GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第12話

 

 

 

「ねぇ、やはり()()違和感じゃない?加東(かとう)

 

「言わんことはわかるよ穴拭(あなぶき)、だって異端だもんね。けどあの人の話は間違いなく本物みたいだよ。黒江(くろえ)はどう思う?」

 

「男女合同訓練と言うならわからないことも無いけど、届いた噂が本当なら今はなんとも言い難いわね。だって噂の男性ウィッチがあの部隊に紛れ込んでるなんてね。加藤(かとう)はどう考える?」

 

「そうね…少し気味悪く感じるわ」

 

 

 

視線の先に普通じゃない、一人のウィッチ。

 

加藤武子(かとうけいこ)(しか)めた。

 

 

 

 

 

 

さて、舞台は移る。

 

7月11日。

 

魔女候補生から正式に魔女(ウィッチ)として認められたその日に慌ただしく報告が舞い込む。

 

扶桑皇国の動員令により舞鶴航空隊、もしくは精鋭として数名ほど抜擢されたことで正式に部隊名を与えられた『扶桑海軍第十二航空隊』の各ウィッチ達は浦塩の方へと異動を開始。海から陸を経て遠征すると、そこからウラル方面の防衛に当たることになった。

 

この時、宮藤理論が完成したことでストライカーユニットは大幅に先進していた。まず小型化に成功した魔道エンジンは今後背負う必要もなくなり、その魔道エンジンはストライカーのユニットの中に全て収納されるとウィッチは快適な飛行が約束された。

 

しかし新型はまだまだ完成したばかり。

 

実戦時の炙り出しを行う必要がある。

 

そのため実験的最精鋭部隊として第十二航空隊はウラルの防衛と同時に抜擢されることに。

 

しかし戦技研究の士官を務めた北郷章香を除いて、ほとんどのウィッチが新兵であるため不安要素に不安要素を重ねる羽目になっている。

 

それでも飛行型の新型ネウロイを舞鶴の海上で撃破した功績を扶桑海軍は視認しており、また突如現れた謎の男性ウィッチの青年も含めて結成したばかりの第十二航空隊は実験的最精鋭部隊として託された。

 

 

だがウラルの防衛を先に行っている陸軍と陸軍ウィッチは不安がっていた。

 

ネウロイを撃破したエース集団と思われていたが、話を聞けば一人当たりの飛行訓練時間が100時間にも届かない未熟者の集まり。中には10時間弱の飛行訓練しか行ってないウィッチまでやってくる始末。これには陸軍のウィッチも共同戦線を張るにあたって経験弱者な海軍ウィッチ達に渋い顔をしており、または扶桑に突如現れた噂の男性ウィッチも第十二航空隊に参加しているあたりまともではない。

 

そんな航空隊に対して陸軍ウィッチの穴吹智子(あなぶきともこ)加藤武子(かとうたけこ)どこか面白くない顔をしていた。

 

 

 

「しかし、男性ウィッチね…」

 

 

ただ一人、冷静に彼を見定めようとしていた。

 

江頭敏子(えとうとしこ)、階級は中佐。

 

ウラル方面を防衛する陸軍飛行第一戦隊隊長。

 

彼女は古くからの親友である北郷章香から紹介された男性の動向を遠目から見ていた。

 

見た目なんてことないそこらの扶桑人… と、言うにはなにかと違和感がある扶桑人。

 

扶桑人だけど扶桑人ではないようなもどかしさ。

 

それは当たっていた。

黒数強夏は『日本人』である。

 

纏っている雰囲気に違和感を持ったのは長い軍人生活と部隊長として多くの部下を見てきた観察眼と経験があるからこそ。

 

まあだからと言って異界から呼び込まれてこの世界にやって来たイレギュラーな存在であることは流石に分かるはずもないが、彼女が彼に対して抱える違和感は流石だろう。

 

