フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん 作:とんこつラーメン
ぶっちゃけ、本編とは無関係に等しいので、読まなくても支障はありません。
ウェルとの交渉(?)の末に奴を仲間に引き入れることに成功した私達は、後は帰るだけとなった。
「さて…と。んじゃ、とっとと戻るとしますか。勿論、ウェルも一緒でな」
「それは良いのですが…どうやって戻るおつもりで? 確か、貴女方が乗ってきた潜水艇は小型故に最大定員が二名だった筈では?」
「その点なら問題ナッシング。ほれ」
白衣のポケットから、とある小さな結晶のような物を取り出す。
ここに来ると決めた時、真っ先に持ってくると決めたアイテムだ。
「これは?」
「『テレポートジェム』って代物でな。錬金術で生み出された移動用のアイテムだ」
「ほほぅ…。あれ?」
「どした?」
「そんな便利な道具があるのなら、最初からそれを使って来ればよかったのでは?」
「残念ながら、そこまで汎用性に優れた代物じゃないんだよ。レイア。説明してやれ」
「はい」
私ばっかりが説明してちゃアレだしな。
偶にはこいつにも働かせてやらんと。
「このテレポートジェムは、地面に投げつけて転移陣を生み出すのですが、その使用上、完全に使い捨ての片道限定になっているのです」
「片道限定…」
「しかも、移動できるのは『使用者が一度行った事のある場所』のみになります。つまり、亞里亞博士は否が応でも一度は何らかの手段でここに来る必要があったのです」
「成る程…『どこでもドア』のようにはいかないという訳ですか」
まさかの例えが『どこでもドア』…。
ま、気持ちは分かるけど。
私も最初、これを見た時は同じ感想を抱いたし。
「あれ? そうなると、ここに来る時に乗って来た潜水艇はどうするんですか?」
「置いていく。後で風鳴の連中が回収に来る手筈になってる」
「亞里亞博士…もう既に風鳴の者達を手足のように扱っているのですね…」
そこで呆れられても普通に反応に困る。
私は単に、使えるものを使っているだけに過ぎないんだから。
「そんな訳だから、安心して移動できるぞー…っと。その前に一つ」
「どうしました?」
「その左腕…どうにか出来ないの?」
「どうにかとは?」
「ほら…そのまんまじゃ明らかに目立つじゃん。普通の腕に擬態とか出来ないのかな~って思って」
「あぁ…そう言う事ですか。それなら簡単ですとも。ほら」
「「おぉ~…」」
ウェルの左腕がグニグニと粘土のようにこねくり回されたかと思ったら、あっという間にあの太かった腕が成人男性サイズへと変化し、表面の色も完全にウェルの皮膚の色と同化した。
「はい。この通り」
「すげー…ここまで自由自在とは思わなかった」
「ここに来て時間だけはタップリとありましたからね。暇潰しに色々と試していたら出来るようになったんです」
「お前…昔から妙な拘りがあったもんな…」
「それ、博士が言うんですか?」
言えないな…。
妙な拘りがあるのは私も同じだし。
「そ…そんじゃ、とっとと移動すんべ。ほらよ…っと」
テレポートジェムを床に投げつけると、小気味のいい音と共に結晶が砕け、そこにカラフルな転移陣が生み出された。
「ここに入れば、一瞬で風鳴機関へと飛べるぞ」
「久し振りの外…楽しみですねェ」
「行きましょう」
こうして、私達三人は風鳴機関へと戻っていくのだった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「おぉ…これが、かの有名な風鳴機関ですか…」
私達が出てきたのは、風鳴機関の入り口前。
門の前ぐらいを想定してたんだけど、思ったよりも近くに飛んだな…。
「後でウェル専用のIDカードや認証登録とかもしておかないとだけど、まずは中に入ろう」
別にそこまで時間が経っていないのに、なんだか一日以上の時間が経過しているような感覚がある。
深海へと潜ってきたからなのか…?
