フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん 作:とんこつラーメン
完全個人用の無駄に高性能な潜水艇にレイアと共に乗り込み、深い海の中を進んでいく。
どれぐらいの時間が掛かるのかを聞くのを忘れていたが、海底施設である以上はそこまで掛からないだろう。
ま、仮にそれなりの時間が掛かってもレイアを話でもして暇を潰せばいいだけだしな。
…なんて気楽に考えていたら、なんか想像以上にすぐに目的地へと到着してしまった。
色々と身構えていた自分が急にアホらしくなってくる。
レイアの方も、まさかこんな近海にあるとは思っていなかったようで、なんだか拍子抜けと言った感じの表情をしていた。
「もう少しだけレイアとの二人っきりの時間を堪能したかったけど…仕方がない。接岸するぞ」
「え? あ…派手に了解しました」
未だに『派手』の意味が良く分かってないけど…まぁいいか。
それよりも、入り口を見つけないと…っと、あった。
「外観だけを見れば、『海底施設』ってよりは『海底隔離施設』って感じだな。無機質な所が特に」
「あそこに、博士が協力を求める人物がいるのですね?」
「そ。じゃあ、行くぞ」
ゆっくりと資材搬入用の出入り口へと接近していく。
入口自体は横に存在し、もう既にこちらが来ることは想定していたのか、自動で扉が開いた。
そこから更に海水に満たされた空間を進み、ようやく出口が見えた。
「よし…浮上する」
「了解しました」
潜水艇が水面に顔を出したのを確認した後に、静かに上部ハッチを開けて外の様子を確認する。
「ふむ…ちゃんと空気はあるようだな。行こうか、レイア」
「はっ」
いや…その返事は流石にどうよ。
まるで私が悪の組織の親玉みたいじゃん。
なんてツッコミを心の中でしつつ、私とレイアは潜水艇から降り立った。
「発着場もまた何も無いですこと。そして……」
キョロキョロと辺りを見渡すと、そこにはこれまた無機質な自動扉が一つあるだけ。
「…出迎えは無しか。当然だな」
「どうしますか?」
「決まってる。あの扉の向こうまで行くぞ。そこで『奴』が待ってる」
レイアを従えながら扉まで行き、そこで訃堂ノジジイから予め教えて貰っているパスコードを入力する。
「そんでもって…っと」
白衣のポケットから成人男性の手の平サイズのケースを取り出し、それを開ける。
ケースの中には透明な手の形をしたシートが入っていた。
それをピンセットで摘まみ上げてから、指紋認証用の装置に乗せる。
『認証完了。では、次は網膜認証を行います』
「へーへ。わかってますよーっと。レイア」
「はい」
腰を低くしてレイアが自分の目を網膜認証用の装置に近づける。
実は、キャロルの許可を貰って、レイアの目を一時的にではあるが認証用の代物に交換しておいたのだ。
これでこの網膜認証も突破できる。
『認証完了。ようこそおいでくださいました』
「ドーモ」
扉が開かれると、そこは巨大な空間となっていて、所狭しと様々な異端技術に関する危険物が乱列してあった。
倉庫と言うよりは『地上には置けない危険物を一ヵ所に集めただけ』な場所だ。
「ここが『深淵の龍宮』…」
「そ。世に出せない、出してはいけない危険物を保管という名目で放置しているだけの場所だ」
さて…と。あいつはどこにいるのかな~?
「…いつの日か、何者かがこの僕の能力を必要とし、この場所に来ることは予想していた。だが……」
この、歌舞伎町で万事屋やってたり、柱の男と戦う運命を背負った波紋使いみたいな声は…間違いない。アイツだ。
「まさか! アナタが一番最初に訪れるとは流石の僕も想像すらしていませんでしたよ!! 櫻井亞里亞博士!!」
「…久し振りだな。ウェル」
一見すると学者然とした感じの雰囲気を出しつつ、その実は色んな意味で頭の中がぶっ飛んでいるこの男こそが、私が探した人物…ウェル博士だ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「こうして会うのは…私がナスターシャのババアの所を離れてからになるか」
「そうなりますね。いやはや…貴女はあの頃から全く変わっていない。今でもとてもお美しい」
「はいはい。いつもの常套句どーも」
毎度毎度思うが、どうしてこいつはこう歯の浮くようなセリフを息を吐くように出せるんだ?
