フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん   作:とんこつラーメン

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少しだけウェルの設定が原作と違っていますが、それはこの作品のオリ設定です。

なので、あまり気にせずに読んでください。









亞里亞の過去の一端(後編)

10年前 F.I.S.

 

「今…なんつった?」

「聞こえませんでしたか? ならば、もう一回だけ言ってあげましょう」

 

 静かに激怒した亞里亞が血管を浮かび上がらせながら、冷たい目で彼女を見下ろすナスターシャを睨み付ける。

 だが、彼女はそんな亞里亞の睨み付けに全く怯むことなく、淡々と自分の考えを言い放った。

 

「先の紛争で孤児となった少女達…あの子らを『レセプターチルドレン』にすると言ったのです」

「ふざけるな!! 故郷を失い、家族を失った…そんな子供達から自由と人権まで奪おうって言うのか!!」

「そうは言っていません。彼女達には衣食住を提供する代わりに、我々に協力して貰うのです」

「同じ事だろうが!! そう言うのを世間一般では『脅迫』や『強要』って言うんだよ!!」

 

 周囲で他の研究員たちが慄いている中、ウェルだけは一人、冷静な視線で二人のやり取りを眺めている。

 だが、それに気が付かない亞里亞とナスターシャの言葉の応酬は激しさを増していった。

 

「あの子達は既に数多くの物を失った。これ以上、あの子達から何かを奪うような真似をするな…!」

「しかし検査の結果、彼女達には『フィーネ』の魂の器…即ち『転生体』である可能性が浮上しています」

「だからどうしたっ!?」

「フィーネの直系の子孫である貴女も含め、少しでも可能性の芽はあった方が良い。亞里亞。アナタも科学者ならばそれを理解している筈です」

「…確かに、1%でも可能性を高くしたい…その気持ちは理解出来る。過去に自身の失敗で死んでいった連中の大半が、その1%の可能性を軽視していた。だとしても! 納得は出来ない!!」

「どうしてですか」

「決まってるだろ…お前が何の関係が無い子供達を犠牲にしようとしているからだよ!! こんな消毒液臭い場所で実験動物扱いするだなんて…およそ人間のする事じゃない!! 自分達の実験に他人を巻き込むな!!」

「…貴女の口癖ですね。その結果が『その体』ではないのですか?」

「後悔はしていない。寧ろ、誇らしいとすら思っているよ」

「分かっているのですか? 貴女の存在自体が世界的に見ても非常に価値ある存在なのですよ? それなのに…」

「まるで、自殺願望でもあるかのように自分の体を酷使し過ぎている…か?」

「そうです。亞里亞。貴女はもっと自分の価値を理解すべきです」

「ふん…価値ね…」

 

 ナスターシャの言った『価値』という言葉が琴線に触れたのか、亞里亞は急に黙りこんだ。

 

「どれだけ優れた頭脳を持っていても、どれだけ偉大な祖先の血を引いていても、どれだけ優れた体を持っていても、命の価値はどこまでも『等価値』だよ。人間も、獣も、昆虫も、死ねば一緒だ」

「私達も動植物も同じ価値しかないと?」

「そう言っている。命に『色』なんて存在していないんだよ。人間が自分勝手に命に価値を決めつけているだけだ」

 

 話は完全に平行線。

 どちらも絶対に譲る気は無い。

 だが、亞里亞は思い知る。

 この目の前にいる老婆が自分の想像以上に狡猾であったことを。

 

「ですがまぁ…貴女がどれだけ吠えようとも、もう手遅れですけど」

「それはどういう意味……まさかっ!?」

「そう…もう既に彼女達は検査を終えて、この研究所に来ています。勿論、貴女の権限では入れない場所に」

「お前…!」

 

 この問答自体に意味が無かった。

 もう既に先手を打たれていたのだから。

 

「どうやら、貴女は彼女達をどこかの孤児院にでも預けようとしていたようですが…無駄に終わりましたね」

「黙れ…!」

「いずれ、彼女達もアナタとウェル博士が作った『リンカー』を使う事になるでしょうね」

「シンフォギアまで使わせる気か…!」

「勿論です。そうでなくては、あの子達を連れて来た意味が無い。それに、シンフォギアもまた貴女が生み出したものでしょう?」

「私は理論を作っただけだ。それを形にしたのは了子だ」

 

 顔を伏せた亞里亞は、徐に踵を返して扉へと向かう。

 

「何処に行くのですか?」

「決まってるだろ。F.I.S.(ここ)を出ていくんだよ」

「なんですって?」

「国が変われば何かが変わると思っていた私が馬鹿だった。結局、国が変わっても研究者って人種の本質は何にも変わらない。他人を犠牲にしなくては成果一つすら得られない。ホント…虫唾が走る」

「待ちなさい。勝手にここを去ることは許しません」

「黙れ。私はここの正式な職員ではなく、あくまで『一協力者』に過ぎない。つまり、お前の部下でもないって事だ。お前が私に命令する権限は無いし、引き留める資格もない」

 

 今度は亞里亞がナスターシャにマウントを取り始める。

 そもそも、彼女相手にまともな腹芸が出来るのはナスターシャぐらいしかいない。

 他の者が同じことをすれば、即座に論破されて終わりだ。

 

 亞里亞が扉の前まで行った瞬間、ナスターシャが最後の説得を試みた。

 

