1時間ほどかけてカルパッチョとの情報交換は終わった。
試合当日の流れは把握できたし、諸処の動きや台詞もおおむね思い出せただろうと思う。
始める前は無理だろうと思っていたのだが、カルパッチョの記憶に刺激されて私の記憶が蘇り、反対に、私の記憶に刺激されてカルパッチョの記憶が蘇り。
相互作用がうまく働き、思いのほか、細部まで整理できた。
打ち合わせが終わると、一旦、朝食をとって、他のみんなを集合させて朝練へと移った。
マカロニ作戦を発表し、まずは作戦を実行に移すためのデコイの制作からだ。
前回のループと同じく、デコイの制作は一日で終わった。みんな楽しそうにしていてなによりだ。
当日までの残りの時間は全て試合の練習に割いた。
負けるために練習をするというのもおかしなものだが、戦車道はなにも今回の大会で終わりというわけじゃない。
冬の大会だってあるし、他のみんなには来年もある。練習はいつか実になる。
そして試合当日。
これだけ準備を重ねたのに、我々は正解のルートを外れてしまった。
ペパロニが、全てのデコイを配置しなかったのだ。
嬉しい誤算だが、今の私はそれを望んでいなかった。
作戦は成功した。しかし目論見は失敗したのだ。
ともかく我々は大洗の背面へ回り込み、全面包囲からの奇襲作戦を行った。
それでも大洗には勝てなかった。
M3リーと三突の二輌は撃破できたが、それだけだった。
三突と撃ち合いになったカルパッチョ車に白旗が揚がり、残りのセモヴェンテは全てⅣ号に狩られた。
CV33は八九式になぎ払われ、最後に私の乗るP40をやられ、それで終わりだ。
私とカルパッチョは、十二回目のループを迎えた。
ケイから見ればこれで四十九回目――とも限らないのか。
我々が認識する十一回目と十二回目の間で、ケイが何度か第一ステージをゲームオーバーしている可能性もある。
なんともややこしいが、確かなのは、今回のループでケイが第一ステージをクリアしているということだ。
また負担をかけてしまった。
私たちはそれを引き継ぎ、今回こそ第二ステージをクリアしなければならない。
再び試合当日。
私はペパロニに言った。
「おいっ! デコイ、全部置いてしまえ!」
『え? マジっすかドゥーチェ。もしかして数の計算できないんすか』
「良いからっ!」
『しゃーねーなー。おーい、残り全部こっちに置くぞー』
前に7月6日を迎えた時とはペパロニとのやり取りは違っていたが、そこに大きな問題はなかったようだ。
その後、おおむね前回と同じ流れを辿り、我々は大洗に敗北、宴会をして、無事に7月6日を迎えた。
「今回は、第三ステージをクリアできるでしょうか」
「さあなあ。それは私たちにもどうにもできないだろう」
「だが、とにかくプラウダの隊長には会いに行かなきゃな」
ケイの予測では、カチューシャに記憶の引き継ぎが行われるのは7月26日前後とのことだった。
我々はそれまでのあいだ、前回同様、アルバイトや戦車道の練習をして過ごした。
どのループが我々にとって本当の歴史になるのかはわからない。
だとしたら、手を抜いて良いはずがない。
我々は、いつだって全力で臨む必要があった。
陸の海辺にも行った。
7月26日になると、過去に交換した連絡先を引っ張り出してプラウダへ電話をかけた。
『何のようっ!? 今はあなたの相手なんかしてる場合じゃないのよっ!』
「まーまー。ループしたんだろ? 全部説明してやるから」
『はあっ!? 何それっ! ちょっとあなた――』
長くなりそうだったので、そこで私は通話を切った。
ケイへ連絡をとると、貴女たちだけで行ってちょうだい、とのことだったので、プラウダへは私とカルパッチョの二人だけで出向いた。
プラウダの学園艦は始めてで、街を歩くと遠目に雪原が見えた。
驚いて道行く生徒に訊いてみると、人工でなく天然物だそうだ。
あの雪原を保つために学園艦の進路の調整でもしているのだろうか。
そういう酔狂は嫌いじゃない。
しばらく街を散策した後にカチューシャを訪問。
しかし、現れたのは本人でなく副隊長のノンナだった。
