GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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申し訳程度の日常回。
でも周りに女性しかいないので大変なんです、色々と。

ではどうぞ


第15話

 

 

「やっぱりズルいわ、その()()()()

 

「?」

 

「なに分からない顔してるのよ!武装召喚の魔法の事よ!ほんと、銃火器を異空間から引き寄せて自由に扱うなんて異常だわ。しかも一度異空間に収納すれば次取り出すときに弾が補充されてるなんて欲張りも良いところよ」

 

「ああ、なるほど。確かにこの固有魔法がイカれてるのはわかる。でも戦争中しか取り柄のない力だ。戦いが無くなればこんな固有魔法はお役目ごめんだ。なら使い所が戦時中しかないこの瞬間だけは贅沢に欲張っても良いだろう。それにこの固有魔法の使用者が俺で良かったと思ってるし」

 

「それはなぜかしら?」

 

エクスウィッチ(アガリを迎えた魔女)には重たいからな」

 

「!」

 

「ウィッチの全盛期は短い。そうなればウィッチもアガリを迎える前に少しでも多くのネウロイを葬ろうと奮起するだろう。しかし俺は思うよ。成熟していない女性がこの力によって戦場の兵器として死に急がせてしまうとしたらそれは悲し過ぎる」

 

「そんなの覚悟の上だわ。力の有無なんて関係ないわよ…」

 

「だな。この世界の女性はとても強い。それでも素敵な青春時代を銃火器に捧げてしまうのは少し悲しいかな。だからこの力の矛先が俺でよかったと思ってる。二十歳を超えてもアガリを迎えない特別性の男性ウィッチだから気負いなく戦える」

 

「でもそれだとあなたは死ぬまでネウロイと戦うって事よ?アガリで解放されることもなく永遠と戦場に縛られたまま。その役割はいつまで続いてしまうことになるのよ?」

 

「わかってるよ。でもこの力が存在するということは誰かがやらなければならない。誰かが何処かでその業を背負って引き金に指を掛けなければならない。それが何億人と居る世界の中で俺だっただけの話だった」

 

「黒数……」

 

 

 

夏の空が終わりそうな季節の空で俺は彼女に意味を教える。

 

今日は陸海を混合した哨戒任務。

 

陸軍と海軍の連携力を高めるためにも今回は穴拭と共にペアを組んでいる。

 

ウラルの広い戦線を二人で見守っていた。

 

 

 

「魔法は人間が生み出した奇跡。それは人類の願いを意味する。この力は俺に願われた。だからこの体に魔法が備わって空を飛ぶようになった。ネウロイを討つために俺という存在がこの世界で出来上がったならこの奇跡(願い)で起こすしかない。世間が望む願那夢(ガンダム)としてネウロイを討つことで示すんだ、ウィッチとなった俺が」

 

「覚悟、決まってるのね」

 

「ああ。舞鶴で決めたよ」

 

「そう」

 

 

 

手の甲に淡く光る『233cost』の数字。

 

それは厄災を落とす度に増えていくカウント。

 

小型はそう簡単に増えない。

それでも数を重ねれば増える。

 

中型以上を落とせば確実にカウントが1増える。

人類を脅かす厄災を討ち払った証。

 

そしてこの『cost(コスト)』コレは恐らく、そうなのだろう。

 

戦えば戦うほど増える。

 

それはつまり戦わなければならない。

 

まるでロールプレイングゲームだ。それとも地下に落とされた人間とモンスターの物語だろうか?やってることは虐殺によって膨れ上がる自己満足(ラブ)に過ぎないが、そこは俺も変わりない。

 

皮肉だな。

コストが高くなればそれだけ嬉しくなるから。

 

 

 

「さて、視線の奥では居てはならないヤツが空を飛んでるみたいだな」

 

「ええ、見えるわ」

 

「どう見てもネウロイだな。あと偵察型の」

 

「なら早めに落とすわよ」

 

 

 

しんみりとしていた空気はウラルの風に乗せて取り払われる。

 

