GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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実はやっと『ROAD to BERLIN』の視聴終了。
やはり宮藤は公式チートだな!!

現在『ルミナス』を視聴中(まだ3話)
比較して501部隊ののヤバさを実感してます。


ではどうぞ


第10話

 

 

 

報告を受けて、病室を走る一人の少女。

 

そこには布の上で横たわる青年が一人。

 

 

 

 

_北郷少佐、すみません…

_流石に煽り過ぎた結果だ…

 

 

 

整備士は悔やむ様に頭を下げる。

引き金となったから。

 

 

 

_く、黒数は?

_くろ、かず、は…大丈夫、なのか?

 

 

 

不安そうに、どこか縋る様に声が震える。

いまこんなにも、恐ろしいく感じるから。

 

 

 

_医者によると命に別状は無いみたいです。

_天井が緩衝材になったお陰で人体は何とか…

_だが、脚は…魔力に焼かれて、爛れて…

_あと、流石に彼の保有する魔力については…

 

 

 

整備士は起こった結末に頭を押さえる。

流石に彼の現状を説明する必要があったから。

 

 

 

_バレたのか……いや、それは仕方ない。

_彼もいずれこうなることを理解してた筈。

_だが、意識のない中でこんな…

 

 

_意識はいつ戻るかわかりません。

_浅い呼吸がいつ止まるかもわかりません。

_魔力も……脚も……いつ回復するか…

 

 

 

彼の存命を心配する。

もっと必要なタイミングで明かしたかったから、

 

 

 

_北郷少佐、教えてください。

_彼は一体何者なんです?

_いや、まさか、あの逸話の…??

 

 

 

その様子を見て、大体を理解した。

これ以上の黙認は厳しいと思い、彼を伝えた。

 

 

 

_いや、彼はウィザードでは無い。

_ウィザード紛いな体にされた…未来人だ。

 

 

_み、未来…!!?

_ど、どう言うことですか!?

 

 

 

突拍子もない話が病室に舞い込む。

最初は信じられなかった。

しかし整備士は実験の過程で嫌ほど知った。

彼が保有する力がどれほどなのか。

 

 

 

_彼はこの世界に無い時間を生きてきた。

_けど彼はネウロイを討って人を助けた。

_戦争を知らず、だがその力を貸してくれた。

 

 

_だからあまり何も知らないのか…

_故にウィザードの自覚も無かったのか。

_逸話も…何も……

 

 

目を覚さない青年は戦争を知ってるだけ。

だが「それでも」を意志に武器を握った。

この世界に望まれた事にして、奮おうとした。

 

だが、この結果だ。

 

理解の届かない力を前に青年は溺れた。

空と、宇宙の広さに誤って墜ちてしまった。

 

 

_私は…彼に縋り過ぎたんだ。

_残酷を…強いたのかもしれない。

_戦いの果てに彼を望んでしまったんだ…

 

 

_少佐、いや…

_それは…

_けど、彼は自ら……

 

 

_もう良いんだ中尉…もう、大丈夫だ。

_彼の空を隣にせずとも、私は飛べる。

_既にそれ以上を私に与えてくれたから…

 

 

 

青年は戦争を知らない。

 

青年は軍人を知らない。

 

青年は魔女を知らない。

 

けれど…

青年は、魔女の彼女に与えた。

 

この世界には無い、知識と視野を。

この時間には無い、理解と感性を。

 

それは、紛れもなく、勇気と希望だ。

 

この世に望まれたモノはあったから。

 

 

 

_黒数、ありがとう。

_でも本当の事を言えば…飛びたいよ。

_君を隣にして、飛びたかったさ。

 

 

 

ポニーテールを揺らしながら病室を後にする。

 

失った重さを受け止めながらも、与えてくれた重さを背負い、扶桑の魔女は舞鶴の空と海を眺める。いつも隣いた人間が一人いなくなるだけでこんなにも寂しく広々としていることを改めて理解しながら。

 

 

「ぁぁ…私が。この世界の私達が彼に望んだからなのか…?戦いの世界に彼を望んだからなのか??それがダメだったのか??教えてくれ……だれかおしえてよぉ…

 

 

 

ほんの一筋、温かな頬から滴を落とす。

 

海鳥の鳴き声が、彼女の嘆きをかき消した。

 

しばらくして、潮風と共にそれを軍服で拭う。

 

 

 

「明日から、舞鶴航空隊は本格的に揃う。だから育てないと。そうじゃないと嘘になる。彼の慰めも嘘になる。ここにいる魔女達で、扶桑を守らないと…」

 

 

 

ウィザードは逸話だ。

 

人々が夢を見たただの神話だ。

 

だから無かったんだ、そこに望まれしモノは。

 

その証拠に青年は目を覚さない。

 

 

だって___黒数強夏は『英雄』じゃないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1937年 7月7日

 

舞鶴に夏が舞い込む。

 

頬を伝った跡も忘れて、ウィッチがいた。

 

 

 

「やれやれ、もう動ける奴はいないのか?」

 

 

 

ここは舞鶴近郊にある講道館道場。

 

そこでは魔女候補生達に訓練を設ける一人のウィッチが顎に指を置き、まだ気力が残っているウィッチを見定める。

 

しかしほとんどの魔女候補生は魔力が尽きたのか竹刀を片手に道場の床で倒れていた。

 

 

 

「ここに坂本以外で気合いのある奴は居ないのか?」

 

 

 

首を傾げて発破をかけるが誰も反応しない。

 

このまま道場の中央に一人立っている魔女候補生の坂本美緒(さかもとみお)が今日もこの訓練で天下を取ると思われていたが…

 