だからそんな男性ウィッチがウラルに構えた扶桑の前線基地で第十二航空隊と共に走り込みの訓練をする姿を目で追いかける。

 

しかも、その男は准尉として率いてる側だ。

 

 

 

「若本、あまり遅いと置いてくぞー」

 

「なっ、舐めんなぁー!」

 

 

7つほど年下のウィッチを煽りながらも訓練に参加して走り込みをする青年の姿は異端のほかに言葉はない。

 

どこからともなく現れた男性ウィッチ。

 

または逸話として一人歩きするウィザード

 

第十二航空隊隊長の北郷章香少佐が連れて来た以外に情報が全くない。

 

そして恐らく扶桑人。

 

最初は何かの間違いかと思った。

 

だがその男は整備士でもなく、飯炊兵でもなく、諜報員でもなく、主計家でもなく、お目付役でもない。

 

本当に、本当に、魔女と空を飛ぶ青年。

 

 

「はぁ…はぁ…!黒数さん!早い!」

「黒数せんぱーい!待ってよー!」

「やはりやるな、あの男!」

「強夏ちゃ〜ん、待って待って〜」

「准尉って何気に大人で歩幅あるですわね!」

 

 

「おいおい、これは競争じゃないんだぞ?やってることは持久走。体に薄く魔力行使を行って体力を増やすんだよ」

 

 

「そんなこと言ったってぇ…!」

「そう簡単じゃないよー!」

「てか准尉もう折り返して来たの!?」

「強夏ちゃ〜ん、走るのはやい〜」

 

 

「俺は赤城で散々やった。だから長時間飛べたし、前の迎撃飛行訓練で君たちを10人抜きしたのはそう言うことだ。あと地面に足つけたのは竹井からお茶貰った時くらいで、竹井だけしか気づいてないぞ」

 

 

「「「ええ!?う、うそ!!?」」」

「「「ほ、本当だ!確かに!!」」」

 

 

 

第十二航空隊は部隊長の北郷章香も含めて全11名の少数隊である。もちろん最初はそれ以上の魔女候補生がいたが、約十日前の戦闘で半数近くのウィッチが新型ネウロイ(九五式戦闘機)の暴力により撃墜されてしまい、まともに動けるウィッチがそう多くなかった。

 

死人が出なかったことが何より救いだろう。

 

だが前の戦いで病院送りにならず、この場で生き残ったからと言って彼女達の練度はそう高くない。

 

まだまだ、ひよっこである。

 

だから彼女達を鍛えるのが北郷少佐の役目。

 

そして…

 

准尉を受け入れた黒数の役割でもある。

 

 

 

「お前らー!砂糖入りの卵焼きは好きかー!」

 

「「「「!!!」」」」

 

「最後まで走り切った奴だけが食えるぞ!」

 

「「「「!!!」」」

 

「食べたいかー!?食べたいよなー!!」

 

「「「「食べりゅぅぅぅう!!!」」」」

 

 

 

黒数強夏、彼はもちろん最初は舞鶴の魔女候補生から警戒はされていた。

 

まあそれもそのはず。彼は舞鶴航空隊が本格的に設立される前に飛行実験時に事故を起こして入院していたので魔女候補生と顔合わせしてなかった。

 

そしてネウロイの侵攻と共に目を覚ますと病院を抜け出して空の下へ復帰した。

 

この時点で一ヶ月以上が経過している。

 

その頃には舞鶴航空隊に魔女候補生が集われていたので、先にいたはずの彼は後からやって来たような形でウィッチ達にその姿を見せた。戦闘の果てで北郷章香を救ったがそれでも最初は強く警戒されていた。やはり空を飛ぶ男性ウィッチは異端の他ならないため。

 

その前に北郷章香が黒数強夏の存在を魔女候補生達に知らせていれば現状は少し変わったかもしれない。

 

 

だがそれは北郷章香が許さなかった。

 

 

