ねぇルフィ、海賊やめなよ   作:とあるルウタ復権派

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FILM REDのネタバレがついに解禁されたので投稿します。


ねぇルフィ、海賊やめなよ

 

 

 

※※※

 

 ――――富、名声、力、この世のすべてを手に入れた男、海賊王ゴールドロジャー

 

 彼の死に際に放った一言は、人々を海へ駆り立てた。

 

「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてをそこに置いてきた!」

 

 男達は、グランドラインを目指し、夢を追い続ける。

世はまさに、大海賊時代!

 

※※※

 

 ――――しかし、そんな時代の荒波に適応できない"弱き者達"も多く存在した。

 

『うわあああ!! やめてくれぇ! それは俺たちが暮らしていくのに必要なお金で……』

 

『お母さん!!! お母さん!!! 目を覚ましてぇぇぇぇ!!』

 

『また海賊にやられた……! あいつら最悪だ! なんの罪もない子供まで攫っていきやがった!』

 

『誰か助けてぇ!』

 

『この日々から誰か救い出してくれぇ!』

 

 ――――誰が彼らを救うのか? 彼らはただ奪われることしかできないのか? この荒れ狂う時代の中、絶望して死んでいくしかないのか……?

 

『UTA! UTA! UTA! UTA!』

 

『ウタの曲にはいつも救われてるよ! あの娘の曲を聞いてると元気が出るんだ!』

 

『ウタ最高! 彼女はこの狂った時代に現れた救世主よ!』

 

『そうさ! だから俺たちはあの娘の事をこう呼ぶのさ!』

 

 ――――否、そこには確かに苦しむ人々を励ます天使の歌声を持つ()()が居た。

 

『――――"歌姫"と!!』

 

「みんな! ウタだよ! さあ、今日もみんなで楽しんじゃおう!!」

 

 

※※※

 

「じゃあ、今日の配信はこれでおしまい! みんなありがとね! また明日!」

 

 そう告げると、ウタは『SSG』と殻に刻まれた電伝虫の電源を切った。この電伝虫は世界中に歌声を届かせる事の出来るスグレモノだ。これを拾ったことで始めた配信はもはや日課になっている。

 

「配信はもう終わったのかい? ウタ」

 

「うん、今日はもうおしまい」

 

 そんなウタを気づかって声をかけるのはフランケンシュタインのような見た目をした大男――顔に似合わず優しい――、ウタの父親代わりの男、ゴードンだ。

 

「そうか。……疲れているだろう。あとはゆっくり休みなさい」

 

「いつも通り海辺でちょっと休んでから寝るよ」

 

「わかったよ。もう夜遅いから、気をつけるんだぞ」

 

「うん、ありがと。ゴードン」

 

 寝る前に海辺で過ごすのはウタのルーティンとなっていた。自身でも理由はよくわからない。ただ、どうしようもなく寂しくなるといつも海に行くようにしていた。まるで、そこで待っていれば()()()()()が迎えに来てくれるんじゃないかとそんな気がして……

 

「(ううん、そんなハズないよ。私がここを歩くのはなんとなく、うん、"なんとなく"なんだから!)」

 

 そうして、いつものように海辺を歩くウタであったが、そこでいつもとなにか景色が違うことに気付く。

 何か落ちている。遠目からでしか分からないが、それは紙のようであった。

 

「ん?なにこれ……?」

 

 それを躊躇なく拾い上げるウタ。普段なにも流れ着いたりしないこのエレジアの海岸において、こういった漂流物は非常に珍しい。

 その漂流物はどうやら新聞のようであった。(後に知ることになるが、どうやら海賊用の新聞として防水加工がされていたらしい)

 ただの興味本位だったが、ここまでくると中身も気になってくる。ついていた砂を払うと、内容に目を通していく。

 

 しかし、1ページ目に描かれていたことがあまりにも衝撃的でそのまま読み進める手が止まってしまう。

 

『モンキー・D・ルフィ、初頭懸賞金3000万ベリーの大悪党!』

 

「ルフィ!?」

 

 そこに載っていたのは自身の幼馴染が海軍から指名手配されているという情報だった。

 幼い頃によく()()()の船に乗せてもらおうとして自分と勝負していたあの男の子、その成長した姿が指名手配の写真として写し出されている。 

 

「この麦わら帽子、もしかして……」

 

 そして、その少年が被っていた麦わら帽子にウタは見覚えがあった。

 いや、『見覚えがある』なんて言葉で済まされる程度ではない。その帽子はウタにとっても非常に重要な意味を持つある種の"マーク"であった。

 

 それを見た彼女の最初の感情は一言ではとても言い表せないものだった。

 ――――嫉妬、羨望、怒り、喜び、悲しみ、そしてなによりも"失望"

 

「やっぱり海賊になったんだね、ルフィ」

 

