GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第20話

 

歩き慣れた舞鶴ならともかく他のところでは目立ってしまう。

 

黒数強夏ってのは何かと有名人だからあまり目立たないようにしたいので、ブリタニアで宮藤一郎にお世話になった頃に貰ったフードを被って到着した佐世保を歩く。

 

積み込みなどを含めて次の出航に2日近くは時間が掛かるようなので今のうちにこの時代の佐世保の観光を楽しんでおくことにした。フード姿でキョロキョロとしすぎるのは不審者なので自然と歩き回ることを心がける。ちょっとした展望台にたどり着いた。

 

 

「しかし随分と大きな陸軍の養成学校だなありゃ。もしや隣の建物も含めてか?滑走路も舞鶴より立派だし、財力というか、軍需設備投資というか、この頃は全てにおいてかなり気合を入ってんなぁ。そもそもこの時代の佐世保は周りと比較するとかなり大きいのか。ただ民需と軍需施設がぐちゃぐちゃに合わさってるところを見ると管理が面倒そうだな。悪質な横流しとか平気でありそう。俺はまだウラル前線みたいにこぢんまりしてるところで良いや」

 

 

佐世保が大きいことは知ってたがこうしてみると立派な建造物ばかりだ。

 

まあ史実だと閉鎖的だった日本と比べてこの世界の扶桑(にほん)は積極的に外交逞しく先進した世界線だから増える量も違うのだろう。

 

なんなら40年ほど先取って電子モニターとか電卓も扶桑で作られてるくらいだ。

 

もしこれに投影機も手に入りやすくなればモニターも利用してフラッシュ暗算で使えないだろうか?今はほとんど大型の画用紙を使って手動でフラッシュ暗算やってるからそういうところもしっかり簡易化したい。

 

 

 

「おお!あった!皿うどん!」

 

 

 

そして御目当てのお店を見つけた。

 

長崎といえばコレだな。

 

佐世保のラーメンも捨てがたいが今日はあんかけにパリパリのうどんが__

 

 

 

「親方ぁ!空から女の子がぁ!」

 

 

 

すると通行人が空に指を刺して声を上げる。

 

周りの住人や通行人と同じく俺もその声に釣られて空を見上げる。

 

すると文字通り空から女の子が落ちて来た。

 

 

「え」

 

 

「ユニットから煙が出てる!」

「おいおい!あのウィッチ!落ちるぞ!」

「だ、誰か!なんとかできないのか!?」

 

 

故障だろうか?わからない。

 

空を飛ぶ小さなウィッチは回らないプロペラを必死に回そうとするが、ストライカーユニットは動かず、街の道路に落ちて行く。

 

しかもちょうど俺の方に来ている。このままじゃ目的のうどん屋さんに突っ込んで店が文字通り潰れてしまう。これは大変だ。

 

 

 

「ウィッチ!シールドを前に展開しろ!!」

 

「!?」

 

 

俺は頭のフードを押さえながら落ちてくるウィッチの方に駆け出し、ビームシールドを展開しながら大声で指示を出す。

 

シールドはストライカーユニットによって自動的に展開されると思うが、ウィッチが任意で発動する方が魔法力の精度が高い、なので落ちてくるウィッチに手動でシールドを展開させようと考えてシールドの展開を促す。

 

そして今からやるのはこちらのシールドとあちらのシールドで衝突させて落下してくるウィッチの勢いを止めること。

 

 

 

「構うな!真っ直ぐ来い!」

 

 

 

俺は前屈みに踏ん張り、ビームシールドを展開した腕をもう片方の手で支えて衝撃に備える形を取ると、コチラに落ちてくるウィッチも理解したのかシールドを正面に展開した。

 

 

そして__互いのシールドがぶつかった。

 

 

 

「ぐぅっ!なんとぉぉお!」

 

「ぅぅううう!!!」

 

 

ズザァァァァ!と佐世保の道路を後進する。

 

道路から避難して横で見守っていた人々を背景の一部として視界から置いて行きながら俺は身体強化で足腰を強固に支える。

 

するとその努力が実ったのか20メートルほど後退りしたところで勢い落ちた。

 

後退りが止まったタイミングで俺はビームシールドで真横に薙ぎ払い、ウィッチのシールドを弾いて消滅させると、最後に両手を広げて少女を受け止めた。

 

二回りほど小さなその体を腕の中に納めながらその場で尻餅をついて受け止める。

 

最後に地面に落ちたストライカーユニットはプスッと小さな煙を上げて静止した。

 

 

__助かった。

 

 

街の誰かが呟く。

 

この一連を見ていた街の人々達はその事実に直面すると大声を上げて喜んでいた。

 

 

 

「ぅ、ぅ…」

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

 

体が震えている。

 

飛行中にどこか痛んだのか?

