ソード・ワールド2.5『ヴァイスシティ -悪徳の贄-』リプレイ 作:龍委員長
懸命に正体を隠す努力をしてきたのに、これでは絶望的というもの。
はたして彼女を待ち受けている運命とは……
彼女の明日はどっちだ。
エ-B【42:奴隷商】 2日目21時
「?!」
ガバッと上体を起こす。周囲を見渡す。石造りの部屋だが自分が宿泊した宿の部屋ではない……。いったい何が……。
「目が覚めましたか」
声のした方に顔を向けると、そこには身なりの良いタビットが立っていた。声の感じから男性だろうか。
「私はウルド。人からは“看守長”と呼ばれており、このヴァイスシティで奴隷商を営んでいます」
「奴隷? 私は宿で寝ていたはずだけれど、あの宿に売られたのかしら」
「なるほど。眠りの魔法が使える魔法使いを雇えば宿屋と提携して定期的に商品が手に入りますね。良いアイデアです。取引できそうな宿屋を探してみましょう」
テレンスの言葉に独りで頷きながら何かを呟くウルド。
「と、話がそれました。心配しなくてもあなたは売られてはいませんよ。
生きたままでは」
「?!」
「蘇生を受けると数時間の記憶が欠如しますからね。あなたは街の道端で事切れていたのです。それを拾ったヒトがここへ売りに来たものを私が買い取り、奴隷として蘇生したわけです」
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全滅表
蘇生日 ――1日後
所持物 ――基本取引価格1,000G以上となる高級品など持って居なかったので所持品だけ失っている。
蘇生状況――「42:奴隷商」
奴隷として蘇生される。蘇生費用として、“看守長”ウルドに対して、20,000Gの借金を負う。
穢れ増加量:(5,3)+(1-3)+2=10
1点増加(合計3点)。角が生える(角+1)。
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地図
A B C D E F
42奴隷 新
エ □ 商 □ □ □ 市街地
56ミルタ A-5:
ウ □ バル神 □ □ □ 中央門
殿市場
36時計 55迷宮 A-4:
イ 塔屋敷 小路 西門 新 市 街 地
固定C 23自由
ア 封鎖街 市場 新 市 街 地
区
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「奴隷だなんて、私はっ」
「それにしても珍しいですね」
テレンスの言葉を遮る様にウルドは声を発する。
「あなたの右腕の手甲、何をしても外すことが出来なかったんですよね。まるで皮膚そのものがそうなっているかのように」
「!」
まずい。彼は私の正体に気付いている。
「あなたをここに運んだ者は、ただ珍しい種族だから高値がつくだろうなんて軽い気持ちだったんでしょうけれどね」
「……私は、何をすればいいの」
「良いですね。自身の立場と役割を理解するのは奴隷として素晴らしい才能です。
とはいえ、あなたに何かをさせるつもりはありません」
「?」
「まぁ、確かに地下格闘場に剣闘士として派遣すれば、盛り上がるかもしれませんが、実力も定かではない者を送りつけたとあっては“紅霞”さまの不興を買ってしまいます」
「……」
「そう警戒しなくても良いですよ。その右手がなければ娼婦にでもなってもらう所でしたが」
タビットはここまで表情を歪める事が出来るのかと感心してしまいそうな下品な笑みを浮かべるウルド。
「あなたに課す仕事は“生き残ること”です」
「……?」
「実力も身元も解らない相手を全面的に信用するつもりはありません。せめて実力を示してもらいましょう。所持品を見る限り冒険者なのでしょう? この街で生き延び蘇生にかかった諸々の費用20,000。キッチリ返してもらえれば充分です」
「にまっ?!」
「何をそんなに驚いているのです? あなたは蘇生に応えた。つまり遣り残したこと、心残りがあるのでしょう? それを成し得るチャンスが2万Gで買えるなら安い物でしょう」
「……もし私が逃げたりしたら……」
「簡単に街から出られるとは思いませんが、その時はビスクーネを南岸に渡る蛮族の目撃情報が広まるかもしれませんね」
「……」
「お解かりいただけたようで何より」
彼は扉のほうへその短い指を指し示し、早く仕事をこなせと無言の圧力を見せる。彼女は仕方なく大通りへと足を進めた。
「あぁ、持ち物に何か無くなっている物があったとしても、それは道端で倒れていたあなたの責任ですから。ここに運ばれた時点から何も取っていませんので悪しからず」