「カチューシャ様はお眠りになられています。またの機会を」
「起こせっ!」
カチューシャの部屋へは15分ほど待った頃に通された。
つい先程まで眠っていたことなど一切感じさせない様子で、カチューシャは「待たせたわね!」と宣った。
私とカルパッチョは顔を見合わせてため息をついた。
さて、と説明を始めようとしたものの、いつまで経ってもノンナが退席しない。
怪訝に思い確認を取ると、彼女もまた、カチューシャと一緒にループを経験しているとのことだった。
私とカルパッチョ。カチューシャとノンナ。
各プレーヤーはコンビが基本なのだろうか。
だとすると、第一ステージのケイは極めて特別な存在だったのだろう。
私とカルパッチョは、改めて説明を始めた。
カチューシャは悪態をつくものとばかり想像していたが、思いのほか、説明を聞いているあいだは素直だった。
うんうんと頷きながら、RF-8の中で行儀良く体育座りをしていた。
「つまり、このループを脱出するためには、まずは大洗に負けなければならないということだな」
そう話を締めると、カチューシャは言った。
「それでも勝つのはカチューシャよっ!」
…………。
「えぇ……?」「……はい?」
カルパッチョと二人して、喉の奥から疑問の声が湧き出る。
「聞こえなかった? 勝つのはカチューシャだって言ったのよ」
「聞こえなかったかと確認したいのはこちらの方だっ!」
「もしかして話が通じていなかったのか?」
「勝てばループが続くんだ。全員ループから脱出できないんだぞ?」
「失礼ねっ! 通じてるに決まってるでしょっ!」
「何回やったところで勝つのはカチューシャだし、あなた達には悪いけどループ脱出はできないわ」
「ね、ノンナ?」
カチューシャが目をやると、ノンナは「はい」と頷いた。
「ず、ずっとこのループの中にいるつもりかっ!? 本当にそれで良いのかっ!?」
「仕方ないじゃない、プラウダの雪が永遠に溶けないのと一緒で、カチューシャの勝利はもう決まったことなんだから」
「い、嫌じゃないのかっ!? 終わりはやってこないんだぞっ!? 永遠だぞっ!?」
ループが辛くないと言ったケイだって、脱出へ向けて動いていた。あいつだって永遠に彷徨い続けるのは嫌なんだ。
それをカチューシャは、受け入れると言っている。
「嫌とか嫌じゃないとかの話じゃないわ」
「……運命が何と言おうと、カチューシャは勝たなきゃいけないの」
「たとえ一万回繰り返したとしても、勝つのはカチューシャなのよ」
そう言ったカチューシャの瞳は強く透き通っていて、嘘偽りない本心なのが伝わった。
茶化す気はまったく起こらない。
その覚悟も、なんとなく理解ができた。
「でも、だからって――」
言いかけた私を、カチューシャが「はん」と鼻で笑う。
「ま、あなた達みたいな弱小校には、強者の胸の内なんて想像がつかないだろうけどね」
あんまりな言いぐさに、頭へかっと血が上った。
「い、言わせておけばお前ぇえっ! アンツィオは弱くなんかないっ! いや強いんだぞっ!?」
「弱くない高校が、大洗に負けるわけないでしょ?」
私は「ぐ……っ」と声を詰まらせてしまった。
カチューシャの、言う通りだ。
すでに私は大洗との試合を十二回も繰り返している。
それで大洗に一度も勝利できていないアンツィオは、はたして弱くないと言えるのだろうか。
ふいに頭をよぎった考えは、私の脳裏に染みついたようで、すぐに消えてはくれなかった。
「なんなら練習試合で証明してあげても良いけど、あいにく大洗との試合までのあいだに差し込む余裕はないわね」
そこまで言うと、カチューシャはRF-8の中に敷かれた毛布へ倒れ込み「ノンナ、帰ってもらって」と告げる。もうこれで話を締めるつもりらしい。
「お、おい、本気で言っているのかっ、カチューシャっ!?」
慌てて私は声をかけたが、ずいとノンナが私たちとカチューシャとの間へ立ち塞がる。
「カチューシャ様はいつだって本気です。お引き取りください」
感情の薄い冷酷な瞳に見つめられるとどうすることもできず、仕方なしに私とカルパッチョはプラウダの学園艦を後にした。
