フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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念の為の忠告

 昼食を食べにキャロルと一緒に街まで出かけた所で、ふと見かけた定食屋へと入った私たち。

 そこでまた、私は帰国した時と同じように弦十郎と出会ってしまうのだった。

 

「はぁ…なんでまた…」

「亞里亞? どうかしたのか?」

「いや…なんでもない」

 

 別に弦十郎がどこで何をしようが私には関係ないか。

 けど、空いている席がコイツの隣のカウンター席二つしかないのが気に入らない。

 

「…ここにするか」

 

 本当にお腹が空いた時は一分一秒ですら我慢が出来ない。

 一刻も早く腹の中に何かを入れたくて仕方が無くなる。

 

「「よいしょっと」」

 

 キャロルと一緒にピョンと椅子に飛び乗って、置いてあったメニューを手に取って一緒に見る事に。

 

「中々にメニューが豊富ですな…」

「亞里亞はどれにするんだ?」

「そーだなー…」

 

 別に今日一回限りって訳じゃないから、どれを選んでも問題は無いんだけど、どうせなら普段はあまり食べないような物を注文したいよな~。

 なんて考えている間にお冷が置かれる。

 

「オレはどれにするかな…」

 

 最悪の場合、キャロルと同じのにするってのもあるけど、それは本当に本当の最後の手段だ。

 可能な限り自分の意思を尊重していきたい。

 そんな大人に私はなりたい。

 

「ん~…よし。決めたぞ」

「どれ?」

「この『肉野菜炒め定食』にする」

「おぉ~…でも、お箸の方は大丈夫?」

「問題無い。日本に来てから、ちゃんと練習しているからな」

「マジかー」

 

 日本人として嬉しい限りではあるねー。

 やっぱ、日本に来た以上は日本の食文化にだけは絶対に触れて欲しいからねー。

 

「それじゃあ私はー……ん?」

 

 な…なんだこれは?

 この『餃子定食』と『焼き魚定食』の間に手書きで書かれた『オムレツライス』っていうのは…。

 オムレツなのか? それともオムライスを別の言い方に変えただけ?

 うーん…これだけじゃ判断が出来ないな…。

 因みに値段は…650円か。

 そんなに高い方じゃあないか。

 

(うぅ…学者としての好奇心が『これを注文しろ』と言っている! 分からないからこそ勇気を持って飛び込めと! 未知への探求心を忘れるなと!)

 

 …まぁ…どっちにしろ卵料理系な事には違いは無いか。

 定食屋の卵料理にハズレは無いだろ。

 

「…これにしますか」

「決めたのか?」

「まぁね。注文いいですかー?」

「はーい!」

 

 手を上げて店員さんを呼んでから、それぞれのオーダーを言う事に。

 何気にキャロルは初めての体験では?

 前の時は私が注文もしてたし。

 

「この肉野菜炒め定食と…」

「こっちのオムレツライスをお願いします」

「はい。肉野菜炒めとオムレツライスですね。畏まりましたー」

 

 これでよし…と。

 後は注文の品が来るまで、のんびりと待つだけだな。

 

「まさか、またこんな形で会えるとはな…」

「それはこっちの台詞だよ」

 

 隣でカツ丼を食っている弦十郎が話しかけてきた。

 相変わらず豪快な食い方をする奴だ。

 

「風鳴から車だけが戻ってきた時は驚いたが…あれからどうしていたんだ?」

「聞きたいのか?」

「勿論だ。響君達も凄く心配していた」

「ふーん…」

 

 アイツが私の事を…ねぇ~…。

 知り合ってまだ24時間も経過してないのに、よくもまぁ…。

 呆れると言うか、お人好しと言うか…。

 

「…了子の…フィーネの屋敷である物を見つけた」

「ある物?」

「それに関しては言えない。ガチの機密だからな。ただ、それはあいつの…妹の遺してくれた最後の遺産でもあった」

「了子くんの遺産…か」

 

 いずれ判明するかもしれないが、かといって今ここで言う必要性は微塵も無い。

 こんな時の『機密』って言葉は最強だなー。

 

