フィーネになりそこなった合法ロリのお姉ちゃん 作:とんこつラーメン
なんか、全ての敵を徹底的に論破して味方に付けている亞里亞が思い浮かんでしまった…。
了子が隠し部屋に残したメッセージと、最後に遺してくれた物を手に入れた私達は、再び車に乗ってある場所へ向かって移動をしている。
「良かったのか? あの部屋を再び封印して」
「いいんだよ。どうせ、あの場所には私以外の奴は誰も入る事は出来ない」
「扉を破壊して入ろうとするかもしれないぞ?」
「私の妹が、そんな事を想定していないとでも?」
「ということは…?」
「そ。もし万が一にでも正規の方法で扉を開かなかった場合、即座に自爆装置が作動するようにプログラミングされてた。無粋な事をする不届き者に対する制裁と、全ての情報を闇に葬ると言う二重の意味を込めて」
「…伊達にお前の妹ではないと言うことか」
「ま…ね。私の自慢の妹さ」
私なら、自爆なんて美しくない方法じゃなくて、即死級の猛毒の霧でも散布して人間だけを確実に始末するけどね。
「あのさー…少しだけ聞いてもいい?」
「何をだ?」
「キャロルが今しようと思ってる事って…死んだ親父さんが関係してたりする?」
「…なんでそう思った?」
「いや…普段から余り自分から積極的に動こうとしないキャロルの行動原理を考えたら、真っ先に思いつくのがそれだったモンで」
キャロルはかなりのファザコンだ。
片親だけで育てられれば、そうなるのは必然かも知れないが。
「はぁ…お前は本当に…なんで考古学者なんてやってるんだ? 私立探偵でもやってた方が遥かに似合ってるぞ」
「もしも私が探偵なら、キャロルが助手で、オートスコアラーの子達は雑用係ね」
「おいこら待て。勝手に決めるな。せめて『副所長』ぐらいにしろ」
「どっちも似たようなもんでしょうが…」
大雑把な性格をしてそうで、意外と細かいんだから。
つーか、オートスコアラーの皆を雑用に使う事には反対しないんだ…。
「…前にお前にだけ話した、パパの遺言の事は覚えているか?」
「うん。確か『世界を知れ』って言い残したんだっけ。…あ。まさか…」
うわぁ…どうした私。
たったこれだけのヒントでキャロルが企んでいる事が分かったかもしれない。
やっば…私マジで探偵に向いてるかも。
「まさかとは思うけど『万象黙示録』を完成させて、世界そのものを物理的に『分解』しようとしてる?」
「どうして、たったあれだけの会話でオレの計画の全貌を推理してしまえるんだ…?」
「前々から色々と聞かされてたお蔭だよ。万象黙示録自体は私も純粋に興味があったし、暇な時に『独学でどこまで出来るかなー』って試したこともあった」
「それは初めて聞かされたぞ…」
「だって初めて言ったもん」
やっと山を降りられた…。
あの屋敷ってば本当に、着くまでの距離さえ短ければ最高なのにな。
あれを建築した奴は、一体どういう気持ちであそこに建てたのやら。
「結果はどうだったんだ?」
「多分、キャロルが想定していた奴とは全く違う『私だけの万象黙示録擬き』が出来上がった感じ。錬金術の基礎三大理論は余裕で実行出来るけど、規模はあんまりデカくない。精々、頑張って街一つが限界かな」
「それでも十分過ぎるだろ…」
あれはあれで一応の完成かもしれないけど、私自身が全く満足していない。
流石に実行する気は無いが、それでも突き詰める所までやってみたいのが私なのだ。
あ…信号に掴まった。
「んー…キャロル。今から私、すっごく恥ずかしい台詞を言うと思う」
「はぁ?」
「もしかしたら、キャロルを怒らせるかもしれない。それでも聞いてくれる?」
「言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」
「ありがと」
ここの信号長いなー…。
いつまで赤なんだよ。
「親父さんの『世界を知れ』って遺言な…それ、絶対に物理的に世界を分解しろって意味じゃないぞ」