 

 

 

お……お……

 

「お?」

 

 

 

 

 

そして…

 

そのウィッチは俺の肩に手を伸ばして…

 

 

 

 

 

「おなか、すい、た…」

 

 

「……………は?」

 

 

 

 

 

ウィッチは空腹によって魔力切れを起こす。

 

 

別にそう珍しくないことだが…

 

 

少し呆れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと、ひどいですからね!訓練で成果を出せなかったから昼はメシ抜きなんて魔力効率落とします!そんなの空を飛ぶウィッチに死ねって言ってるのと同じですよお兄さん!」

 

「わかった、わかったから、少しは落ち着いて食え?もったいなく麺をポロポロこぼしてるぞウィッチのお嬢ちゃん」

 

「違います!黒田那佳(くろだくにか)です!お嬢ちゃんじゃありません!あとお嬢ってのあまり好きじゃないんです」

 

「そうかい。じゃあ黒田__」

 

「那佳で良いです。苗字より名前で呼ばれる方が好きです。あとこれ持ち帰れますか?」

 

「この娘マジで逞しいなぁ?あと皿うどん持ち帰りはできないだろ。持ち帰れても麺だけだと思うが」

 

「それでも構いません!パリパリならそのままでもいけますから」

 

「えええ……あー、一応聞くけど、店員さん?」

 

 

厨房に尋ねて…

 

 

「持ち帰りか?お金払ってくれるなら麺の持ち帰りくらいは別に構わんよ」

 

 

と、返ってきたので…

 

 

 

「みたいです!」

 

「お、そうだな」

 

「はい!お兄さん!こちらも奢っていただきありがとうございます!」

 

「俺はまだ何も言ってないだるるぉぉぉ??」

 

 

 

さて、この逞しい小娘こと改め黒田那佳(くろだくにか)は佐世保にある扶桑皇国陸軍の明野飛行学校に所属している飛行ウィッチだ。

 

まず街に落下して来た原因は長距離飛行訓練中に腹ペコを起こして魔力切れ、そのまま落下したパターンだ。

 

俺が落下を受け止めたあとは訓練中の仲間が遅れてやってきて説明した。

 

今は学校に戻って事情説明と救助のために手配してくれている。

 

その間にこの腹ペコ娘の空腹がかわいそうになった事と、袖を掴んで「助かりましたでもお腹すいたお兄さん何かないですかなんでも良いです何か食べたいですけど節約しなければならない受け止めたお兄さんわたしの空腹も受け止めてほしいだから奢ってください許してくださいなんでもしますから」とあまりのマシンガントークに別の意味で「ん?」の状態になった。

 

とりあえず助けを待ってる間に一杯奢りが決定した。

 

それで調子に乗って追加で三杯のおかわりは一旦静止して、半分くらい食べて落ち着いた頃に彼女から飛行中の落下共々事情を尋ねて、今に至る。

 

あとまだ9歳だというのに、かなり逞しい。

 

坂本美緒とは正反対だ。

 

そんな感じに残りの一口を食べていると

 

 

 

「黒田伍長ォォオ!!」

 

「!?」

 

 

 

すると大声がした。

 

店の入り口を見る。

 

養成学校の教官だろうか?

 

怖そうな人がやってきた。

 

……え、男性??

 

教官はウィッチじゃない??

