フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん 作:とんこつラーメン
亞里亞の年齢が暴露され、彼女と初対面である装者達は驚きの余り口を開けっ放しになってしまった。
「さ…三十七歳っ!? この格好でッ!? 冗談だろッ!?」
「了子さんのお姉さんなんだから、歳上なのは当たり前だけど…」
「どう見たって四十手前の女性には見えないわよ…?」
「信じられん…人類の神秘という奴なのか…?」
今までの人生で何度も何度も似たような反応をされているので、別に怒ったりするような事はしない。
というか、もう完全に見飽きている。最初は普通に楽しんでいたが。
「うわ…こうして近くに行くと、すっごくちっちゃいデース…」
「えっと…身長ってどれぐらいなんですか?」
「そうだな…一番最近測ったのでいいなら、確か…131センチぐらい…だったかな?」
「「小学生っ!?」」
真横まで行って、より詳しく亞里亞の背を確かめた切歌と調だが、彼女達が驚くのも無理は無い。
なんせ、過去には朝の小学生の列と遭遇して、そのまま巻き込まれるような形で小学校まで強制連行させられた挙句、放課後まで全くバレなかったという実績があるからだ。
恐らく、今でも普通にランドセルを背負って小学校に行ってもバレない可能性が非常に高い。
「めちゃくちゃ軽いデース!」
「やめれー」
なんて言いつつも全く抵抗する素振りを見せない。
単純に抵抗するのが面倒くさいというのもあるが、それ以上に久し振りに帰国で疲れて動きたくないのだ。
「切ちゃん。流石にそれは止めた方が…」
「でも、とってもフニフニしてていい匂いもするデスよ?」
「う……」
「おいこらそこ」
切歌の誘惑により調がミイラ取りがミイラ状態になりそうになるが、クリスがすかさずツッコんで事なきを得た。
「なんつーか…昔の二課からは想像も出来ない緩さだな」
「平均年齢が一気に低くなりましたからね」
「みたいだな。私的にはお前達と一緒の方が普通に落ち着くわ。今度、暇な時にでも一緒に飲みに行こうゼ」
「うむ…悪くないな。向こうでの話も色々と聞きたいしな」
大人三人で意気投合。
やっぱり酒は偉大なのだ。
「え? 亞里亞ちゃんってお酒飲むの?」
「当たり前だ。酒も飲むし、煙草だって吸う」
「亞里亞くんはかなりのヘビースモーカーだしな」
「その上でかなりの酒豪でもあります」
「…年齢的には問題無いんでしょうけど…」
「見た目的には完全にアウトだな。即座に通報される」
少しだけ亞里亞が飲酒&喫煙をしている姿を想像するマリアと翼。
絵的には絶対にあってはならない光景だった。
「身分証明さえできれば問題無い。今までもそれで乗り切ってきた」
「何を見せてるの? マイナンバーカードとか?」
「運転免許証」
「「「「「「車の運転が出来るのッ!?」」」」」
「その反応、本日二回目だな」
もうお約束のように、再びポケットから免許証を出して見せる。
6人全員が近づいてきて、それをマジマジと見て確かめた。
「ほ…本物だ…」
「ちゃんと『満37歳』って書いてある…」
「もう、どこからツッコめばいいのかわかんねぇよ…」
「色んな意味で、教習所の人達も大変だったでしょうね…」
「運転免許証…初めて見たかもデース…」
「足…ちゃんと届くのかな…?」
盛大な溜息を吐きながら免許証を仕舞い、ポリポリと頭を掻きながら司令室の出入り口に向かって歩き出す。
「どうしたの?」
「疲れたから寝る。十年振りの帰国で時差ボケが酷いんだよ。まずはゆっくりと休みたい。おい弦十郎。部屋一つ借りるぞ」
「それは構わないが…場所は分かるか?」
「舐めてるのか? 外面は違っても、中身は二課そのまんまなんだろ? だったら余裕で分かる。体が覚えてるからな。つーか、在籍期間だけで言ったらお前よりも長いんだが?」
「そうだったな…普通に忘れていた」
「ひど。ま…いいけど」
後ろ手に手を振りながら、亞里亞はそのまま司令室を後にした。