 

 

「いや、ここにいるぜ!」

 

 

道場破りのように参入してきたのは走り込みを終えた若本徹子(わかもとてつこ)と言われる魔女候補生の中で1番の有望株。

 

坂本美緒に負けない実力の持ち主だ。

 

 

 

「いくぞ!坂本!」

 

「望むところだ!若本!」

 

 

両者竹刀を打ち合い、実力が拮抗する。

 

しかし坂本は連戦の疲れを得て隙を作ってしまい最後は若本の攻撃で有効打になり勝負が決まる。

 

 

 

「ふむ、若の勝ちかな?」

 

「へっ、流石に息があがってんな、坂本!」

 

 

連戦で疲労した相手に勝ち誇る結果か分からないが、とりあえず挑発するように得意げな声で煽る。坂本は何かしら言葉を返そうとしたその時に一人のウィッチが息を切らしてやって来た。

 

 

 

「す、すみません!遅れました!」

 

 

竹井醇子、彼女も魔女候補生。

 

しかしこの中で劣等生と言われるに値する。

 

彼女は戦いが得意では無いから。

 

さらに言えば今日は遅刻をした。

 

面白くなさそうに若本はソッポを向く。

 

 

 

「今日はやめだ。引き分けで良い。自分の魔眼すら制御できず、空も飛ばないウィッチなんかに勝った気にもならないからな…」

 

「っ…!!」

 

 

 

「やれやれ…頭が痛いことを…」

 

 

魔女候補生と言えども組織だ。

 

そこに意識の差はある。

 

若本は特に意識の高いウィッチであり、有望株として嘱望されて、誰よりも鍛錬を積んでおり、自分のこの強さはどんなネウロイ相手でも戦えると信じている。

 

だから強い奴を目の前にして、特に坂本美緒には負けたく無かった。

 

彼女が現れるまでは若本徹子がこの中で誰よりも強く、期待されてたから。

 

だからウィッチになりたがらない坂本美緒の存在に鬱陶しくも、しかし負けずに後ろを追ってきて欲しくとも感じて、彼女なりに抱えてるものがあった。

 

 

 

「とりあえず昼にしよう。午後は飛行訓練に入るから広々とした空路で休憩を取ろう」

 

 

 

魔女候補生は使った道場に雑巾掛けを行い、北郷章香はタイミングよく炊き上がった米をよそいながら道場備え付けの小さな厨房に立ち、思い浮かべる。

 

 

そういえば、赤城で良く()は__

 

 

 

「いや、やめよう。彼はもう空を飛ばない」

 

 

 

あの事故から既に一ヶ月以上が経つ。

 

未だ眠りつく青年を思いながらも今自分にできることを考える。

 

 

__積み重ねてきた自分を裏切らない。

 

 

その言葉があるから少佐になった今も自分にできる精一杯を考える。

 

歩を止めない。

 

これまでの軌跡を本物にするために。

 

彼から与えてくれたモノを無駄にしないために。

 

 

 

とりあえず……

まずは昼ごはんを作ってみよう。

 

おにぎりに蟹の爪をそのまま入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_あああ、あぁぁ…

 

_とう、さん…?

 

_かあ、さん…??

 

_なんで?

 

_なんで…?

 

_なんで……死んだの?

 

_すぐ買い物から戻ると言って、なんで??

 

_明日は、飛行機に、乗って。

 

_それで旅行するって、言って。

 

_飛行機で空を見せてくれると、約束して。

 

_楽しいフライトを用意したと、喜んで。

 

_それなのに、なんで空に行く前に…?

 

_なんで、ぼくを置いて死んだの?

 

_どうして、二人だけ先にお空に行ったの??

 

_お星様になったの??

 

_どうして…?

 

_どうして…??

 

_ねぇ、どうして……

 

_僕を置いて……宇宙(そら)の星になったの…??

 

 

 

 

 

 

ああ、嫌な記憶だ。

 

とても苦しい痛みだ。

 

両親が死んだ後、孤児院に行った。

 

そこで一人空を見る子供だ。

 

今の『俺』がまだ『僕』だった頃の後ろ姿。

 

信じられなくて、でも信じるしか無かった。

 

泣いて、泣いて、苦しんで、泣いた。

 

でも泣き疲れて、そしたら他にもいた。

 

僕と同じような小さな子供達が。

 

その子供達は親を知らない者もいた。

 

空に行ったのか、地に向かったのか。

 

僕よりも、知らない子が多かったから。

 

そして僕が一番年上になった。

 

だから、年上として、頑張った。

 

小学校に行きながら子供達の兄になった。

 

そして中学生になって、感情豊かになった。

 

そう成長して、よく考えた。

 

死んだ両親のことを。

 

死んだ魂は本当に星になるのか?