「その後に紆余曲折あってな。今は『風鳴機関』に出戻りした」

「なん…だと…!?」

 

 流石にこんな場所じゃ叫ばないか。

 何気に常識人ではあるからな。

 

「因みに、今の私は風鳴機関の所長だったりする。あのジジイの御指名だ」

「親父が…君を…」

 

 弦十郎は訃堂のジジイの事を余り快く思ってないからな。

 驚くのも無理は無いか。

 理想主義の息子と、現実主義の父親…か。

 完全に思想が相反してるんだよな。

 

「念の為に言っておくぞ。別に私は訃堂のジジイの下に付いたわけじゃあない。今も昔も、私とアイツの立場は限りなく対等だ。私が所長になった事でその『限りなく』でもなくなってるけどな。あの野郎、自分と同じ権限を私にも与えるとか抜かしやがったしな。んなもんイラねーっつーの」

「…………」

 

 カツ丼を食べる手を止め、弦十郎が驚いた顔でこっちを凝視する。

 何見てんだこら。とっとと食わんかい。

 

「私は私の思想の元に動いている。そして、目的自体はお前達と同じだ。私も平和な世界を目指して頑張っている。ただ、そこに至るまでの道筋が違うだけだ」

「協力は…出来ないのか…」

「当たり前だ。お前らとはソリが合わないと前にも言っただろうが。もし仮に私がS.O.N.G.に入ったとしても、すぐに意見の相違が発生して私はお前達の前から去っていくよ。最悪の場合、敵になる可能性もあったかもな」

「むぅ…!」

 

 それだけ私とこいつ等との間には決定的過ぎるほどの思想の違いがある。

 だからこそ私はS.O.N.G.を好きにはなれないし、仲間になりたいとも思わない。

 

「けど、別にお前達と敵対する気は無い。お前達が何もしない限りは、こっちもまた何もしない。私の言いたい事…分かるよな?」

「相互不干渉条約…か」

「その通り。戻ったら、あのガキ共にもよーく言い聞かせとけよ。じゃないと、絶対に碌なことしないだろ。特にあの『立花響』って奴は」

「…分かった」

 

 これだけ言っておけば大丈夫…だと信じたいが、世の中には『絶対』なんてことは無い。

 念には念を入れて損は無いだろう。

 

「ところで…亞里亞君と一緒にいる、あの少女は一体誰だ?」

「あー…キャロルのことか」

「キャロル?」

「そ」

 

 ずっと私たちだけで話していたので、ちょっとキャロルに申し訳ないと思って横を向くと、キャロルはキャロルで上の方にあるテレビに夢中になっていた。

 この子…何気にこんな店が似合ってたりする?

 

「キャロル・マールス・ディーンハイム。私の一番の友人にして、凄腕の錬金術師。そんでもって、今は風鳴機関の副所長として私の手伝いをしてくれてる」

「錬金術師で副所長だと…!?」

「凄いだろ? キャロルと友人同士になれたのは、私の人生において数少ない誇れる事の一つだ」

 

 割とマジでキャロルは私の自慢だからな。

 だからこそ本気で頼りにしてるし、誰よりも信用してる。

 

「お待たせしました。ご注文の『肉野菜定食』と『オムレツライス』です」

「「おぉー」」

 

 やっと来ましたか。

 もうお腹がペコペコで、背中とくっつきそうだった。

 

「いただきます…と言うんだったな」

「そうだよ。んじゃ私も、いただきま……ん?」

 

 こ…これは…?

 『オムレツライス』というから、てっきりオムライス系だと思っていたが…これはまた予想外。

 まさか、オムレツにご飯とお味噌汁が付いた物だとは。

 これはこれで凄く美味しそうだけど…オムレツってご飯のおかずに成り得るのか?

 

「どうした亞里亞くん?」

「何かあったのか?」

「いや…なんでもない」

 

 両方から心配されてしまった。

 ここで臆するのは流石に恥ずかしい。

 まずは一口食べてみてから評価を下すべきだ。

 

(うわぁ…良い具合に卵が半熟だ…この時点で超美味そう…だけど、それだけじゃ終わらない…! 卵の中にたっぷりと入ってる…細かく切ったネギとチャーシューが!)

