GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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今回は少し短いぞ



第22話

 

 

 

 

「撤退だー!急げぇー!」

「重たすぎる物はさっさと置いていけ!」

「ウィッチが抑えてる間に!早くっ!」

「負傷者が出た!こっちに医療班は!?」

「ネウロイッ!貴様は…!オレのっ!!」

 

 

真冬を超えた二月の空、ほんの少し寒さが落ち着いたこの戦場でハイパー・バズーカを片腕に担ぎ、戦線を放棄して退路に駆け込む兵たちを俺は言葉なく見下ろす。視線を前に移せば人類を恐怖に貶める黒い群衆がうじゃうじゃと列を作っている。それは地上だけではなく空からもその物量で人類を追い込んでいた。

 

春の陽気などそっちのけだ。

 

 

「北郷部隊がネウロイの侵攻を抑えてる間に俺たちは退路確保に勤しむ。いつも通り俺が先行するから三人は遅れて叩け!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 

ストライクユニットからエーテル化した魔法力を放ちながらブーストダッシュ行い、ネウロイの真上を取って先制攻撃を仕掛ける。

 

空からの強襲に気づいた時にはすでに遅く、強力な武装によって半壊したネウロイは再生する暇もなく竹井達の追撃がトドメとなり、バラバラに砕け散る。

 

俺は速度を少し落としながら後方の撃破を視認すると一呼吸置いてまた速度を上げて空を先行する。撤退する友軍のため退路確保に貢献しながら追い込み漁と化したネウロイを次々と撃ち落とし、空の希望と言われる願那夢は今日も健在だろうか。

 

 

それでも、俺は顔を顰める。

 

 

「残りコストの概念がない、敵機か…」

 

 

Vガンダムには「終わりのないディフェンスでも良いよ」って歌詞が存在するが…

 

いや全然良くないと思う。

正直「終われよ」って返したくなる。

 

 

更に言えば今は2月。

 

12月から1月の終わり頃まではネウロイも落ち着いてたが、二月の陽気を感じるようになってからは一気にネウロイが動き出していた。

 

軍も滞りなく防衛を築いていた筈だがそれでも疲れ知らずの物量相手に人的資源が課題となる人類側が凌ぎ続けれる訳もなく、既に疲弊し尽くしているウラル前線では年明け程度の時間だけでは軍の疲労を拭うことなど不可能であり消耗の速度は年明けでも早まるばかり。

 

そりゃ撤退にもなりますわ…

 

しかしそんな呟き、ネウロイが慈悲など与えるわけもなく次々と奴らは現れる。

 

 

 

「数が多いな……ビーム兵器、使うか?」

 

 

 

早速切り札を考えてしまう。

 

まだ400に届かない300コストのパワーとはいえ、使う武装がビーム兵器なら話が変わる。

 

回避困難な弾速や、実弾とはまた違う貫通力の高さ、これらが時代を変えてくれる。

 

原作の宇宙世紀だってそうだ。

 

 

「でも、ダメだな」

 

 

俺は使わない。

 

使うことは許されない。

 

自分一人だけの責任ならともかく、第十二航空隊に所属してる以上はお世話になっている組織に、特に仲間に余計な影響を与えてしまう可能性が高いため使うのは危険だと判断する。

 

なにより『武装召喚』なんて魔力が枯渇しない限り半永久的に武装を取り出せるチート能力で、これを固有能力って事で誤魔化せるにも限度がある。

 

これらは『願那夢』ってプロパガンダがあるからまだ許されている話であり、あと逸話として語られる『ウィザード』の疑惑が後押しているから常識以上の壊れ具合もそれなりに軍から納得されている。まあ厄災を払いし力だから「とりあえずなんでも構わないネウロイ共を倒してくれ!」って事で必死な軍だから深くは追求されてない。あと北郷章香のバックもあるから世間的にも信頼に置ける人物として扱われている。そう考えると紙一重なんだよな俺の立ち位置。

 

 

だがそんな紙一重が突如、ネウロイと同じビーム兵器を取り出して人目が付きやすい戦場でぶっ放せば確実に厄介なことになる。

 

最悪なビジョンとしてまず俺はネウロイ疑惑などで拘束されてしまい、次に北郷文香が疑われてしまう。

 

あとこれは考え過ぎかもしれないが黒数強夏(イレギュラー)から学び受けた半年で急激に成長した第十二航空隊のウィッチは恐らくまともな扱いを受けれないかもしれない。

 

またお隣さん故に共同戦線を組んでいた陸軍の第一戦隊も共犯者にされたらたまったもんじゃない。その他は何が何でも俺を暴こうとするために利用されてしまう。

 