「所長サマのお帰りだぞ~!」
「「「「所長~!!」」」」
私が大声を出した瞬間、すぐに所員たちが集まってきやがった…。
何だこの無駄に凄い団結力は。
「戻ったか、亞里亞」
「おかえりなさい」
「ん。ただいま、キャロル。エルフナイン」
そして、私の大切な友人達も出迎えてくれました…と。
何気にこれが一番嬉しい。
「レイアもご苦労だったな。よく務めを果たしてくれた」
「勿体無きお言葉…ありがとうございます」
そして、ちゃんとレイアの事も労ってくれる優しさ。
これこそがキャロルの本質だよな。
「博士と仲睦まじげの話している様子から察するに…貴女が博士の御友人だとかいう錬金術師ですか?」
「そう言うお前が、亞里亞が海に潜ってまで迎えに行った男か」
「はい。生化学の世界的権威にして未来の英雄! ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスです。長いので気軽に『ウェル』と呼んで下されば」
「キャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師で、今はこの風鳴機関の副所長を任せて貰っている」
ウェルの方は最初からテンションアゲアゲって感じで、逆にキャロルの方は不敵な笑みを浮かべている。
ま、変なことにはならないでしょ。多分だけど。
「ぼ…僕はエルフナインと申します! ここの所員を務めています!」
「これはまたご丁寧に。ふむ…キャロルさんとアナタは姉妹だったりするのですか?」
「まぁ…そんなところだ」
ウェルの疑問は当然だし、キャロルがそんな返答をする気持ちも分かる。
詳しい説明とかをしていったら、それこそマジでキリが無い。
だから、ここの連中にも表向きは『エルフナインはキャロルの妹』的な事にしてある。
そっちの方が、いざって時の言い訳もし易いから。
それに実際、マジで双子のようにそっくりだし。
説得力自体は抜群と言えるだろう。
「これからは、ウェルには主任として頑張ってほしいと思ってる」
「いいのですか? この場所において僕は所謂『新人』ですよ?」
「確かにそうだけど、お前にはこれまでの実績があるだろ? それは、ここの連中もちゃんと分かってる。有能な人間を相応しい役職へと配置する。これもまた所長の仕事だし、皆も異論は無いと思う」
チラッと所員たちの方を見ると、反対の意思を見せている奴は一人もいなかった。
ここに勤めている人間は、良くも悪くもノリと勢いで生きてる部分がある。
ウェルのような奴は寧ろ、普通に歓迎されるだろう。
「新しい仲間が増えた…ってことは、もうやることは分かってるな…お前達…?」
「はい! こんな事もあろうかと、もう既に『予約』はしてあります!」
「でかした! それでこそ風鳴機関の所員だ!」
「えっと…亞里亞博士? 一体何の話をして…」
「こ~れ~か~ら~…」
全員揃って右手を挙げ、高らかに叫ぶ!
「ウェルの歓迎会をやるぞ~!!」
「「「「お~!!」」」」
「か…歓迎会ッ!?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
都内某所の居酒屋。
その一室を借りきって、私達はどんちゃん騒ぎを楽しんでいた。
「ほ~れ! もっと飲め飲め~!」
「キャハハハハハハハハハ!」
堅苦しいと思われがちな風鳴機関だけど、実は何気にこれ系のイベントは多く存在している。
それも全て、所員たちのモチベーションを常に高く保ち続ける為。
俗に言う『報酬効果』というものだ。
しかも、こういうのはとてもいい息抜きにも繋がる。
ストレスを溜めてばかりではいい仕事は出来ないから。
「まさか、地上に出てからすぐに酒を飲むことになろうとは…」
「嫌だったか?」
「そんな事はありません。僕だって、研究の合間に息抜きとして酒を嗜んでいたりはしましたから」
「そっか。ま、明日からは思い切り頑張って貰うけどな」
「勿論ですとも」
因みに、流石にエルフナインは酒はアウトで、普通にソフトドリンクを飲んでいる。
え? キャロルはどうなのかって?