俺と穴拭の視線はまだこちらに気づいていないネウロイに注目して、雲に隠れながら真上を取って武器を握った。

 

 

 

「俺は自動でシールドは展開できないからこの場で援護する。前をよろしく」

 

「ええ。でも私はあなたに出番を与えるつもりはないわよ?」

 

「言うじゃねーか」

 

「誤射だけは気をつけなさい……よっ!」

 

 

 

そう言って扶桑刀を引き抜いた穴拭は偵察型のネウロイに突貫して一気に羽を斬り落とす。

 

ネウロイは接近に気づくも97式の戦闘脚(ユニット)に機種転換してからの活躍が目覚ましい穴拭に敵うはずもない。

 

言葉通り出番は無さそうな俺だが念のためリック・ディアスが扱う『クレイ・バズーカ』を両手に構えながらネウロイを上から追う。

 

 

「落ちなさい!」

 

「キィィィ!」

 

 

しかし援護の必要は無いみたいだ。

 

穴拭はネウロイの両羽を斬り落とすと飛行能力を奪い、最後は胴体を両断する。

 

装甲を散りばめてネウロイは弾けた。

 

 

「ふっ、なんてことないわね」

 

「新型ユニットの性能がネウロイに追いついているんだ。やはり機動力は大事だな」

 

「貴方に言われると痛快するわ」

 

「おいおい、まだあの時の模擬戦を根に持ってるのか?」

 

「さて、それはどうかしら。でも機動性の高さは殲滅力に直結することを貴方との模擬戦で改めて再確認したまでね。やはり速いのは良いことよ」

 

「そうだな。当たらなければどうってことないってセリフがあるくらいだ」

 

「なにそれ?」

 

「そのままの意味だ。とりあえず周辺空域を哨戒……の前に、穴拭」

 

「?」

 

「文字通り手を貸して。そろそろ落ちる。いや落ちても良いけど地上で回復すると上昇の手間が掛かるから手を貸してくれると助かる」

 

「便利なのか不便なのか分からないわね。とりあえず手は貸すわよ」

 

「ありがとう」

 

 

直接触れる必要が無いようにタオルを取り出してぶら下がり用に纏めていたら「それこそ手間でしょ」と言って穴拭から手を取られたのでそのままぶら下がってユニットを冷却させる。

 

そしてほんのりと温かい温度が手に触れる。

戦闘で少し温まった感触。

 

一息ついてぶら下がっていると…

 

 

 

にぎ、にぎ、にぎ、にぎ……

にぎ、にぎ、にぎ、にぎ……

 

 

 

「穴拭…?」

 

 

 

手が少し強めに圧迫される。

 

俺はその原因を見上げる。

 

 

 

「(大きいわね……あと、がっしりしてる…)」

 

 

 

にぎ、にぎ、にぎ、にぎ、にぎぃ…

 

 

 

 

「(これが殿方の手なのかしら……)」

 

 

 

「あ、穴拭、痛い、痛いぞ…!」

 

 

 

必要以上に強く握られている。彼女のイタズラ心かと思ったがそれにしては彼女自身が大人しすぎる。もう少し感情豊かなはずだが。

 

しかし扶桑刀を振り回せるその握力では少し痛いくらいだ。

 

 

 

「…」

 

 

 

より強く、手と手が触れてしまう。

 

こちらの手のひらのよりは一回りほど小さい。

 

そして少しほっそりとしている指先。

 

つまり女性らしさが溢れた穴拭の手のひら。

 

でも手のひらには所々に硬い部分。

 

それは彼女の手のひらに豆があるということ。

 

刀を多く振ってきた努力の証である。

 

それがよくわかった。

 

 

いや、待て。

 

いつから俺は素手フェチになったんだ??

 

やめい、やめい!

そんなやましい目的のためじゃないだろ!

 

手を貸してくれた穴拭に失礼すぎるわ。

 

てか、それより…もっ!!!

 

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い、痛い!」

 

「……」

 

 

 

にぎぎぎ、にぎぎぎっ、にぎぃぃ!

