フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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交わらぬ道

「え? 亞里亞ちゃんに会った?」

 

 S.O.N.G.本部に戻った弦十郎が開口一番に言ったのは、昼食時に亞里亞と出会った事だった。

 

「あれからずっと姿が見えなかったが、一体どこに…」

「俺と彼女とは、町にある定食屋で会った。亞里亞くんが帰国してきた日と同じようにな」

 

 似たような状況で再会した二人。

 これを偶然の一言で片付けるのは簡単だが、弦十郎はそんな気は無い。

 彼は不思議と運命染みたものを感じていた。

 

「…亞里亞くんは…今は『風鳴機関』に所属している」

「か…風鳴機関に…!?」

「いや、正確には『出戻った』と言うべきか…」

「戻った…? その言い方だとまるで…」

「そうだ。亞里亞君は嘗て、風鳴機関に所属をしていた事がある。二課を辞めて、アメリカに行くまでの少しの間になるが…彼女は風鳴機関の主任研究員をやっていた」

 

 今になって明らかになる亞里亞の過去の一端。

 それを聞き最も驚いたのは他の誰でもない翼だった。

 

「亞里亞殿が…風鳴機関にいた…?」

「まだ翼が幼い頃の話になるがな。今の亞里亞君は主任研究員から一気に昇進して、機関の所長になっているらしい」

「所長って…一番偉いってことデスかっ!?」

「大出世だ…」

 

 マリア、切歌、調の三人は研究施設にいた事があるので、主任研究員から所長になるということが、一体どれだけ凄いのかそれなりに理解をしていた。

 

「ま…待ってください。あそこの所長はお爺様だった筈。どうして亞里亞殿が…」

「…親父に譲られたらしい。後は所員たちの後押しもあったみたいだが。どうやら、亞里亞君は短い間でかなりの信用を得ていたようだ。その辺は流石としか言いようがない」

 

 二課を辞めてからアメリカに行くまでの間の期間は半年にも満たない。

 たったそれだけの時間で所長に推薦される程の信用と信頼を勝ち取ってみせた。

 亞里亞の潜在的な凄さを思い知るには十分過ぎる証拠となる。

 

「亞里亞君が所長になった事で、親父は今度こそ本格的に隠居をするみたいだな。だからと言って、その影響力が消える訳ではないが。寧ろ、親父は亞里亞くんにも自分と同じ権限を与えるつもりでいたようだ。本人は鬱陶しがっていたがな」

 

 昔から亞里亞は権力にものをいわせて何かをするタイプではなく、その優れた頭脳と卓越した手腕で物事を進めるタイプだ。

 そんな彼女だからこそ、仮に権限を与えられても、それを使用することは決してないだろうと確信していた。

 

「…亞里亞君はS.O.N.G.に『相互不干渉』を提案してきた」

「「そーごふかんしょー?」」

 

 言葉の意味が良く分からない響と切歌は、目を丸くしながら小首を傾げた。

 その様子に呆れ頭を抱えたクリスが、仕方ないと言った感じで教える事に。

 

「要は『自分達が何もしない代わりに、お前達も何もするな』って言ってるんだよ。お互いに邪魔だけはしないようにしよう…ってな」

「クリス君の言う通りだ。目的自体は同じだが、そこに至るまでの過程が違うと言っていた」

 

 正直な話、亞里亞が協力をしてくれたら、どれだけ心強いか計り知れない。

 だが、弦十郎は同時に知っていた。

 亞里亞の性格的に、ここの空気や装者達とは致命的なまでに合わないであろうと。

 下手に引き込もうとして不信感を与えるよりは、今のような形の方が良いような気さえしている。

 櫻井亞里亞という人間を敵に回す事だけは何があっても絶対に回避しなければいけないから。

 

「特に響くんには強く言っておくようにと念を押していたな」

「そんな~っ!?」

「まぁ…そうだろうな。アタシがアイツの立場でも同じ事を言うわ」

「クリスちゃんッ!? 酷いよ~!」

 

 まさかの名指しで念を押された。

 亞里亞から問題児のように思われていた事にショックが隠せない。

 

