フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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ホウ・レン・ソウは大切に

 屋敷を後にしてから約一時間ぐらいのドライブを楽しんだのち、私とキャロルは風鳴家屋敷へと到着した。

 車は敷地内にある専用駐車場へと駐車することに。

 

「さ…櫻井亞里亞博士。昨日の今日でまたどんな御用で…」

「ジジイに会いに来た。いるんだろ? 通せ」

 

 車を降りて門まで行くと、いつものように黒服が目の前に立ちはだかる。

 いつもの事とはいえ、毎回毎回がこうだと流石に鬱陶しくなる。

 

「で…では、訃堂様に御伺いをしますので、どうかお待ち頂いて…」

「私は『通せ』と言った。聞こえなかったのか?」

「し…しかし…」

「この私が風鳴家においてどんな立場にいるのか…忘れた訳じゃないよな?」

「うっ……」

 

 確かに私自身は風鳴家の人間ではないが、この家とは私個人で、それこそ嫌になる程に密接な関係にある。

 ともすれば、私個人の権限は訃堂の次くらいにあるかもしれない。

 なので、多少の脅しぐらいは許されるだろう。

 実際に何かをする訳じゃないし。

 

「心配するな。私が今まで、風鳴家に不利益な事をしたことが一度でもあったか?」

「……承知しました。では…お通り下さい」

「ありがと。なに…お前は何も悪くない。私が勝手に来て、勝手に入っただけだ。誰かに何か聞かれたら、そう言え。いいな?」

「は…はい。分かりました…」

「よろしい。因みに、後ろの子は私の超大切な友人だから」

「はぁ…」

 

 つーわけで、風鳴家にごあんなーい。

 私の後ろからキャロルも一緒に付いてきた。

 

「ず…随分と強引なんだな…」

「他の場所ならいざ知らず、この場所限定で私はかなりの権限を持ってたりするんだよ」

「お前の意外な一面を垣間見た気がするぞ…」

 

 これからもっと垣間見る羽目になると思うよ。

 ついさっき、私もキャロルの女の子な部分を垣間見せられたし。

 

 私の見よう見真似でキャロルも靴を脱ぎ、屋敷の中へと入る。

 二日連続で来てるけど、その前は10年前になるから、まだまだ懐かしさは抜けきれない。

 

「これが日本家屋か…。中々に趣があっていいじゃないか」

「しかも機能的でもある。夏は涼しく、冬は暖かい。昔から研鑽を重ねてきた建築技術の結晶だよ」

「何かを『造る』と言う点では、錬金術師も大工もさほど差は無い…か」

 

 流石はキャロル。地味に真理を突いてくるじゃないか。

 それでこそ私の親友。いや、『心』の『友』と書いて『心友』と呼ぶべきか?

 

「…こんな所で何をしておる」

「お。向こうから来たし」

 

 廊下を歩いて訃堂の部屋まで行こうと思っていたら、いきなりの本人登場。

 これは手間が省けて助かった。

 

「まさか、昨日の今日でまたここに来るとは思わなんだ。あのまま弦十郎の所にでも居座るつもりかと思っておったわ」

「お前さ…私が昔からアイツと致命的なまでに相性が悪いって知ってて、それ言ってるだろ」

「さてな」

 

 普通の奴ならここで『腹立つ~!』ってなるんだろうけど、私はもう完全に慣れたから何にも言わないし感じない。

 

「隣にいるその小娘は誰だ」

「私の心友で恋人のキャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師をやってる」

「こ…恋人っ!? おい亞里亞! いきなり何を言っているッ!?」

「えー? 私は普通にキャロルの事が好きだからそう言ったんだけど…キャロルは違うの?」

「ち…違わなくはない…が…その…だな…もっとこうオブラートに包んだ表現というものが…」

 

 うーん…恥ずかしがるキャロルも可愛いからヨシ。

 これからも誰かにキャロルの事を紹介する時はずっと『恋人』って言おう。

 

「錬金術師…それに恋人だと? お前はあれか? レズビアンだったのか?」

「だったというか、なった。今まで私に異性と浮いた話が一度でもあったか?」

「無かったな」

「だろ? つまりはそーゆーことだ」

「うむ……」

 