だからややこしい話を持ち込みたくない。

 

 

これが俺一人だけなら、まだいい。

 

組織に所属せず、一人縛られない場所で、誰にも干渉されないところで、自由にこの力を振えるなら、俺だけが危険人物だ。

 

しかし今は一人じゃない。

 

だからビーム兵器はタブーだ。

 

 

 

「っ、弱気になってる場合じゃないな…」

 

 

ああ、そうとも。

 

何のための高速戦闘技術だ。

 

まだビーム兵器も平均化されてない一年戦争では実弾攻撃を主軸に戦っていたジョニー・ライデンと同じ一撃離脱を参考にして第十二航空隊と学んでいたはずだ。

 

もちろん教材(ガンダム)だけが全てじゃない。

 

現役で戦う兵士達(ウィッチ)と共に学んだ。

 

北郷からは空戦の基本を。

 

ルーデルからは投下攻撃の意味を。

 

ガランドからはユニットの活かし方を。

 

ああもちろん他にもまだいる。

 

カールスラントから、オストマルクから、オラーシャから、あらゆるところから、ウラルまで派兵としてやってきたウィッチ達から学び、学ばせ、学び合った。

 

学ぶことに熱意を持つGダイバーのレオス・アロイと同じように知識を深めた。

 

だから弱気になるな。

 

知識力は戦闘力に直結する。

 

ビーム兵器が使えないからなんだ。

 

制限された戦いでもそのやり方さえ考えれば幾らでも戦える。

 

そうしてきたのはいつだって人類だ。

 

心のないネウロイなんかじゃない。

 

 

 

「地中からネウロイが来たぞぉぉ!」

「なっ!?デ、デカいっ!?」

「り、陸のウィッチは前に!」

「だめだ!戦車の進路を変えろ!!」

「くそ!これは間に合わん!!」

 

 

兵達を分断するつもりなのか、地中から四メートルはあるだろう海坊主の形をしたネウロイが姿を現すと、赤い目が兵士を見下ろす。

 

地を這う生き物からしたらそれは恐怖だ。

 

 

 

「黒数准尉!」

 

「三人は兵の前に出てシールド!」

 

 

俺は指示を出しながらヒートホークを投擲してネウロイの頭部にぶつけ、注意を引きながら次にヒートサーベルを取り出す。

 

その間に竹井達はシールドを展開しながら足の止まった兵士達を守る体制に入り、その間に俺は一気に接近してネウロイの赤く光る部分をヒートサーベルで強引に突き刺した。

 

そして突き刺したヒートサーベルを鉄棒のように固定すると俺は海坊主ネウロイに張りつきながら機関銃のゼロ距離射撃で装甲を砕く。

 

だが…

 

 

 

「(手応えが……感じられ無い?)」

 

 

 

装甲はなんとか銃弾で砕いている。

 

内側にもダメージは与えている。

 

しかし違和感だ。

 

何か、つっかえてるような…

そんな、感覚が…

 

もしくは、空っぽを殴ってるような…??

 

 

 

「キィィィ!!」

 

「ッ!?このォォ!!」

 

 

苦し紛れなビームが放たれる瞬間、俺はビームシールドを展開してネウロイの赤く光る銃口に押し付けた。

 

放出させるはずだったビームはネウロイの内部に押し込まれてしまい、ビームはネウロイの中身で乱反射すると高熱部分に触れたのか真っ赤に爆光した。

 

ネウロイは悲鳴をあげる。

 

 

 

「やはり内側に"ナニカ"あるか…!」

 

 

 

突き刺したままのヒートサーベルを逆手でつかみ直して一気に振りかぶり、装甲を砕く勢いで溶断しながらネウロイをこじ開ける。

 

 

その時、何かが干渉した。

 

 

 

 

__パキン!!

 

 

 

 

 

弾け飛ぶ音。

 

それはネウロイの装甲の音なのか?

 

わからない。

 

だが、今ので何か手応えはあった。

 

 

 

「………」

 

 

俺はネウロイに関して大事な何かを忘れてたような気がした。

 

なんだ??

これは……??

原作知識…か??