何故なら試験飛行失敗による墜落事故を起こした黒数強夏の身を案じて北郷章香は彼を空から引き離そうとしたたから。

 

その存在を舞鶴航空隊からは遠ざけていたため魔女候補生達は彼を全く知らなかった。

 

しかし北郷章香はネウロイの侵攻から坂本美緒と共に救い出され、ストライカーユニットを履いて空を飛ぶ彼に『約束を果たしに来た』と優しく頭に触れられてその手の温度に北郷章香は約束の空を知った。

 

後に、北郷章香は___縋った。

 

彼にしか見せれない弱々しい姿。

ひとりのウィッチとしての本音。

 

不安と本心、それらを漣に消える涙に変えながらこれからの空と宇宙に願いを乗せて赤城から続くその約束を黒数強夏はこの先も受け止めた。

 

その日から与えられた准尉の階級と同時に改めて本格的に舞鶴航空隊に加入した。

 

この時の舞鶴航空隊の魔女候補生は彼の参入をぎこちなくも受け止める。

 

しかし坂本美緒だけはあの絶望的状況から救い出してくれた恩人として直ぐに彼の存在を受け止め、坂本の受け入れの速さに対抗心を抱きながらも強者のことは少なからず認める若本徹子も彼の存在を認め、それからゆっくりと浸透する… と、思いきや、実のところ黒数強夏の存在は舞鶴航空隊の中ですぐに慣れ親しんでいた。

 

彼の行動力の高さもあるが、孤児院生活で年下を相手に慣れた距離感の作り方、また狭め方も心得てるため、魔女候補生も彼の受け入れにそう苦戦はしなかった。

 

訓練中に差し入れとして、焼き林檎、砂糖入りの卵焼き、冷凍した蜂蜜檸檬など、年頃の娘の胃袋と同時にその好感は掴み取ってしまう器用な腕前と、魔女候補生だった若本徹子とのやり取りは男性ウィッチであることを除けば親戚にいる愉快なお兄ちゃんと変わりない姿。

 

しかしストライカーユニットを履けば手足のように自由な空を楽しむ男性ウィッチの姿は異端で恐ろしくもあるが、前の戦いでネウロイを討ったことで皆が敬愛する北郷先生を救った実績は頼もしくもある。

 

そのため信頼を得るのはとても速く、彼は第十二航空隊のウィッチ達と打ち解けるのに時間はそう掛からなかった。

 

 

 

 

「若が一番で、黒数が二番か」

 

「ぜぇ、ぜぇ、や、やって、やったぜ…」

 

「持久走つってんだろ。ここでもう一往復と言われたら若本は走れるのか?」

 

「ゔぇ!?」

 

「まったく、コイツは…」

 

「はっはっは!まあまあ良いではないか。若者はそれくらいがいいさ」

 

「元気なのは良いけど訓練の本質から外れるのはダメだろ?そんなわけで若本、さっさと立ってもう一往復してこい。准尉命令だ」

 

「えええ!?横暴だー!」

 

「何度も言った。これは魔法行使の持続力を高めるための持久走だと。あと俺は見えてたからな?お前が魔力行使せずに体力だけで走ってたの」

 

「なっ!」

 

「わかったらやり直しだ。あと最後方の竹井に離されすぎたら特性の卵焼きは無しな」

 

「ああああ!バカ数ぅ!覚えてやがれ!!」

 

「早く走るのは構わないがちゃんと魔力行使しろよー!髪が伸びたらその時はまた切ってやるからちゃんと使えー!持久走しろー!」

 

「わぁーてるよぉー!うるさーい!!」

 

「はっはっは!はっはっは!!」

 

 

 

若本を筆頭として彼の異端さはなにかと緩和されている。まるで言うことを聴かない妹とそれに困り果てる兄のような図は警戒心すら忘れさせる。これに男性ウィッチの正体が隠されていればこの青年はただの教育者だ。

 

