フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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今回は中の人ネタがあります。

あと、脳内でウェル博士の事をカイジ風にしてからお読みください。

キャラ崩壊待ったなしです。












主任研究員 ウェル

 ウェルが亞里亞から引き抜かれ、風鳴機関の主任研究員になってから早くも一週間が経過した。

 元々が優秀だった上に、コミュニケーション能力もある方なので、すぐに他の研究員たちともう解けていった。

 

 そんな彼は今、前に亞里亞たちがしたように、昼休みにテレポートジェムを利用して例の商店街へと足を運んでいた。

 

「流石は多種多様な異文化が交流する国…日本。食事だけでも、こんなにも豊富な選択肢があるとは思いませんでしたよ」

 

 キョロキョロと辺りを見渡すと、それだけで色んな飲食店が軒を連ねる。

 和食系もあれば洋食系もあり、中華系もある。

 ファミレスに大衆食堂。ファーストフード店や喫茶店感覚で焼きたてのパンが食べられる店まであった。

 

「真の英雄たる者、単に強かったり賢かったりするだけでは駄目なのでです。飲食などにも通じ、様々な知識が豊富な一面も必須」

 

 などと自分に言い訳をしているが、とどのつまり、色んな美味しい料理を食べてみたいというのが本心だった。

 どれだけ英雄志望で頭のネジが取れている男でも人の子。

 体から発せられる三大欲求には逆らえない。

 

「亞里亞博士から教わった箸の使い方もさまになってきましたし、ここはひとつ和食にでもチャレンジしてみて…おや?」

 

 どこで昼食を食べようか思案しながら歩いていると、とある店の前で足を止める。

 

「ここは…カツ丼屋?」

 

 最近ではそこまで珍しくも無い『カツ丼専門店』。

 日本食の中でも有名な『丼もの』。

 その中で最もポピュラーとされている『カツ丼』はまだ食したことが無いことを思い出す。

 

「いいでしょう。ここでこうして立ち止まったのも何かの縁。今日はここでお昼と洒落込みましょうか」

 

 そうと決めたら早速入店。

 扉を開けて若い女性店員の『いらっしゃいませー』の声を聞きながら、適当に空いた席へと座る。

 

「ん?」

 

 座った時、ふと隣の客が食べているカツ丼が目に入った。

 スーツの上着を脱いで無心で食べている、典型的なサラリーマン。

 それを見てウェルは目を細める。

 

(ふむ…成る程。中々にボリュームはありますが、サイズ自体は普通といった印象。決して悪くはありませんが…今の僕の食欲を満たすには少しばかり物足りませんね)

 

 今日は午前中から大忙しだったので、かなり腹が減っている。

 午後の予定も中々にハードになっているから、出来ればここで腹持ちが良い物を食べておきたいというのが本音だった。

 

「…となれば、選択肢は一つだけ…ですね」

 

 食べたいものはもう決まった。

 ウェルは店員を呼んで、迷わず『それ』を告げた。

 

「すみません。この『カツ丼大盛り』を貰えませんか?」

「「えぇっ!?」」

「え?」

 

 店員たちの突然の驚きに、ウェルも思わず目を丸くする。

 何か変な事で言ってしまったのだろうかと。

 

「えっと…大丈夫ですか?」

「あぁ…ちゃんと食べきれるかって事を言ってるんですね。ご心配なく。こう見えても僕は割と食べる方な上に、今日は朝から忙しくてお腹が空いてるんですよ。だから大丈夫ですよ」

「そ…そうですか…。では、少々お待ちください」

 

 明らかに様子がおかしい店員を訝しみながらも、ウェルはスマホ片手に暇潰しをする事に。

 

「一体全体なんだと言うんですかね…全く…」

 

 ブツブツと呟きながら白衣を脱ぎ折り畳み、いつでも食べられるように準備をする。

 その後も少し待つ事10分。

 遂にその時がやって来た。

 

「お待たせしましたー」

「お…来ましたね…って…えぇっ!?」

 

 テーブルの上にドンと置かれた物…それは『山』だった。

 尋常ではない大きさの器に築かれた超巨大な『カツの山』。

 これは明らかにおかしいサイズだった。

 

(な…な…な…なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? どう考えてもおかしいでしょうが!! なんなんですか、この異常なまでのサイズはッ!? これ絶対に人類が食せる量を超えてますから!! 世界大食い選手権とかに出ている人達用のサイズだろぉぉぉぉぉぉぉっ!! カツの埋もれて下の御飯が全く見えていないし…何がどうしてこうなったぁぁぁぁぁっ!!??)