 

院長に聞いてみた。

 

答えはあった。

 

天から見守ってくれる。

 

人はそう思いたいから空を見る。

 

ココに残された人はそう望むらしい。

 

僕は、それが正しいかわからなかった。

 

そして…

ある日、物語に出会った。

 

 

「これは…」

 

 

物語があった。

 

そこにはまず、小さな子供。

 

子供は普通の家庭の子。

 

そこに一つのロボットを破壊する工作員。

 

工作員の青年は子供に出会う。

 

なんてことないポケットの中で笑い合う。

 

クリスマスと共に火薬が強くなる。

 

それは6話程度の短い物語。

 

そこは宇宙のどこか。

 

なんてことない小さな区域。

 

でも戦争をしていた。

 

一つを破壊するために、命を争う。

 

青年はビデオに残して、最後は散った。

 

少年は知った。

 

その先に人が亡くなることを。

 

でもその少年は戦争に生まれたから知ってた。

 

いずれ、兵士はそうなることを。

 

 

「コレが…」

 

 

僕は知らない。

戦争の子供なんて。

工作員の青年の葛藤なんて。

そんなの何も知らない。

 

 

 

 

__嘘が下手だな、バーニィ。

 

 

 

 

クリスマスの中で繰り広げられた物語。

 

それはポケットの中の戦争。

 

人の知らないどこかで失われた命。

 

僕の両親も、人の知らないどこかで失われた。

 

何度かニュースにはなった。

 

でもそこで亡くなった人の名は知らない。

 

土砂崩れに巻き込まれたその果てで亡くなった。

 

しかし記憶からも忘れ去られて、過去になる。

 

初めて見た戦争アニメと同じ。

 

ポケットの中のような出来事。

 

それは物語の中のビデオテープみたいだ。

 

それから、僕は、知りたくなった。

 

物語でもそこで始まる戦争物語。

 

だから院長にその名前を聞いた。

 

__なんて名前なの?

 

 

 

__GUNDAM(ガンダム)

 

 

 

 

いつしか『僕』から『俺』になった。

 

現実を受け止める様になった。

 

そして現実を知る様になった。

 

だから両親の死を乗り越えた。

 

中学を卒業した。

 

孤児院を出て一人暮らしをした。

 

周りの学生と足並みを揃えて生きた。

 

アルバイトもした。

 

学校を卒業した。

 

変わらずアニメ鑑賞もした。

 

たまに孤児院にも顔を出した。

 

子供たちと遊んであげたい。

 

生きてる自分を謳歌した。

 

ゲームも多く楽しんだ。

 

しばらくダラダラと今を過ごした。

 

それほどに余裕ができたから。

 

そして二十歳になった。

 

夢は特にないから適当にアルバイトを続ける。

 

でもひとつだけ考えていた。

 

お金を貯めて、いつかあの頃の続き。

 

空の旅でも楽しもうかと考えた。

 

そうすれば、少しは空に近いだろうか?

 

わからないな。

 

でも宇宙の星に願うくらいなら良いだろう。

 

どうか、見守ってほしい。

 

そう思い、試しにお酒に手を出した。

 

それから…

久しぶりにとあるゲームに手をつけた。

 

そのタイトルは、確か__

 

その、タイトルは…

 

確か、タイトルは…

 

 

 

 

『ッッ』

 

 

 

急に締め付けられるような感覚

 

随分と体が痛い。

 

後から襲ってきたような痛さ。

 

あれ…?

そういや、なぜ、痛いんだ?

 

俺は、どうしてたんだっけ?

 

確か、そう…確か。

 

 

 

 

『宇宙を見てた筈』

 

 

 

これが憧れなのか、使命感なのか、または約束なのか、あまり確かではないが、そこに目指そうとしていた。

 

 

俺は、ナニカ、で、飛ぼうとしていた。

 

一体何で飛ぼうとしてたんだっけ?

 

 

いや、そうだ。

 

ストライカーユニットだ。

 

この世界の箒で…

 

 

違う、違う、そうじゃない。

 

俺は、ナニカを、掲げて、飛ぼうとした。

 

それは、たしか……なんだっけ?

 

 

 

 

 

__だから、人類に!

__希望の光を見せなければならないんだろ!

 

 

 

 

 

また、声だ。

 

 

 

 

 

__それでも!

__仲間のためなら戦える!

 

 

 

 

 

 

また、また、声だ。

 

 

 

 

 

 

__俺の体!!

__みんなに貸すぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

また、また、また、声だ。

 

 

 

 

 

 

 

__ボクが皆んなを守る!!

__V2で皆んなを守りたいんです!!

 

 

 

 

 

 

 

また、また、また、また、声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は子供達を死なせやしない!!

 

過ちはマフティーが粛清する!!

 

応えろよ!ユニコォォーーン!!

 

頼む!ガンダム!天まで昇れ!!

 

勝利を掴めとォォ!轟叫ぶッ!!

 

見えた!?月は出ているか!!?

 

行け!行け!ホワイトドール!!

 

俺が!俺たちが!ガンダムだ!!

 

弱かった自分とお別れをした!!

 

轟けぇ!!アトラスガンダム!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの声、それは画面越しに見てきた英雄。

 

戦争の中で繰り広げられた物語。

 

それを誰もが触れるゲームに変えてガンダムファンに与えてくれた。

 

俺もその一人だ。

 

今はその枠に収まらないほどに巻き込まれている。巻き込まれている?

 

ああ、そうだ。

 

ここはストライクウィッチーズの世界だ。

 

思い出した。

 

なら、今の俺は……ここで何をして。

 

 

 

 

『ワン、ワン!』

 

 

ぇ?

なに…?

なんだ??

いまのは。誰だ?

 

 

『くぅーん、くぅーん』

 

 

い、ぬ?

これは日本…犬?

いや、扶桑犬か…?

あとなんか鼻先が赤いな…

どうしたんだろう?

 

『ペロ、ペロ』

 

 

ははは…何やってんだよ。

そんな焼け爛れてしまった脚。

舐めたって、汚いぞ…

 

 

『わん!わん!』

 

 

なんだい?

もしかして…

慰めてくれるのか?

ありがとう…やさしいな…

まるで『あの子』の様だ。

 

 

『わふっ!わふっ!』

 

 

脚の痛み…が?

無くなってるのか?