 

 

 

「貴様はこんなところで道草を食ってたのか!しかも街に落下だと!?被害を出したらどうなっていたと思うか貴様は!!」

 

「ぁ、ご、ごめんなさ…」

 

「謝って済むものかぁ!その体たらく!叩き直してやるわい!!」

 

「!?」

 

 

 

少女に振り下ろされようとする大人の大腕。

 

それは紛れもなく体罰。

 

小さな身体に降り注ごうとするソレは見ているだけで痛々しい出来事なのがわかる。

 

周りの人間はそれがなんなのか理解している。

 

だから被る痛みを視覚から感じ取らないよう目を伏せて、逸らして、少女は迫りくる痛みに耐えようと恐怖に閉じこもり……俺は手を伸ばして受け止めた。

 

 

 

「おい、ウィッチに何しようとした?」

 

「あん??なんだ貴様は__」

 

何しようとしたかと聞いているんだよ?

 

「ッ!?」

 

 

 

俺は周りを見てここじゃ迷惑になることを考えると既に食べ終わったお皿の横に二人分の代金を置いて席を立ち上がり「こっちだ」と佐世保の空気よりも冷たい声でその男の腕を強引に引きずり店の外に誘導した。

 

 

 

「貴様…!離せ!!」

 

「…」

 

 

 

バッ!と払われる。

 

 

 

「貴様!このオレを誰だと思っている!扶桑皇国軍所属の魔女候補生教官だぞ!一般人ごときが手を掴もうとは世間知らずの空け者もいたもんだな!貴様!名を名乗れ!」

 

「奇遇だな、実は俺も__」

 

 

 

同じだよ、と言い返そうとして、店から魔女候補生の黒田那佳が慌てて出てくると俺と男の間に割って入る。

 

 

 

「きょ、教官!待ってください!そこのお兄さんはただ!」

 

「那佳!貴様は黙っておけ!それから帰ったら今日の失態と道草分は五倍にして死ぬまでしごいてやるからな?」

 

「っ!?」

 

「代理だからと言って甘いと思ったか?そんなんだからウィッチは精神的に弱いんだ。次々と落ちて、特に陸は落ちる始末!…… ふん!ネウロイに脅かされる扶桑皇国と扶桑人の痛みを覚えるためだ、シゴキが終わるまでまともに夜飯を食べれると思わないことだな?黒田伍長ぉ?」

 

「ぁ、ぅ……ぅ……」

 

 

 

なんだコイツ?何様だ??

 

てかコレが扶桑ウィッチの教官?

 

随分とペラペラ喋ってくれるから主任ではない代理ってのはわかったが… いや、それにしてもおかしいだろ?

 

普通ならウィッチはウィッチの経験があるエクスウィッチが育てる決まりだ。魔法力の理解が無ければ育てるにもどこかで躓くからな。だからウィッチとしての経験者でなければ務まらない役割だ。

 

しかし代理とは言え、魔法力も持たないウィッチの理解も足らないだろう口うるさいだけの人間が魔女候補生の育成を行っている?

 

人手不足か?佐世保のようなでかい所で?

そりゃ人手不足はわかるさ。

 

舞鶴での滞在中に起きたはぐれネウロイの件と良い、人類側の疲弊と供給不足の一端を目の当たりにしている。しかし早急な戦力強化が求められてる現状であり、使えるものはなんでも使えるようにしたいのが人類側。故になりふり構わない状態もところどころ起きている。

 

それが人手不足に直結して……こんな(俺からしたら)時代遅れな奴が出てくるのか。

 

 

あー、これはだめだ。

 

全くダメだ。

 

ウィッチに対する理解がなってない。

 

そもそも…

 

まだ子供だろ??

 

 

 

「おい教官紛い、やめろ。それ以上は手を上げるな。俺の時代ならパワハラ案件やぞ?」

 

「あ?貴様まだいたのか。それとも軍属の者だと言うのか?なら軍服はどうした!それを羽織ってから名乗り出ろ!」

 

「面倒だから普段は脱いでるよ。戦いとかでは重たいからな」

 

「なんだ貴様、兵士か?あん?愚連隊の雑兵か?弾除けごときが一丁前に楯突くか」

 

「!」

 

「お、お兄さん!も、もう、いいです!わ、わたしは、だ、大丈夫です、か…ら……」

 

 

黒田はこちらに振り向き、震える体を笑顔で押さえつけながら俺を宥めようとする。

 

精神力があるから出来ること。

そして精神力を持っているから潰れやすい。

 

彼女は続ける。

 

 

 

「皿うどん、ありがとうございました。とても美味しかったです。あとお兄さんの暖かくて嬉しかったです。わたしを受け止めてくれた魔法力からそう伝わって…」

 