いや、もうそのようにしか見えないだろう。

 

しかし彼に対する警戒が薄れたのはそれだけではない。

 

 

 

一番の本命は____北郷章香であること。

 

 

 

「まあ、早朝に全員分作ってるけどな」

 

「黒数は優しいな」

 

「北郷ほどでもない」

 

「ふふっ、そうかい?あ、そうそう、黒数。君のストライカーユニットだが…」

 

「整備士には言ってあるよ。メンテナンスに関しては自分のは自分でやるって。あと予備にハッパさんがもう一式作ってくれたが、今頃出来上がった宮藤理論を突き詰めて俺専用に最新型のストライカーユニットを開発してる」

 

「そうかそうか。君の方で完結してるなら他に言うことないな。頼もしいよ」

 

「でも搬入の際は声かけてくれよ?一応取り寄せに応って暗号が必要なんだから」

 

「はっはっは、それはもちろんだ」

 

 

肩を並べ合いながら話す二人の雰囲気はとても柔らかく、初めて目の当たりにした者でも二人の信頼が強く結ばれていることがわかる。

 

その雰囲気に慣れるとこうも見えてくる。

 

ひとりの男性が冗談を交えながら豊かに会話を繰り広げ、ポニーテールを揺らしながらコロコロと笑って反応する女性の姿。

 

それはまるで…

 

 

「ねぇ、アレって、やっぱりだよね?」

「うん、どう見ても夫婦だね」

「「うん、夫婦だ」」

「どう見ても夫婦、はっきりわかんだ」

「北郷先生は准尉と話す時楽しそうだよね」

「先生って笑うとすごく美人だね〜!」

「黒数さんにしか引き出せない表情だよ」

 

 

 

黒数強夏が関われば、北郷章香はひとりの少女になってしまう、そんな魔法を一つ。

 

これだけでウィッチはお腹いっぱいである。

 

 

 

 

「なるほどね。確かに、アレは仕方ないとしか言えないわね」

 

 

やれやれとばかりに納得する、江藤敏子。

 

親友の顔がああなら、つまりそう言うことだ。

 

信頼に満たされた姿を見せる北郷章香だからこそ、あの男性ウィッチは少なからず信頼できるのだろう。

 

いまはそう納得することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ黒数、これって私が… と、いうより普通のウィッチが履いたらどうなるんだ?」

 

「ハッパさん曰く、魔法力が全部ぶっこ抜かれて気絶するらしい」

 

「え"、そうなのか?」

 

「ああ、このストライ『ク』ユニットは陸海空を兼ね備えている。見ての通り骨組みは陸戦型だがスラスター式だから空も飛べる。もちろん元が陸戦型だから地上も歩けるし、スラスター蒸せば適度に慣性ジャンプを行なって一気に移動距離を稼ぐことも可能だ」

 

「初めて聞いたぞそんなの!?」

 

「コイツはそれだけ可能なユニットなんだ。しかし使用する魔法力の量も半端ない。もし若本が誤って履いた日にはベッドの上で俺に煽られる日が続くだろうな」

 

「それは余計だ!てか、黒数はよくそれだけの魔法力が確保できるよな…」

 

「元々俺自身に多いのもあるが、実のところ最初の一回で魔法力を注ぎ切れば後は半永久的に飛ぶことは可能なんだよ、コレは」

 

「なんだよそれ、反則じゃねーか」

 

「だろ?でもその代わりあらゆるシステムを無くしたからできることだ。自動シールドや制御システム、あと力場フィールドを展開するシステムも無い。終いには魔道エンジンも通常の半分程度だ」

 

「!?」

 

「あと俺の魔法力はストライクユニットを履いた時がかなりヤンチャでな、餌を貰ったイワシの様に跳ねるんだよ。普通のバケツじゃ受け止めきれない。戦闘機に搭載されるような丈夫でデカいガソリンタンクを必要とする。でも順風満帆に魔法力を浸透させてやればストライクユニットもご機嫌になってくれる。そしたらブースト一回だけで後は幾らでも飛べる訳だ」