 

 

 

「穴拭、穴拭!穴拭ぃ!ちょっと痛い!」

 

「………え?」

 

 

 

ペチペチと穴拭の手を叩いて知らせる。

 

するとハッとなったのか手の痛みが緩んだ。

 

 

 

「え?あ、ごめ__」

 

 

 

そして彼女はパッと俺の手を離した。

 

 

 

 

「オああああああああ!!??」

 

 

「あああ!?うそぉ!?いや待って!?いや!本当にごめんッ!!黒数ぅぅ!!」

 

 

 

 

 

夕焼け色に染まったウラルの空でひとりの青年とひとりの少女の間抜けな声が広まる。

 

地面の衝突から逃れてなんとか空を飛んだが手を貸してくれる人も世の中には様々なんだと理解した。どっちの意味でも。

 

そしてブンブンと頭を下げて謝る少女。

 

 

必死な表情に染まる彼女の頬は夕日に焼けてほんのりと赤色に。

 

それが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、危うく地面にダイナミックエントリーしてヅダの覚醒技をするところだった哨戒任務を終えてから、数日が経過した。

 

八月が終わり、夏の暑さが終わりを見せる頃になるとネウロイからは散発的ながらも侵攻の回数が増えてきた。

 

タイミングとしてはオペレーション『黒と三連星(ダークメテオライト)』など大層な名前と共に降下爆撃強襲を行ったあの戦闘から。

 

そのため陸軍の第一戦隊と肩を並べるように第十二航空隊はウラル戦線を援護するため出撃する回数が増えている。

 

だんだんと忙しない空の日が続く。

 

そのため出撃のために体力を残すようこちらも軍事を進める必要があり、訓練量を考えながら第十二航空隊と付き合う考えが増えてきた。

 

と、言っても対策はある。

 

これは舞鶴でもやっていたことだが、ストライカーユニットを履かずに肉体を休める日は皆で集まって『フラッシュ暗算』で脳のトレーニングを行っている。こちらは遊び半分なので飲み物や嗜好品を片手にワイワイと楽しむ方向性で楽しんでいる。

 

空を飛ばずとも鍛え方のアプローチを変えることで肉体を休めながら頭脳を鍛えて、判断力を高めさせる訓練。

 

肉体が元気になったら外に出てまた鍛える。

 

そして体が疲れたら同じように頭脳を鍛える。

 

しばらくして疲れが取れたらストレス解放と共に外で元気よく鍛える。

 

体に疲労を感じたらまたフラッシュ暗算。

 

そして元気になったら空を飛ぶ。

 

疲れを癒す。

元気になる。

体が闘争を求める。

アーマードコアの新作ができる。

 

そんな流れを繰り返すだけだ。

 

 

 

「これがおとといのデータで。こっちが先週のデータか。そして前の陸空混合の模擬戦がコッチか。てかもう少し棚が欲しいなオイ」

 

「そうか?なら用意しておこう。しかし… ふふっ、なかなか様になってるぞ、君の机仕事」

 

「民間兵にやらせる姿か?いや、別に仕事と言えるほどでもないけどさ」

 

「そうでもない。軍隊の練度向上は立派な仕事だ。それを記録にまとめるのもな。私はとても助かっているよ。君のお陰で第十二航空隊の彼女達は数値化された成長記録によって戦意が高まっている状態だ」

 

「子供ってのは実感ってやつが鈍い。だから成果は見える形で置いた方がいい。それが脚色されたモノだとしても」

 

「自信を付けてもらうという事だな」

 

「そうだ。理解してくれたらあとは原動力を自分で見つけてくれる。例として若本がそんな感じだな。生意気なところはご愛嬌として意識が高い。坂本の存在が後押してるな」

 

「そうだな。若も坂本も良くやってるよ。もちろん他の子達も。それも君が手がけてからは目に見えるほど成長している」

 

「集まった子が優秀なんだろ」

 

「はっはっは、それもあるな。それとそうだ黒数。おととい辺りに扶桑のお茶を取り寄せたのだが休憩がてら羊羹と合わせて頂くかい?」

 