「こうなることは、なんとなく予想はしていた。前々からも言っていたしな。だが、流石に風鳴機関に戻るとは思っていなかった」

「あの…師匠」

「どうした響くん?」

「亞里亞ちゃんとお話することって…出来ませんか?」

「話…か。それぐらいは構わんと思うぞ? 恐らく、亞里亞君が言っているのは現場で鉢合わせをした時に邪魔をするなと言うことだろうし、プライベートの事まで口出ししてくることはないだろう。と言っても、流石に風鳴機関に行って話をするというのは難しいだろうがな。偶然、町中で出会って話をする…ぐらいなら彼女も何も文句は言わないだろう」

 

 厳しい事を言うようで、実は意外な所で甘い部分もある。

 本人は自覚していないし、その事を指摘しても否定するだろうが。

 

「だから、もし話をしたいのであれば、それこそ偶然を祈るしかないだろうな」

「こちらから機関に連絡を取ることは出来ないのかしら?」

「不可能ではないだろうが…難しいだろうな。風鳴機関は国内にある研究機関の中でも最も大きく、最も重要視されている場所だ。それ故に、関係者以外が施設内に入ることは愚か、その敷地内に侵入すること自体が固く禁じられている」

「もしも侵入した場合は?」

「不法侵入罪を適用され、厳しく罰せられる。外部から通信することも難しく、基本的にそれが許されているのは総理を初めとする一部の政治家連中だけだ」

「私達はどうなのかしら?」

「向こうから何か言ってくることはあるが、こちらから通信をしたことは今までに一度も無い。だからこそ難しいと言ったんだ。出来るかどうかが不明瞭だからな」

 

 亞里亞が所長となった風鳴機関ならば、互いに協力関係になっても良いかもしれない…弦十郎は最初、そんな風に考えていた。

 だが、風鳴機関自体が非常に接触が難しい場所なので、連携することはかなりの難易度を誇っている。

 自分でも楽観的だと理解しているが、そんな風な考えを持ってしまうほどに亞里亞の能力は魅力的なのだ。

 

「もう一度でいいから、亞里亞ちゃんと話をしたいな…」

「そうだな…私も同じ気持ちだよ、立花…」

 

 何とも言えない空気のまま、昼の時間が過ぎていくのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うーん…」

 

 コーヒーを飲みながら書類に目を通す。

 今の所、特に問題らしい問題は発生していない。

 

「どーかしたんですかぁ~? 博士ぇ~」

「んー…ちょっとな」

 

 今日、私の秘書的なことをしているのはオートスコアラーのガリィ。

 四体いるオートスコアラーの中で最も『性根が腐っている』らしいが、私的にはそれぐらいの方が丁度いいと思う。

 真面目過ぎると、いざって時に行動できないからな。

 

「ガリィ。『魚』は『餌』に掛かったか?」

「まだみたいですね~。あ~んな『あからさまな餌』を何度も何度もチラつかせてるのに、とっとと引っかかればいいのに」

「馬鹿は馬鹿なりに色々と考えてるってことだろ。ま、それに関しては気長に待つとしよう。別に急ぐわけじゃないし」

 

 あー…やっぱ、オートスコアラーの中じゃガリィが一番話がし易いわー。

 もし私が自分用のオートスコアラーを作ったら、ガリィみたいな性格の奴にしよう。

 

「そういや、この間来たエルフナインはどうしてる?」

「意外と役には立ってるみたいですよ~? それとは別に、よくマスターと一緒に女性職員の着せ替え人形になってるみたいですけど」

「で、ガリィもそれに嬉々として参加してる…ってか?」

「だいせ~か~い! マスターのあんな姿を見れるなんて最高にレアじゃないですかぁ~! この機会を見逃すなんて出来ないですって」

 

 キャロル…エルフナイン…哀れな。

 今度また何が奢ってやろう。

 

「んん~…よし。決めた」

 

 ポケットからスマホを出してからピポパってな。

 