 

 咄嗟に隣の客のカツ丼のサイズを再確認する。

 うん。やっぱり普通だ。

 なのに、目の前にあるこのカツ丼は常識的にも有り得ない。

 

(あれが並盛で……これが大盛りっ!? どー考えてもおかしーだろーが!! なんでいきなりサイズが一足飛びになってるんだよ!! これはあれか? ダイマックスですかコノヤロー!! なんで、よりにもよってカツ丼がダイマックスするんだよっ!? 明らかにする必要性がねーだろーが!!)

 

 混乱し過ぎで、口調が完全に別人になっていた。

 それ程までにウェルはパニック状態へとなっていたのだ。

 

(いや…ちょっと待てよ?)

 

 ここで我に返ったウェルは、急いでメニュー表を再確認する。

 目を凝らし、必死にメニューに書かれている物を凝視した。

 

(ち…違う…そうじゃなあない! これはちゃんと刻んでいるんだ!! サイズを!!)

 

 サイズは下から『レディースサイズ』『小盛』『並盛』『中盛』『大盛り』へと段階的に変わっていた。

 それを見てウェルは戦慄する!

 確かに、全五段階の一番上ならば、このサイズも納得せざる負えない!

 だがしかし、それとは別にウェルは自分に勘違いをさせた隣の客に向かって、思い切り心の中で叫んだ!

 

(お前…そのサイズは…レディースかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!)

 

 そう…隣のサラリーマンが食べていたのは、あろうことか一番小さいサイズのレディースサイズだったのだ。

 

(皮下脂肪たっぷりのデカい腹をしている癖に、どうしてレディースを頼んでんだよコノヤロー!! その腹で今更、健康志向とかダイエットとか考えても無駄だから!! 手遅れだからー!! 男なら堂々とデカいサイズを選びやがれってんだよゴラァァッ!!!)

 

 もうさっきからウェルの顔は冷や汗だらけ。

 大盛りを頼んで、こんな化け物カツ丼が降臨したのだから無理もない。

 

「…ん? ちょっと待ってください。そのデジカメは一体なんですか?」

「あ…これですか? 実はですね、当店では大盛りの挑戦した方は全員、成功失敗に関係なく記念写真を撮らせて貰ってるんですよ」

「な…なんですってぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 よく見たら貼られてある!

 厨房の上の方に数多くの写真たちが!

 そのいずれもが失敗している写真ばかり!

 これまでの挑戦者は誰も彼もがウェルよりも体格が大きい者達!

 そんな彼らでさえも攻略不可能だった難攻不落のカツの山!

 明らかにインドア派なウェルでは勝負は見えている…かに思えたが…?

 

(も…もしもここで僕が諦めたら…もしくは、失敗でもしようものなら…!)

 

 想像なんてしたくは無い。でも、思わず想像してしまう!

 最も考えたくない最悪のビジョンを!

 

(超巨大カツ丼にさえ勝てなかった哀れな男として永遠に名を刻まれる事となる!! 未来の英雄となるこの僕に、そんな事は許されない!!)

 

 超巨大カツ丼一つ食べられずに英雄になるなど夢のまた夢!

 その時、ウェルの中にある闘争本能に火が付いた。

 

「…お嬢さん。アナタは次に『やっぱり取り下げて、別のサイズにしますか?』と言う」

「やっぱり取り下げて、別のサイズにしますか? はっ!?」

 

 徐にネクタイを緩め、そして眼鏡を取る。

 その眼光は鋭く、完全に戦闘モードとなっているのは明白だった。

 

「お嬢さん。絶対に撮り逃してはいけませんよ。刹那のシャッターチャンス…! この僕…ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスが新たな伝説の一ページを刻みこむ瞬間を!!」

「「「「「おぉ~!!!」」」」」

 

 この宣言を受け、店内は一気にヒートアップ!

 気合と共に箸を握りしめ、ウェルは裂帛の気合いと共に人生最大の強敵に真っ向から立ち向かう!!

 

「いざ……参る!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 箸と言う名の剣を携え、ウェルは無数のカツがひしめく大海原へと漕ぎ出していく!!

 辺り一面に漂うは揚げ立てサクサクの衣と卵に包まれた極上のロースカツ!!

 普通に食べていたら絶品であったであろうそれは今や、ウェルにとって嘗てのシンフォギア装者達よりも遥かに圧倒的で強大な敵として立ちはだかっていた!!

 

(思ったよりもいける!! このペースを維持出来れば、攻略も不可能ではない!!)

 

 その細い見た目に反し、順調なスタートを切るウェル。

 彼の勇士に店内にいる全ての人間達の視線は釘づけとなった。

 

「はははははははは! 思ったよりも美味しいじゃあないですか!」

 

 なんてカツを味わう余裕すら見せる。

 そうこうしている内に、遂に天上を覆う雲の如きカツを全て食べきったみせた!

