる人物達で。
大きいスポーツバッグの中から何か黒いものを取り出している。あれは……銃?。それにこの匂い………もしかして火薬?。
まさか、いやそんなわけない。
なんだろうこの感じ、なんだか凄く嫌な予感がしてくる。
「コレやばいかもっすね」
「うん……キドどうする?」
「ああ、わかってる。キサラギ、マリーここから出るぞ」
「えっでもお兄ちゃんが向こうに……!」
さっき見た銃を持った人達が居たのは、兄が通っていた通路側だ。もしこの人達が私の想像通りの人達なら、この後の行動で兄は見つかり、ことの顛末次第では───。
最悪の想像が頭の中に浮かんでしまう。
もしお兄ちゃんに何かあれば私は………私は…。
「……私、お兄ちゃんを連れてきます!」
「お、おい! 待て行くな! お前が言っても目立つだけだぞキサラギ!」
駆け出そうとする私の腕をぐいっと団長さんに引っ張られる。
無理だとわかってる。
「でも!」
あんな兄でも、私に取っては大切な兄妹なんだ。団長さんの腕を振り払おうとした時カノさんに肩を掴まれる。
「キサラギちゃん、落ち着いて! 大丈夫お兄さんは僕が連れてくるよ。だから安心して、キサラギちゃんはキド達と一緒に先輩さんの方をお願い。じゃあいくから!」
そう言って、ウィンクをした後カノさんは、兄がいた方の通路へと消えて行った。
カノさん……。
「あいつ………セト、カノだけじゃ心配だ。お前も着いて行け。こっちは俺でなんとかする。今回は、事がことだからお前も能力を使えよ……」
「あんまり気乗りしないっすけど了解っす……!」
団長さんの指示でセトさんはカノさんを追いかけその場を後にした。
カノさんにセトさんの二人が居れば大丈夫かもしれない。
でもやはり心配は残る。
「お兄ちゃん……」
「キサラギ、お前の気持ちもわかるが、今はお前んとこの先輩を回収して、ここを離れるぞ、いいな?」
「わかり─────」
返事をしようとした直後。
先輩が居る方の通路側で、バァアアン!!
と大きな爆発が起きた。
その光景に息を呑んだ。心臓がバクバク言ってる。映画やドラマでしか観ない非現実的な光景。
「ひっ!」
驚き怯えるマリーちゃんが私にしがみつく。
「くっそ! 遅かったか………おい! 大丈夫か!?」
「な、なんとか……! マリーちゃんも大丈夫です!」
「わかった、なら行くぞ!」
「はい!」
私はしがみつくマリーちゃんを連れ団長さんと共に先輩が居る元へ向かう。
*
そして時は、爆発の直後へと戻る。
主人公side
「──────ッ!?」
爆発を皮切りに、警報システムが一斉に作動し、シャッターが次々に閉まって行く。まるでここから逃がさないとするかの様に。
フロア全体のあちこちから悲鳴と銃声音が聞こえて来た。おそらく人質確保にテロリスト集団が回っているだろう。
やばいやばいぞ! お、落ち着け、とにかく今は如月達だ! 早く安全な所に────ってい、居ない!? さっきまであそこに居たよな? あたりを見渡しても如月達はどこにも居なかった。もう逃げたのか? それとも捕まった? いやそんなことは……すぐ近くに居たはずなのに……その瞬間、誰かに肩を掴まれた。
「───ッ!?」
終わった、打たれて死ぬ…。
「おい、あんた!」
「先輩!」
振り向くとそこには、如月の連れに居た紫色のフードを被った彼女が俺の肩を掴んでいた。
顔は深く被っているフードのせいで目元は見えないがとても緊迫した様子だ。そんな彼女の後ろには如月と如月に引っ張られている白髪の子が居た。
「っ?! 君は……あっ、如月! よかった、無事だったんだな!」
「はい……でも……お兄ちゃんが…」
「……?」
何故か浮かない表情になる如月。最後なんて言ったか聞き取れなかった。こんな状況じゃ暗くなるのもわかるが………ん? ちょっとまてよ、3人しか居ないのか? 確かあの黒いフードと緑深緑のつなぎの連れがいた筈だ。
「……なぁ、後二人居たよな? 一緒じゃないのか?」
「ああ、その話は後でする、今は兎に角ついてきてくれ‼︎」
「先輩! 早く!」
実態は一刻を争っている。
「…ああ……!」
俺はそれ以上は何も聞かず、即答し、如月達について行く事にした。
次回で主人公の名前が明らかになります。