「…本当に行くのですか?」

「そう言っている」

「どこか行く当てでも?」

「当ても何も、元いた場所に戻るだけだ。本来、私はアメリカから派遣されてきた身なんだぞ? もう忘れたのか?」

「…そうでしたね」

「ナスターシャ。最後にこれだけは言っておく」

「なんですか?」

「これから先、何かあっても自分さえ犠牲になればどうにかなる…だなんて阿呆な考えだけはするなよ。さっきも言った通り、全ての命は等しく等価値だ。例えお前が何を言おうとも、お前も所詮はただの人間。人間一人の命は人間一人分の価値しかない。つまり『自分と命と引き換えに皆の事は』的な交渉は全くの無意味だ。これを忘れるな」

「…覚えておきましょう」

「それじゃあな。今まで世話になった」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「…というのが、亞里亞博士とナスターシャ博士の最後の会話でした」

「「「………」」」

 

 まるで遠い昔の事を思い出すかのように語るウェルに、マリアたちは完全に黙ってしまった。

 確かに辛いことや悲しいことも沢山あったが、それでも彼女達三人はナスターシャの事をとても慕っていた。

 だが、同時に亞里亞も自分達の身を本気で案じていた。

 

「ねぇ…彼女は…亞里亞博士はマムの死について何か言っていたのかしら?」

「さぁ…少なくとも、僕は何も聞いてはいませんね」

「そう…」

 

 方向性の違いからの完全なる決別。

 幾ら時間が経過しているとはいえ、そう簡単に蟠りが解ける筈もない。

 

「あくまで『僕は何も知らない』ってだけで、もしかしたら僕の知らない所でナスターシャ博士の死について何かを言っていた可能性はありますね。もしくは、言葉にしないだけで心の中では何かを考えていたとか」

 

 亞里亞はあまり自分の『本心』を語らない。

 『意見』ならば遠慮なくズケズケと言うが、亞里亞自身の『心の声』を聞いた者は殆どいないだろう。

 

「どうにかして…亞里亞博士と会って話をする事って…出来ないのかしら…」

「普通に考えたら無理でしょうね。博士の提案で、風鳴機関とS.O.N.G.との間で不干渉条約が結ばれていますから。これはあのS.O.N.G.司令官である風鳴弦十郎も承知している。少なくとも、我々がお互いの施設に入ることは絶対に不可能でしょう」

「そう…」

「マリア…」

 

 最初に出会った時から、なんとなくでは分かっていた。

 亞里亞が自分達に対して『壁』を作っていた事は。

 それと同時に、激しい罪悪感も抱いたことも。

 たった一人で、あの小さな背中に全てを背負い、亞里亞は立ち上がった。

 亡き妹の願いを成就させる為に。

 マリアも昔、目の前で妹を亡くして己の無力さを痛感した。

 故に少なからず亞里亞の心情が理解出来てしまう。

 今の亞里亞はまるで、『フィーネの器』として世界を敵に回していた嘗ての自分を見ているようだった。

 

「ですが、決して亞里亞博士と話す機会が無いという訳ではありませんよ?」

「「「え?」」」

 

 ここでまさかのウェルの方からの助け舟。

 彼がこんな事を言い出すとは予想すらしていなかったので、マリアも調も切歌も呆気にとられていた。

 

「確かに相互不干渉とは言ってはいますが、それは決してプライベートには及びません。あくまで『互いの仕事の邪魔をしない』という決め事なので」

「それじゃあ…」

「えぇ。博士はよく、この町で外食をしています。なので、この町をうろついていれば、偶然にも亞里亞博士と遭遇してしまう可能性はあるでしょうね」

 

 京都にある風鳴機関から、この町にまで来るのには本来であれば、かなりの手間暇がかかる。

 だがしかし、亞里亞は錬金術も嗜んでいる身。

 その気になれば自分の手で幾らでも『テレポートジェム』を作り出せる。

 実際、風鳴機関の職員たちは亞里亞やキャロルが作ったテレポートジェムの世話になっていた。

 

「ところで、博士と会って何を話す気ですか?」

「色々と。マムの事もそうだし、どうして『相互不干渉』なんて言い出したのか…とか」

「ほぅ…?」

 

 あの亞里亞がそう簡単に自分の本心を語るとも思えないが、かといってマリアと亞里亞が接触することで、どんな化学反応が起きるのか興味もある。

 話を聞きながら、ウェルは一瞬だけ科学者の顔になった。

 

「ま…好きにしたらいいですよ。僕にどうこう言う権利はありませんからね。もし博士がここにたら、きっと同じ事を言っていたでしょう」

 

 そう言いながらウェルは財布の中から自分の分の料金をテーブルに置き立ち上がった。

 

「では、そろそろ僕はこの辺で。昼休憩の時間が終わりそうなので」

「え…えぇ…色んな話を聞かせてくれてありがとう」

「どういたしまして。それでは」

 

 にこやかな笑顔を振りまきながら、ウェルはそそくさと店を後にした。

 それを見送りながら、マリアがポツリと呟く。

 

「まさか…あの男に『ありがとう』なんて言葉を言う日が来るだなんてね…」

「うん…なんか変わったね…」

「まるで別人みたいに爽やかになってたデス…」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃、ウェルはというと…。

 

「うぅ…カツ丼超大盛りの後のコーヒーは流石にキツかったですね…。見栄を張る為に頑張りましたが…戻ったら少しお腹を休める時間を貰いましょうか…」

 

 道端で顔を青くしながら、お腹を抱えて苦しんでいた。

 食事は腹八分目こそがベスト。

 食べすぎにはご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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