 

 ケチャップの量が少ないから心配だったけど、これなら問題無い。

 十二分にご飯のおかずとして食べられる!

 

「あーむ。んん?」

 

 う…美味い…! 想像以上の美味さだ…!

 しかもこれ…絶対に入れてある…あれを!

 

(味覇(ウェイパァー)! 中華スープの材料としてよく使われている最強の万能調味料! 恐らくは半ねりタイプ!)

 

 ここの店主…分かってやがる!

 日本人が最も好む味付けを! 求める物を!

 特に、私のように日本から長い間離れ、和食から遠ざかりつつも恋しく思っていた者からすれば、これ以上ない程の御馳走!!

 

(進む! 進むぞ! ご飯が進む!! こんなの絶対に反則だろ!)

 

 見事な大当たりだ! 私の人生のフルコースメニュー入れたいぐらいの美味さ!

 また来週辺りにこれ食べたいなぁ~…。

 

「見ろ亞里亞! この通り、オレも箸が使えるようになったぞ!」

「やるじゃないのさ。いや、普通に凄いよ」

「ふふん! オレに掛かれば、これぐらいは楽勝だ!」

 

 私がオムレツライスの美味さに感動していると、キャロルが自慢げに箸を使えることをアピールしてきた。

 それはそれとして、頑張って胸を張っているキャロルが可愛過ぎ。

 

「最初にこの箸を見た時には驚かされたがな。こんな棒二本でどうやって食事をするのかと。だが、慣れてしまえば、想像以上に使い勝手が良いな。オレは気に入ったぞ」

「それはなにより」

「後でオレからエルフナインに箸の使い方を伝授してやろう。今から楽しみだ」

 

 キャロル。自覚しているかどうかは知らないけど、言動が思い切りお姉ちゃんになってるからね?

 見ていて凄く微笑ましいから良いけど。

 

(にしても、この中華風オムレツはマジで美味いなぁ…。世の中には、これみたいにまだまだ隠れた絶品料理が隠れているのかもしれないな。久し振りに日本に帰ってきたんだし、これを機に食の喜びって奴を探求してみるのも悪くは無いかもしれないな…)

 

 日本は色んな食文化が交わる中心地。

 寧ろ、日本だからこそ味わえる味ってのも必ずある筈だ。

 

 結局、私はオムレツライスを十数分で食べ終えてしまった。

 これも全て、美味過ぎるオムレツライスが悪い。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ありがとーございましたー」

 

 お店を出てから、私はお腹をさすりながらキャロルと歩いていた。

 

「うーん…余は満足じゃ」

 

 因みに、弦十郎はあの後、デザートの杏仁豆腐を注文してやがった。

 気持ちは分かるが、一体どんだけ食うつもりだよ、あの筋肉達磨は。

 

「亞里亞。あの赤い服の男とは知り合いだったのか? なにやら親しげに話していたが…」

「あー…あれ? アイツは『風鳴弦十郎』つって、S.O.N.G.の司令官やってる男だよ」

「アイツが例の…って、風鳴?」

「気が付いた? 弦十郎はあの訃堂の息子なんだよ」

「そうだったのか…」

「因みに次男な。アイツには兄貴の『八紘』っていう兄貴がいるんだよ」

「そいつとも知り合いなのか?」

「少しだけな。ま、いずれ会うことにはなると思うよ。風鳴機関にいる限りは…な」

 

 あいつもあいつで何を考えているのか、良く分からない所があるからなー。

 そう言った部分じゃ、単純な弦十郎や防人星人である訃堂のジジイの方が分かり易い。

 

「戻ったら仕事の続きをするベー。キャロル」

「どうした?」

「実は、キャロルの意見を聞きたい部分があってさ。戻ったらちょっと手伝ってくれない?」

「お安い御用だ」

「ん…あんがと」

 

 新しい発見もあって大満足だし、午後からも頑張りますかねー。

 あーあ。大人は大変だー。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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