「マジ?頂く」

 

「ふふっ、では黒数の分も淹れよう」

 

 

北郷からお茶を貰い受けながら、俺は空白の紙に筆算を行って、最後に決められた記入表にウィッチの総合値を纏める。

 

しかしまだこの時代に電卓が無いのが辛い。

 

ソロバンの存在は知ってるけど使い慣れないためこの場合は筆算か暗算した方がまだ早い。そのため俺はアナログを一貫して机に向かっている。まあ小一時間の作業だ。

 

次の午後の訓練まで休憩の片手間にやれると思ったら大した労力じゃない。なのでお茶を頂きながら好きに作業させてもらっている。

 

 

「ふー、美味しいな」

 

「息つける間はついておこう。俺たちが潰れてしまっては後ろの子が迷い果てる」

 

「そうだな。特に君はもう倒れないでくれ。そうでないと私はまた泣くことになる」

 

「その『倒れる』ってのはどっちだい?」

 

「どっちもかな」

 

「その『かな』ってのは、どっちだい?」

 

「北郷本人でもあり、少佐命令でもある」

 

「欲張りさんめ」

 

「それを教えてくれたのは黒数だよ」

 

「やれやれ、年いかぬ生意気な小娘だ」

 

「君と変わらないさ、愉快な皆のお兄さん」

 

「…」

 

「…」

 

「……ぷっ、くくっ!くははは!」

 

「ふふっ! あっはっはっは!」

 

 

 

羊羹の味を交えながら俺は笑い、カラカラと笑う彼女の後味が執務室に響き渡る。

 

いつも通りの空気感で、いつもと変わらぬ会話が俺たちを彩らせてくれる。

 

だって笑えるんだ。

 

お互いに失敗しているから。

 

そしてお互いに救いあったから。

 

俺はブリタニアで。

 

彼女は舞鶴の空で。

 

有情と約束を一つずつ交換した。

 

それからも与え合い、受け止めた。

 

そうして、それぞれが出来ることを示し合うことで、今日も俺と北郷はこの第十二航空隊の居場所で、言葉や時間を交わし合いながら空と宇宙に生きて、活きる。

 

 

 

「よし、これでまとめ終わったな。さて俺は行くよ。あとお茶ご馳走様」

 

「お皿と湯呑みは置いたままで良い。私がまとめて下げておくから」

 

「そうか?ならお願いする。じゃ、また食堂で」

 

「ああ、今日も助かったよ、黒数」

 

 

 

数値化を終えた書類を棚の中に収めて北郷に見送られながら執務室を出る。

 

第十二航空隊のウィッチ達の様子を見るために廊下の奥に消え去った。

 

 

 

 

 

 

「………黒数…」

 

 

少女は閉めた扉の先から視線を外して彼の座っていた椅子と机の上にあるお皿に移す。

 

使っていた机にゆっくりと近づき、湯呑みにコツンと指を触れる。

 

 

 

「君が…この世界の人間だったのなら…」

 

 

 

忘れていた訳ではない。

 

彼は異世界からやって来た、ただの一般市民。

 

そして元の世界に帰るために今を戦っている。

 

もしこの世界が彼の活躍に満足して、この世界に望まれた結果まで行き尽けば、黒数強夏は恐らくこの世界を去って元の場所へ戻ってしまうだろう。

 

でも、それは、それは…

 

今の彼女にとって酷に近い未来の話だ。

 

でも、彼女は彼を引き止めれない。

 

何故なら望まずしてこの世界に身を投じたから。

 

 

 

「…… そうだな。いや、そうだった。私が求めるのは彼の事じゃない。この世界で戦ってくれる英雄とならん英雄が残してくれた時空(そら)のたもとで人類の希望にすることなんだ。その意味での願那夢(ガンダム)…あの人は、もう…そうなってしまった…」

 

 

 

願い、 また()は 夢を、宇宙()で証明する。

 

それが黒数強夏という存在。

 

時空を超えて現れた世界の望み。

 

 

 

