カゲロウデイズ -Mekaku City Plain daze-   作:せんと凪

6 / 22

 読んで頂きありがとうございます!


メカクシコードⅢ

 

 

「時澤先輩……ありがとうございます……!」

 

 ゆっくり息を吸う如月は、さっきまでとは打って変わって落ち着きを取り戻していた。

 

「団長さん! 先ずは左向こうの商品棚お願いします! こっちは私とマリーちゃんでやります!」

 

「わかった! おいマリー如月の指示通り動けよ!」

 

「う、うん…!」

 

「先輩は右から四番目のテレビを!」

 

「任せろ!」

 

 指定されたテレビを掴みに行き、合図を待つ。

 

「おいおい! さっきの威勢はどうしたよ!? ああ!!? 随分貧弱そうだしよぉ……もしかしてお前はアレか? 引きこもりってやつか? ハハっ! だったらテメェーみてぇなクズが死んでも誰も困ねぇだろうな!」

 

 大声で聞こえて来た声は、伸太郎を掴んでいた主犯格の男の声だった。

 男は伸太郎に向かって銃を腹に突きつけている。

 おい、マジかよ……! 伸太郎のやつ、このままじゃ撃たれちまうんじゃないか? 如月、合図はまだなのか!?

 このままじゃ伸太郎が……

 

 

 

 

「……るせ……」

 

「あ"あ"?」

 

 瞬間、伸太郎はビビリも、臆することもせずに主犯格の男に言い放ったのだ。

 

「うるせぇつったんだよ!! お前みたいなクソ野郎こそ! 一生牢屋にでも引きこもってろよ!!」

 

 と。

 

「っ!??」

 

 あんな事を言うなんて……いやアイツは、そう言う事も言えるんだったな……。

 

 伸太郎の声がフロアに響いた時、携帯が鳴る。

 如月からの合図だ!

 

「……よっ!」

 

 俺は作戦通り、注意が集まるよう、テレビを勢いよく倒した。弁償などと一瞬浮かんだがどうせ見えてないんだバレはしないだろう。

 

 俺が倒したテレビに、人質達とテロリスト達の視線が向く。

 伸太郎はと目を向けると主犯格の男から離され、その場に座り込んでいた。良かった無事注意を引けたんだ。

 更に向こう側の商品棚と右方向のテレビが順に倒れ、また視線が動く。

 

「先輩こっちです!」

 

「如月、次はどれを倒す!?」

 

「次は決まってます、あそこの棚です! 私達で4人で一気に倒します!」

 

「っ! ッッ、ああなるほど、わかった!!」

 

「……注目云々と言うよりは、半分恨みがこもってるな」

 

「あはは……ちょっとばかり」

 

 如月の指差した目標は、主犯格の男の後ろの商品棚だった。

 

「おい! そこに誰か──!?」

 

 拳銃を突きつけ近づく主犯格の男。だがそこには誰もいない。

 見えてないのもあるが、既に俺達は主犯格、アンタの後ろの商品棚に来ている。

 

「行きますよ! せぇーのっ!」

 

 如月の掛け声と共に4人で商品棚を思いっきり蹴り倒す。

 

「ッ!!? うおおおお!!!?」

 

 棚は中身を撒き散らしながら、主犯格の男を押し潰した。

 

 直後伸太郎は、座り込んで居た場から立ち上がって走り出す。下敷きにされた主犯格の男を思いっきり踏みつけて、目的の場所へと一直線に走る。

 

 

 こっちに気づくとはなく、如月とすれ違う直前。

 

「───後はよろしくね。エネちゃん」

 

 ふと如月がそう呟いていたのが聞こえた。

 

 制御室にたどり着いた伸太郎がpcから引き抜いたコードを持っていた携帯へ繋ぐ。

 その瞬間、モニターからニヤリと笑う少女の顔が映り、一瞬にして全てのディスプレイモニターを駆け抜けて行くのが見えた。あの顔……いや今は

 

 

 

 

 

 

 これで───

 

 

 

 

 

 

『ッパァン!』

 

 

 

 

 

 

 1発の銃声が鳴た。

 

 

 

 

 

「───はぁ!?」

 

 振りむいた方向には、伸太郎が倒れていた。まさか撃たれて──!!