 

 

いまの彼女は……らしくない。

 

ほんの数十分程度の付き合い。

 

でも、わかる。

 

これは黒田那佳じゃない。

 

震えながら、耐えながら、精一杯の感謝を伝える彼女は、痛々しくて、仕方ない。

 

 

「…」

 

 

……北郷、ごめん。

 

俺にも譲れない事があるわ。

 

これはその一つかな。

 

 

 

「なあ、教官代理。俺だけを貶すならまだ構わないよ。でも先ほどの聞き間違えじゃなければ俺含めて愚連隊と言ってのけたよな?」

 

「ああ?ああ、言ったな。貴様のような恥知らずを抱える部隊なんざたかが知れてると言うことだ。なるほど、少しは己を理解する頭はあるか、結構なことだ」

 

 

 

いや、ほんと…時代遡れば絵に描いたような光景があるんだな。

 

小説やドラマだけかと思ったけど、こうも時代の悪さが目立つと平成生まれの人間からしたら失笑モノだな。

 

 

 

「なんだ?なに勝手に一人で完結した顔してやがる?」

 

「ああ、悪い、こっちの話。でも確かに俺も素行はそこまでいいものじゃないし、軍規のぐノ字も触れようとしない愚者なのは充分承知の上だよ。貴方の言う通りだ」

 

「そうかそうか。それは良かった。で?その愚者極まった貴様は何が言いたい?」

 

「名乗り出ろ、だったな…?なら…その驕りを買って名乗ってやるよ人間のクズがこの野郎」

 

「く、クズ!?貴様ッッッ!!」

 

 

 

普通なら全く名乗らない。

 

名乗る機会はそうないから。

 

てか、それ以前に名乗ろうとは思わない。

 

階級なんかにこだわらない紛い物故に、それをかざそうとも思わないからだ。

 

しかし今回はただでは済まされない。

コイツは言った。

俺達を「愚連隊」とひと蹴りした。

 

 

__ユルセナイヨナ?

 

 

被っていたフードを外して、その男を見る。

 

 

 

____ 扶 桑 皇 国 海 軍

____ 第 十 二 航 空 隊 北 郷 部 隊

____ 副 隊 長 黒 数 強 夏、 准 尉

 

 

 

またの名は…

 

 

 

 

 

 

機 動 戦 士 願 那 夢(きどうせんしガンダム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………は…?」

 

「ぇ…?」

 

 

大きな者の声。

 

小さな者の声。

 

 

それから街の人たちも声も交えた。

 

 

__その顔は良く知っている。

 

__その姿は良く届いている。

 

__その名は良く聞いている。

 

 

ここにいる多くの者が証人。

 

あとシャッターの音も聞こえた。

 

それほどに注目が集まっている証拠。

 

だからここにいる黒数強夏が真実である事を告げた。

 

 

この人は___ホンモノだ。

 

 

 

 

「き、き、北郷…部隊…??は、はは、な、何を言ってんだ??そ、そんな奴が、扶桑にいる訳が…」

 

 

「ビームフラッグ」

 

 

 

目の前に手をかかげる。

 

F91で登場したベルガ・ギロスの武装でありビームシールドとは違ってビームフラッグは貴族の紋章を粒子で描くことができる。俺はビームシールドの応用で指先から団扇くらいのサイズで展開する。あまり慣れない部位でやると魔法力の余波でチリチリと痛いから腕以外で使いたくないが、ほんの数秒ならと内心強がる。

 

ちなみにいま見せてるのは北郷の家名が持つ紋章だ。いまの扶桑は戦国時代とは違って家名の紋章をあまり表には出さないが、それでも北郷家にも飾られていた紋章は存在してた。それで過去にビームフラッグの練習を行うため何かそれらしい家名の紋章は無いかと考えて北郷から家の紋章を教えてもらいビームシールドの応用で練習したことがある。

 

まあ実戦的な武装じゃないので全く使ってないし、あと別の理由があってあまり人目の付くところで使いたくないが、今回は分かりやすくするためにも指先から俺が男性ウィッチであることを証明するべくビームフラッグを展開した。

 

 

 

「ま、魔法力ぅぅ!?ま、まさか、お前は、本当に男性ウィッチ…!?」

 