あの子は普通に大丈夫でしょ。
年齢的にはもう立派な大人なんだし。
ついでに言うと、私もめっちゃ酒を飲むタイプの人間です。
「そういやキャロル~…知ってる?」
「何をだ?」
「人間の一日の飲酒の適量って思ったよりも少ないんだよ」
「そうなのか?」
「うん。ビールの中瓶で500mlだったり、日本酒一合で180mlだったり。後はウィスキーダブル一杯で60mlだったり」
「となると、今の我々はその何倍もの量を飲んでいる事になるのか」
「由々しき事態だね」
「一度、じっくりと考え直す必要がありますね」
「「「うーん…」」」
なんでかここで私とキャロルとウェルで頭を捻ることに。
酒のノリってこんなもん。
「焼酎四合瓶もう一本だな」
「だね。すみませ~ん!!」
「あと、豚キムチも追加でお願いします」
この短時間で早くもここの空気に染まってきやがったな…ウェルの奴め。
しれっと追加注文しやがって。
ま、この手の宴会は基本的に経費で落ちるから良いけど!
「皆さん。ピザって妙に食べにくいって思いません?」
「これまた突然のエルフナインちゃん。ピザなんて食べるんだ」
「前に一度だけ御馳走して貰って、それ以来好きになっちゃって」
エルフナインやキャロルって太るのかな?
全く想像がつかないけど。
「ほら。チーズがトロトロだと具ごと落ちちゃって」
「それはあるかもな~」
そんな風に話しているけど、隣りに置いてあるコップにはコーラが入ってたり。
この子…分かってやがる。
「熱くてもダメ。かといって冷めてもダメ。難儀な食べ物ですよね」
「冷め過ぎたら微妙になるしな」
「全く…面倒ですよね…美味し…」
口と手の動きが完全に真逆なんですが…。
「じゃあ、どうしてピザなんて注文したんだ?」
「あ。キャロルはペパロニよりマルゲリータの方が良かったですか?」
「誰もそんな事は言ってない」
あ…あれ~?
エルフナインって、こんなにもウザいキャラだったっけ…?
それとも、複数の意味で俗世間に毒されてきた?
「マヨネーズって…固体ですよね?」
「今度はウェルか」
いきなり過ぎて普通に引いたわ。
こいつも酔っぱらってきたか?
「いや…液体だろ?」
「そーゆー時はスマホとかで調べればいいっしょ。どれどれ…」
取り敢えず、適当にマヨネーズだけで検索してみるか。
どれどれ…。
「…チキソトロピーだな」
「「「え?」」」
うん…その反応は尤もだわ。
調べた私も普通に驚いてる。
まさか、マヨネーズがこれに属しているとは。
「チキソトロピーってあれだよな? 塑性固体と非ニュートン液体の中間的な物質で…」
「粘度が時間経過で変化すると言われている…?」
「そ。あれ」
「ってことは、ケチャップもチキソトロピーって事になりますね」
「「「確かに」」」
これは新発見。
そっかー…マヨネーズとケチャップはチキソトロピーだったのかー…。
「ねぇねぇ。『走れメロス』って知ってる?」
「太宰治が書いた有名な作品ですね」
「おぉ~…知ってたか。んじゃさ、メロスの足の速さは知ってる?」
「あ…足の速さ?」
「それは流石に…」
「知りませんね…」
にゅっふっふっ~…そうだと思った。
これはあれですな。所長としての威厳を示すチャ~ンス!
「どれぐらい速いんだ?」
「前に私が暇潰しに計算してみたら…マッハ11って結果になった」
「えぇぇっ!?」
「マッハ11!?」
「普通に化け物だな…。アレか? メロスは聖闘士なのか? もしくはサイヤ人か何かなのか?」
「でも、走る速度がマッハ11って事は、彼が走るだけで凄まじい衝撃波が発生することになりますね」
「確実に周囲にある物体が木端微塵になるな」
「メロスは走っちゃダメですね」
「っていうか、メロスがその気になれば邪知暴虐な王も走り殺せるな」
「何よ『走り殺す』って」
「しれっと新しい殺害方法を生み出しましたね」
その後も、酒の席特有の意味のない話が色んな場所で延々と続き、たった一晩でウェルと皆との心の壁が取り払われたのだった。
やっぱ…酒って最高だわ。