 

「はぁ…はぁ…はぁ…! これでカツは全て食べきりましたよ…! 後は…なぁっ!?」

 

 後はご飯を食べるだけ…そう思ったウェルに衝撃が走る!

 ご飯に突っ込んだ箸の感触が明らかにおかしいのだ!

 まさかと思い、急いでご飯を掻き分けると、そこにあったのは…。

 

「ば…馬鹿なッ!? ライスの下にカツが隠れ潜んでいただとぉっ!?」

 

 そう…その通り!

 実はこの『大盛りカツ丼』…カツは一層だけではなかったのだ!

 カツを攻略したと安心させた挑戦者を嘲笑うかのように、白米の下に隠れている更なるカツ!!

 最後の最後まで絶対に油断などさせないという執念すら感じられた!!

 

「ふ…ふふふ…! これぐらいじゃあないと面白くない…! 英雄の底力…思い知らせてあげましょう!!」

 

 強気な発言をしているが、もう既にウェルの腹はとっくに限界を超えている。

 それでも彼が立ち向かうのは、意地や反骨心もあるが、それ以上に自分の未来の為というのが大きかった。

 

「英雄に敗北は許されない…! 英雄は決して敵に対して背を見せたりしない…! そう…」

 

 カッ! と目を見開き、ウェルは再びカツの海へと飛び込んだ!!

 

「真の英雄は『胃』で殺す!!」

 

 ご飯と一緒に下層にあるカツも一緒に口へと運んで行く。

 勿論、ペースは決して乱さない。

 少しでもペースが乱れたが最後、そこから一気に追い込まれていくのは明白!

 故に、どんなに辛くても箸だけは決して止めない!!

 

(うっ…! 水が欲しくなってきた…! だが、それはダメだ!! 水分補給は最後の手段! 水と言うのは想像以上に胃に溜まる! 安易に飲めば逆に自分自身の首を絞めることになる!! この状況でそれだけは絶対にしてはいけない!!)

 

 一瞬だけお冷が入ったコップに手が伸びかけたが、すぐにそれを引っ込めてから戦いを再開する。

 

(よ…よし! 今度こそカツを完全制覇してみせたぞ! 後はライスさえ始末してしまえば…な…にゃにぃぃぃぃぃぃっ!?)

 

 カツの下には更なるカツが。

 その下にも更なるカツが特殊工作員の如く潜んでいた!!

 

(さ…三層構造だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? 一体どこまで人の精神を追い詰めれば気が済むんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?)

 

 だが、流石にドンブリのサイズ的にもこれより下は無いと推測できる。

 つまり、今度こそ本当のラストスパート!!

 ここさえ乗り越えればゴールは目の前だ!!

 

「見せてあげますよ…天才の意地ってやつをね!!」

 

 これが本当に最後の戦い!

 ウェルは残された最後の力の全てを振り絞り、本能が赴くままに箸を動かし、顎を動かし、その全てを胃に流し込む!!

 

 そして…決着の時が来た。

 

「これで……最後だ!! あむ!!」

 

 箸の先に摘まんだご飯粒を見せつけるようにしてから食べ…遂に完食!!

 

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」」」

 

 挑戦を決めた時以上の歓声と興奮が店内に溢れる。

 それは勇者を湛える凱歌。

 新たなる英雄の誕生を喜ぶ者達の声だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「えっと…出来れば、もう少し自然な笑顔でお願いできますか?」

「自然な笑顔? これでいいですか?」

「あ…大丈夫です。では、撮りますねー」

 

 完食した巨大ドンブリを見せつけるかのようにしてからの記念撮影。

 実は、何気にこの店の大盛りチャレンジの初制覇者でもあったウェル。

 彼の勇気と功績を湛えた写真は、ずっとこの店の一角にて輝き続ける事だろう。

 

「ありがとうございましたー」

 

 なんとも予想外の食事を終え、ウェルは店を後にする。

 その直後、彼の顔が一瞬にして真っ青になった。

 

「うぅ…流石の僕もこれ以上は無理ですね…! 心なしか、左腕に融合したネフィリムも苦しんでいるような気がしますね…」

 

 大きく膨れた腹を抱えながら、どこか落ち着ける場所は無いかと周囲を見渡すと、そこで意外な人物達と遭遇する事となった。

 

「アナタ達は…」

「う…嘘でしょ…!? どうして、お前がここに…!?」

「信じられないデース…」

「ウェル博士…!?」

「マリアさん…切歌さん…調さん…」

 

 嘗て、同じ組織にいた者達同志が、町のど真ん中にて再会した。

 このことがどんな結果をもたらすのか…それは誰にも分らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次にお前は『まんま中間管理職トネガワじゃねーか!!』と言う。

次回は打って変わってシリアスです。





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