永遠を生きる   作:影後

17 / 18
それはたった一人の子供の言葉から起こった。
それはある意味最善の結果であり、最悪とも言える結果であった。


Eの再来/家族の形

「…この車どうしたんだよ」

 

「買った、一括」

 

「はぁ?そんな金」

 

「……」通帳スッ

 

流石に翌日という事はできなかったが、その代わり男は車を買いに行っていた。

 

「……幾らしたんだよ」

 

「色々込みで1890万」

 

「先に言えよ馬鹿!」

 

「てか何だよ、この金額!おかしす」

 

「……お前の口座もあるぞ」

 

「うわ…おかしいだろ、これ所得税とか色々」

 

「相続税かかる面倒な奴になるな」 

 

「……兎に角、家計の通帳の方にお前から入れといてくれ」

 

「わかってる、今回のは俺のもう一つの口座からの出費だ。こっちでは痛くもない」

 

ノイズを殺せば$単位で大金が何故か勝手に振り込まれている身である。

だからこんな買い物も一括でできる。

 

「てか用意期間とかそんなの」

 

「通帳とブラックカードとか、色々見せたら通ったぞ」

 

「少しは……」

 

まるで夫婦の会話のように正座で叱られている響鬼。そして、それを叱る奏、桃季は笑顔で

「お母さん!」と叫びながら奏に抱きつく。

 

「明日だよね!!」

 

「あぁ、そうだな」

 

「正座やめて良いか?」

 

「まだ駄目だ!」

 

「はぁ」

 

桃季はそんな二人をニコニコした顔で見ている。

桃季に母親の記憶はない、だからこそ、奏が本当の母親に思えてならない。

 

「桃季、お母さんとお風呂入ろうな」

 

「パパは?」

 

「なっ?!そんなの」

 

「フッ」

 

「何だよ!」

 

嘲笑する響鬼に顔を赤らめて怒る奏、初めの頃は介護されていると割り切り着替えや、入浴を手伝って貰ったが、リハビリも終えて普通に生活してからはそんな事は無かった。

確かに、翼以外で裸を見られたのは響鬼もといエターナルしか居ないが、それでも恋人でもなく、肉体関係もない相手であり、羞恥心の方がまさる。

 

「桃季、おっきなお風呂がついたお屋敷に引っ越さないか?」

 

「ほんと?」

 

「あぁ、でもお友達とは」

 

「響鬼!」

 

先程まで顔を赤らめていた奏は、今度こそ本気で打つ。

 

「良いよ、お母さん」

 

「……桃季、先にお風呂入ってね。お母さんはパパと話すからな」

 

響鬼は奏に叩かれることはない、だが静かに言葉を綴られる。

 

「死んだよ、ここは一体にノイズが出てな。桃季は今一人だ」

 

「そうか、残念だな」

 

「引っ越せるなら引っ越したい、でも、何処に行く気だよ」

 

「一等地ではないが、俺が持つ巨大な屋敷だ。名義は裏でやれば良い」

 

「頼む、お前の前だと笑顔だけどやっぱり辛そうだった。実際、帰ってくるまで死んだって、桃季も思ってた筈だ」

 

「……心配かけたな」

 

「まったく」

 

風呂に行こうとする奏に駆け寄り、背中から抱きしめキスをする。

 

「なっ…お前!本当にふざけ」

 

巫山戯ていない、駄目だな。桃季にも、俺にも……必要な女だ。

聖女なのだろう、俺を地獄から引き上げ、今という安らぎをくれる奏が…俺には聖女に思えてならない。

 

「……俺の女にしたくなった。なぁ、本気で桃季の義理母になるつもりは無いか」

 

「そんなの」

 

「俺は本気だぞ、奏」

 

振り返った奏を強く、俺だけのものだと刻む。

始めてだ、こんな感情を抱いたのは。

手に入れたいと、愛したいと思ったのは。

 

「……」

 

奏は俺を払い除けるとそのまま桃季の待つ風呂へと向かったのだろう。

 

「らしくないか?……まったく」

「お前はどう思う?エターナル」

 

《エターナル》

 

昨晩、色々と関係が拗れそうな事をした翌日。

俺はフィーネとの待ち合わせ場所に向かっていた。助手席には誰も居らず、後でチャイルドシートに座る桃季と変装した奏がいる。

 

「着いたぞ」

 

ロストドライバーとエターナルメモリを隠し持ち、車を降りる。

罠の可能性もある、もしそうなら殺すだけだが。

 

「…れ…響鬼」

 

「母さん……それに、増えてないか」

 

風鳴弦十郎は判る、恋仲の筈だ。

敵対者の恋仲というのは面倒だが、フィーネの決めた相手だ。俺に不満はない。

 

「……遊園地行くって話したら広まっちまったんだよ」

 

「子供か……いや、子供だったか」

 

「……奏、何故その男と」

 

「翼?!違う!これには」

 

「お母さん、誰がおばあちゃんなの?」

 

「「桃季?!」」

 

奇しくも俺と同じ反応をしてしまう。

嫌な予感がする、というよりも

 

「貴様、奏とどのような」

 

「嫌だなぁ……奏、桃季を離してくれないか?」

 

「あっあぁ……響鬼」

 