魔法みたいだな…

 

 

『わん!わん!わおん!』

 

 

はは、ちょっとやんちゃだ。

優しいけど、逞しい足取り。

やはり君はあの子に似ているな。

軍機違反ばかりしそうな、彼女に。

 

 

『くーん、くぅーん』

 

 

え?ああ…

そうだな……

脚、治ったもんな…

なら立たないと、だよな…

 

そしたら…

そしたら……

 

俺は宇宙の…

 

空の…

 

 

 

 

___つづき、を。

 

 

 

 

 

 

 

ウウウーー!!

ウウウーー!!!

 

 

 

 

 

 

「っ……!!」

 

 

 

耳をつんざくような音。

 

そして不安に駆けられる音。

 

それからヒラリと舞落ちる音も添えて。

 

それが目覚めになる。

 

 

 

「ぅぁ?ぁぁ、ぁぁ、ここ、は??」

 

 

 

警報の音が聞こえる。

 

その音に意識が少しずつ覚醒する。

 

目が開かれて、見えるのは知らない天井。

 

横を見る、花瓶が一つ。

 

あと、焼けた……紙??

 

これは、折り紙か…??

 

いや、それよりも騒がし過ぎる。

 

耳を傾ければ急いで廊下を駆ける従業員達。

 

これはなんの、サイレンだ??

 

声が聞こえる。

 

 

_来た!

_襲ってきた!

_避難路を確保しろ!

 

 

え?

なに?

来た?

なにが…?

 

 

__()()()()が来たぞォォォー!

 

 

 

 

「ネウ、ロイ…??」

 

 

 

 

ネウロイ……

 

厄災…

 

ネウロイ……

 

敵…

 

ストライク…

 

ウィッチーズ…

 

それと…

 

ガンダム…

 

バーサス…

 

 

 

 

「おれ、は、おれは…たし…か」

 

 

 

 

混雑する記憶。

 

はじき出される痛みと軌跡。

 

英雄。

 

宇宙。

 

約束。

 

扶桑犬。

 

ああ、ちくしょう…

 

眠ってる間に色んなものを見過ぎだ。

 

でも、落ち着け。

 

こういう時くらい、落ち着け。

 

ゆっくりと思い出す。

 

 

 

「はぁ、はぁ…すぅぅぅぅ…」

 

 

 

そう、おれは…

 

たしか…

 

そう、たしか…

 

あの日に見た…

 

画面越しに、見えた…

 

右枠から染まる…

 

黒い、無数の…

 

敵の…

 

 

 

 

<<< Νέυροι

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ネ ウ ロ イ(Ν έ υ ρ ο ι)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッッ!!!???

 

 

 

 

 

意識が完全に覚醒した。

 

 

 

 

「そうだぁ…!そうだった…!!おれは…!俺はストライカーユニットであの空を目指して!それで、それで…!」

 

 

現状を把握する。

 

意識もハッキリした。

 

あと病人服の格好だ。

 

それよりまだ少し体が痛む。

 

 

 

「あ、脚は!?」

 

 

 

掛け布団を払い、包帯を外す。

 

記憶と共に思い出す。

 

たしかストライカーユニットに魔法力を込め過ぎて、それで拒否反応のように魔力に押し戻されて、その衝撃で異空間から焼けたんだ。

 

千切れたり、折れたりはしてない筈。

 

でも、ひどく焼け爛れて……

 

 

 

「ぇ、治って…る??」

 

 

 

何故だ?

 

何故治ってる?

 

俺の、魔法力か??

 

そんな、自己回復能力なんてあったか?

 

俺にあるのは純粋な身体強化。

 

まだそのくらいしかわからない。

 

でも体はまだ何処か痛い。

 

だから自己回復したとは思えない。

 

それなら医療のお陰か?

 

でも、こんなに綺麗に治ってるなんて…

 

 

 

「いや、それよりも…!!」

 

 

 

周りを見渡す。

 

間違いない。

 

ここは病院だが、舞鶴の海と空が窓から見える。

 

そしてこの警報は聞いたことある。

 

ブリタニアの時と同じ。

 

それはつまり…!

 

 

 

「ぐ…まだ何処か、イテェ…」

 

 

 

脚を除いて痛む体。

 

それから、やや衰えた筋肉。

 

動くのに苦労する。

 

しかし無理やり魔法力で身体強化を行なって筋肉を一時的に取り戻させると窓から這い出る。

 

草木を分けて、ベンチを手すり代わりに立ち上がり、一度呼吸して再び魔法力を体に回して身体強化を行う。

 

騒ぎがする方__海だ。

 

俺は病人服にも関わらず舞鶴の警報に混乱する人々を掻き分けて走る。

 

 

 

「格納庫!アレが!そこにッッ!」

 

 

 

俺は走る。

 

走って、走った。

 

すると飛行場にある格納庫から何かが放たれた。

 

それはすぐにわかった。

 

扶桑のウィッチだ。

 

しかし…

 

 

 

「まだ小さいではないか!ま、まさかアレで戦うと言うのかよ!?」

 

 

 

現世の感覚が蘇り、めまいがしそうだ。

 

あんな子供が今から空で戦うだと??

 

すると少し遅れて飛び出したウィッチが一人。

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

背中に二刀流の扶桑刀。

 

ポニーテールが靡く。

 

 

 

「なっ…」

 

 

 

それだけで『彼女』だと理解した。

 

ここからは表情は見えない。

 

周りを飛んでるウィッチもその横顔はおそらく分からないだろう。

 

なのに…

なのに…

 

俺はわかってしまう。

 

なんで…

 

なんだあんな不安そうにしているんだ…!