 この『うむ』は訃堂の奴が渋々ながらも納得した証拠だ。

 絵に描いたような厳格なジジイなだけに意外と分かり易い。

 

「で、この屋敷…いや、ワシに何用だ?」

「了子…いや、フィーネの屋敷でこれを見つけた」

「それは…」

 

 白衣のポケットから屋敷で見つけた青いシンフォギアのペンダントを見せると、珍しくジジイの目が見開かれた。

 

「探索している最中にアイツの作ったとされる秘密の部屋を発見して、その中で見つけた。その際にアイツが遺したビデオメールも見たよ」

「何と言っていた…とは敢えて問うまい。それはお前だけが知っておればいい」

 

 まさか、こいつの口からそんな人情的なセリフが飛び出すとは。

 明日は雪が降るかもしれない。

 

「メールの中で了子は、私を真似してこれを作ったと言っていた。だから、これの解析をする為に『風鳴機関』を使わせろ」

「ほぅ…?」

「あそこなら機材は充実してるし、これの解析もちゃんと行えるだろ。でも、あそこを利用するには現当主であるお前の許可がいる。だから、ここまで来た」

「…成る程な。よかろう…許可してやる。ただし…」

「分かってる。お前も同行するって言うんだろ」

「無論だ。その中身が何であれ、お前の『研究』に関係する物であることには違いない。ワシもその中身には興味がある」

 

 興味…ね。言葉を選びやがって。

 同類だから、その本心はすぐに分かるけど。

 

「ところで亞里亞よ」

「なに?」

「貴様…これからどうする気だ?」

「どうするとは?」

「惚けるではないわ。こうして機関まで使って妹の遺産を分析しようと思ったと言うことは、何か考えがあってのことであろう。違うか?」

「…私は昔から、ジジイのそーゆーところが一番嫌いだ」

 

 すぐに人の企みを見抜きやがって。

 年の功ってか? ムカつく。

 

「ま…私なりに色々と見たり聞いたりして思う事が有ったりしたわけで。ちょっと真面目に自分の研究で平和に貢献でもしてみるかと思い至ったんだよ」

「遂に貴様も『防人』としての使命に目覚めたか。それでこそ、このワシが選んだ者よ」

 

 勝手に防人にするな…と言いたいが、確かに私がやろうとしている事は『防人』になるのかもしれない。

 私には最も不似合いな称号だとは思うけど。

 

「けど、私は昔から中途半端な事は嫌いでね。それはジジイもよく知ってるだろ?」

「あぁ。それがどうした?」

「私はな…国防…つまり、日本を守るだけじゃ満足できないんだよ」

「何が言いたい」

「やるならもっとド派手に。世界の防人をやってやろうぜって事。と言っても勘違いするなよ? 私は翼たちS.O.N.G.と同じようなやり方はしない。やるなら徹底的にやる。生温い方法なんて、こっちから願い下げだ」

 

 対話。手を取り合う。大いに結構。

 私だって無用な争いは御免だし、そんなの体力と時間と資材の無駄使いでしかない。

 けど、だからといって話す相手を、手を取り合う相手を間違えるような愚行は犯さない。

 敵は敵として最後まで処理する。和解なんて論外中の論外だ。

 

「…それが、貴様が弦十郎たちの元を離れた理由か」

「どれだけ場所が似ていても、あそこは私のいるべき場所じゃない。別にあいつ等のやり方の全てを否定はしないけど、共感もしない。そっちはそっちのやり方で勝手にやってろ。私は私なりのやり方で平和を目指す…って感じ?」

「面白い。このワシ以上に欲深きその思想…それでこそよ。貴様の中にも先史文明の巫女の血が確かに流れていると実感させられる」

「それは褒めているのか?」

「無論だ」

 

 褒め方が下手過ぎるんだよコイツは。

 全く褒められた気がしないわ。

 

「そこのキャロルとか言う娘もお前と同じ考えなのか?」

「…そうだな。少し前までのオレだったら、言っているのが亞里亞では無かったら、即座に否定して敵対していた事だろう。だが、オレは亞里亞と出会い、話し行動を共にすることでギリギリのタイミングで己の間違いに気が付けた。別に世界の平和や防人などに微塵も興味は無いが、亞里亞の手伝いぐらいはしてやってもいいと思っている。それがパパの残した『世界を知る』と言うことに繋がる気がするからな」