ある程度離れたのを見計らい、エターナルメモリを取り出す。

 

《エターナル》

 

「……貴様」

 

「え?あ!!!!!」

 

響は思い出したみたいだな、この顔では一度会っている。

 

「変装だよ、兎に角だ。娘に手出ししてみろ、今度こそ壊滅させてやるぞ」

 

「あっ!助けてくれたお姉ちゃんだ!!」

 

「あっ、あの時の…子だよね?」

 

「うん、ありがとう!お姉ちゃん!!」

 

「響、知り合い?」

 

「うん、ノイズに襲われてる時に助けて……そのあと」

 

口止めを行い、フィーネと向き合う。

 

「桃季、来なさい」

 

「うん!パパ!!」

 

桃季を抱きかかえる、フィーネに見せる。

 

「……娘の桃季だよ、母さん」

 

「おばあちゃん?」

 

「あっ……あぁ……そうだよ」

 

「パパとおんなじ!優しい匂いがする……」

 

「抱いてみるか?」

 

「…あぁ」

 

桃季を抱くフィーネは目尻に涙を浮かべている。

 

「……んゆ」

 

「気にするな、」

 

「さて、母さん。奏、少し離れててくれるか?」

 

「……馬鹿な真似は止せよ?」

 

「話すだけだ」

 

俺はロストドライバーに何時でもメモリを挿せる状態であの男に近付いた。

 

「…エターナル」

 

「よぉ、子供使い」

 

「エターナル、それは」

 

「俺はな、何時までも隠し通せるとは思わないぜ?あの事件はお前が起こした事件だ。

俺を憎むなよ?お前たちがもっとマシに動けば問題はなかったんだ」

 

「…お前は一般市民を」

 

「この国の奴等は腐ってる、響。お前は良く知ってるだろ?捨てられた、お前は」

 

「…違うよ、エターナルさん、それは!」

 

「お前の父親は逃げた、お前を捨てて。お前家族を襲おうというクズたちも居た。俺が救った、バカ共を殺してやった……そして、この国の敵としてわすべての憎しみを背負ってやったんだ」

 

「エターナル、何が言いたい」

 

「翼だったか、彼奴にエターナルメモリを渡したのは誰だ。ガイアメモリの製法は既に閉ざされている。お前達だけだ、あるとすればこの国だ」

 

「それは…」

 

「まぁ良い、当分敵対はしない。フィーネ、お袋が人質みたいなもんだしな。だがな、次に一線を超えてみろ。今度こそ、本気でこの国を滅ぼす」

 

俺に躊躇いはない、この男の心臓に手を当てている状況だ。

すべてを滅ぼすことも、生かすことも、俺次第となる。

 

「もし、そうなれば今度は手加減はしない。それにだ…ガイアメモリを作ってるのがお前等の身内なら、……お前等ごと殺せるのにな」

 

だが、俺はあの娘達は殺さない。

結局は頼まれ、言われるがままに行っただけだ。

正義感から、強さを求めたから。

 

「パパ!行こう!」

 

「あぁ、そうだな」

 

向ける顔は父親として、そして…優しく、愛するものを守る顔を。

 

「奏」

 

「お前……本当に!」

 

「あら、響鬼。奏ちゃんとは」

 

「返事待ちだ」

 

「そうなんですか?!奏さん!!」

 

「え?いや……」

 

「エター……きっ貴様!」

 

「ほら、さっさと行くぞ」

 

遊園地内では俺は桃季に常にハーネスをつけている。迷子にさせないために。

 

「パパーーコレ取ってよ」

 

「駄目だ、桃季が迷子になっちゃうだろ?これは、パパとお前を繋ぐものだ。むう!」

 

父親らしく駄目なものは駄目と言い、導くことが大切だ。愛だけを与えるのではなく、厳しさも必要なのだ。

 

「パパ!アレやりたい!!」

 

「だっ…駄目だよ、桃季ちゃん!アレは」

 

響が止めるのはバンジージャンプ。

しかも50mぐらいはある。

 

「うーん、パパがやってるのを見るでどうだ?」

 

「良いの?!」

 

「あれぐらい簡単だから」

 

「あぁ、そうですね」

 

整理券を買い、バンジージャンプの準備をする。

以外にも人は多い、そして…ビビるやつも。

 

「怖いなら退け」

 

「あつ…はい」

 

30代程度の男が場所をどける。

命綱もつけ、準備する。

 

「何時でも大丈夫です!」

 

「ふ〜〜〜…ふっ」

 

だが数秒後、俺は水の中にダイブすることになった。

 

「……パパ、格好いい!」

 

「行かせなくてよかったな」

 

「お客様、オーナーが」

 

「この事故だが、俺の着替を用意してくれるなら不問にする。別に、身体に傷はないからな」

 

「ありがとうございます……ありがとうございます」

 

オーナーといえば良いのか、そいつはかなり俺に頭を下げていた。

安全も確認していたにも関わらず、俺の糸は着れた。

 

「劣化じゃァないな、」

 

「何が」

 

「いや……なんでもない」

 

敵が居る、明確な敵が。

エターナルが伝えてくれる、敵が居ることを。

 

「………また、永遠の時間が来るのか」

 

奏に抱かれる桃季を見ながら、ポケットの中のエターナルメモリを握りしめた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。