フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん 作:とんこつラーメン
フィーネの意識が覚醒した了子の拠点にあった隠し部屋。
そこにあるメインコンピューターにあった数多くの知られざる情報。
そして…いずれこの場所を訪れたであろう『誰か』に向けて残された一通のビデオメール。
中身はなんとなく想像出来たけど、私はメールを開封した。
殆ど、無意識でやっていた。
『あー…ちゃんと撮れてるかしら? …よし。良いみたいね』
それは、10年振りに見る妹の生きている姿。
例え、それが過去に撮影された映像だと分かっていても、私は瞼が熱くなるのを止められなかった。
「…泣くのは後にしろ。今はこれを見る方が大事だろ?」
「うん…分かってる…」
キャロルが私の傍まで来ながら注意を促してくれる。
その言葉は少し棘があったが、今の私にはそれぐらいで丁度良かった。
『…この映像が再生されているって事は、これを見ているのは亞里亞お姉ちゃんであり、同時に私がもうこの世にはいないってことになるわね。だって、このビデオメールは私の縁者…つまり、お姉ちゃんにしか見れないようにしてあるから』
「了子……」
自分が死んだ後のことを想定して、この映像を遺したのか…。
流石は了子だよ…恐れ入る。
『お姉ちゃんのことだから、もう知ってはいると思うけど…私はご先祖である『フィーネ』の意識が覚醒して、心と体の両方を支配されようとしてる。今、写っている映像の段階では、まだ辛うじてギリギリ私の意識が勝っている状態で、これが最初で最後のチャンスだと思ってこの映像を遺しました』
ってことは、かなり前に撮影したって事なのか…?
私がまだアメリカにいる頃…例のツヴァイウィングのコンサートで起きた惨劇よりも前…?
『もう少しすれば、私の意識はフィーネと一体化してどっちがどっちか分からなくなると思う。そうなった状態でも、まだお姉ちゃんのことは覚えていたり意識してはいると思うけどね。『櫻井了子』として今まで紡いできた記憶も共有されるみたいだし』
そうだろうな。じゃないと、とてもじゃないが『芝居』なんて出来はしない。
にしても…『記憶』…か。
私と了子は血の繋がった実の姉妹であり、アイツがフィーネの子孫ならば、当然のように私もまたフィーネの子孫なわけで。
でも、私はフィーネとして覚醒はしなかった。
その理由に関しては色々と理由は思いつくけど…今は別にいいか。
確かに『意識』は覚醒しなかったが、その代わりに私にもこの身に流れる『フィーネの血』から得た物がある。
それが『フィーネの記憶』だ。
私は、フィーネと言う人物が先史文明に生まれ、それから巫女となり、どんな人生を送ってきたのか、たった一つの『願い』を胸に幾度となく転生し続けた時の『記憶』…その全てを『知っている』。
正確には『知らされた』と言った方が正しいけど。
『居なくなってから初めて大切さに気が付くとはよく言うけど…本当にその通りよね。私…お姉ちゃんがアメリカに行って初めて自分がどれだけお姉ちゃんに愛されていたのかを理解したわ…』
…それはこっちの台詞でもあるよ。
どうしてもっと、姉妹の時間を作れなかったんだろうな…。
今となっちゃ後悔しかない。
『弦十郎君が二課の司令になって、私がお姉ちゃんの仕事を引き継ぐ形で技術顧問になって…やっぱりお姉ちゃんには敵わないって感じたわ』
あの時、アメリカ行きの準備をするのに忙しかったけど、それでも可能な限り残せる資料や研究成果を残しておいた。
今はまだ難しくても、了子ならばいつか必ず理解してくれると信じて。
『資料の内容だけじゃない…その整理の仕方一つとっても完璧だった。まるで今の私みたいに、いずれ自分がいなくなることを想定していたみたいに』
