このままだと、ウタルニウムとルウタニウムがないと生きていけない身体になってしまいそうです!
side トットムジカ
お、おちつけぇ
まさかウタワールドにシャンクスが来るなんて……
おそらく見聞色で楽譜の封印から解放された瞬間を補足されてたのか。
「ほお、お前が噂に聞くトットムジカか」
なんか興味深そうにこっちみてるよ!顔が笑ってないけど、怖すぎる。
ここは平身低頭!誠意を見せてなんとか許してもらうしかない!
ウタちゃんのお父さん!どうか私めを娘さんの使い魔に……
ちょ、剣を構えるのやめ、は、覇王色!!!??
sideシャンクス
ウタと並び、城のテラスから月明かりにぼんやりと照らされたエレジアの街並みを眺めながらシャンクスは言葉を紡いだ。
「なあウタ、この世界に平和や平等なんてものは存在しない」
キョトンとするウタを見ながらシャンクスは話を続けた。
「だけど、お前の歌声だけは、世界中の全ての人たちを幸せにすることができる」
「……何言ってるの?」
「いいんだぞ、ここに残っても。世界一の歌い手になったら、迎えに来てやる」
音楽を愛する人々の国エレジア。
島の王、ゴードンに謁見し大勢の人の前で歌うのは初めてだったが、ウタはいつも通り、自然に、楽しそうに、その美しい歌声を紡いでいた。
そんな音楽を愛する人々からのたくさんの拍手を歌声を披露し浴びているウタの姿はとても心地良さそうだった。
そしてふと思ってしまった。海賊でもある俺たちといるより、ウタはエレジアに残した方が幸せなんじゃないか。
そう考えていたシャンクスに対してウタは、
「バカ!私は赤髪海賊団の音楽家だよ!歌の勉強のためでもシャンクスたちから、離れるのは……」
たとえこの国がどれほど居心地が良くても、ウタの居場所は赤髪海賊団だ。ずっと一緒だった家族なんだ。シャンクスのそばを離れるなんて有り得ない
目に涙を滲ませるウタを見て、シャンクスは困ったように笑った。膝をつき、ウタを抱き寄せた。
「わかった。そうだよな。明日にはここを離れよう」
ウタは滲んだ涙を乱暴にぬぐった。この先何があっても、シャンクスとずっと一緒にいる。ウタはそう信じていたのだ。
やがて落ち着いた2人の元へ、国王のゴードンがやってきた。
最後の機会だから歌声を聞かせてほしいと。そしてせっかくの機会だから国民にも聞かせようと歌声を国中に聞こえるようにしたとのことだった。
パーティー会場では多くの人々がウタの周りに集まり、ウタに様々な歌を歌わせていた。その歌声は国中に響き渡り、万雷の拍手を浴びた。
そして、ウタはどこからか一曲の古びた楽譜を手に取って歌声を響かせた。
???「よっしゃ!楽譜の身体とおさらばだ!」
今まで聞いた曲と毛色の違うその曲は、どこか狂気を孕んだ不吉なメロディーを奏でた。それを聞いて慌てたのは国王ゴードンだった。
「この曲はトットムジカ……まずい!その歌を歌ってはいけない」
そんなゴードンの様子を見てシャンクスは警戒を強めゴードンにトットムジカとはなにか問いかけた。
「トットムジカは、古代から続く、人の思いの集合体。寂しさや辛さなど、心に落ちた影……魔王とも呼ばれるものだ」
そして
「ウタウタの実の能力者がトットムジカを使う、つまりトットムジカを歌ってしまえば魔王は現実世界に顕現し世界を滅ぼしてしまう!」
どうしてそんな曲の楽譜がある!
怒りのあまり、ゴードンを問い詰めるが、ゴードンの話ではトットムジカは城の地下に封印されているはずだそうだ。一体どうやって……
いかん、このままではウタが!