アンツィオは、本当は弱いのだろうか。
時折、頭をもたげるようになったその考えは、アンツィオの学園艦へ帰った後も続いた。
その度に私は首を振って頭の中から追い出したが、それでも何度も何度も復活する不安は、まるで呪いのようだった。
カルパッチョへの相談も考えたものの、口に出したら二度と消えてくれそうになくて憚られた。
サンダースへは、学園艦へ帰った翌日に電話をかけた。
カチューシャとの件を報告すると、ケイは「カチューシャならそう言うと思ったわ」と笑った。
だからケイは付いてこなかったのかと合点がいき、もやもやとしたものを感じた私は「だったら初めから教えておいてくれてもいいだろ」と一言文句を言った。
このままではプラウダは大洗に勝利してしまう。
ループ脱出のため、前回のプラウダの戦術を大洗の連中へ密かに伝えることもできただろうが、そんな気も起こらなかった。
ひたすら戦車道の練習やバイトへ打ち込んでいると、あっという間に1週間が過ぎ去った。
二度目のプラウダVS大洗だ。
私は前回と同じく、アンツィオのみんなと共に学園艦の円形競技場で試合を観戦した。
これまた前回と同じく、やはり大洗は劣勢だった。
知恵と連携で圧倒的不利を覆そうとする彼女らの姿は輝いていた。
けれど今度は、大洗だけでなく、プラウダの奮戦にも目がいった。
思いのほか大洗が手強かったのだろう、いくつかの車輌が大洗に撃破されてしまった。
カチューシャは動揺している様子だったが、T-34/85が大洗のM3リーを撃破したのを皮切りに体勢を立て直し、そのまま大洗を押し切った。
今回も、試合はプラウダの勝利。
ハッチから顔を出して笑顔を浮かべるカチューシャを見て、私はふいに気付いた。
アンツィオのみんなは大洗の敗北に落胆している様子だったが、私は違った。
それでも良いと思えた。
前回のループでは、大洗に自分を重ねていたのに。
いまの私は、プラウダに自分を重ねていたのだ。
◇ ◆ ◇
十三回目の6月26日。
ベッドに横たわったまま、起き上がらずに思考へ沈む。
何故、プラウダに自分を重ねたのかと、考えてみれば答えはすぐに見つかった。
私は、カチューシャを知った。
これまでは大洗の相手役くらいにしか認識していなかったが、彼女にも芯があったんだ。
失礼な話だ、当たり前のことだった。
ただ、形が違うだけ。
大洗には燃え上がるような情熱があり、プラウダには凍りつくような覚悟がある。
そこには、優劣も貴賤もないんだ。
――――。
では、果たして私はどうなのか。
情熱はあるか。覚悟はあるか。
その問いかけに、以前の私ならどちらもあると答えた。
だからこそ、その頃の記憶があるからこそ、私は大洗にもプラウダにも自分を重ねることができた。
しかし今の私はどうだ。情熱があると言えるのか。覚悟があると言えるのか。
たとえ残滓でもそれらが残されているのなら、このままループを脱出する選択などして良いのだろうか。
戦わなくて良いのか。
ドゥーチェの称号は、ただの飾りだったのか。
私に覚悟や情熱がなくて、どうしてアンツィオのみんなを引っ張っていけるというんだ。
――いや、しかし。いやしかしだ。
そうやって自分を問い詰めたところで、だからどうしろというんだ。
これは私だけの問題じゃない。
私が勝利に固執してループを抜け出せなくなれば、同じくカルパッチョやケイ、カチューシャやノンナもループに囚われてしまう。
確かに勝ちたい。
そりゃあ勝ちたいさ。
しかし、そのために他を犠牲にしようとは思わない。
勝利だけが戦車道じゃない。
私の戦車道は、そんなものじゃない。
「あー、ほんとドゥーチェはめんどくさいっすねー」
「じゃあドゥーチェの戦車道ってなんなんすか?」
「……ん」
突然に声をかけられ、右下へ目をやると、ベッドの手すりから顔を出したペパロニが大きなあくびをしていた。
「朝からうるっさいすよ、ドゥーチェ」
「も、もしかして、全部、声に出ていたか?」
「いやわかんないっすけど。覚悟がどうとか言ってたっすよ」
声に出てたんじゃないかっ!