「ああ、そうだよ。扶桑が良く知るただひとりの男性ウィッチだ。しかも愚連隊と言われてる第十二航空隊のウィッチらしいな?」

 

「そ、それ、は…!」

 

「別に俺の事はなんとでも言えば良い。後ろ指刺されたって構わないさ。だけどな?俺や北郷の大事な教え子達をッ!その言葉で汚したお前を俺は絶ッッッ対に許せない!!」

 

 

ビームフラッグを握りしめて魔法力が拡散する。

 

頬を撫でる程度の風圧が広まるだけ。

 

そこに害はない。

 

だが魔法を扱っている人間ってだけでそれは恐ろしい対象に過ぎず、目の前の男は悲鳴を上げながら、一歩、二歩、怯えながら後ろに下がり男は誰かにぶつかった。

 

 

 

「何をやっている?」

 

「ひぃ!?」

 

 

 

男がぶつかった相手。

 

それはひとりの女性。

もしくは……ウィッチだ。

 

微かな魔法力からそう感じ取れる。

あと松葉杖をしている。病人か?

 

 

「久しいわね、教官代理」

 

「なっ!なぜ、貴方が、ここに居る!?」

 

「そうね。ウィッチの教育に対して別の意味で力が入ってると聞いたから、かしら?なので無理やり早退して様子を見にきたの。そしたらまぁ聞いた話以上の鞭撻で随分と行き過ぎた正当化によって虐待に走ってるとウィッチから聞いたわ…………このっ!大馬鹿ものがァァァ!!」

 

「ぐぅぎゃぁああァァ!!!」

 

 

 

ウィッチから放たれた渾身の右ストレートが教官代理の頬に捩じ込まれる。

 

戦国アストレイの粒子発勁(はっけい)でも入ったかのような威力だ。

 

 

「どうせ!海に劣ることが陸にとって大恥だと言い!これも全て陸のためだと小さな子供に正当化を行ったその愚かさ!指導者にあるまじき鞭撻!原石達を磨くこともできない者にウィッチを育てる資格など無い!!…… 貴方は然るべき処置を取ります、覚悟しておきなさい!」

 

「ぅ、ぅ、ぅぇ、ぁが…」

 

「まったく、人手不足とはいえ偏った人格者を送ってくる陸軍上層部も呆れたわね…私がちゃんと選別するべきだったわ」

 

「くぅーん…」ちーん

 

 

 

「…………こわっ」

 

 

 

俺の横で冷たい地面を温めるような熱いキスをしている教官代理の男。

 

あまりにも強烈な一撃で俺の怒りと同時に佐世保の冬風を吹き飛ばしたように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて場所は移して、明野飛行学校にいる。

 

理由は簡単。

 

事情聴取と今回のお礼がしたいらしい。

 

てかこの人、松葉杖なのに無理するなぁ…

 

それから色々話をした。

 

黒田那佳の事、彼女の墜落を受け止めた事、皿うどんを奢ってあげた事、教官代理が頭陸軍でウィッチの育成に相応しくなかった事、多少の愚痴も交えながら待合室でお茶を飲んでお話をしていた。

 

 

 

「飛行練習中にネウロイと出会ったとはいえそのままエクスウィッチが戦うなんて貴方こそ随分と無茶をしますね…」

 

「訓練生を逃すためよ。あと増援を呼んでもらうために私が一人で残ったの。時間稼ぎが必要だからね。流石に訓練用ユニットと訓練用の銃じゃ限界はあったけれど私は昔から悪運が強いウィッチでね、死にはしなかったわ」

 

「もし自己犠牲だけで働いてたら同じ教育者として非難してましたよ、ジェンコ教官」

 

「ジ()ンコじゃなくてこっちではジ()ンコと呼んで欲しいわね。私は扶桑が好きなの。それと自己犠牲なんてのはヒヨッコのあの子達にはまだ早いわ。せめて一日中片足で飛べるくらいにはならないと自己犠牲なんて大役は任せられないわ」

 

 

この人はジュンコ・ジェンコ。

 

扶桑人とブリタニア人のハーフであるが30年前に扶桑へ移住した後、陸軍に所属すると欧州に派兵しながらしばらく研鑽を積み、第一次ネウロイ大戦終期に参加する。

 