 

「き、規格外ってこう言うこと言うんだな…」

 

「だがユニットは機械だ。エネルギーを使えば機械は熱を溜める。そうなるとオーバーヒートを起こしてスラスターが止まってしまう。だから適度に()()するなり、誰かに担いでもらうなりして適度に冷却させながらオーバーヒートを起こさせないよう気をつける必要がある。だから半永久的なんだよ」

 

「なるほど。オーバーヒートでも起こして海にでも落ちたら最悪だな…」

 

「あ、いや、それなら、なんとかなるぞ」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

----▽ 以下、松葉杖中の日本人から ▽----

 

 

 

 

 

『って、ええ!?ハッパさんって、シールド使えるんですか!?』

 

『んあ?んな訳ねぇだろ…何言ってんだ?』

 

『いや、でも、溶接時に飛び散ってる火花をシールドで防いでるじゃないですか…?』

 

『んああ、なるほどな。いや、これはオレの魔法じゃないぞ。これは溶接用として開発した小型シールド機だよ。この小型機械に魔女の魔法力を込めれば後は任意でシールドを展開することが可能だ。流石にネウロイのような暴力的な攻撃は無理だがこの程度なら可能だ』

 

『はえー、すっっごい…(恍惚)』

 

『てか元々はネウロイの空襲攻撃を防ぐために開発された自動防衛シールドシステムだなコレは。だが小型機に搭載するには負担が大きすぎる上に今のネウロイはコイツが開発された頃よりも段違いに攻撃力が高い。そもそも第一ネウロイ大戦時に開発された道具だから今となっては時代遅れだな』

 

『いや、でも、スゴいっすね、コレ』

 

『あー、黒数はこんな話知ってるか?これはカールスラントで起きたとある扶桑人とウィッチの話だが…』

 

『?』

 

 

 

 

とある魔女がひとりの兵士を追っかけて地上に降りた。

 

その兵士はシールドの使えない中でネウロイ相手に正面突撃する突撃兵だった。

 

作戦の激烈さを知ったその魔女は魔法力を込めたお守りに『アイナ』と自分の名を刻んでその兵士に渡した。

 

 

__ユア、ヒーロー、シロウ。

__コレをアナタにあげる。

__ワタシの魔法が守るから。

 

 

その兵士は『俺の魔女(めがみ)』と笑いながら喜んでそのお守りを胸の中にしまった。

 

そして兵士は打開するために突撃した。

 

しかしその兵士は戦いの中でネウロイのビームが心臓に刺した。

 

魔女は空からそれを見て悲しみ叫んだ。

 

しかし魔法は奇跡を生む。

 

その兵士は生きていた。

 

魔法力を帯びたお守りが心臓を護ったから。

 

 

__"俺の魔女"が護ったんだ!!

__だから俺は生きる!

__生きてアイナと添い遂げる!!

 

 

その銃槍がネウロイを貫いた。

 

これはカールスラントで起きた魔法の奇跡。

 

地上に降りた女神(まじょ)と、人の身でありながらもネウロイを討ち倒したとある英雄王の誕生である。

 

 

 

 

 

 

『随分とロマンチストな話だがその扶桑人は生身でネウロイ倒したの?とんでもないな』

 

『そっちもかなり驚く出来事だが本命はまた別だ』

 

『そのお守りから派生した小型自動シールド機だろ?』

 

『ああ、そうだ。直ぐに開発された。そのお陰で陸軍の兵士たちはウィッチと共にネウロイ相手に退かずに戦えた。てかコレが無ければ第一ネウロイ大戦時は乗り越えれなかったと言われるほどだ。そもそもまだストライカーユニットが無かったりと高機動戦術が生まれてない頃の話だ。故にドッシリと構える歩兵を守るためは盾が必要だった』