 

 

 

「っ、そうだ!彼女はこれが初陣か!」

 

 

 

だとしても彼女は強い。

 

弱くなんかない筈だ。

 

俺は彼女を知っているんだぞ。

 

止めていた足をまた進める。

 

久しぶりに使う魔法力に少し意識が取られそうになるが、それを根性で抑えて走る。

 

走って、走る。

 

そして、たどり着いた。

 

舞鶴のウィッチ達が離陸したところとはまた別の小さな格納庫である。

 

魔女でもない俺が空を飛ぶために試行錯誤するために設けられた小さな実験庫。

 

そこには…

 

 

 

「ハッパさん!」

 

「!!?」

 

 

 

そこには八羽中尉がいた。

 

ネウロイから与えられる被害を少しでも抑えるため格納庫の扉を閉めようとしていたらしい。

 

 

 

「なっ、黒数!目を覚ましてたのか!?それより脚はどうした!?魔力でひどい火傷を負って包帯塗れだったろう!?」

 

「それよりユニット!ユニットを!!」

 

「なんだと!?まさか飛ぶつもりか!?」

 

「飛びます!!てか、ソレは飛べますか!?」

 

「い、一応整備はした…が、いや、でも…」

 

「なら俺がそれで空を飛ぶ!!動かないならプロペラ機でも構わない!!無理にでも飛んでやる!!」

 

「だ、だが、君は……北郷少佐は…」

 

「俺が約束を果たそうとしてんだよ!」

 

「!!!」

 

 

 

八羽中尉に詰め寄り、そのスパナを掴む。

 

息は、走って荒れている。

 

だが、俺の目はよく見開かれている。

 

八羽中尉を射抜いた。

 

 

 

「ね、燃料を入れれば…飛べる…!」

 

「!」

 

「そ、それに生憎だが、この格納庫にプロペラタイプのストライカーユニットは無い代わりにとあるウィザードもどきの試験結果に駆られてつい整備してしまったユニットがある訳だが、それで良いな?」

 

「良い!…それが良い!!」

 

 

すると「よし来た!」と眼鏡を光らせて彼は取り掛かる。

 

俺は八羽中尉から渡されたホースを伸ばしてユニットに装着する。

 

 

 

「…」

 

 

 

改めて、そのユニットを見る。

 

プロペラタイプじゃない、ジェット機タイプ。

 

ジェット機タイプのユニットは空論上として飛ぶのは可能だがこれを扱えるウィッチはまだいない。何故ならそれ相応の魔法力を備えたウィッチがいないから。

 

それでも設計図はあった。計画されている宮藤理論が完成するまではお蔵入りだがジェット機タイプのユニットは既に考案されて、大凡の開発図だけは完成していた。まだ試作段階ではあるが。

 

 

しかし八羽中尉は空ではない、()のストライカーユニットを持ち込み、設計図に伴って改造を施していた。

 

そのユニットは飛行ウィッチが使うストライカーユニットと違い()()があった。

 

それがスラスターのタイプと化している。

 

 

何より…

見た目がモビルスーツの『足』に似ていた。

 

 

 

「ハッパさん!」

 

「わかってる!いま燃料を投入して…ッ、このレバー!固くてうごかねぇ!」

 

「なら、俺も!」

 

「ダメだ!お前はユニットを履いて魔法力を浸透させろ!慣らし運転無しでぶっつけ本番なんだ!燃料入れてから律儀に動かしてちゃエンジンの稼働に時間がかかる!あとそこにあるジャケットでも着てろ!少々ながらビーム耐性はある!」

 

「っ!」

 

 

俺はジャケットを掠め取りながら魔法力を体中に巡らせてストライカーユニットに足を落とす。

 

異空間に足が持っていかれる感覚。

 

しかし、これは…

 

 

 

「手足の様な感覚…!!」

 

「ああ!そうだ!だって『陸』のウィッチのユニットだからな!そりゃ足の感覚も固定された空以上って訳だ!そんでその中身を『空』に改造して、足裏と四方向にスラスターを取り付けた。それだけあればあとは強引に空でコントロールできる筈だ!」

 

「いや、それでコントロールって!」

 

「結局はお前の感覚が頼りだ!!てか、それより!くっそ!固えなぁ!このレバー!」

 

 

 

かなり無茶を言ってくれるが、そんなユニットを作ってしまう彼はやはり天才では??

 

しかし陸のユニットを空に改造した。

 

関節のある足で、空を舞える。

 

まるで…

 

 

 

モビルスーツだな……これは…」

 

 

 

モビルスーツもどきとは言え、まさかこんな形で巡り合わせるとはな。

 

足の感覚に慣れようと意識していると…

 

 

 

「?」

 

 

 

眼帯を付けた一人のウィッチが別の格納庫から飛び出して、慌てた整備士が「それはまだ改修が!」と心配そうに空へ言い放つ。

 

不安要素を抱えたストライカーユニット。

 

結果としてフラフラと飛んでいる。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

だがそれ以上に不安定すぎる。

 

まさか初めて飛んだのか!?

 

いやいやいや!!

それは不味い!!

とても不味いッッ!!

 

まともな初陣も果たせず舞鶴航空隊に犠牲者を出す気か!?

 

てかあの子は死ぬ気か!?

 

ネウロイは恐ろしいぞ!!

 

 

 

「ッ」

 

 

 

まだ……まだ、俺は飛べないのか!?

 

また置いていくのか!?

あの空に!?

 

あ、ああ!

ああああ!

 

くそぉ!!

 

俺が!俺が!気を失わずに!

いまあそこで北郷に力を貸せたのなら!!

 

そう、できたのなら!!

