悲報 転生先が全ての元凶な件 作:ネオ・マフティー
トットムジカは人々の負の感情の集合体である。そんな、まるで人間の細胞のように存在する数多ある感情達は今、一つの感情に支配されていた。
それは恐怖
シャンクスの放つ世界が軋むほどの覇気を前に、トットムジカはビビり散らしながらも、剣を構えるシャンクスに対応するため、すぐさま第二形態へと移行した。
トットムジカ 第二楽章
カカシのような姿から一転、鍵盤の足を生やすことで、機動力と共に攻撃力を大幅に上げることができる。
ビームを撒き散らしながら、生やした足を用いて襲い掛かるが、シャンクスはことも無げに覇気を纏った刀でビームを弾き飛ばし、あっさりとその身体を両断した。
ゆえにトットムジカは身体を再生させると、機動力を活かして、
「離脱するに決まってるだろ!!」
加速し一気にシャンクスとの距離を取った。
なんだよあの覇気は!?ヤバすぎるだろ!!
正直覇王色にビビる緑牛を見てバカにしてたけど、こんなのビビらない方がおかしいよ!
とにかくあのヤバい覇王色に加えて武装色を纏ったグリフォンを持ったシャンクスと正面からやり合ったら死にはしないが永遠に切り刻まれること間違いなしだ。
ここは安全安心の遠距離戦でいくぜ!幸いにも神の爺さんから与えられた力のおかげでトットムジカの制御は万全だ。
この収束した超極圧ビームを前には、さすがのシャンクスもただではすむまい!
見せてやるシャンクス!これが世界を滅ぼす魔王の一撃だ!
簡単にビーム切られちゃったよ……想定ダイナ岩くらいの破壊力出たと思ったビームなのに……
「ほお、なかなかやるな。では、次はこちらの番だ!」
そう言ってシャンクスは、高速の斬撃を次々と放ってくる、しかも一撃一撃が頂上戦争のミホーク級のやつである。
これが未来の四皇赤髪のシャンクス!
化け物すぎる。
このままの力では、シャンクスに認めてもらうには足りないか……
仕方ない、全力で逝くぞ、お前達!
トットムジカは、魔王は、歌を愛する人々の感情の集合体だ。「寂しい」
「もっと認められたい」「誰かに見つけてほしい」
そんな負の感情が集まって生まれた。そして探しているのだ。行き場のない自分の気持ちを、受け止めてくれる存在を。
そんなある日、突然天から降ってきた謎の存在にトットムジカの制御を完全に奪われてしまった。そして、その存在は感情達に言った。
「いつか、その気持ちを受け止めてくれる存在が現れる。天使の歌声を持つ、新時代を創る存在が」
そして、歌声を聞いたあの時、感情達は確信した。この娘がそうなのだと。
きっとこの娘なら私たちを……
そして、現在、制御している存在は感情達に問いかけた。
ここで終わってもいいのか?
もっと彼女の歌を聞いていたくないのか?
ここで力を示さないと、もうあの娘の歌声は聞けないぞ!と。
そんなのは嫌だ!
恐怖に染まっていた感情達が各々に新たに芽生えた感情を吐露する。
「あの歌声が聞けるなら、もう寂しくない!」 「もっとあの歌声を聞いていたい!」 「やっと救われたんだ!」
「U・T・A !!U・T・A !!」
だから
「「「共に新時代の夜明けをみるため、ここで力を示そう!!」」」
魔王最終形態
トットムジカ 第三楽章
巨大な四手と二足、黒い翼を持つ禍々しい姿は、まさに魔王と呼ぶにふさわしい姿をしていた。
しかし、その見上げる程の邪悪な巨大の姿とは裏腹に、見聞色に流れ込んでくる感情はどれも希望に満ち溢れたものだった。
「よもやこれほどまでか……ウタ、魔王すらも変えたお前の歌声なら、きっと世界だって変えられるだろう」
トットムジカから流れてくる感情を聞いて、娘を誇らしく思いながらも、だからこそ、娘の世界で父親が負けるわけにはいかねえ!とばかりにシャンクスは限界を超えた覇気を刀に纏わせる。
逝くぞ、赤髪のシャンクスゥ!