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残された装者達は、亞里亞たちの最後の会話が気になっていた。
「叔父様。亞里亞殿が言っていた『在籍期間』というのは…まさか?」
「そうか…まだ言ってなかったな」
亞里亞と装者達がワイワイしていた事で忘れていたが、まだ亞里亞に関する詳しいことを全く話していなかった。
「亞里亞君は、この『S.O.N.G.』の前身となった『二課』に嘗て所属していた。というか、彼女は二課の最初期…即ち、創設時のメンバーの一人なんだ」
「マジかよ…どんだけ濃いプロフィールを持ってんだ…」
もう何を言われても驚く事は無いと思っているクリスであったが、そんな彼女の想いは簡単に打ち砕かれる。
「知っている者もいるかと思うが、二課の一番最初の司令は俺の親父である『風鳴訃堂』だった。亞里亞君はその親父の直属にして腹心の部下であり、同時に初代『二課の技術主任』でもあった」
「初代って…その頃はまだ了子さんはいなかったんですか?」
「そうだ。今から10年前…親父が『イチイバル』の紛失の責任を取って辞任した際、同時に亞里亞君も二課を辞め、自身の研究の為にアメリカへと行ったんだ。その後、入れ替わるように俺が司令となり、同じように亞里亞君の妹である了子くんが新たに二課の技術主任となった」
まさか、あの亞里亞が二課の主要人物の一人だったとは思わなかった面々は、先とは別の意味で驚きを隠せないでいた。
「彼女のしていた研究とは?」
「俺も詳しいことは知らない。ただ、聖遺物に関する研究であることは確かなようだが…」
「ということは、亞里亞殿も櫻井女史と同じように考古学を専攻していたのですか?」
「元々はな。だが、亞里亞君は他の分野においても超天才的な才能をいかんなく発揮してみせた。お蔭で、一部の者達は彼女の事を『レオナルド・ダヴィンチの生まれ変わり』なんて言い出す始末だ。本人は嫌がっているがな」
歴史的偉人の名で異名を言われても、亞里亞は全く喜ばない。
自分はどこまで行っても自分であり、それ以上でもそれ以下でもないから。
「…恐らくではあるが、亞里亞君が帰国したのは了子くんの墓参りをする為かもしれんな…」
「お墓参り…?」
「ルナアタックの時に傍にいてやれなかった事を後悔している風だったからな。どうして亞里亞君が今までずっと日本に戻ってこれなかったのか…調べてみる必要があるかもしれんな…慎次」
「はい。僕としても、どうして亞里亞さんが戻ってこれなかったかが気になりますから」
そういうと、毎度のように慎次は一瞬で姿を消した。
やっぱり忍者は伊達じゃない。
「…どうして、亞里亞ちゃんと了子さんって仲が悪かったのかな…? 実の姉妹なんだよね…?」
「仲が悪かった…というよりは、一方的に了子くんが亞里亞くんを嫌っていたという方が正しいかもしれんな」
腕組みをしながら渋い顔をする弦十郎。
明らか無い何かを知っている様子だった。
「司令は彼女達姉妹について何かを知っているの?」
「全てを…という訳ではないが、少しはな」
マリアに尋ねられ、昔を思い出すように天井を見上げながらポツポツと語り出す。
「…亞里亞君は…優秀過ぎたんだ。いや、天才過ぎたというべきか」
「嫉妬…という事ですか?」
「それもあるだろう。だが、それ以上に了子くんは亞里亞君の不器用な愛を受け止めきれなかった」
天井を見るのを止め、視線を装者達に戻す。
「了子くんが100歩先に進んでいる間に、亞里亞君は1万歩先に進んでいる。二人の間にはそれ程までの決定的な差があった」
「あのフィーネが頭脳で負けてたってのかよ…」
「信じ難いことかもしれんがな。だがしかし、それを裏付ける存在をお前達は既に手にしている」
「裏付ける存在?」
「それって何デスか?」
「まさか…?」
響と切歌が小首を傾げていると、調が何かに気が付いたのか、常に首からぶら下げているシンフォギアのペンダントを手に取った。
「調くんの予想通りだ。表向きにはシンフォギアの根幹たる『櫻井理論』は了子くんが提唱者であるとされているが、実際には亞里亞君が基礎理論を構築し、それを了子くんが形にすることで完成したんだ」