「…そんなのはオレだって分かってるさ。馬鹿じゃあないんだ。けど…オレにはそれ以外に思いつかないんだ! パパのことを否定し、殺した奴等への憎悪と怨恨がごちゃ混ぜになって!!」
…だと思った。
キャロル自身ももう、自分で自分が分からなくなってるんだ。
だから、少し冷静に考えれば分かることも分からなくなってる。
ふぅ…キャロルには本当に世話になってるし…偶にはこっちからも恩返しをしなきゃかな。
「なぁ…亞里亞には分かるんだろうッ!? お前は頭が良いからな!」
「うん…分かるよ。って言うか、私じゃなくても大半の奴ならすぐに分かると思う」
「そ…そうなのかッ!?」
「まぁね。でも、その前に信号が青になったから車動かすよ」
車を発進させて再び道路を疾走する。
ちゃんと法定速度は守ってね。
「世界を知る…。それはきっと『見て』『聞いて』『学ぶ』ことなんじゃないかな」
「な…なんだそれは…?」
「世界を旅して、色んな物を『見て』。色んな人の話を『聞いて』。そこから更なる事を『学ぶ』。それだけ。たったそれだけの単純な事さ。『世界を知る』ってさ…要は『見聞を広める』って事を指してたんじゃないかな。少なくとも私はそう思った」
「見聞を広める…? それだけ…?」
「…一人の父親として、先達として、愛する愛娘にそれ以上の事は求めないでしょ。少なくとも、世界を分解したり、自分の無念を晴らすなんて事は望まないんじゃないのかな。私はキャロルのお父さんに会った事は無いから分からないけど」
うーん…これはマジで嫌われたか?
さっきから俯いてブツブツと言ってるし。
「キャロルのお父さんは…誰かに対して恨み辛みを言って、自分の無念を晴らして欲しいと願うような人だった?」
「違う! そんな事は無い! パパは…パパは…」
「パパは?」
「凄く優しくて…どんな時も明るくて…絶対に諦めなくて…誰よりも人間を愛している…自慢のパパだった…」
「…そっか」
正直…ちょっとだけ羨ましい。
私には父親との思い出なんて殆ど無いから。
今までの人生の大半が妹の了子やどこぞのクソジジイと一緒にいた記憶しかないし。
「オレは…間違っていたのか…?」
「少なくとも、人道的に見れば絶対に間違ってるわな。つーか、怒らないんだ? 正直な話、絶交されるぐらいの覚悟で話したんだけど」
「フッ…もしも、同じ事を話したのが別の奴だったら、激高して即座に殺していただろうな」
「まぁ怖い。じゃあ、何故に?」
「亞里亞は頭が良いからな。オレとは違って冷静に物事を客観的に見る事が出来る。それに…」
「それに?」
「…亞里亞の言っている事なら、不思議と信じる事が出来る。自分でも、どうしてかは知らんがな」
…え? キャロルってこんなに可愛かったっけ?
つーか…もしかしてデレた?
キャロルとは、かなり長い付き合いではあるけど…こんな彼女を見たのは初めてかも。
もしも今が運転中じゃなかったら、すぐに抱き着いてキスしてた。
それぐらい今のキャロルは可愛かったです。はい。
「でもまぁ…なんだ。まだ計画実行前だったんだし、別にいいんじゃない? これまでの用意が全て無駄になる訳じゃないんだし」
「そう…だな。まだ何かの利用価値ぐらいはある…か」
「あとさ、生前に錬金術で人々を救ってた親父さんが間違っていなかった事を娘であるキャロルが証明すれば、それこそが一番の供養になるんじゃないの?」
「オレに人助けをしろとでもいうつもりか?」
「そこまで露骨じゃないけどさ。直接的じゃなくても、間接的に誰かを助ける事は出来るよって話。実際、私だって似たような事をしてるしさ」
逆を言えば、そんなことぐらいでしか誰かを助けられない自分が不甲斐無いんだけど。
ガラじゃないから別にいいんだけどね。
裏方に徹するぐらいが私には丁度いいのさ。
「ねぇ…キャロル。やることが無くなったのなら、私の事を手伝ってみる気は無い?」
「亞里亞の手伝い? そう言えば、お前の企みについて何も聞いていないな」
「企みって…人聞きの悪い言い方をしないでよ。まるで私が悪巧みをしているみたいじゃないか」