ネウロイから領土の奪回を行うために編成された人類側のレジスタンス『神聖軍リガ・ミリティア』の中隊長を務めながら航空ウィッチの初動機として転換を完了させた。ここからが鉄の箒の始まった。

 

そして領土内を徘徊する残党ネウロイの殲滅に成功すると神聖軍リガ・ミリティアは解散したのたがジュンコさんを含めて初期組の殆どが生き残ったらしい。第一次を生き残ったマジもんの英雄じゃねーかオイ。

 

それからアガリを迎えながらも10年近く駐屯して国力回復に力を尽くす。情勢が整うと役割を終えて扶桑に帰還してそのまま退役も考えたが佐世保に駐留すると魔女候補生の教官として鞭撻を振るう事を決めて今は明野飛行学校で働いている。

 

あと名前もそうだが見た目がまんまVガンダムの登場人物である『ジュンコ・ジェンコ』なのは大変ツッコミ所さん。ちなみに扶桑での登録名義は純子(じゅんこ)らしい。

 

まあコチラにも八羽(ハッパ)さんがいるのでガンダムに類似した人間が居てもガンダムバーサスしてる俺を筆頭にこの世界ではそんなもんだと深く考えず彼女と自己紹介を交わした。

 

あと普通に色々話が聞きてぇ…

神聖軍リガ・ミリティアって何さ。

北郷は知ってるだろうか?

 

てか戦争終期とはいえ第一次ネウロイ大戦の現役兵だった訳だし何か聞けるならぜひ経験にしたい。マジで色々話伺いたい。

 

多分シュラク隊って小隊があるんだろうな。

 

ちなみにジュンコさんは既婚者であり原作と真逆で幸せそうに生きている。

 

数週間前まで死にそうになったらしいけど。

 

てか30代だろうと飛ぶのか…

 

まあアガリ迎えても体から魔法力が消えない限りはシールドの強度が紙切れになるだけでユニットを履いても元気に飛べるらしい。

 

あとユニットじゃなかろうともごく稀にだが体の調子が良いとか言って箒で空を飛んで買い物に出るご婦人方を見かけることある。てかブリタニアで見かけたことあるわ。この時代の人間は随分とたくましいな。

 

ちなみにアガリで魔法力が握り拳程度になったエクスウィッチ(ご婦人方)でもその日飛べる条件は()()()()()()時に注がれると満たされて頗る調子が良くなって飛べる時があるらしい。

愛を注ぐ…??

 

 

あ、ふーん…(察し)

 

 

 

 

「それで、あの子は元気かしら?」

 

「あの子?」

 

「"穴吹智子"よ。新聞を拝見したけど黒数准尉は彼女と同じウラル戦線で戦ってるみたいね」

 

「ええ、同じ混合部隊ですが…」

 

「彼女はココ、佐世保の明野飛行学校の卒業生よ」

 

「ふぁ!?」

 

 

佐世保はこんなに広いのに世界狭くね??

……いや、そうじゃないか。

 

佐世保って陸軍ウィッチを輩出する有名どころだから穴吹が佐世保にある育成学校の卒業生でもおかしくないのか。そうなると他にもいそうだな。

 

なるほどね、生まれた時からカステラとか麺とか魚とか美味しそうなの食べながら育ってきたのか。羨ましいな。

 

とりあえず第十二航空隊に長崎のお土産買って帰るか。無難でカステラで良いかな?

 

すると待合室の扉がガチャ!と勢いよく開いた。

 

 

「あ、あの!失礼します!」

 

「何かしら?」

「黒田か、どうした?」

 

「那佳って呼んでください!黒田って苗字は嫌なんです!」

 

「佐世保のウィッチは苗字嫌い多いな!?」

 

「それで?どうしたのかしら?」

 

「あ、はい!あの黒数さん!」

 

「お、おう」

 

 

目の前にトテトテと歩く。

 

ほんの少しモジモジとしながら頭を下げた。

 

 

「今日はなんか色々たくさんありがとうございました!」

 

「随分と大雑把だな…まあ、気にするな」

 

 

 

ヒソヒソ

 