「はは、ほんと…………いやだなぁ…」

 

 

 

力なく揺れるポニーテール。

 

こんな弱々しい姿はあまり見せれない。

 

だから、何かでごまかすために彼の使っていた机の上にあるお皿に残っている羊羹の破片を指で摘み上げて、それを口に放り込んでその味を噛み締める。

 

ほんの少しだけ…

ほんの少し、特別な味がする。

 

まるでこの世じゃないような舌触り。

 

現実に訴えられたような香りが渦ます。

 

それは知りたくない後味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えは246だ」

 

「正解です!!」

 

「「「おおー!」」」

 

 

毎度ながら食堂で開かれるフラッシュ暗算。

 

飲み物や手作りの卵焼きを片手に参加する第十二航空隊や第一戦隊のウィッチ達。

 

お遊戯半分、脳トレ半分といったこの催しだが、訓練や読書意外に道楽の少ないご時世なのでフラッシュ暗算は新鮮な経験としてこの扶桑軍前線基地でも受け入れられている。

 

特に対抗心の高いウィッチは単純な暗算勝負だろうとそこに競い合いの精神を持ち込み、隣の回答者に負けじと頭を捻って答えようとする。

 

ちなみにまだプロジェクターや投影機は存在しないので大型の画用紙を使っている。

 

そして、先程間違えなく答えたのが…

 

 

 

「ふむ、なかなか面白いな、これは」

 

「初めてにしてはやるな、ガランド」

 

「章香こそ、随分と慣れてるみたいだ」

 

「いやいや、これでも最初は苦戦した方だぞ」

 

 

 

北郷に親しく話しかけるのは観戦武官としてカールスラントからやって来たアドルフィーネ・ガランド大尉と言う名のとても有名なウィッチだ。カールスラントでは多くのウィッチを率いる部隊長であり、親友の北郷とは階級は違えど立場はほぼ同じである。

 

そして今回、扶桑の前線基地に赴任している理由は宮藤理論によって進化したストライカーユニットを最前線で扱う扶桑軍を観戦するためである。半年前に北郷がブリタニアで戦技研究を目的として駐在したのとほぼ同じ状態だ。

 

しかし肝心な戦闘は最近起きていないため観戦するタイミングが訪れない。なので暇を持て余したガランド大尉はフラッシュ暗算のお遊戯に参加していた。初挑戦とはいえ高い計算力と頭の回転の速さをしっかりと見せつけたのか第十二航空隊からは尊敬の眼差しが飛び交う。

 

 

 

「しかしこうして話すのも久しぶりだな、黒数…ああ、今は准尉だったな?」

 

「いや黒数でいい。お偉いごとの真似をしてるだけで、この階級は飾りだ」

 

「なら私もガランドで良い。ブリタニアの時のように普通に呼んでくれ」

 

「わかった」

 

 

実は彼女とはブリタニアで会っている。

 

当時はガランド大尉も北郷と同じように戦技研究の武官としてカールスラントからブリタニアまでやって来て駐在していた。あと北郷とは親しい関係なのでブリタニア赴任中は良く共に行動していたらしい。それでブリタニアに侵攻してきたネウロイを撃退した事後処理でガランド大尉は北郷と忙しく動いていた。俺はその二人を遠目から見ていたのだがニュータイプばりの感覚で視線に気づいた北郷に見つかり、しかもわざわざ寄って話しかけてくれた。

 

その隣にはガランド大尉もいたので流れで自己紹介をする。

この時が彼女とのファーストコンタクト。

 

するとそのまま三人で昼食を共にした。

彼女とはそんな間柄である。

 

てかさりげなく彼女達と昼食を取ったが正直周りの視線が怖かった。当時はまだ北郷も大尉だったがそれでも高い階級には変わりない。

 

なのでそんな凄いお二方とテーブルを囲っているのは素性の知れないひとりの民間人であり、しかも両手に花。あと誰もが認める美人二人と来た。宮藤博士の使用人って肩書きなかったら本気で周りの視線が怖くて堪らなかったぞアレは…