「ってことは…私達のシンフォギアって亞里亞ちゃんと了子さんの合作ってことになるのかな…」
「本当は…な。だが、亞里亞君はそうしなかった」
「どういう意味かしら?」
「…亞里亞君は周りの人間全てに内緒で、櫻井理論を学会と世間に公表した。提唱者『櫻井了子』の名を添えてな」
自分の名を隠して、妹の名前を前面に出す。
どうして姉妹の手柄を全て妹に譲るような形にしたのか。
全員が声も出さずに驚いていた。
「後に兄貴から聞いた話だが…亞里亞君はこんな事を言っていたらしい」
『櫻井理論を形にしたのは了子であって私じゃない。私はただ単に『設計図』を作っただけ。それに、今の私には別にやることがある。あれに関しては全て了子に任せるよ。きっと、私なんかよりも上手くやってくれる』
「必死の思いで完成させた理論でさえも、亞里亞君にとっては単なる通過点に過ぎなかった。彼女は既に、櫻井理論の基礎が出来た時点で遥か先を見つめ続けていたんだ」
どこまでも妹の先を行く姉。
別にそれ自体はそこまで不思議なことではないかもしれない。
だが、この姉妹の場合はその『先』が余りにも遠すぎた。
「亞里亞くんは亞里亞くんなりに本気で妹である了子くんの事を大切に思っている。だが、その思いは了子くんの優秀過ぎる姉に対する『対抗心』によって掻き消されてしまっていた」
「悲しい擦れ違い…なのかしらね…」
同じように妹を亡くしているマリアは、亞里亞の事が他人事のようには思えなかった。
それでもまだ自分の方がマシだと思えるのは、自分達の姉妹仲が良好であったことに加え、妹の最後に寄り添えたことか。
「亞里亞君は自分の事を責め続けている。もしも、自分が妹の傍にいてやれたらフィーネの意志をどうにか出来たかもしれない。月を破壊させず、大勢の人々を死に至らしめる事も防げたかもしれない…とな。そして…君達の事も」
「「「え?」」」
響、翼、クリスの事を見ながら、弦十郎は眉間に皺を寄せながら腕組みしている手に力を込めながら、吐き出すよう言った。
「奏が死んでしまったのは自分が妹を止められなかったから。クリス君がフィーネに利用されてしまったのも自分が妹の傍にいてやれなかったから。響君のような『融合症例』や『ライブの被害者』を生み出してしまったのも自分が日本にいなかったから…そんな風に思っているようだ。亞里亞君は…ルナアタックに関する全ての責任をたった一人で背負おうとしている…了子くんの…フィーネの姉として」
あれだけの被害を出した事件の全ての責任を自分一人で背負う。
どう考えても無謀極まりない事は明白だった。
「…亞里亞殿は何も悪くなどない…彼女には何の責任も無いではないか…!」
「幾ら姉だからって、そこまでする必要はねぇだろ…!」
「亞里亞ちゃん…そんなの間違ってるよ…」
確かに悲しいことが沢山ありはした。
多くの望まない戦いも経験した。
だが、だからこそ今の自分達があるのもまた事実だった。
悲痛な顔をしながらも、響たちは決意をする。
亞里亞に教えてやらなくてはいけない。
自分一人で何もかもを背負う必要は無いのだと教えようと。
「なにより、了子くんの最後を見届ける事が出来なかった事を最も気にしているようだ。だからこそ、せめて墓参りぐらいはしようと考えているんだろうな」
「師匠…亞里亞ちゃんは了子さんのお墓の場所を…」
「まだ知らない。教える前に彼女は休んでしまったからな。だから、明日にでも改めて教えようと思っている」
「そう…なんですか…」
それを聞き、最初は自分も一緒に墓参りに行こうと考えた響であったが、すぐに頭を振ってそれを否定する。
10年振りの姉妹の再会を邪魔するような事はしてはいけない。
亞里亞もきっと、一人で行きたいと思っている筈だと。
「私達…亞里亞ちゃんの力になってあげられないのかな…」
「立花……」
ポツリと呟く響を心配して翼がその肩に手を乗せる。
響だけではなく、他の皆も同じ気持ちだった。
結局、その日は何とも言えない重苦しい空気のまま解散となった。