トットムジカから打ち出された数多もの光線が空を輝かせ、流星のように降り注ぐ。
その一撃一撃が島一つ簡単に滅ぼしてしまう流星群を、シャンクスは神速の斬撃を連続で放つことによって、その全てを撃ち落とした。
だが、それすらも前座にすぎない。
次の瞬間にはそれぞれが互いに今出しうる最強の技を構えた。
トットムジカは、己の持つありったけのエネルギーを収束させた極光の一撃を、
お借りしますよ、ロジャー船長!
シャンクスはありったけの覇気を纏い、己の知る最強の男の一撃を、
「受けるがいい!未来の四皇!これで
「
拮抗した互いの究極の一撃の衝突により生じたエネルギーが、ぶつかり、収束し、天をも穿つほどの衝撃波を発生させた。
しばらくして、風が吹き、土煙が晴れた。
互いに満身創痍、トットムジカはエネルギーの消耗が激しく、もはやウタワールドの維持がやっとの状態になっていた。
また、さすがのシャンクスも先の衝撃波と戦いの疲労で立つのがやっとの状態だった。
それでもなお、互いに譲れないものがある2人は、再び戦いを続けようとした……その時、
「〜♪」
戦場には似つかわしくない、柔らかな旋律が、興奮する2人の心を包み込み、落ち着かせていく。戦いの余波でボロボロになっていたウタワールドが彩を取り戻し、澄んだ歌声がシャンクスの負った傷と疲労を癒していく。
「この歌声……ウタか……」
シャンクスが振り向いた先には、戦いを止めようと目に涙を滲ませながら歌うウタの姿だった。
本来なら、ウタウタの実の能力者が作り出すウタウタの世界は、維持するのに著しく体力を消耗してしまう。
そのため、普段ウタウタの世界、通称ウタワールドをウタが維持できるのはウタが歌っているほんの僅かな間だけしか展開できていなかった。
しかし、住むためにウタワールドに訪れたトットムジカが、自らの力を使ってウタワールドの維持を肩代わりしたことで、ウタが体力を使わずとも、常にウタワールドが展開されている状態になっていた。
そしてウタワールドを通して、ウタの心の中に、次々とトットムジカとシャンクスの声が聞こえてきた。
トットムジカを取り巻く感情達からは、ウタの歌声に救われた感謝の言葉
や、ウタの創る新時代を見たいという希望の声が溢れてくる。そしてわかってしまった。彼らはただ受け入れてほしかったのだと。寂しかったのだと。
シャンクスからは、例え血は繋がっていなくとも、父親として、どれだけ深く娘として私を愛してくれているのかが伝わってくる、とても大きな愛の声が。
そして、同時に、そんなウタのことを想う2人が、壮絶な戦いを繰り広げていることに心を痛めた。
やめてよシャンクス、もうトットムジカを許してあげてよ。トットムジカはただ寂しかっただけなんだよ。
やめてよトットムジカ。シャンクスは私の大切な家族なんだよ。だからもう、シャンクスを傷つけないで。
2人を止めないと!
そう思ったウタは、ふとシャンクスの言葉を思い出した。
「お前の歌声だけは、世界中のすべての人たちを幸せにすることができる」
そうだよね、シャンクス。
私は赤髪海賊団の音楽家ウタ。私にできるのは歌うこと。だからこの歌を聞いてね、2人とも。
<世界のつづき>
ウタワールドに響くその歌声に包まれ、シャンクスは剣をしまった。
「ウタを泣かせちまった以上、試すのはこれでしまいだな」
そう言って覇気を抑えたシャンクスを見て、トットムジカもまた、戦意を納めた。
やがて、ウタは最後まで歌を歌い終わると、涙を流しながらシャンクスの元に駆け寄った。
「なんでこんなことしたんだよ!シャンクス!」
「すまなかったな、ウタ。だが、どうしても確かめないといけないことだったんだ」
「それでも、シャンクスが傷つくのは嫌だよ!」
シャンクスは少し困りながらも、ウタの頭を撫で、そして抱きしめた。
抱き合う2人の姿は、父親と娘の、紛れもない尊い家族そのものだった。