フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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いざ、海の底へ

 それは、私が機関の休憩室にてボケーっと煙草を吸っていた時だった。

 

「あ~…一仕事した後の一服は最高ですなぁ~…」

 

 美味い飯と美味い煙草と美味い酒。

 取り敢えず、これだけあれば普通に満足出来るわぁ~…。

 

「いっつも思いますけど、所長の見た目で煙草とか吸ってると普通にアウトですよね。絵的な意味で」

「どーゆー意味だコラ」

 

 確かに見た目こそ幼いかもしれないが、これでも立派な大人…つーかもうすぐ40のオバサンだぞ?

 普通に喫煙と飲酒をして何が悪い。

 

「ふむ…亞里亞はよく酒を飲んだり煙草を吸ったりしているが、楽しいのか?」

「うーん…楽しいっていうか…息抜き? 別に真似をする必要は無いよ。こーゆーのは人それぞれだし」

「そうかもしれんな。オレも随分と長い時間を生きてはきたが、未だに煙草なんて一度も吸った事は無いからな」

 

 へぇー…そうだったんだ。

 ま、キャロルの容姿で煙草を吸っている図は私以上に危ない気がするしな。

 

「んじゃ酒は?」

「…甘いのならば偶に」

 

 成る程。

 キャロルはカクテル系の酒が好き…と。

 これは覚えておこう。

 

「流石にエルフナインはこーゆー話とは無縁か」

「そうですね。飲食の重要性は認識してますけど、お酒やたばこの話となると、ちょっと…」

 

 しっかし、あれからエルフナインも随分と馴染んできたな。

 今じゃすっかりキャロルの妹的ポジションになってるし。

 

「ん?」

 

 そんな寛ぎの時間にいきなり私のスマホが鳴った。

 誰かと思って見てみると、なんと訃堂のジジイからだった。

 

「へいへーい。なんじゃらほい」

『亞里亞か。龍宮に行く手配が整ったぞ』

「マジか。思ったよりも早かったな。一体何をした?」

『フッ…特にこれといった事はしてはおらん。ただ…』

「ただ?」

『聞き分けのない愚か者共と『話』をしただけに過ぎん』

「話…ね」

 

 一体どんな『話』をしたのやら。

 ちょい前にニュースで代議士とかが謎の失踪とかしたけど、もしかしてそれか?

 

『お前も知っての通り『深淵の龍宮』は海底施設だ。向かうには耐圧性能の高い潜水艇で行く必要がある』

「分かってる」

『現状、あそこまで行ける性能を持つ潜水艇となると数が限られる。例えば、S.O.N.G.が拠点として使用している物など…とかな』

「まさか…」

 

 奴等に水先案内人をさせる…なんて言わないだろうな?

 流石にそれは御免被るぞ。

 

『ふっ…冗談だ。ワシとて、こんな事で奴等に借りを作るのは御免だ。利用するならば、もっと良い使い道がある』

「分かってるじゃん」

 

 ちょっぴりドキドキさせやがって。

 地味に煙草を落としそうになっちまったじゃねぇか。

 

『潜水艇自体はちゃんと別の代物を用意させてある。小型ではあるが性能は高い。今回の事は極秘故に隠密性を優先させて貰った』

「それでいい。適当なやつだったら、私の手で魔改造するつもりだった」

『…ある意味、そっちの方が良いかもしれんな』

 

 自分は冗談を言うくせに、こっちの冗談は真に受けるのかよ。

 本当に読めない奴。

 

『小型であるが故に人員は避けん。行けるとしてもお前を含めて二名が限界だろう。どうする?』

「二人…か」

 

 どうするかな…。

 いつもならキャロル一択なんだけど、今のキャロルは副所長って立場になってる以上、そうそう簡単に動かせない。

 となると、今の私にある選択肢はそう多くは無い…か。

 

「…よし。決めた。一人は私。もう一人はオートスコアラーのレイアに同行を頼む事にする。いいか?」

「オレの方は構わんが…レイア」

「はっ」

 