その叫びは胸の中にしまっておいて、火照った頬を隠すために、すっと私は顔を引く。
「よ、よし、いいかペパロニ。ぜんぶ忘れろ?」
「いや、忘れないっすけど」
少しだけ呆れたような声色が下方から届く。
何も返すことができなくて黙っていると、しばらくしてペパロニから言葉が放られた。
「……で?」
短いな。
そして、待てどもペパロニはその続きを口にしない。
仕方なしに「で、とは?」と私が確認すると、ペパロニは言った。
「いやだから、ドゥーチェの戦車道ってなんなんすか?」
ああ、そういえばそんなことを言っていたか。
冷静な頭になって考えてみれば、その問いには淀みなく答えられる。
「そりゃあ、楽しいのが、私の戦車道だ!」
「負けて楽しいすか?」
「うんっ! 楽しければ、それで良しだっ!」
「勝ったら楽しいすか?」
「もちろんっ! 楽しいプラス嬉しいで、最高だな!」
「いや、じゃあ勝ちゃいいんじゃないすか?」
「そ」
と、一文字だけ漏れて、そこで慌てて私は口を噤んだ。
『そうもいかない事情があるだろ』
そのことを、ペパロニは知らない。
「なんすか? 負けてもまぁ楽しいっすけど、悔しさもあるっすよね?」
「少なくともわたしは悔しいっすよ」
「う、ぅうう、そ、そうかもしれないがなあ」
「ドゥーチェいつも言ってるっすよ。アンツィオは強いって」
「だったら、勝って証明してやればいいじゃないすか」
「……ちょっと、考えさせてくれ」
私はそう言葉を残して、さっと制服へ着替えるとペパロニを置いて自室を後にする。
ずぶずぶと思い悩んでいたが、あっけらかんとしたペパロニの言葉を聞いていると脱力してしまった。
もっと気楽に考えても良いんじゃないかと思えてくる。
「でもやっぱり、みんなのことを思うと、勝利勝利って言っていられないんだよなあ」
「別に、構わないんじゃないでしょうか」
「…………」
今度は、カルパッチョの言葉だった。
戦車道準備室にて、向かいに座るカルパッチョがにこにこと笑みを浮かべる。
「そうは言ってもな。お前は辛くないと前に言っていたが、ずっとループから出られないのはさすがに嫌だろう」
「私は、そんな苦しみを、みんなに強いるつもりはない」
私が言うと、カルパッチョはきょとんと目を丸くした。
「ひとつ疑問なんですけど」
「なんだ」
「ドゥーチェは、あと何回、負け続けるつもりですか?」
――――。
「あと、何回……?」
雷撃が、私の頭に、落ちた。
あぁあぁぁあああっ! まったくっ! なんてことだっ!
ここまで落ちぶれていたのか、私は。
何故気付かなかった。どこまで負け犬根性が染みついていたんだ。
そうだ、そうだ、そうじゃないか。
「すまなかった、カルパッチョ」
私の言葉に「なんのことでしょう」と彼女はしらを切る。
「お前たちがいて、良かった」
ループを脱出できない?
大洗に勝利し続けるから?
いや違う。それはプラウダの場合の話。
我々の場合は、大洗に挑戦し続けるからだ。
勝つために挑戦し続けるから、ループを脱出できないんだ。
挑戦し続けるとは、すなわち、負け続けるということ。
我々は負け続けて良いのか?