 

「お兄ちゃん!!」

 

 叫ぶ如月。しかし作戦はまだ完了してない。シャッターが開き始めていて、隙間から警察達の足先が見える。ざわめき出す人質達と焦り出すテロリスト集団。

 もしこのまま作戦の要である如月が伸太郎の元へ駆けつければ、テロリスト連中と突入して来た警察の機動隊との銃撃戦が始まり、多くの死者が出てしまい、作戦は水の泡とか化す。

 この後の最後の締めに俺はもう必要ない、なら。

 

「如月! 伸太郎は俺が見に行く! お前は作戦を続けてくれ!」

 

「トキサワの言う通りだ!」

 

「キサラギ! シャッターが全部開いちゃうよ!」

 

「……っ、わかってます……時澤先輩お兄ちゃん、頼みます……!」

 

 人質とテロリスト集団の方を振り向く如月。割り切ったその背中には、あとは任せてくださいとと言う意思を感じた。

 

 

 

 その場を後に伸太郎の元へ駆けつけると、そこには既に二人の影が見えた。

 

「君らは……」

 

「あっ! 先輩のおにーさーん!」

 

「如月さんの先輩っすよね? 話は聞いてるっす」

 

 この黒フードの顔には見覚えがある。あのふざけたメールを送って来た、猫目の男カノだ。こっちはセトだったよな……いや、今は伸太郎だ。

 

「ああ! で、伸太郎は大丈夫なのか!?」

 

 それを聞いてカノは深刻な顔でこう言った。

 

「……残念だけど…」

 

 

 ───え? 嘘だろ…………伸太郎まで……そんな……いやだ、俺はまだお前に謝れてないんだぞ………なのにここで死ぬって、そんなの……ねぇよ…。

 打ちのめされて、何も言えなくなって。

 そんな俺を見てケロッとした表情で口を開く猫目の男。

 

「……この人ちょっと弾掠っただけで気絶しちゃったみたいでぇ〜」

 

「──はぁぁぁあ?!?!?!!! おいぃ!!」

 

「カノ! よくないっすよ!!」

 

 俺はこのふざけたやつの胸ぐらを掴んでぐあんぐあん頭を激しく揺らす。

 

「ああ〜、ごめん、す、すみませんてー、あぁ〜」

 

「もう勘弁してくださいぃ……で、出来心だったんですぅ……ひいぃ、もうしませんから、すすみませしぇん……」

 

 なんとも情けない声で、うわ言を呟く伸太郎。こいつは……ほっっっと何度もヒヤヒヤさせやがって! こっちの気も知らずに、たっく、すげぇー心配したんだからな。

 

「さん……せん……先輩さん!」

 

「なんだ!?」

 

 緑色の繋ぎを来た少年かのに呼ばれた我に帰る。

 

「あ"ぁ"もうゆるぅして………‼︎」

 

「あっ! わりぃ!」

 

 いやこのくらいでちょうど良い。手を離して、その場でぐるぐると目を回す猫目の男。キドの言った通りやはりアホなんだな。

 

「すみません、先輩さん……カノ、いつもこんな感じで……」

 

「いや、もう怒ってないから良い。伸太郎の無事もわかったからな」

 

「そ、そうっすか?」

 

「ああ」

 

「……ふぅ…やっと戻って来た。いやー先輩さんすみません。っと、向こうももう終わったみたいだね」

 

 それを聞いて如月達の方を見ると、人質達とテロリスト集団が彼女達の方を向き全員固まっているのが見えた。

 どうやら作戦は成功したみたいだ。

 

 良かった。

 

 

 

「……メカクシ完了……なんてね」

 

 

 

 それを見ていたカノが不意にそう呟いていた。メカクシ完了か……なんだよそれ…カッコいいじゃんよ。

 

 

 

「先輩! お兄ちゃんは!?」

 