 海賊。

 それはウタのファン達を苦しめ続ける邪悪な存在。海にのさばり罪のない人々から略奪し、女や子どもであろうとも容赦なく殺す。そんな血も涙もないような連中。

 愛おしくも憎らしい()()()の職業。

 

「やめさせなきゃ……ッ!」

 

 それは紛れもなくウタの本音だった。

 幼馴染がこんな悪人になっているのに放置してなんておけない。

 

「私はみんなの"救世主"なんだから……!」

 

 

※※※

 

 

「エレジアを出ていくだって!?」

 

「うん、こいつを止めなくちゃいけないの」

 

 新聞を読んだウタは早速、ゴードンに直談判をすることにした。彼はウタをエレジアから出さないようにしてるフシがあった。

 それをなんとかして許可を貰って、ルフィを止めにいかなければならない。

 その説得材料としてまずは自身が拾った新聞を見せることにした。

 

「彼は……?」

 

「こいつは、モンキー・D・ルフィ。私の幼馴染。昔からどうしようもないバカだとは思ってたけど、ついに海賊になっちゃったみたい」

 

「それをどうして……?」

 

「幼馴染の好だよ。あいつをみんなを苦しめる悪い海賊なんかにするわけにはいかない。なんとか説得して海賊をやめさせるの」

 

 次に行ったのは自分が外に出たい理由の説明だった。

 外に出るためにはゴードンの協力が必要不可欠だ。故に、そんな彼には自身の目的を知っておいて貰う必要がある。

 

「だが、彼には彼の……」

 

「おねがい! ゴードン! 私の幼馴染が私のファンを傷つけたりしたら申し訳なくてもう配信なんてできないよ!」

 

 それもまたウタの偽らざる本音だった。

 普段の配信でウタは常に苦しむ人々の声を聞いていた。

 もし、ルフィがそんな風に人々を苦しめる海賊になってしまったのだとしたら……

 想像するだけで恐ろしい。

 

「(だが、この娘を外に出すわけには……)」

 

 一方、ゴードンはウタの意思表示に戸惑っていた。それもそうだ。こんなふうにウタが意思表示をするのは今まで一緒に過ごした九年間で初めてなのだ。

 

「(いや、私はただ臆病で恐れていただけなのかもしれない。あの日の悲劇が繰り返されてしまうかもしれないと)」

 

 そして、これもまたゴードンがウタを外に出すのを渋る理由の一つだった。

 九年前にエレジアを襲った悲劇。そのことが半ばトラウマとなっているゴードンにとって、彼女を外に出すといのはかなりの精神的負担だった。

 

 ――――しかし、

 

「(私の臆病さが、娘同然に育てたこの女の子をこのエレジアに閉じ込めてしまっている……!)」

 

 ゴードンはその事実に気づいてしまった。この九年間、ウタを恐れるあまり、彼女を自分以外誰とも接することなく育ててしまった。

 それは消え去らないゴードンの罪だ。

 この年齢の子どもにとって、周りからの関係を一切断つというのがどれほど人生に影響を与えてしまうか?    

 その罪を直視できないほど、ゴードンは愚かではなかった。

 

 

 

「…………分かった。君をその幼馴染のところへ連れて行こう」

 

「本当!? ゴードン、ありがとう!」

 

「ただし! 身の危険を感じたらすぐに私に連絡すること! 約束できるかい?」

 

「うん! 約束する!」

 

 それは親代わりとして最低限の一線だった。彼女を()から預かっている身として、絶対に彼女を危険な目に合わせるわけにはいかない。

 

「それで、どこに向かえばその彼に会えるか分かるのかい?」

 

「……………あっ」

 

 どうやら、彼女は今回の一件を突発的に思いつき行動に移したらしい。

 行き先すら決まっていないとは想像していなかった。

 しかし、ここは大人として彼女を導いてあげる場面だろう。

 

「分からないか……どれ、彼は、"東の海(イーストブルー)"にまだ居るんだろう?」

 

「うん、新聞にはそう書いてた」

 

「では、彼は必ず"偉大なる航路(グランドライン)"を通る前にローグタウンへと向かうはずだ」

 

「ローグタウン?」

 

「始まりと終わりの街。かの海賊王ゴールドロジャーの最後の場所だ。その少年がこの海に夢を見るならば、きっと立ち寄るだろう」

 

 それは所詮ゴードンの勘でしかない。しかし、ゴードンはそうあるはずだと確信していた。

 それはウタの幼馴染だという少年が被っている麦わら帽子が()のものであったからだ。

 

「(きっと、彼も素晴らしい海賊なのだろうな)」

 

「わかった。ゴードンがそう言うならそこに向かうよ」

 

「では、ローグタウン行きの船は私が用意しよう。それで良いかい?」

 

「なにからなにまでありがと! ゴードン! きっとルフィを改心させて連れてくるから待っててね!」

 

 そう伝えると、ウタは寝室へと去っていってしまった。もう夜も遅い。それを引き止めることはしない。

 しかし、親心としてその不安な内心を吐露せずはいられなかった。

 