慌てて歌を中断させ、ウタを抱き寄せる。
「どうしたの?シャンクス」
キョトンしているウタの姿を見て安心する一方、いつトットムジカが出現してもいいよう臨戦態勢に入る。
……………
現れないな……
念のため見聞色の覇気を研ぎ澄ませ全開にしてみる。するとほんの少しだけ楽譜から気配がしたものの、それもすぐに完全に消えてしまった。
その後駆けつけたベック達としばらくの間警戒していたが、結局トットムジカが現れることはなかった。
その後何事もなくパーティーは終わりを迎えた。トットムジカの件は、結局ただの迷信であり、ただの古代の楽譜だったということになった。
ウタは無事だった。何事もなく最後まで歌を奏でエレジアの人々を笑顔にした。そんなウタの姿を見て年甲斐もなく無性に涙が溢れてしまった。ウタには汗だと誤魔化したが、きっと気づかれたな。
そして案内された城の寝室に向かう途中、ふとウタに尋ねたくなった。
「なあ、ウタ。俺がお前の父親で本当によかったと思うか?」
もし、トットムジカが現れたなら、俺はウタを守れただろうか?一抹の不安が胸によぎり、エレジアでのウタの姿を見てどうしても考えてしまった疑問をつい口にしてしまう。
「何言ってんのさ。良かったに決まってるよ!」
少し呆れたながら、そして笑いながらはっきりと
「私はウタ。歌で新時代を創る女!世界一の大海賊赤髪のシャンクスの娘にして、赤髪海賊団の音楽家だよ!」
そう宣言したウタはシャンクスが父親で幸せだよ、だから辛気臭い顔しないでいつもみたいに笑いなよ!とパンパンとシャンクスを叩いた。
そうだなウタ。俺たちは家族だ。ウタは大切なクルーでもあり、俺の娘だ。
幸せそうな2人の家族は、まるで祝福するように照らす月の光を浴びながら城の道を歩んで行った。
「なあ、ウタ、せっかくだから一曲歌ってくれないか?」
「いいよ!シャンクス!特別にシャンクスのために歌ってあげる!」
〜エレジア編 完?〜
さて、あの時見聞色で感じた気配の正体に会いに行くとしよう。
あの時、微かに気配があったことからトットムジカが実際に存在していたのは間違いない。だがなぜ奴は現れなかったのか?いったいどこに行ったのか?そこで一つの仮説が思い浮かんだ。奴はウタウタの世界に渡ったのではないかと。
そしてウタが歌っている時に見聞色を発動して確信した。この世界ではない、ウタと繋がる別のどこかから禍々しい気配を感じ取ったからだ。
寝室に入ってすぐに覇気を解除することでウタウタの能力の対象となり、俺はあっさりとウタウタの世界へと誘われた。
そこにいたのは、まるでカカシのような姿をした禍々しい化け物だった。
そうか、こいつが…
「ほう、お前が噂に聞くトットムジカか」
すると化け物は意外にも流暢な声で喋り始めた。
いわく、ずっと楽譜に封印されていたがウタの歌声を聞いて封印を解いてもらいに楽譜のままとんでいったこと。
いわく、ウタの素晴らしい歌に感動して改心したから、もう世界を滅ぼそうとも思っていないこと。
だから、もっと歌を聞くためにウタの使い魔をやらせてください!と何故か土下座で頼み込んできた。
一瞬疑ったが、見聞色で確認してみたところおそらく本心だということがわかった。そうか、ウタの歌声は魔王すらも改心させてしまったのか!きっといつか、本当に新時代を創っちまいそうだ。やっぱスゲーよウタは。さすがは俺の自慢の娘だ。
さて、それはそれとして、ここは一つこの化け物を試すとしようか。何より父親として威厳を示しておかんとな!
幸いここで多少暴れても現実には影響がないから大丈夫だろ!
「ウタは俺の娘だ。俺たちの家族だ。その使い魔になりたいというなら……死ぬ気で来い!!!!」
瞬間、シャンクスの身体から恐ろしい量の覇気が放たれた。世界が震え、凄まじい重圧を伴ってトットムジカへと襲いかかった。
そして愛刀グリフォンにありったけの武装色と覇王色をかき集めて纏ってトットムジカへと斬りかかった。
シャンクス「娘さん(の使い魔をやらせて)くださいと言われて許す父親がいないことをお前に教える」