「別にお前が悪事を働くとは思わないが、そこに至るまでの過程は似たようなものだろう」
「うぐ…!」
ここでキャロルから反撃された…。
否定は出来ないけどさ…。
ゴールに至るまでの道筋には一切拘らない。
終わり良ければ全て良し。
それが私って人間だからね。
「まぁ…なんだ。まだ漠然とはしてるんだけどね…姉として、妹がやり残したことぐらいはしてやらないと…って思ってさ」
「やり残し…とは?」
「世界平和の実現」
「……は?」
…滑った。
一気に車内の空気が冷たくなっていく。
「ってのは半分冗談だけど」
「半分は本気なのか」
「この世界に生きる一人の人間として、世界平和ぐらいは普段から願ってるよ。だから、私はごみのポイ捨てはしないし、ちゃんと分別もしてる」
「それは世界平和に繋がっているのか?」
「小さなことからコツコツと…ってね。科学の基本さ」
一足飛びに何かを成そうとしても碌なことにはならない。
何事も些細な事が切っ掛けとなって大成するのが世の常だ。
「だからと言ってS.O.N.G.の連中と一緒に行動する気は無いけど」
「どうしてだ? 目的は同じだろう?」
「目的が同じでも、やり方が温すぎる。しかも、今のアイツ等は国連の犬に成り下がってる。それなりの自由行動権ぐらいはあるかもしれないが、それでも『何かの下』にいるという状況はいつの日か必ず自分自身の首を絞める事に繋がる。それが『縦社会』ってもんだ」
だからこそ私はジジイと一緒に二課を去った。
あのまま残っていれば、確実に二課本来の動きが出来なくなると確信したから。
それは最悪の形で現実になったけど。
「しかも、アイツ等は『組織』という体裁である以上、いざと言う時の行動力が低い。弱点が露骨すぎるんだよ。心臓丸出しの状態で戦場を闊歩するような馬鹿と心中する趣味は私には無いんでね」
訃堂のジジイがイライラする理由も今ならば理解出来る。
防人云々に関しては本気でどうでもいいが、アイツ等は行動の全てに感情が入り込み過ぎている。
別に感情そのものを否定する気は無いが、それでも限度ってのがある。
レセプターチルドレン達を引き入れているのがその最たる例だ。
本人達の意志を尊重したのかもしれないが、それでもついこの間まで敵対していた奴等を殆ど無条件で受け入れるなんて有り得ない。
マリアの奴が色々としているようだが、それも司法取引みたいなもんだ。
私からすれば普通に有り得ないし、許せない。
「あいつ等と目的は同じでも、ゴールに至るまでの道筋が一緒である必要性は無い。私は私のやり方で、本気で世界平和を目指してやる。その為の『こいつ』なんだから…」
ハンドルから片手だけ放して、首に掛かっている『青いシンフォギアのペンダント』を握りしめる。
「キャロルも、誰かに命令されるとか嫌でしょ」
「当然だ。オレは誰の下にも付く気は無い」
「だよね」
だからこそ、キャロルは最高の協力者に成り得るんだよ。
持つべきものは親友だよな。
「そう言えば…今、どこに向かっているのか聞いてなかったな。『個人スポンサーの元』と言っていたが…」
「そ。私の研究に目を付けたジジイがいてね。家とか関係なく、個人で私のスポンサーになってくれたんだよ。で、そいつがいる京都に向かって車を飛ばしている最中なのです」
「京都…か。随分と遠いな」
「いいじゃない。滅多に出来ないドライブが出来ると思えば」
「…そうだな。亞里亞とのドライブならば悪くない」
なんだろう…さっきの会話以降、キャロルが露骨にデレてきてるんですが。
これはアレかな? 到着し次第にハグしてもいいという合図かな?
「しかも、京都の割と端の方にある屋敷だから、結構時間が掛かるかも」
「屋敷…? でもそっか…個人スポンサーと言う以上はかなりの資金力があって当たり前か。で、そこはどんな屋敷なんだ?」
「別に大したことは無いよ。昔からずーっと日本を裏から守り続けてきた…」
高速道路に入る為にナビで場所を確認する。
よし、次の角を右だな。
「『風鳴家』って奴等の屋敷さ」