 

こんな苦しい惨状なんてなかったのに!

 

 

 

「ぁぁ…!」

 

 

 

 

格納庫から見える墜落の後。

 

ウィッチが一人海に落ちた。

 

 

 

 

「ぁぁぁあ…!」

 

 

 

 

ネウロイは待たない。

 

次のウィッチを狙おうと動き出している。

 

そしたら、また次、また次と、始まるんだ。

 

 

 

 

「やめろ…やめろ…!」

 

 

 

 

あの空にいるのは皆が初陣。

 

そして戦闘経験が皆無な魔女達。

 

それは、北郷も同じだ。

 

あそこにはネウロイと戦ったことのある兵士が誰一人として存在しない。

 

まるで一年戦争のジオンの新兵だ。

 

棺桶(オッゴ)で戦った学徒兵と変わりない。

 

 

 

 

「ぁ______」

 

 

 

 

ダメだ。

 

ダメだ。

 

そんな結末、ダメだ。

 

 

 

 

「ぁぁあ!!」

 

 

 

 

あの空に俺が行かなければ。

 

そうでなければ意味がない。

 

 

与えられた、この能力も!

 

与えられた、この叡智も!

 

与えられた、この役割も!

 

 

そして…!

 

そして…!!

 

そしてッッ___!!

 

 

 

___黒数、ありがとう。

 

 

 

 

「________」

 

 

 

 

彼女の声すらも意味が無くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッパさァァァァん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガコンッ!

 

 

 

 

 

 

 

「レバーが動いた…! 黒数っっ!!」

 

 

燃料がユニットに注がれる。

 

染み渡る感覚。

 

ほんの数秒の供給で良い!

そしたら往復分は行ける!

それで空を飛べるから…!

 

 

 

 

 

「___!!!」

 

 

 

 

 

この時、俺は極限状況の中で心臓が一度だけ大きく跳ねたような衝撃に襲われると、霊的な光に招かれる感覚が体を巡る。

 

 

すると一瞬だけ、眩しくなった。

 

 

ナニカが、解き放たれた感覚。

 

 

頬撫でる、暖かな光と風。

 

 

俺はゆっくりと、目を開いた。

 

 

目を見開いて…

 

空は見えない。

 

 

 

代わりに__宇宙(そら)が見えていた。

 

 

 

「ぇ…」

 

 

 

気づいたら、そこは『宇宙空間』だった。

 

体が軽い。

 

何も囚われがない。

 

重力に縛られもしない。

 

引力に引っ張られもしない。

 

まるで全てが曝け出されたようだ。

 

周りを見渡す。

 

 

すると__後ろから聞こえた。

 

 

 

「!」

 

 

 

振り向けば『誰か』が沢山いる。

 

その者たちはこちらを見ている。

 

だが表情は見えない。

 

首から上は黒く染まっている。

 

でも…わかる。

 

パイロットスーツだから、ある程度分かる。

 

ほんの少しニヤけそうになる光景だろうか。

 

すると、集わった英雄たちから光が溢れた。

 

この空間で、声が聞こえる。

 

優しく響いて。

 

時には力強く、響いている。

 

 

 

 

 

 

__さあ!向かってくれ!

 

__僕はあなたを信じてますから!

 

__もちろん!これからだよ!

 

__いけ!今すぐ行くんだ!

 

__兵士達よ!進軍ス!

 

__加速しろ!!誰よりも早く!!

 

 

 

 

 

沢山の声が背中を押す。

 

聞いたことある様なセリフから。

 

それっぽく繋げられた言葉まで。

 

ただの、アニメや漫画のセリフだ。

 

けれど、今はそれが一番…力になる。

 

それがガンダムだから、これで良いんだ。

 

 

 

 

ありがとう、俺はもう、大丈夫だから

 

 

 

 

そう伝える。

 

すると緑色の光が英雄達を包み込んで一人ずつ消えていく。

 

またひとり。

 

また、ひとり消えゆく。

 

まるで、もうこの場に何も残さないように。

 

英雄達は託し終えた様に役目を降りる。

 

 

 

 

__ああ…

__彼らは、俺から、消えていくのか。

 

 

 

 

そうして…

 

一人ずつ見送り…

 

最後の一人だけが残る。

 

すると手元に何か違和感が。

 

俺は見下ろす。

 

すると…

ジム・ライフルが握られていた。

 

俺が最初に使った武装。

 

コレで初めてネウロイ落とした栄光。

 

強く握りしめる。

 

するもジム・ライフルから光が伸びた。

 

その光を目で辿る。

 

すると、そこには…

 

 

 

 

 

頑張れよ、殻のついた、ひよっこ

 

 

 

 

 

 

あの場所で最後に選んだ俺の機体。

 

その魂は、目印になっていた。

 

 

 

「ああ、頑張るよ」

 

 

 

隊長機としてジム・カスタムに乗ったひとりのパイロットがその言葉を残して緑色の光と共に消え去った。

 

 

 

 

___

 

__

 

_

 

_

 

_

 

_

 

 

 

 

 

「黒数っ!」

 

 

「っ!」

 

 

ハッパさんの声で目覚める。

 

目の前を見れば舞鶴の航空路。

 

外からは厄災の気配がする。

 

たった数秒ほどの静寂だったか。

 

ユニットに意識を注ぐ。

 

そこまで多く注がれていない。

 

けれど…

 

 

 

「レバーを止めて!コレで出る!!」

 

「なにっ!?」

 

「行ける!約束を果たすに充分だ!!」

 

「ッ!ならホースを千切ってでも行けぇぇ!」

 

「行ってくるッッ!!」

 