 

『人類の勝利だな。でも今はもう戦いでは使われてないのか。ちょっと寂しいな』

 

『そんなもんだよ戦争は。だから開発者は必要なんだ。で、そんな開発者は溶接用として自動シールド機を利用してる訳さ。まあコレは手動でやってるから手動シールド機だな』

 

『そういやシールドって大体なんでも防ぐじゃないですか?ネウロイのビームだけじゃなくて物理的な攻撃。あと瓦礫とかも。なんだったら前にお世話になった宮藤診療所では料理の油跳ねとして奥方が使っていたりかなり万能なのわかったんですよね』

 

『まあ奇跡だのなんだの言われてる魔法から生み出された力だ。そりゃ万能であってもおかしく無いな。で、それがどうしたんだ?』

 

『いや、俺ちょいと、思いつきまして』

 

『んあ?思いついた??』

 

『シールドって結局は便利な()のようなモノじゃないですか。透けて見える板。暴力的な攻撃はともかく物理的干渉なら大凡なんでも抑えてしまう。それは人の体だって例外じゃない』

 

『まあ家庭でも不審者対策として防犯用にもあるからな。バッテリーと同じで定期的な魔力供給は必要だが…… で、何がしたいんだ?流石にネウロイの突撃程度じゃ効果ないぞ?』

 

『いや、防ぐ用じゃない、()()用だ』

 

『凌ぐ?』

 

『ハッパさん、これさ__』

 

 

 

 

 

 

___海面で足場とか作れない??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽ 以上、松葉杖のバケツ野郎から ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまえ頭良いけど、頭おかしいなよな」

 

「俺たちは所属上の関係で海軍なんだから基本的に海の上で戦うだろ?それを想定した開発なんだからコレで正しいの!」

 

 

真顔なのか判断に困るチベットスナギツネみたいな表情をした若本にツッコミを受けながらも俺はユニットの整備を続ける。

 

 

 

「俺のストライクユニットは適度なブースト管理が必要なんだ。だからブースト回復のために着地だって要求される訳。ウィッチより長く戦えるがウィッチほど長く飛べる訳ではない」

 

「なんか矛盾してる様で、矛盾してないような変な感じだが、でもそれって黒数じゃなくて普通のウィッチにも使えるんじゃないのか?」

 

「キャパシティーの関係上何かしらのリソースを割けばそりゃ搭載できるが、使用回数にも限りはあるし、発動時間も一分弱程度で防水のみの効果しか無い。あくまでも着地目的なんだから飛行ウィッチからしたら余計な要素になり得るぞ」

 

「それもそうか。でも変な発想」

 

「失礼な。そもそもこのシステムの発端はハッパさんではない()()()()の話から参考にしたんだよ」

 

「参考人がいるのか?」

 

「いるよ、ブリタニアに生活力皆無な眼鏡の友人が一人居る。ワインに酔って口が軽かったその友人から積み重ねてきた開発理想論を色々と聞いてな、話が弾んだんだ。それでハッパさんの話で思い出して、ピーンと来た」

 

 

 

てか機密漏洩は流石にビックリした。

 

気を許し過ぎじゃ無いかと思ったが、その時の俺もワインに少し酔って、色々と話をした。

 

それで余計なこと言ってなければ良いが…

 

まあ互いに酔ってたし、恐らくそこら辺の記憶にないだろう。

 

ブリタニアのワインは美味しかった。

 

そのくらいだ。

 

 

 

「そういや何でストライカーユニットじゃなくて『ストライ()ユニット』なんだ??」

 

「さっきも軽く話だが俺の魔法力は()()()に繋ぐ性質をしているんだ」

 

 

 

俺は休憩がてらに飲んでいたコップを手に取って若本の前に持ってくる。

 

まだ少しだけ残っている液体を彼女に見えるように回す。

 

 