「ねぇねぇ、あの人って本物なの?」

「扶桑の英雄ってほんと?本当に??」

「ええ見たのよ!空から受け止めた所を!」

「新聞の通りだ…本物だよ…!」

「すごい……人類の願那夢だ……」

 

ヒソヒソ

 

 

扉の隙間には数名ほどのウィッチ達。

 

小さな兵士が俺を見ようと集まっている。

 

 

「あー!勝手に着いてきて!」

 

 

すると黒田那佳は覗き見のウィッチに叫ぶとウィッチ達は「やばい!」「逃げろ!」「見つかった!」とそそくさ退散する。

 

黒田那佳も待合室を出ると駆け出した。

 

 

「ごめんなさいね、元気なのは美点なんだけど」

 

「構いませんよ。俺も慣れないとならないことですから」

 

「それは良いことね。私も昔はあんな感じだったもの…」

 

 

そう言ってお茶を飲み、遠い目をする。

 

 

「向けられる視線の数ほど期待されている。それは重たかったわ。死んではならない。絶ってはならない。数だけプレッシャーだった。でも人類に希望を与えるため私はウィッチとして長く生きて今も生きている」

 

「…」

 

「戦争は命を支払う。でも全て投じて捨てるためじゃ無い。だから私は教官してる。兵士を死なせるためじゃない。生き残ってもらい、知ってもらいたいから」

 

「むかし、貴方は、そうだったんですね」

 

「ええ。でも今は違う。竹とんぼが鉄のプロペラになった時代よ。戦争は変わり果てた。わたしに出来ることは死なないために必要な基礎訓練だけ。飛ぶ。落ちない。死なない。その最初の飛ぶを失わせぬよう固める。今のわたしはそれしか出来ない。もう… 遠の昔にアガリを迎えたこんな体では戦えないから…」

 

「…」

 

「黒数准尉、私は『飛ぶ』を教えます。同じ教育者として、希望となる願那夢の貴方には空を任せて良いですか?」

 

 

 

それは願那夢に対する希望。

 

しかしそれ以上に…

 

黒数強夏に対する期待だった。

 

 

 

「願那夢は宇宙(そら)のように広いです。世界の(そら)を埋めるほどだから届きます。でも黒数強夏は人間ですから両手を広げても届く範囲は決まってます」

 

「…」

 

「ジュンコ教官、もし黒数強夏にその言葉を送るとしたら、人間の俺は答えます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__第十二航空隊は『そら』を飛び続けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を送り、佐世保から船が出る。

 

 

いつだって願那夢は人の希望を背負う。

 

 

黒数強夏はそのために、機動する戦士。

 

 

甲板から見渡す。

 

 

多くの人を、空を飛ぶウィッチを。

 

 

そこにはまだ飛べる空がある。

 

 

しかしネウロイはこれを脅かす。

 

 

これから残らない可能性だってある。

 

 

そうさせないために、ウィッチは戦う。

 

 

 

「………ビームフラッグ」

 

 

指先から旗が飛び出る。

 

小さなビームの光。

 

それはベルガ・ギロスの武装。

 

そして、コイツは…

 

 

 

「『300cost』か…」

 

 

 

魔法力で光、手の甲を見る。

 

そこには『300』の数字が淡く光る。

 

舞鶴で翔鶴を襲ったネウロイを撃ち落とした時にちょうど『300』に到達した。

 

そうして解禁された。

 

 

 

「………」

 

 

 

出来る事、やれることが格段に広まった。

 

GUNDAM VERSUSの力で多くを示せるはず。

 

しかし慢心はできない。

 

これは願那夢だけじゃない。

 

黒数強夏自身がもっと強くなる必要がある。

 

だからまだ終わらない。

 

これからが始まりだ。

 

もっと大変になるだろうから。

 

 

 

「帰るぞ、第十二航空隊に」

 

 

 

小さくなる扶桑島を背中で見送る。

 

年明けが迫ろうとしていた。

 

 

 

 

つづく






ノーブルウィッチーズはあまり知らないけど人間物語と聞いてガンダムを連想した。
てか戦争の時点でガンダムか。


それより 300コスト ですよ。
とうとうここまで来ちゃったよ。
一気にインフレ進んで環境やばいことなる…

圧倒的ネウロイ絶対殺すマンになった黒数に狙われるネウロイくん可哀そう。


ではまた
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