「何を『決めた』んですかね?」

「戦力を増やす」

「あれれ~? もしかして、マスターや私達だけじゃ不足なんですかぁ~?」

「そんなわけないだろ。キャロルも、お前達も凄く役に立ってるよ。冗談抜きで感謝してる」

「そこまでストレートに言われると、流石にリアクションに困りまするなー…」

 

 ガリィって、稀に私の前だと『素』を出したりするよな。

 それだけ相性がいいって事なんだろうか。

 

「キャロルは錬金術のエキスパート。私は考古学のエキスパート。出来ればここにもう一つの分野のエキスパートが欲しい」

「あれ? 博士は科学の分野でも才能を発揮してませんでしたっけ?」

「確かに私にも出来なくはないが、やっぱり専門家には僅かに劣るよ。餅や餅屋…だ」

 

 この状況で私が電話を掛ける相手は一人だけ~ってな。

 私が所長になった事で暇してるだろうから、この時間帯でも普通に出てくれるだろう。

 

「もしもしもしもし? 訃堂おじいちゃんはいますか~ってか?」

『亞里亞か。一体どうした?』

「単刀直入に言う。風鳴機関に新たなる戦力が欲しい」

『突然だな。何か不測の事態でもあったのか?』

「それはない。その『不測の事態』を未然に防ぐ為に戦力を増やすってだけだ」

『ほぅ…?』

 

 何かが起きてからでは遅い。

 起きる前に対処することが一番大切なのだ。

 

「『深淵の龍宮』の『封印』を解け。その『中身』が欲しい」

『あの男か…。貴様の『元同僚』でもあったか』

「そ。性格がぶっ飛んではいるが、その頭脳は本物だ。そして、私ならアイツを説き伏せるなんて簡単にできる。あのバカの性格は把握してるからな」

『まさか、お前がそんな事を言いだすようになるとはな…防人としての使命に目覚めつつあると見える』

「言ってろ。で、可能なのか?」

『可能だ。だが、場所が場所なだけに少しばかり時間は掛かるがな』

「別に構わない。こっちも急いでいる訳じゃあない」

 

 その間に、こっちはこっちで出来る事をやるだけさ。

 

『ところで亞里亞よ。お前に一つ問いたい』

「急にどうした」

『お前は何を待っている?』

「風鳴機関を大幅に強化するチャンスを」

『なんだと?』

「これは私にしては余りにもらしくない一種の『賭け』だ。上手くいけば頼もしい戦力を手に入れられるが、失敗すれば敵を増やすことになる」

『お前がそこまで言うということは、賭けるだけの価値があると見てもよいのだな?』

「あぁ。そう思って貰って構わない。けど、中々に『魚』がこっちの用意した『餌』に引っかからなくてな」

 

 割と堂々としているつもりなんだが…やり過ぎたか?

 逆に奴等を警戒させてしまったかもしれない。

 

「かといって、こっちから仕掛けるような真似は避けたい。私達はあくまで『護る側』でいなくちゃいけない」

『分かっているではないか。亞里亞よ…矢張り、貴様は『防人』だ』

「お褒め頂きドーモ」

 

 全く嬉しくは無いけど。

 

『いずれ、お前も儂と同じ『護国の鬼』と化す日が来るのやもしれぬな』

「それだけは勘弁。私はどこまでも『人間』として生きて、死ぬまで戦い続けるつもりだよ」

『それでこそ儂の認めた女よ。では、龍宮の事に関しては『封印』が解け次第、こちらから連絡するとしよう』

「頼んだ。じゃあな」

 

 ふぅ…一応はなんとかなったか。

 後でちゃんとキャロルやエルフナインを初めとした皆にも報告しておかないとな。

 これはほぼ、私の独断で決めたも同然だし。

 

「後は…『魚』を待つだけ…か」

 

 それさえどうにかなれば、私の『計画』はかなりスムーズに進むんだけどな。

 

「早く、『魚』どもで『コイツ』の試運転もしたいしな」

 

 妹の遺してくれた最後の遺産。

 コイツを使ってド派手に始まりの鐘を鳴らそうじゃあないか。

 その日が来るのが今から楽しみだ。

 

 

 

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