 キャロルが視線を送ると、部屋の端の方からレイアがこっちに来た。

 四体いるオートスコアラーのリーダー的存在であり、冷静沈着な性格をしているので頼りになる。

 ちょっと派手好きなのが玉に傷だが、それぐらいは充分に許容範囲内だ。

 

「亞里亞に同行して護衛をしろ」

「了解しました。派手に遂行してみせましょう」

 

 別に派手じゃなくてもいいから。

 派手な護衛って聞いたことないわ。

 

『オートスコアラーを選ぶか。お前らしいと言えばお前らしいか』

「そう?」

 

 私らしいと言われても反応に困る。

 自分でもまだ『自分らしさ』ってのを良く理解してないんだから。

 

『いいだろう。では、そのように手配をしておく。で、いつ行くつもりだ?』

「出来れば早い方が良いけど…もしかして、今から行けるとか?」

『流石にそれは難しい。だが、急げば明日には可能な筈だ』

「それでも十分に凄いわ」

 

 たった一日で全ての準備をさせるとか…風鳴は本当にブラックだなぁ。

 部下にはちゃんとその分の褒美とかやってんのか?

 

『では、明日の昼に車を寄越す。それに乗ってくるがいい』

「分かった。あんがとな」

『礼には及ばん。これも全ては護国…いや、護星のためよ。では、失礼する』

 

 あ…切れた。

 にしても『護星』って…本気で世界護る気になりやがったか。

 焚きつけた身で言うのもなんだけど、本当に変わったな。

 

「ま…そーゆーわけだ。キャロル。私が不在の間…つっても一日ぐらいだけど、ここを任せるよ」

「いいだろう。精々、レイアの奴をこき使ってくれ」

 

 さーて…どうなることやら。

 勝算はある…けど、あいつは別の意味で予測が出来ないからなぁ。

 未だにあのバカの精神構造が理解出来ないし。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

 私とレイアは毎度お馴染みの風鳴家の黒塗り車に乗って小型潜水艇が待っている場所へと向かっていた。

 

「…博士。少しよろしいでしょうか?」

「どした?」

「何故に私をお選びになられたのですか?」

「それに関しては昨日ちゃんと説明をしたつもりなんだが…それでは足りなかったか?」

「いえ…そういう訳ではないのですが…」

 

 性能や性格とかじゃなくて、それとは別の『選んだ理由』が聞きたいのか?

 これは完全に私個人の事情だから別に話す必要は無いと思ってたんだけど…。

 

「…別に。大した理由じゃないよ。単にレイアと話す機会を設けたかったってだけさ」

「私と…話す?」

「そ。ファラは私の秘書的な事をしてくれているし、ガリィに至ってはこっちが何も言わなくても勝手に来てくれるからな。けど、レイアとこうして面と向かって話したことって今までに無かっただろ? だからさ」

 

 ぶっちゃけた話、私はオートスコアラー達を『物』として見てはいない。

 おかしいと思われるだろうが、私の中じゃこいつらは風鳴機関の立派な『所員』の一人だ。

 なので、他の連中と対等に扱っているつもりだし、それは他の所員たちにも言及している。

 アイツ等は二つ返事で快く受け入れてくれたけどな。

 

「ま。護衛っつっても特に何かをする必要性は無いんだけどな。あくまで『念の為』だし」

「今から向かうのは深海だと聞きましたが…」

「そ。『深淵の龍宮』は簡単に説明すると、危険すぎて地上では保管できない異端技術を保管しておくために建造された施設だ。そこに私が求める人物がいる」

「博士のかつての同僚…なのですよね?」

「まぁね。つっても、フロンティア事変の時に何を考えたのか自分の左腕を自立型完全聖遺物であるネフィリムと同化させたことで『消滅を免れたネフィリムの一部』…要は『物』として扱われてしまい、結果として龍宮へと幽閉…いや、隔離されたんだ」

 