していたみたい…じゃなくて、想定していたんだけど。
あの訃堂のジジイの思考パターンは予想しやすい。私と非常に似ているから。
だから、どうしてアイツが大人しく二課の司令を降りたのかも知っている。
普段はあんなにも頑固ジジイなのに、あの時ばかりは信じられないぐらいに素直に二課を去って行った。
それに続くかのように私も二課を辞めたんだけど。
その理由は色々あるんだけど…今はまだ話さなくてもいいでしょ。
『私…本当に素直じゃなかった。今思えば、お姉ちゃんはいつも自分よりも私のことばかりを優先してくれていたのに…その事に全く気が付く事が出来なかった。私以上の大天才であるお姉ちゃんの頭脳に嫉妬して…その優しさを蔑にしてしまってた…。小さな頃からずっと私の事を守ってくれていたのに…本当に…本当にごめんなさい…』
大丈夫。
私は気にしてないよ。
だから元気を出して。
そう言えたらどれだけ良かったか。
けど…もうそれは二度と言えない。
言うべき相手がどこにも存在しないから。
『私は多分…『世界の敵』として葬られる事になると思う。二課の皆…私達の産み出したシンフォギア装者の子達に』
その予想は大当たりだよ。
『だとしても、どうかあの子達の事を恨まないであげて。あの子達は自分がやるべき事をやっただけなんだから。本当はお姉ちゃんにあの子達を支えて欲しい…なんてことも思ったんだけど、それはきっと無理よね。お姉ちゃんの性格は私が一番よく知ってる。誰よりも自分に厳しくて、誰よりも他人を気遣う優しい自慢のお姉ちゃん。そして…誰よりも
ほんと…よく私の事を観察してやがるよ。
確かに私は弦十郎や、嘗ての二課…今のS.O.N.G.の雰囲気は好きじゃない。
空気もそうだが、それ以上に『国連の犬』に成り下がることが嫌だった。
昔の二課も政府の直轄ではあったが、言いなりではなかった。
元司令である訃堂のジジイという『最強の矛』の存在があったから。
アイツがいる限り、寧ろ政府の方が二課の言いなりになっていた感じさえある。
それだけ『風鳴家当主』という肩書の影響力は絶大なのだ。
司令でなくなった今でも政治に口出しが出来るほどには。
『だから、お姉ちゃんはお姉ちゃんがやりたい事をやって…って言わなくても勝手にするか。昔からそうだったし』
なら言うなし。
『実は私ね…お姉ちゃんの研究を真似して作ってみた物があるの』
…なんだと? それはちょっと聞き捨てならんぞ。
『と言っても、完成度はお姉ちゃんの理想とは程遠いと思うけど。きっと、今この撮影をしている瞬間もお姉ちゃんはアメリカで研究を続けていて、今の私の段階なんかとっくに通り過ぎてるんでしょうね』
おいおい…照れるだろうが。
照れすぎて、隣りにいるキャロルに抱き着いてキスするかもしれない。
思い出を取られた時はまぁ…その時って事で。
アメリカ時代の嫌な思い出でも差し上げよう。
「なんだろうな…未だ嘗て味わった事が無いような悪寒がオレの背中を走ったような気が…」
「気のせいじゃない?」
気のせい。気のせい。
そう言う事にしておいた方が皆幸せだよ。
『私が作った物は、お姉ちゃんが今いる部屋に隠してあるわ。網膜認証しないと開けられないようになってるから気を付けてね。勿論、登録してあるのは私とお姉ちゃんのよ』
いつの間に私の網膜を写し取ったんじゃい。
たった知らされた衝撃の事実発覚だよ。
『…もうそろそろね。最後にこれだけは言わせて。今までずっと言えなかったけど…私はお姉ちゃんのことが世界で一番大好きで、何よりも自慢で…誰よりも愛してるわ。お姉ちゃんがいなかったら、きっと考古学者になろうともしてなかったでしょうし、櫻井理論やシンフォギアシステムも完成してなかったかもしれない』
そんな事は無いよ。
お前ならきっと、私なんかがいなくても一人で辿り着けていたさ。