「気をつけるんだぞ、ウタ。この海にはどうしようもない悪意が数多く存在する……!」

 

 

※※※

 

 その処刑台の周りには大勢の人が集まっていた。一口に"処刑台"と言っても、ただの処刑台ではない。

 かの海賊王ゴールド・ロジャーが処刑された処刑台だ。

 そんな場所で今まさに殺されようとしている少年が居た。

 

「最期に一言何か言っとくか? せっかく大勢の見物人がいる」

 

「おれは! 海賊王になる男だ!!」

 

 彼の名は――モンキー・D・ルフィ。

 トレードマークはシャンクスから貰った麦わら帽子。赤いベストに青い半ズボンを身に着け、いつも不敵な笑みを浮かべている益荒男。

 そしてゴムゴムの実を食べたゴム人間である。

 

『か、海賊王だと……!?』

『よりによってこの町で……』

『なんて大それたことを……!』

 

 彼のあまりにも大きく無謀な夢を聞いた人々は、口々に彼を非難する。

 それだけ、このローグタウンでその言葉を口にする意味は重かった。

 

「言いたいことは……それだけだなクソゴム!!」

 

 彼をまさに殺そうとしてる男――道化のバギーはもう堪忍ならないといった風に今にも手に持った剣を振り下ろそうとしている。

 

「その死刑待て!!」

 

 それを止めようと格闘している男が二人。

 一人はロロノア・ゾロ。ルフィの仲間であり、剣士の男。

 そして、もう一人はサンジ。彼もまたルフィの仲間であり、麦わらの一味のコックを担当している。

 

「サンジ、ゾロ、助けてくれぇ!!」

 

 そんな二人に必死に声をかけるルフィ。

 まだ夢を叶えていないのだ、こんなところで死ぬわけにはいかない。

 

 ――しかし、抵抗もむなしく、剣が振り下ろされる

 

「ゾロ! サンジ! ウソップ! ナミ!」

 

「わりい、おれ死んだ」

 

 

 ――そうして、誰もが諦める中、その()()はいつの間にか処刑台の上に立っていた。

 

 

「〜〜〜♪」

 

「何だあの女!」

 

「バギー船長の耳元でなにか歌ってるぞ!」

 

 その少女――ウタは、バギーの耳もとでそっと歌う。一見すると、こんな場面で何をしているのかと咎められかねない行為だ。

 

「な!?」

 

「バギー船長が倒れたぁ!?」

 

 しかし、ウタに関しては事情が異なる。

 彼女はウタウタの実を食べた歌唱人間。彼女の歌声を聞いた者はたちまち眠りにつき、"ウタワールド"と呼ばれる異世界に精神を飛ばされてしまう。

 

「あの女、いったい何をしやがったぁ!?」

 

 あまりに突然の出来事に周囲がざわめく。突然現れた女の子によって、確実に行われると思われていたルフィの処刑が中断されたのだ。それに反応するなという方が無理だろう。

 

「誰だか知んねぇけど、助けてくれてありがとう! おれは――」

 

「――ルフィ、久しぶり!」

 

「……んん? お前、おれのこと知ってんのか?」

 

 そのルフィの態度にウタはムッとする。自分は一人ぼっちになってからずっと彼のことを想っていたのに、彼はようやく再会した自分の事に気付きすらしない。

 これは面白くない。

 

「私のこと忘れたの?」

 

「いや、だから知らねぇって……ん? ああ!! お前、お前、もしかしてぇ〜!!」

 

 しばらくジーーっとウタの顔を見つめたルフィはようやく思い至ったようで声を上げた。

 

「ウタか!?」

 

「おそい!」

 

「イテッ! なにすんだ!?」

 

 あまりの遅さについ殴ってしまった。

 しかし、これも仕方のないことだろう。いくら海賊になってしまったとはいえ、かつて不本意に別れてしまった幼馴染。それなりに彼女はルフィとの再会を楽しみにしていたのだ。

 

「私のことをすぐに分からなかった罰!」

 

 ぷりぷり怒る彼女にどこか納得いかないような顔をしていたルフィは、すぐに表情を切り替えて、再会を喜び始めた。

 

「にしても、本当に久しぶりだなぁ〜! 元気にしてたか?」

 

「…………」

 

「……ウタ?」

 

 しかし、なにやら様子が変だ。せっかく久しぶりに会えたのにウタはやたら神妙な顔をしている。

 さっき殴ってきたのは自分たちの間柄だからまだ分かるにしても、この態度は流石に変だ。

 そういった違和感をルフィが感じていると、彼女は口を開いた。

 

 

「ねぇ、ルフィ、海賊やめなよ」

 

「…………はぁ?」

 

 これは未来の海賊王と未来の歌姫の物語。

 その序章。

 はたしてどんな物語になるのか、それは誰も知らない。

 

 

             to be continued……

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