 昔から色んな意味でぶっ飛んでたけど、まさか自分の腕を聖遺物と融合させようだなんてな…。

 あんまし人の事は言えないけど、何がお前をそこまで暴走させちまったのかね…。

 同じ『英雄バカ』でも、昔のお前の方がまだ幾分かはマシだったぞ。

 

「常人ならば、深海の施設に隔離なんて精神崩壊してもおかしくは無いけど…アイツの場合は割と普通にピンピンしてそうだな」

「そうなのですか?」

「うん。私達の常識には当て嵌まらないような人間だからな…悪い意味で。お前も覚悟しておいた方がいいと思う。本当に凄いから」

「は…はぁ…」

 

 なんて話している間に、車はなにやら海沿いにある建物へと到着した。

 

「ここが目的地なのか? てっきり港とかに行くと思ってた」

「はい。ここに例の小型潜水艇と、訃堂様がお待ちしております」

「あいつもいるのかよ…」

 

 別に見送りをしろなんて言った覚えは無いんだけどな…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 車ごと施設の中へと入ると、そこは非常にシンプルな場所だった。

 特にこれといった機器などは無く、強いて言えば真ん中に巨大なプールがあり、そこに私達が乗るであろう潜水艇が浮かんでいることぐらいか。

 そこの端に訃堂が黒服君達と一緒に私たちを待っていた。

 

「お待たせ」

「うむ」

「つーか、なんでいるんだよ」

「別に意味は無い。単にお前の顔が見たくなっただけよ」

「さよか」

 

 私の顔が見たかったって…いつから、お前はそんな大人しい考えを持つようになったんだよ。

 こっちに全てを任せると決めたからか?

 

「で、お前が亞里亞の護衛をするというオートスコアラーか」

「はい。レイア・ダラーヒムです」

「…特に問題があるとは思えんが、それでも万が一の時には何が何でも亞里亞を死守せよ。亞里亞こそが全ての希望なのだ」

「承知しております」

 

 …てっきり『ガラクタ』とか言って罵詈雑言をぶちまけると思ってたけど…意外過ぎる反応。

 ジジイ…幾らなんでも変わり過ぎでは?

 まるで別人みたいだぞ?

 

「ところで亞里亞よ。お前、潜水艇の運転は出来るのか?」

「それぐらいなら楽勝。ちゃんと『小型船舶操縦士』の資格は持ってるし、シミュレーションは嫌ってほどやった。実際に乗って操縦した事もあるし、通信とか三次元的な動作とかも出来る」

「そうか。だが、念の為に操縦マニュアルを渡しておこう」

「あんがと。レイア」

「はい」

 

 マニュアルをレイアに渡すと急にポカンとした顔になる。

 

「私が色々と船を確認している間、こいつを熟読しておけ。お前にはサポートを頼みたい」

「了解しました」

 

 しっかし…二人乗り前提の割には随分とデカくないか?

 性能面だけじゃなく、居住性も重視したみたいな作りだな。

 

「へぇ~…」

 

 外観自体はよくある楕円形の潜水艇だが、中身は中々に豪華だ。

 これ…色んな所が最新技術の塊じゃないのか?

 よくもまぁ、こんな船を見つけてみたもんだ。

 

「どうだ亞里亞よ」

「凄いな。どこにこんなのがあったんだ?」

「アメリカよ。政府のバカどもにお前の名を出したら一発だった」

「マジかよ…」

 

 もう私とアメリカとは無関係なのに、未だに影響力があるとはこれいかに。

 なんとも複雑な気分になる。

 

「…うん。この手のタイプなら操縦出来る。問題無い。レイア。そっちはどうだ?」

「こちらも熟読完了しました。いつでも大丈夫です」

「フッ…流石はキャロルのオートスコアラーだ」

「お褒めに預かり光栄です」

 

 これでもういつでも行ける。

 さぁて…待ってろよ、英雄オタクの大馬鹿野郎。

 お前には今回のこと以外にも色々と言いたい事があったんだ。

 それを全部ぶちまけてやるから覚悟していろ。

 

 

 

 

 

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