「君たちが普段使うストライカーユニットはウィッチの魔法力が必要だ。それでユニット内にあるバケツの中に魔法力を注ぐんだ。ここまで良いね?」

 

「お、おう」

 

「コレをどのように使うのか。例えば注がれた魔法力をかき混ぜだり、泡立てたり、不純物を掬ったり、熱を与えたりと様々だ。それはプロペラを回すため。それは厚みを増やすため。それは精度を上げるため。それは熱量を高めるため。目的を持って魔法力を応用する。ここまでわかるな?」

 

「わ、わかる。そこは学んだ。大丈夫だ」

 

「なら言えることは一つ。俺はこの過程を全て無視して魔法力を直接的に取り扱うんだよ」

 

「過程を…無視する…?」

 

「そう、()()()に魔力行使する様。

つまりストライクってことだ」

 

「!?」

 

「俺に複雑なシステムを必要としない。何故なら全てが自己完結型だから。簡単に言えばストライカーユニットにあるシステムが体の全てに内蔵されてる状態のことだ」

 

「す、全てが、自己完結……」

 

「さて、ここで問題だ、若本」

 

「ぅぇ!?」

 

 

 

俺はコップの中にある水を全て飲む。

 

 

 

「この自己完結型ってのは俺だけじゃない。ちゃんとこの世にいる。もちろんウィッチのことを言うんだが、それは何のウィッチのことを指してるかわかるかな?」

 

「ええ!?え、え、えっと……うーん」

 

 

 

若本は胡座をかいて頭を捻る。

 

その間に俺はユニット内部の最終チェックを行い、全て終わったことを確認すると蓋を閉めてメンテナンスを終わらせる。

 

しばらくして…

 

 

「わかんない…そんな魔女本当にいるの?」

 

「いるよ。その特定のウィッチはまるで体の中に独自のシステムを得てるような状態だ。使い魔が関係してるのもあるが、でも本当に恵まれた体質じゃなければ使い魔が高性能でも成立しない。人間の視力と同じで、人間がそれに当てはまる能力を秘めてる必要がある」

 

「んん、んんー……ダメだ!わからない!」

 

「残念。じゃあ罰ゲームだ。ほれ…」

 

「わわわ!なんだよ急に!?」

 

 

 

俺はとあるカートリッジを投げ渡す。

 

 

 

「それは小型の自動シールド機だよ。さっき話した海面着地専用のシールドだ。適当に魔法力込めてくれ」

 

「な、なんでだよ。自分でやらないのか?」

 

「まず俺の魔法力は性質が違うからな。レギュラー車に軽油を入れた状態にしてもまともに稼働しないからね。だから()()()の然るべき魔女の魔法力が必要だ」

 

「じゃあ、いつもは誰に……あっ」

 

「そこは正解。大体は北郷に頼んでるよ」

 

隙あらば惚気かよ…

 

「なんか言った?」

 

「いやー?別に?とりあえず生命線に関わるなら協力してやらんこともないな。でさ黒数。さっきの問題の正解ってなんだ?その特定のウィッチってのが気になる」

 

 

 

 

俺は一度コップを下げるために立ち上がる。

 

答えを欲する彼女に背を向けながら宇宙に指を刺して、くるくると回す。

 

 

「自己完結型はあくまで俺専用の用語。本当はもっと単純な性質から。それは人の性格や性質が関わり、また秘めた感情に左右された願いからが立つ。そう言うのを…」

 

 

 

 

 

 

__ナイトウィッチって言うんだよ。

 

 

 

 

 

後ろから「あ!!」と声が漏れる。

 

ちゃんとその答えを宇宙から知ったようだ。

 

軽い授業を終えて、俺は格納庫を後にした。

 

 

 

 

つづく

 

 






舞鶴航空隊が受け入れてるだけで周りからしたら異質そのもの。

認めさせるには…そう!ガンダムだ!!

スピンオフ『1937扶桑海事変』は読んだことありますか?

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