だって…私の自慢の妹なんだから。
『お姉ちゃん…ありがとう。そして…さようなら』
その言葉を最後にビデオメールは終了し、後には砂嵐だけが残った。
「ふん…中々に姉想いな妹じゃないか。なぁ…亞里亞。…亞里亞?」
「……なに?」
「目…赤いな」
「う…うっさいな…」
墓前の時みたいに年甲斐もなく泣き叫ぶよりはマシでしょうが。
あれは間違いなく『亞里亞ちゃん黒歴史ランキング』のTOP10入りしてるんだし。
「それよりも、さっきメールでお前の妹が言っていた『真似して作ってみた物』とやらを探すのか?」
「当然。妹の形見だしね」
まだコンピューターの情報抽出には時間が掛かっているし、その間に探してみる事にしよう。
ま、そんなに広い部屋じゃないし、すぐに見つかるだろ。
「……あ」
「どうした?」
「見つけたかもしれない」
「なに?」
さて探しますかと椅子から立ち上がった瞬間、壁の一部分に怪しい場所を見つけてしまった。
これはマジで偶然で、ふと目が行ったって感じだ。
よくある事とはいえ、まさか今それが発揮されるとは…。
「ここ。ここですよボス」
「誰がボスだ。誰が。ファミコン時代の探偵物のゲームの助手みたいな台詞言うな。犯人にするぞ」
「私はヤスじゃないから無理でーす」
私の視界に入ったのは壁の一部分。
パッと見は何気ない場所に見えるが、なんだか違和感を感じた。
この場所だけ汚れが少ないと言うか…妙に真新しく感じると言うか。
「ん?」
「お?」
壁に触れると、その部分だけがスライドして網膜認証用のレンズが登場した。
どうやらビンゴのようだ。マジか。
「ちゃんと私の背に合わせて作ってあるし…」
大きく目を開きながらレンズに合わせるようにして…っと。
これでいいかな?
『認証完了。これより封印を解除します』
「「封印?」」
なんか急に物騒な単語が飛び出してきたな。
本当に大丈夫か?
そんな私の不安を余所に、レンズがあった場所の横の壁が噴き出す蒸気と共に観音開きになり、奥の方から厳重に安置された物をスライドするように持ってきた。
「おい亞里亞…これはまさか…」
「その『まさか』…だな」
そこにあったのは私が良く知る小さなペンダント。
シンフォギアのペンダントだ。
けど、色が違う。
聖遺物を使ったシンフォギアのペンダントは赤寄りのピンクっぽい色をしているが、これはそれとは真逆に青い色をしている。
これはもう…間違いないな。
「私の『研究成果』…その模倣品。いや…再現品と言うべきか? どっちにしても、これが了子が私に遺した物…か」
私はふと、ずっと自分の首にかけている『試作一号機』である青いペンダントを取り出して、目の前にある物と比べる。
「見た目だけはほぼオリジナルに近いな」
「中身は?」
「それは調べて見ない事には何とも」
つっても、ここの機材で調べられるか?
やろうと思えば出来ない事も無いだろうけど…いつまでもここに長居するのはな…。
「ん? よく見たらこのペンダント…二つないか?」
「あ…ホントだ。影になって分かりにくくなってたけど、奥の方にもう一つあるや」
手を伸ばしてから、もう一つのペンダントも取り出す。
それもまた青いシンフォギアのペンダントだった。
「これも分析してみないとな。けど、どこで……」
一番確実なのはS.O.N.G.なんだろうが…あそこに戻るのだけは嫌だ。
本能が全力で拒絶してる。
「はぁ…仕方がない…か」
「どうするんだ?」
「現状、一番マシな場所に行くことにする。あそこもあそこで問題はあるが、少なくとも『あそこ』よりはずっといい」
「どこなんだ、そこは?」
「…私の『個人スポンサー様』の所」
「個人…スポンサー…?」
昨日の今日でまた会うのはちょっと憂鬱だけど…背に腹は代えられないよな。
まさかとは思うが了子の奴…ここまで計算してたとは言わないよな?