そんなわけがない。
ループなど、敗北など、繰り返してはいけないに決まっているっ!
「……一万回繰り返せば、そりゃあ我々が勝てることもあるさ」
「でも、それじゃあ意味がない。そんな勝利に価値はない」
自分に言い聞かせるよう、ぽつぽつと言葉を吐く。
カルパッチョは私の言葉に反応を示さない。ただ黙って耳を傾けてくれている。
「アンツィオは、一万回に一度の幸運でしか勝利を掴めないようなチームじゃない」
「アンツィオの強さを証明するためには、これ以上繰り返してはならない」
「それでは名誉は得られない」
我々は強い。大洗に勝てる。
「これまで随分と負け続けてきたが、選択を間違え続けてきたが、今度こそ最後だ」
「勝っても負けても、これで最後にする」
だから。
「いま勝とう。このループで勝つぞっ!」
私が宣言すると、カルパッチョが頷いた。
「最初から、そのつもりです」
長く放浪の旅をしていたらしい情熱が、覚悟が、私の中へ戻ってきた。
楽しいのも戦車道だが、勝利を目指すことも戦車道だ。
何を甘えていたんだ。
ループに依存していた。頼ってしまっていた。
そんなものを利用しなくとも、我々は勝てるだろう。
私はもう繰り返さない。
ただの一度きりで、大洗に勝利する。
そうやって心に決めてしまうと、なるほど、見えてくる景色が変わった。
胸の内から湧き上がる炎が、火花を振りまいて破裂してしまいそうだ。
「カルパッチョ。作戦会議だ」
「今度は一つの策に頼り切る真似なんてしないぞ」
「二重三重の策を用意して大洗を翻弄してやる」
私が言うと、カルパッチョは鼻息を荒くして答えた。
「ええ、望むところです」
まったく頼もしいものだ。
私は「ありがとう」と礼を言って、改めてホワイトボードの前へと移動した。
「あー、作戦会議ならわたしも混ぜてほしいんすけど」
と、この場にいないはずの声が聞こえて、振り返る。
「ペパロニ?」
先ほど部屋で別れたはずのペパロニが、そこにいた。
「どうして、お前、ここに?」
「いやー、ここんとこずっと、二人でこそこそ相談してたじゃないすか」
「いつもならわたしも混ぜてくれんのに、ずるいっすよ」
「つーわけで、ドゥーチェつけてきたっす!」
そう言って、ペパロニは腰に手をあてて仁王立ちする。
「お前なあ……まぁ、私たちも悪かったかもしれないが、こっちにも事情があってだな」
「……ちょっと、ドゥーチェ、ドゥーチェ……っ」
耳元でカルパッチョが囁き、「うん?」と私は目を向ける。
「なんだ?」
「おかしくないですか? いまは6月26日の朝ですよ」
「確かに二人だけでの作戦会議は何度もしてましたけど、それは、6月26日以降のループ中の話ですよね?」
「6月25日以前は、基本的にペパロニも作戦会議に参加してたはずです」
言われてみて気付く。なるほど。
「それじゃあ、ペパロニが『こそこそ相談してた』なんて言うはずがないな」
「ええ。だからきっと、ペパロニはループ中に私たちの相談してる姿を目撃してたんだと思います」
「……んん、つまり、それは?」
「おそらく、そのまさかかと……」
カルパッチョが神妙な顔で頷く。
つまり、それは、こういうことか。
「ペパロニ。お前、6月26日は、何度目だ?」
「あー、ちょっと覚えてないすね。十回目くらいっすか?」
――――。
「お前ぇえっ!?」「どうして言わなかったのっ!?」
二人して驚きの声を上げると、ペパロニは返した。
「あっはっはっ! まー、別に気にするほどのことでもねーかと思って。別に困ってないっすから」
あっけらかんと言ってのけるペパロニに、自然と口からため息が漏れる。
「……おい、こいつ、どーする?」
「とりあえず、作戦会議は三人でしましょうか……」
「よろしくっす!」
カルパッチョが呆れた声で言うと、ペパロニは元気よく敬礼をしてみせた。