 

今は准尉だから堂々と食事を共にできるけどあの経験はもう勘弁してほしい。ガランド大尉に苦手意識はないが、苦い記憶が先行しているため失礼ながらもブリタニアのヘリから出てきた彼女にちょっと身構えてしまったのは内緒である。

 

 

 

「しかし出会いとはわからないものだな。数ヶ月前までは宮藤博士の使用人として出会ったはずの君はいつの間にか私達と同じ空を飛び、今はガンダムと言われて人類と世界の希望になっている。本当に何者なんだい?」

 

「色々あったんだよ。俺も空で戦う必要が生まれてしまった。その過程で北郷を助けようと思った。それだけの話だ」

 

「その割には随分と入れ込んでるようだ。ああもちろん章香の事だが、一体どんな魔法を掛けたんだ?」

 

「さて、知らないな。もし本当に魔法があるのなら隠し味に必要な言葉を少々かな…?」

 

「なるほど、ウィッチのシールドでは防げない弾で口説き落とした訳か。だとしたら君から学んで対策する必要があるらしい。カールスラントから遥々やって来て正解だった」

 

「なんだい?もしやこの先を独り身で突き通すつもりか?エクスウィッチは大人しく狙いの良い男に落とされてなよ」

 

「この私を落とせるならな。ああ、もしくは君が私を落とし__」

 

 

 

 

私の黒数に何をしてるのかな?ガランド

 

 

 

いつのまにかガランドの目の前に接近していた北郷。一瞬だけ動揺したガランドの様子を俺は見逃さなかったが、ガランドも北郷の圧力に負けずに飄々とした表情でヤレヤレと手を動かしながら反応する。

 

 

 

「別に。私からは何もしないさ、章香」

 

「そうか?だがもし彼を引き抜きならまずは私を倒してからだな」

 

「それは勘弁願いたいな。そもそも君とサシで勝てるウィッチなんているのか?」

 

「いるよ、そこに一人ね」

 

「……きみ、本当かい?」

 

「俺に関しては性能の暴力だから。純粋な技術力なら北郷に負けてるし、もし同じ土俵なら全部北郷が勝ってるよ。てか北郷を相手にサシで勝てるわけ無いだろう、ガランド」

 

「ああ、まったくだ」

 

「君たちは私をなんだと思っているんだ?」

 

 

 

呆れ顔の北郷。おかげで不穏な空気は一瞬にして取り払われる。もし先ほどの空気が長続きするならばお目目のハイライトが消えた北郷章香が見られたかもしれないが、第十二航空隊の少女達に悪影響なのでエクバらしくキャンセルすることにした。

 

 

 

「ま、とりあえずだガランド。俺は第十二航空隊を離れるつもりは全くない。今の俺は北郷のお陰だから」

 

「わかったわかった、わざわざ言わなくても良いさ。引き裂けれないモノが二人にある。それはそれで収穫だよ。まぁそれは別として…黒数は私と外に来てもらおう」

 

「外?」

 

「私を撃ち落としてくれるんだろ?それなら模擬戦の一つはないとそれは不可能だな」

 

 

 

 

それからフラッシュ暗算の会合を終えるとウラルの同じ空で俺はガランドと模擬戦を行った。

 

空の下では多くのギャラリーと息を呑むような声が所々に。

そして北郷とはまた違った空の強さをガランドから知った。

 

ちなみに約束通り撃ち落としてやったら「想像以上に収穫はあったさ」とガランドは笑う。

 

また俺の勝利に対して北郷は喜ぶべきか、複雑に思うべきか、しばらく微妙な気持ちに襲われてたらしくガランドはこれにもクツクツと笑っていた。

 

模擬戦は本気だったがこれは確信犯だろう。

俺も何故か勝った気がしなかった。

 

 

 

 

 

つづく

 






(北郷のお目目ハイライト消失は)キャンセルだ。

そろそろ展開を大きく進めたいね(まだ一巻の半分)


ではまた

スピンオフ『1937扶桑海事変』は読んだことありますか?

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