一万回目の二回戦   作:とにざぶろう

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【十】

 そして聖グロリアーナとの試合当日を迎えた。

 

 やれることは全てやった。

 聖グロリアーナの車輌や戦術を分析し、対策を練り、こちらの戦術を組み立てた。

 諸処の作戦も無数に考案し、その中から有効なものを選び取り訓練を重ねた。

 みんなのノリと勢いだって頂点に達している。

 

 聖グロリアーナは強い。全国大会で準優勝をおさめたこともあるくらいだ。

 けれどだからといって勝てない相手ではない。

 

「カルパッチョ、フラッグ車を頼むぞ」

 

「はい、了解です、ドゥーチェ」

 

「ペパロニ、熱くなりすぎるな。あとは好きにやっていいぞ」

 

「任せてください、姐さんっ!」

 

「パネトーネ、気楽にやれ。期待してるぞ」

 

「了解っす、だぜっ!」

 

 冬季無限軌道杯。一回戦のポンプルとの試合はなんとか勝利をおさめることが出来た。

 

 カルパッチョの乗車するセモヴェンテをフラッグ車としたのが功を奏したのか。

 新たに考案した雲形定規作戦やトルメンタ作戦を効果的に利用できたからか。

 もしくは、パネトーネを小隊長に据えたのが良かったのか。

 おそらくどれか一つでなく、全てが噛み合って勝因となったのだろう。

 

 勝負には時の運もある。

 練度や性能差、その日のコンディションだって影響する。

 試合が始まってみるまで、どう転ぶかはわからない。

 けれど一つ、確かなことがある。

 

「アンツィオは、強い」

 

 私はそのことを知っている。

 この身で知っている。魂で知っている。

 

 ――――。

 

 夏の大会では、惜しくも二回戦で大洗に敗退してしまった。

 あれは良い試合だった。あんなに楽しい試合は、後にも先にもない。気持ちの良い相手だった。

 

 今回の大会、トーナメント表を見る限り、大洗と当たるとすれば、決勝戦でのこととなる。

 アンツィオの目標は二回戦突破ではない、優勝だ。

 だから必然的に、アンツィオは決勝まで駒を進める。

 そこで大洗を倒して、この大会に優勝するんだ。

 

 ……ああ。

 わくわくと、胸が躍る。

 

 P40のハッチから上半身を出し、エンジンの振動に揺られ、吹いては凪ぐ風を感じて、頭の中には作戦を張り巡らす。

 体中に巡った熱は冬の寒さを忘れさせ、そのまま昂揚感に脳をやられてしまわないよう自制する。

 

 横を見ればセモヴェンテ、反対側にはCV33。

 ここからは見えないけれど、きっとフィールドの遠く向こうにはチャーチルやマチルダが並んでいることだろう。

 

 ひゅううと高音が聞こえて、白煙が空に上がった。

 天高く弾ける白煙は、試合開始を告げる合図だ。

 

「いくぞ、お前らっ!」

 

 ああ、なんて贅沢なんだ。

 私はいま、戦車道の只中にいる。

 

「アーヴァンティっ!」

 

 前方へ叫ぶと、みんなの雄叫びが私の耳に届いた。

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これで完結となります。

一つ最後に記載しておくと、お察しの方、ご存じの方いるかもわかりませんが、本作は最終章第二話の後、第三話の前に書いたものです。
信じていたというほどではありませんが、私も願ってはいました。

それでは、感想などいただけましたら、とても嬉しいです。
とにざぶろうでした。
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