そう言い放ち扉が閉められた。
確認したところ、財布がなくなっていたが、武具の類や薬草は無事だった。
「無一文……ギルドで依頼をこなして当面の生活費を稼がないと……」
そうぼやきながら深夜の街中で松明に火をつける。
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ウ-B【56:ミルタバル神殿市場】 2日目21時
三角屋根の大きな建物が見えてきた。掲げられたシンボルからあそこがミラタバルの神殿のようだ。
「持ち合わせがないけれど、盗賊ギルドから情報を得るのならお金が必要よね……」
どうしたものかと考えながら近付くと神殿前の広場がなにやら騒がしい。
「何かあったんですか」
神官らしき背中に声をかけると、その人物は祭事の担当神官だと名乗った。
「実はサーカスが来ていたのですが、そこの動物が逃げ出してしまったようなのです」
「そうだったんですね。あの、大変な時に申し訳ないのですけれど……盗賊ギルドから情報を買いたくて……」
表でギルドの名前を出すのもどうかと思ったが、聖堂に交易共通語で「盗賊ギルド」の看板がかかっていたので大丈夫だろう。
「あぁ、そうだったのですね。申し訳ありません、今は動物から避難したお客や市場の人たちで神殿内があふれかえってまして、ギルドの事業は一時的に停止している状態なのです」
「それは残念」
「みたところ冒険者のようですし、動物の討伐を引き受けてもらえませんか? もちろん報酬もお支払いします」
「討伐? 捕獲ではなくて?」
「調教師の手を離れたことで、危険性が高くなっていますのでサーカスの責任者とも話して殺してもかまわないということになっています」
「……どちらにせよこの騒ぎを収めないとギルドも利用できませんし、かまいませんよ」
「ありがとうございます。逃げ出したのは、グレイリンクスでかなり凶暴な固体のようです。目撃者の話ではあちらの方に走って行ったとの事で」
と神官が南を指差す。
「了解。行ってみます」
と応えたが松明が尽きかけているので新しい1本に火をつけてから出発した。
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イ-B【55:迷宮小路】 2日目2時
「またこの迷路か……物探しの度にここに来ているような……隠れるにはもってこいだけれど」
呟きながら周囲を松明で照らしてみる。
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危険感知判定目標値13
4+(6,3)=13 成功!
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「(あの角に隠れてるわね)」
こちらをうかがっている気配。どうやら自分を獲物と認識しているようだ。不意に飛び出してくることに警戒しつつゆっくりと間をつめていく。
「ん゛に゛ゃあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っ」
建物の影から飛びかかってきたが、予見できていたので咄嗟に下がって初撃を回避し距離をとる。灰色の大きな猫。間違いないだろう。
「あなたに恨みは無いけれど、私にも目的があるの」
人目を気にする必要はない。右の拳に力をこめる。
大型肉食獣のしなやかな筋肉が生み出すスピードとパワーについていけず何度もその鋭い牙を受けてします。
対するテレンスの拳は最初のうちは相手を捉えていたものの、すぐに当たらなくなる。傷のせいかはたまた山猫が想像を超えて学習能力に長けているのか、そんな事に意識を向けてしまった一瞬、
「フシャアァァ!」
「?!」
首筋に飛びついてきたグレイリンクスの牙が深々と突き刺さる。
「かはっ
(あ、これ、ヤバい……)」
元々かなりの負傷*1に加え、急所への一撃*2。痛みを感じた時には意識が薄れていた。
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2日目2時 死亡(2回目)
怖いよ 悪徳の街 怖すぎるよ
プライベートで遊んでるのも含めて、導入のミッションをまともにクリアできることが滅多にないんですが、これ本当に初期作成PCのひとり旅前提なんですか?
え?ダイス目? 知らない言葉ですね(泳ぎまくる目)。
さぁ、ただでさえ初期穢れが高い蛮族PCで早くも2落ち!
彼女のあしたはどっちだ?!