 作戦を終えた如月達がこちへ来た。

 

「伸太郎は無事だ。安心しろ銃の弾掠って気絶しただけだってさ」

 

「え?」

 

 それを聞いて如月は、伸太郎の方へ顔を向けるとまた「うぅ……許してください……」とうわ言を呟く、情けない姿を見て、落胆した様子だった。

 

「……バカ兄……」

 

 

 警察の機動隊がテロリスト達を迅速に拘束して行くも、全員ピクリとも動かないので驚いていた様子だった。

 まぁ当然だよなあ。俺も事情を知らなきゃ驚く。ましてや人質達も固まって動かないんだから。

 

「にしてもよくこんなこと思いついたね。マリーの目に全員の目を注目させて固めちゃおうとか」

 

「いや、お兄ちゃんがシャッターを開けてくれるとは思ってたんで、銃撃戦とかになったらまずいなぁって。それで、どうしたらみんなの動きを止められるだろうって考えてた時、ちょうどカノさんが石みたいになってたのを思い出して……」

 

「ふん、アホもアホなりに役に立つもんだな」

 

「え、何それひどい! あ、そうだキド、写真見た? 写」

 

「消した」

 

 まぁこれで一安心だな。作戦は成功万事解決。ん? そういやマリーいなくないか? どこ行ったんだ。

 周りを見渡すと驚きの光景が目に飛び込んできた。

 

「あっ!!」

 

「うわぁ!! どうしたんですか!?」

 

「な、なんだいきなり?」

 

「あれあれ!」

 

「あれ? って……」

 

 指差した方を二人が振り向くと、ようやくその事に気づく。

 

「「あああああああぁ‼︎」」

 

 キドと如月は共に叫んだ。

 目にした光景は、電気アンマを持ったマリーが、警察の機動隊の一人に質問攻めにされている所だったからだ。

 

「あ、あのバカ……! あれを返しに行って……」

 

「あわわわ、ど、どうします? あれすごくまずいですよね!?」

 

「ぷっくく……っっ……! あれが例の主犯格の男をぶっ叩いた……電気アンマ! でもなんであんなもなんか……はは、ギャグなの!? ひぃ、お腹痛い!」

 

「笑ってる場合っすか!?」

 

「セト、マリーの所へ行って回収してこい! お前は笑いすぎだ! 少し黙ってろ!」

 

「了解っす!」

 

 カノはその場でキドに殴られ「ぐはっ!」と声を上げて床に倒れこみ、セトはマリーを連れてくるために走った。

 質問攻めにあっていたマリーの元に駆けつけたセトはなんとか理由をつけてその場を逃れようとしていたが、理由が見つからないのか、慌てふためいている。セトも同様マリーと同じように質問攻めにされた。

 だめじゃねぇーか。

 

「……なぁ、あれちょっとまずいんじゃないか?」

 

「みたいだな……はぁ……セトを行かせたのはまずかったか? ……ん? お、おい、ばか……よせ…」

 

 不意にマリーがこちらに指を向ける。大方、私は解らないけど、あっちにわかる人がいますって、感じで指さしたんだろう。

 

 うんうん……って…それ、まずいだろ!?

 

 機動隊の人達が真っ直ぐこっちに向かってくる。

 

「こっち向かって来てますよ! ちょ、カノさん邪魔ですよそこ!」

 

「うぅ……キドに殴られた……みぞおちが痛い……」

 

「おい! カノ早く立てこの馬鹿! ってああ!?」

 

 キドが情けなく叫んだ次の瞬間、近づいて来た機動隊の人がカノに躓き、転んだ。それと同時に能力が解けてしまい、急に現れたのに驚きの声をあげる。

 

「に……逃げるぞ!!」

 

「賛成です!」

 

「トキサワお前は、如月の兄貴を! キサラギはマリーとセトを連れてこい!」

 

「はい!」

 

「ああ!」

 

 気絶している伸太郎の肩を掴み持ち上げる、これでよしっと。

 

「キドこっちは準備できたぞ!」

 