 

 

 

スラスターからエーテル化した魔力のエネルギーが吐き出す。

 

空を目指そうと、ガ ン ダ ム は 立 つ

 

 

 

 

 

 

 

 

ふ み か ァ ァ ァ ァ ァ !!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞鶴の空へ、青年は彗星となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、残酷な空。

 

夏が舞い込む季節を塗り潰すように空を飛ぶ黒い厄災は人類を脅かそうとする。

 

舞鶴は混乱に巻き込まれ、人々はその空に怯えながら避難する。

 

 

 

「坂本ッッ!そのままじゃ落ちるぞ!」

 

「ぁ、あれ?ちから…が…」

 

 

 

人類を守るために空を飛ぶウィッチ。

 

彼女達はまだ子供だ。

 

あまりにも重たい役割だ。

 

それを広大な空で課せられる。

 

何故なら、ウィッチだけが頼りだから。

 

 

 

「言わんこっちゃない!」

 

 

 

舞鶴航空隊の隊長、北郷章香はユニットの不良により墜落する坂本美緒(さかもとみお)を受け止めようと急降下する。

 

その間に周りの魔女候補生はネウロイを抑えようと奮闘するが、ネウロイの強さに振り回される。

 

まだシールドが彼女達を守る。

 

しかし、戦意は絶えなく削る。

 

皆が皆、それぞれの不安を抱く。

 

この戦いに震えを抑えきれない。

 

その中で若本徹子(わかもとてつこ)は歯を食いしばりながらも機関銃を握りしめてネウロイを攻撃する。

 

銃弾が羽を掠めた。

 

しかし撃墜に至らない。

 

だが北郷少佐から学んだ戦技が正しいならネウロイに勝てる。

 

それを胸に秘めてプロペラを回して空を舞う小さな魔女達。

 

 

 

「ごほっ、げっほ、ごほっ…!」

 

「坂本!手を掴め!」

 

 

 

海の中で溺れる眼帯の少女、坂本はユニットを付けたまま海に浸水したためそれが重りとなって沈みそうになる。

 

そして坂本は元々空を飛ばなかった。だから飛行訓練の少なさ故に足のユニットの脱着を忘れている。それを心配した北郷はすぐさま駆け寄り、手を伸ばした。

 

 

 

「げっほ…げっほ………せん、せい…」

 

「もう大丈夫だ……全く、無茶をする…」

 

 

 

なんとかユニットを外して坂本を助けた北郷。

 

彼女を一度陸に戻そうと思い、そこに…

 

 

 

「キィィィ!!」

 

 

「っ!!ネウロイか!」

「ぁ、ぁぁ…!」

 

 

 

空から絶望の音がする。

 

夏の暑さすら忘れる、冷たい鉄の音。

 

北郷はシールドを展開して、ネウロイのビームを防ぐ。

 

 

 

「せん、せい、わたしは……置いて、ネウロイを…」

 

「だめだ!それは許さん!」

 

 

 

北郷は坂本を両手で抱き上げている。

 

少女を背負おうにも魔道エンジンが邪魔する。

 

そのため武器を引き抜けない。

 

防御ばかりを強いられた。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

生徒に歪んだ表情なんて見せれない。

 

だが、この状況はかなり不味い。

 

シールドも無限ではない。

 

嫌な未来が頭によぎる。

 

北郷はプロペラを回してビームを避けながらネウロイを振り切ろうとするが、追ってくるネウロイは飛行機型であり、見たことない新型。

 

だが、形は見たことある。

 

まるで…

 

 

 

「まさか九五式…!?厄介な…!」

 

 

 

運動性の高い戦闘機がネウロイになって襲いかかってきた。

ひどい組み合わせだ。

 

このストライカーユニットで戦えるか?

いや、戦える。

 

扶桑刀で一撃入れれるならまだ望みがある。

 

しかし手出しが出来ない。

そして追われるだけの立場なら話は別だ。

 

あれが本気を出せばウィッチに追いつく。

 

 

 

「せん、せい…っ!」

 

「安心しろ!絶対に…!絶対に…!!」

 

 

 

絶対……なんだ??

 

絶対に、どうするって??

 

あのネウロイは理解して狙って来た。

 

一番強い北郷を封じるため、一番強いネウロイが襲って来て、それで絶対と言葉を吐いてそれでなんだ?

 

どうすると言うんだ??

 

陸からそう遠くない。

 

だが、これは……

 

 

 

「!」

 

 

 

ネウロイは北郷の進路を塞ぐ様にビームを撃ち放ち、海面を柱のように爆発させる。

 

足が止まってしまう。

 

そこにさらにビームが襲って来た。

 

北郷はシールドで防ぎながら諦めずに坂本の腰にぶら下げていた機関銃を手に取って放火する。

 

しかし姿勢が悪く、銃身はブレて弾はネウロイに当たらない。

 

そして見えないところからビームが襲う。

 

 

__2機目がやって来た。

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

魔女候補生の包囲網を突破したネウロイが一機だけ、北郷と坂本に迫って来た。

 

なんてことない小型ネウロイ。

 

だがその攻撃力はシールドの無い人間の体を容易く貫く。

 

気を抜けば終わり。

 

九五式のネウロイと小型ネウロイは取り囲む様に旋回して二人の逃げ場を奪う。

 

北郷は機関銃で牽制する。

 

しかし突然引き金が動かなくなった。

 

触れた海水で銃は故障したみたいだ。

 

 

 

「坂本!私の腰にある銃を!」

 

「!」

 

 

 

坂本は震えながらも北郷の腰にぶら下げている銃に手を伸ばす。

 