「世界を知る…か」

 

 この感じ…訃堂の奴も一瞬でキャロルの親父さんが遺した言葉の意味を理解したな。

 理由は最低の外道でも、父親であることには違いないからな。

 流石にそれぐらいは分かるか。

 

「なんなら、このオレが用意をした『オートスコアラー』も使うか? 亞里亞にならば一向に構わんぞ」

「オートスコアラー…錬金術によって生み出された自動人形か」

 

 私と初めて出会った頃から、もう既に何体かは出来上がっていたっけ。

 今はどれぐらいいるんだろうか。

 

「いいの? こっちとしては大助かりだけど」

「基本的にオレの命令しか受け付けないようにはなっているが、こっちから言えば何とかなるだろう」

「そういうもんなんだ?」

「そういうもんだ。他のオートスコアラーはいざ知らず、オレが作った奴等ならばな」

 

 そこら辺の技術力は完全にそこらの錬金術師よりも遥かに上を行っているからな。

 ことオートスコアラーに関しては一番信用していいと思う。

 

「お前さんはどうする? スポンサー様よ」

「ふん…元より、ワシは貴様を取り込む算段であった。お前の研究にはそれだけの価値があり、お前自身にもそれは言える」

「ってことは?」

「いいだろう…貴様の言う『世界の防人』とやら…やってやろうではないか。それに…」

「ん?」

「亞里亞よ。お前…最初からこのワシが自分の計画に賛同することを見越して、ここまで来たであろう? 昔から貴様を『真の防人』として見い出していた、このワシならば…と」

「…同族嫌悪って言葉の意味を改めて思い知った気がする」

 

 嫌いなのに相性は良いって、ある意味で一番最悪なのでは?

 しかも普通に頼りになるから質が悪い。

 

「このこと…弦十郎たちにも話すのか?」

「さぁ…どうしようかな。現場で鉢合わせしたら話すかもしれないけど、自分から話すような真似はしたくは無い。そこまで私は自意識過剰じゃない」

「…それもよかろう。亞里亞がこうして自らの意志でワシの元まで来た。それが最も重要なのだからな」

「そうかい」

 

 こっちとしても不本意ではあったけどね。

 けど、これが最も確実なのもまた事実だ。

 個人じゃ出来る事に対して絶対的な限界ってのがある。

 どこかの組織に所属して誰かの下に着くのは御免こうむるけど、訃堂の奴は話が別だ。

 こいつと私との間にあるのは、どこまでもギブ&テイクの関係。

 互いに利用するだけの間柄だ。

 だから、私達の関係に上下は無い。

 訃堂は私に命令なんてしないし、私もそれは同じ。

 私達は『横並び』なのだ。

 

「誰かおらぬか」

「はっ。ここに」

 

 訃堂が呼ぶと、すぐに黒服がやって来た。

 見た目は怪しいが、中身は完全に忍だな。

 

「すぐに車の手配をしろ。風鳴機関へと行く。この二人も一緒にな」

「承知しました」

 

 私の時は渋っていたのに、訃堂の言葉となるとすぐに従うんだから。

 仕方がない事とはいえ、なーんか納得いかない。

 

「ちょい待ち。私からも一つ頼んでいいかな」

「なんなりと」

「ここから用意する車で移動するんなら、私達が乗ってきた車を弦十郎たちの所に返しておいて。もう、あそこに戻るつもりはないし」

「了解しました」

 

 それだけを言い残し、黒服くんは一瞬で消えた。

 それを見てキャロルはびっくりしていたが、私はもう完全に慣れた。

 

「では行くぞ。着いて来い」

「ほーい」

「分かった」

 

 こうして、私達は風鳴機関へと行くことになった。

 あそこも屋敷と同様に、そこまで様変わりしてない…と思うけど、やっぱ全体的に機材とかは入れ替えてるだろうな。

 私にとって、10年前にアメリカに行くまでの短い間だけではあるが勤めていた第二の職場とも言うべき場所だから、きっとまた懐かしい気持ちになるに違いない。

 なんか私、日本に戻って来てから懐かしい気持ちばかりを味わってる気がする。

 10年振りなんだから当たり前だけど。

 

 

 

 

 

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