この男には羞恥心ってものが無いんじゃなかろうか。
私達は今、互いにテーブルを挟んで向かい合っている。
イスとテーブルといった最低限の物ぐらいは置いてくれているみたいだな。
「ところで、さっきからずっと気になっていたのですが、博士の横にいる彼女は一体? 見た感じ、人間ではないようですが」
「あぁ…レイアのことか」
「レイア?」
「そうだ。こいつはまぁ…私の一番の友人である錬金術師が作ったオートスコアラーだ。今回は私の護衛として同行して貰った」
「錬金術師…! 確かにアナタはあの頃から錬金術の知識がありましたが…それで納得しましたよ。錬金術師の知り合いがいれば、確かに錬金術に詳しくなっても全く不思議じゃない」
と言っても、実際にF.I.Sでその知識を使う機会は無かったけどな。
「レイア。挨拶をしな」
「はい」
私の後ろから一歩前に出て、レイアが非常に丁寧な挨拶をした。
「レイア・ダラーヒムと申します。初めまして」
「これはこれはまたご丁寧に。では、こちらも自己紹介をしなければなりませんね」
嫌な予感…変な事をしないだろうな。
「僕こそが! 偉大なる英雄にして! 嘗ては亞里亞博士の仕事仲間でもあった至高の天才である『ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス』です!」
「「…………」」
ほーら。やっぱりレイアが反応に困ってる。
私もどう反応すればいいのか分からないけど。
「自分でも長い名前であると自負しているので、どうか気軽に『ウェル博士』とでも呼んでください」
「は…はぁ……」
…うん。だよね。
そんなリアクションになるよね。分かる。
にしても…なんか前にも増してハイテンションになってないか?
昔はもっとこう…落ち着きの部分も多くあったような気がするんだけど。
あれか? 左腕をネフィリムと同化させたことで精神面でも何か影響が出ているのか?
それとも単純に、これこそがこの男の『素』なだけだったとか。
…後者の方が普通に有り得そうだな。
「しっかし…報告書を読んで知ってはいたけどさ…こうして実際に見ると凄いな。その左腕。マジであの『ネフィリム』をくっつけてるのか?」
「そうですとも! ネフィリム因子を持つLiNKERを使用した事で、この僕は遂に自らの意志で聖遺物を操る術を手に入れたのです!!」
成る程…そういう理屈があったのか。
確かに、その方法ならば理論上は可能かもしれないが…。
「随分と思い切った事をしたもんだ。少しは葛藤とかは無かったのか?」
「あると思いますか?」
「いや…無かっただろうな。お前の場合は」
普通ならば少しは躊躇とかをするところだろうが、ウェルは色んな意味で心のタガが外れちまってる。
それもこれも全て、いつも口癖のように言っている『英雄』になる為か。
「しかし、まさか亞里亞博士がアメリカから帰国していたとは知りませんでした。いつ頃お戻りに?」
「ついこの間。あの『フロンティア事変』の終了とほぼ同時期に、日本に戻れるようになったのさ」
「ということは…遂に完成したのですかッ!? 博士が長年に渡って研究し続けた『人造聖遺物』…それを触媒として生み出される『量産型シンフォギア』が!」
「ま…一応はね。まだまだ研究しなくちゃいけないことは山のようにあるけど」
『研究』という行為に終わりは存在しない。
それこそ、人生の全てを掛けて行うべき命題なのだ。
「ま…まさか、ここに持ってきたりは…」
「きてるよ。お前がそう言うと思ってね。ほら」
「おぉぉ…! これが…!」
いつも首から掛けている『青いシンフォギアのペンダント』をウェルに渡して見せる。
それだけで、こいつはまるで新しいオモチャを親から買い与えられた子供の用に目をキラキラさせながら興奮していた。
「成る程…従来のシンフォギアが赤いペンダントであるのに対して、これは青くなっているのですね。色を除けば、見た目は完全に従来のシンフォギアとほぼ同じ…だが…」
「そう。中身は全く違う。当然だが、こいつを使うのに『LiNKER』は必要ない」
「性能は? もう実戦投入は可能なのですか?」
「性能自体はオリジナルと殆ど差は無い。その気になれば『絶唱』や『エクスドライブ』も使える。使用者次第で…だけど」
「もう既にそこまで…! 流石は聖遺物研究の第一人者であり、同時にシンフォギアの生みの親とも言うべき天才科学者! この英雄が本気で尊敬しているだけはある!!」