しかしネウロイはその機会を逃さない。

 

両サイドからビームが放たれた。

振り絞って展開するシールド。

 

震える手で受け渡す坂本の機関銃を貰い受ける。

 

これで打開する。

 

再び奮起して銃口を向けたその時、ネウロイのビームにて発生した火花が機関銃に降り注ぎチリチリと音を立てる。

 

 

 

「しまっ!」

 

 

 

中の火薬に届いてしまう。

 

熱を帯びた銃を手放し、坂本を庇う様に体を伏せる。

 

手元で爆発した。

 

 

 

「ぐぁぁっ!!」

 

「せんせい!?」

 

 

 

爆発に手が触れて焼け焦げる。

 

シールドに集中して手元の防護に魔法力が行き渡らなかった。

 

片手が使えない。

 

まだ無事な片手は少女を庇うだけで限界。

 

銃も使えない。

 

扶桑刀もまともに振るえない。

 

ネウロイは飛んでいる。

 

もしこの場に飛べないウィッチがいなければ今すぐにでも北郷は扶桑刀で斬り落とせた。

 

彼女はとても強いウィッチだ。

ネウロイに遅れは取らない…はず。

 

だが、この戦況は……あまりにも残酷だ。

 

 

 

どうする!?

どうする!!?

どうやって打破する!?

 

 

 

諦めていない。

 

彼女は諦めてなんかいない。

 

考える。

 

考えて、考えて、考えて…

 

そして…

 

九五式ネウロイは真後ろから急接近してビームを撃ち放って来た。

 

 

 

「!」

 

 

 

ビームがダメなら、体当たり。

 

それが目に見える。

 

なら避ける?

いや、逃げ場がない。

 

もう一機の小型ネウロイが進行方向を阻害するから。

 

なら刀…いや、無理だ。

 

振るうにしても坂本を海の中に下ろすしか無い。だがそれは無防備になる彼女を見殺しにしてしまう。何より大事な生徒を海に落とすなど北郷には考えられなかった。しかしその迷いが命取りになる。

 

 

 

「ァぁ____」

 

 

 

全てが、遅く感じる。

 

撃墜を悟ったから?

 

かもしれない。

 

その手で小さな少女を強く抱きしめる。

 

 

 

 

_なあ、坂本。

_私はウィッチとして軍人をやっているが…

_根は平凡な人間で、大層な存在でもない。

_はたから見れば二十歳も過ぎない子娘さ。

_私には怪異から世界を守るなんて出来ない。

_更に言えば扶桑を守れるほど強く無い。

_守れるのはせいぜい、この舞鶴だけさ。

 

 

 

 

 

皆はあまり知らない。

 

北郷章香は、自己評価の低い人間だ。

 

剣術の免許皆伝を受け、戦技研究などに着手し、ウィッチの空戦技術を高め、それが評価されて少佐となった文武両道の頭脳明晰なウィッチとして周りから慕われているが、彼女はそんなのを飾りだと自負するひとりの少女。

 

だから、そこまで自分を大層に思わない。

 

 

せめて、長くウィッチをやっているその経験だけが強みだった。

 

だがネウロイを落としたことも、倒したこともない、飾りだらけのウィッチ。

 

 

 

 

扶桑刀を背負ってるからなんだ??

 

成績優秀で士官学校を卒業したからなんだ??

 

講道館の師範代をしているからなんだ???

 

舞鶴航空隊の隊長だからなんだ???

 

カラカラと笑えるから…なんだと言うんだ??

 

 

 

それが____北郷章香。

 

 

 

 

彼女は本当に大したことないウィッチだ。

 

 

「キィィィ!!」

 

 

 

九五式のネウロイが襲いかかる。

 

回避を選ばず、せめて坂本だけでも…

 

そう思い、彼女を腕の中に隠して、焼けてしまった腕を痛々しく震わせながらネウロイの方に伸ばしてシールドを強化する。

 

 

そして、記憶と共に重なって見える。

 

 

 

 

_ああ、そう言えば。

_彼もこうしてたな。

_シールドが出ないから。

_自分でシールドを構成して。

_それで防御手段を作ってたっけか。

 

 

 

最後に、思い出してしまう。

 

とても器用な彼の姿を。

 

 

最後に、思い浮かべてしまう。

 

とても素敵な彼の心を。

 

 

その名は、消えそうになるシールドと共に…

 

零れ落ちた…

 

 

くろ、かず……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

章 香 ァ ァ ァ ァ !!

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

声が聞こえた。

 

こんなにも騒がしいのに、聞こえた。

 

久しぶりなのに、昨日のように感じる。

 

すると真上から弾幕が襲いかかる。

 

見たことない弾丸。

 

しかし、その熱量は知っている気がする。

 

だからそれがすぐに誰のか、わかった。

 

降り注ぐ九五式ネウロイの羽を貫き、その行動力を奪うと舞鶴の方から彗星が落ちてきた。

 

 

 

 

 

君との約束を果たしに来た!!

 

 

 

 

 

 

彗星から放たれる光の刃。

 

 

赤城で散々見てきた訓練の成果。

 

 

重ねてきた約束を裏切らないために。

 

 

だから、今日この日…

 

 

それは少女も約束も守る『盾』となったのだ。

 

 

ビームシールド がネウロイを斬り裂いた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 






まーたこの作者14000文字ぶち込んでるよ。

良くありげで、お約束な展開。
でも、わたしは好きです(素直)

ガンダムって
ストライクウィッチーズって

恐らくそうだから。


ではまた

スピンオフ『1937扶桑海事変』は読んだことありますか?

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