「団長さん! マリーちゃんとセトさん連れて来ました!」

 

「面目ないっす……」

 

「謝罪は後だ! 今はここから逃げる」

 

「こら! 君達、どこに行くんだ、待ちなさい!」

 

「くっ……一瞬でも視線が外せれば………ん!?」

 

 次の瞬間、タイミング良くマリーの石化の能力が切れたのか、フロア全体が一気にざわめき出した。

 一瞬それに気を取られた機動隊員の隙を見逃さず、キドは再び俺たちを見えなくしてくれた。

 視線をこっちに戻した機動隊員らは「き、消えた!?」と同様の声が上がっている。

 

「ここに居るのはまずいな……やり過ごせると思ったが……早く出るぞ!」

 

「は、はい!」

 

 バタバタと急いで階段を目指す。その道中如月とマリーの会話が聞こえた。

 

「ねぇ、マリーちゃん」

 

「な、なぁに……キサ……モモちゃん!」

 

「──! 今日……わたしね、すっごく楽しい!」

 

 微笑ましい光景なのだろうが今はダッシュで走ってるので余韻には浸れなかった。方には今だに寝ている伸太郎を担いでるのもあるが。

 てかいつまで寝てんだよ、いい加減起きろって……。

 

「──妹さん! 妹さん‼︎」

 

 如月のポケットから、何か声が聞こえる。

 

「ん? なぁにエネちゃん」

 

「あれですか……? これが最近噂の『百合』ってやつですか? ねぇ妹さッ──」

 

 プツンと電源を切ってポケットの奥にしまい込んだ。

 

「百合の花がどうしたの? すっごい綺麗だよ──」

 

「あ、なんでも無い! マリーちゃんは気にしなくていいから!」

 

「……?」

 

 さっきのエネって子は確か伸太郎がpcにプラグ刺した時に現れた子だよな。

 にしても……まぁいっか。てか百合って……ふふ。

 

「………」

 

「先輩殴りますよ……!」

 

「お、おい! まだ何も言ってないだろ!?」

 

「じゃあ、これから言おうしたんですか?」

 

「違うわ! あーもうほら階段着くぞ!!」

 

 そうこうしてるうちに階段まで辿り着いていた。

 

「よし、階段に人は居ないな、このまま降りるぞ」

 

 この階段を降りるのか、伸太郎担いで……意外に重いんだよな。つうか、ここ7階だよな?。

 と思っていた時、セトに声をかけられた。

 

「あのぅ、トキサワさんすっよね? 良かったら手を貸すっす!」

 

「ほ、本当か!? ありがとう、助かる!」

 

 セトは伸太郎の左肩を掴み担いでくれた。正直ほんと助かる。俺一人じゃあとてもこの階段を降りられなかった。七階だぞ、七階! そもそも俺、そんなに体力無いし。

 

「カノ、お前も手伝え」

 

「えー二人で担いでるんだから僕必要な──」

 

「あ"あ"?……」

 

 強く握りしめた握り拳を構え、声を低くするキド。『NO』とは言わせないとする圧力をカノに向ける。

 

「ぁああ! なんか僕も担ぎたくなって来たぁ!」

 

 カノは伸太郎の足を持って階段を降りるのを手伝ってくれるみたいだ。

 

「………なぁ、お前らっていつもこうなのか?」

 

「いやーーまぁそっすねぇ……」

 

「おい、急ぐぞ!」

 

 キドの指示で階段を急いで、それでいて安全に降りていく。

 なんともまぁ、とんでもない1日だ。家で夏休みを謳歌していた時とはまるで違う。最初は外に出るとか最悪だと思ったが、案外悪くないなと感じ始めていた。

 

 にしてもまさか、こんな日になるとは思わなかった。

 

 今日と言う日の事を俺は、多分生涯忘れることはないだろう。

 

 

 この不可思議な出会いをした8月14日のこの日のことを。

 

 





 さて次は、遊園地に行くか過去編にいくか……遊園地に行くとしましょう。

 伸太郎と主人公の関係も今後明かされていく予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。