自分で英雄を自称するって…。
もう痛すぎて見てられない…。
「実は、これの他にももう二つほど、これが存在している」
「ほぅ…? その言い方だと、まるで自分以外の誰かが作った物を所持しているように聞こえますが?」
「その通りだよ。その二つは私の妹である了子が製作したものだ。と言っても、完成度自体は約80%ぐらいだったけどな」
「妹…あの二課に所属していて、先史文明の巫女『フィーネ』の器として覚醒したという…」
「そ。カディンギルで月をブッパした女だよ。そして、お前らが活動を開始する切っ掛けを与えた女でもある」
「そのこと自体は知っていましたが、改めて聞くと凄まじいですね…。何かが違っていたら、亞里亞博士がフィーネになっていた可能性もあると思うと尚更」
「私がフィーネに…ねぇ…」
フィーネには申し訳ないけど、私の身体じゃあ思うようにいかなかったと思う。
あれは了子の身体だったからこそ、あそこまで行ったんだと思うし。
「未完成な量産型は今、私の手で完成させている最中だ」
「でしょうね。昔からアナタは中途半端が嫌いな女性だった」
だって、半端なままで終わらせたら気持ち悪いじゃない。
やるならキッチリやらないと。
「そう言えば、今の貴女はどこで何をしているのですか? この『深淵の龍宮』にまで態々来たのも、こうしてこの僕とお喋りをする為ではないでしょう?」
「そうだな。お前と話すのも久し振りだから、つい話し込んでしまった」
「いえいえ。かくいう僕も、こうして博士とこうして再開でき、話をする事が出来た事を嬉しく思っていますよ。ご覧の通り、ここは殺風景な上に意志ある存在は僕一人のみ。暇で暇で仕方が無かったところです」
「ほぅ…それは良いことを聞いた。そんなお前に朗報だ」
この調子なら…意外と上手くいくかもしれない。
ウェルの性格が前にも増してぶっ飛んでて助かった。
「実はな、今の私は『風鳴機関』に所属している」
「帰国したと同時に、元いた場所へと出戻った…ということですか」
「そ。で、しかも今はそこの所長を務めている」
「これはまた…大出世じゃあないですか」
「まぁな。所長って事は、人事ぐらいなら自分の裁量で好きに出来るってことでもある。今でも優秀なスタッフが多いが…使える奴は多ければ多いほどいい。私の目的の為には特にな」
「目的? それは一体…?」
「んなの決まってるだろ。『世界平和』だよ。勿論、元二課…現『S.O.N.G.』の連中とは違ったやり方で…だがな」
「最終的な目的は同じでも、そこに至るまでの過程は全く違うと?」
「そうだ。奴らの事は嫌いじゃないが、正直言って苦手だ。やるならもっと徹底的にやる。中途半端は御免だ。だから……」
私はウェルに握手をするように手を差し出す。
彼がこの手を握ってくれることを信じて。
「私に協力してくれ。お前の生化学者としての頭脳が欲しい」
「この僕を…ですか」
「そうだ。上手くいけば、今度こそお前は正真正銘の『英雄』に成れるかも知れないぞ?」
さぁ…どうなる?
正直、さっきからドッキドキしてます。
「はぁ…全く…貴女って人は…」
「ん?」
お…おぉ…? 握手を…してくれた?
「もしも同じことを他の誰かから言われたら、その時は間髪入れずに断っていたでしょうが、他ならぬ亞里亞博士からそう言われたら、協力しないわけにはいかないでしょう」
「い…いいのか?」
「当然。立花響さん達もそうですが、僕からすればアナタも立派な『英雄』なのですよ」
「私が…英雄…?」
「そうですとも。だって、貴女がシンフォギアの理論を生み出さなければ、彼女達は立ち上がることすら出来なかった。僕は知っている。戦場に立って戦うだけが『英雄』の仕事ではないとね」
…妙な所で冷静な奴。
だからだろうか。不思議と嫌いにはなれない。
「英雄からの申し出は断れませんよ」
「…そっか。でも、私は別にお前を部下として迎えるつもりはない。あくまで同志として歓迎するつもりだ。表向きは新しい所員の一人ってことにはなるが」
「結構ですとも。貴女と共にまた仕事が出来るだけで、僕としては十分過ぎます」
「…ありがとう。そう言ってくれるだけでも十分だ」
こうして、私は新たな仲間を迎え入れる事に成功した。
ジョン・ウェイン・ウェルギンゲトリクス。
嘗ての同僚にして…その性格と嗜好さえ除けば非常に優秀な科学者だ。