 

ダメだ、何か、ネウロイで忘れてる。

 

とても必要な何かを忘れてる気がする。

 

 

 

いや、考えるのは後だ。

 

今は戦いに集中だ。

 

 

 

「今の海坊主がココの親機か?」

 

 

 

空を見る。

 

撃破した親機から1キロ未満の範囲だが、この辺りを飛んでいた小型ネウロイは急に統率力を失ってフラフラとしていた。

 

今のうちに友軍を早めに逃そう。

 

この友軍の指揮官は…

 

ああ、放心してやがる。

 

 

「そこのウィッチ、名前は?」

 

「へ?…うええ!?ががが、がんだむさんから直々にご指名ですとぉ!?」

 

「少し落ち着けって」

 

「はう!し、失礼しました!犬房由乃(いぬふさゆの)です!ご、伍長です!」

 

 

 

適当なウィッチに声をかける。

 

一応わざわざ声をかけたにも理由がある。

 

撤退を急がせるため。

 

願那夢に助けられたとか、ウィッチに助けられたとか、そういった感傷は後にさせ、ともかく足を動かさせたいから。

 

 

 

「犬房由乃か。今すぐそこで腰を抜かしてる部隊長を引っ叩いて撤退を急がせてくれ。こうしている間にもまたネウロイが集い始める」

 

「や、やはり、航空ウィッチはかっこいいですなぁ……はっ!了解であります!」

 

 

 

…声をかけるべき相手は少し間違ったか?

いや、パニックになってるよりはマシだろう。

 

それから陸軍ウィッチが先導する形で動き始めた友軍を見送りながら竹井達と合流する。

 

 

「魔法力はどうだ?まだ飛べるか?」

 

「行けます!」

「もんだいないよー」

「訓練の成果だ、心配無用!」

 

「よし、ならいくぞ」

 

 

去年と違って彼女達は頼もしい。

 

俺は頷いてまた先行する。

 

次の友軍を助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1938年 初春頃__もしくは3月。

 

ウィッチの消耗を重たく見た軍上層部は新戦力の補充と戦力の平均化を狙って部隊の再編成を図る。

 

これまで第十二航空隊と並べあっていた陸軍第一戦隊も再編成のため各地の前線基地に慌ただしく異動を開始する。バラバラになった。

 

ただし第十二航空隊は構成力の高さ故にその形成を崩すことはなく、また魔女候補生上がりの編成だったことも合わさり、教官でもある北郷章香の元から離すメリットは無いと判断されたのか俺含めて誰一人異動することはなく再編成の指示はこの部隊に届かなかった。

 

 

 

 

 

それから3月12日。

 

 

 

 

一時的な大幅な撤退戦から、軍力の平均化を狙い、戦線はなんとか保たれようとした。

 

実のところ第十二航空隊も長く駐屯しているこの名も無き前線基地を放棄して新たな前線基地に配属されるところだった… が、軍の平均化と再編成がギリギリ間に合ったお陰か、他の戦線はとりあえず安定すると、第十二航空隊はここから動く必要が無くなった。

 

まあそれはつまりこれからも変わらず最前線に立つと言うことだ。

 

こうなってくると第十二航空隊はもうヒヨッコから卒業して戦線の要となっている。

 

実際に前の第十二航空隊の集合会議で北郷隊長から直直に「私たちは砦だ」と緊張感を煽っていたくらいだ。

 

それはつまり扶桑皇国軍が認める立派な兵士として成長した第十二航空隊は扶桑皇国軍に強く影響している軍隊だと言うことだ。

 

それは胸を張るべきことだろうが、厳しくなる戦線から離れることができない意味を考えれば昔よりも戦地で死ぬ可能性に高くなっていることになる。

 

だから時間が許される限り、俺は北郷と共に彼女達を戦場で死なないように育てるだけだ。

 

それはエクバと同じ。

 

環境は変わる。

そこに浸透しようとプレイヤーは食いつく。

 

現状に追いていかれないために。

 

 

 

 

「北郷、これって…」

 

「ああ、黒数が去年の冬に扶桑へ一時帰還した舞鶴で、翔鶴の船を助けた際に撃破したネウロイと同じ個体。もしくはその完成型だ」

 

「俺はあの時は一撃で倒したが、いまの武器で通用するのか?」

 

「別の戦線で機動性に追い付かず逃げられたとの報告ばかりだ。あと最近現れた故にまだわからない」

 

 

 

執務室の机にウラル地図と撮影隊ウィッチがネウロイの姿を収めた写真が数枚ほど机に広げられており、緑茶の湯気を交えながら俺と北郷の二人で情報交換をする。

 

 

 

「威力偵察は誰か携わったか?」

 

「まだだ。これからと聞いている」

 

「第十二航空隊には…?」

 

「今のところ何も指示は無いな。一呼吸置けというメッセージだろう」

 

「第十二航空隊は平均化に影響してないから充分に一呼吸付いてる。軍は何を考えている?」

 

「平均化後の調整だろう。手慣れた第十二航空隊は大人しくしていてくれってことだ。経験を積ませるためのな…」

 

「新古編成による弊害だなぁ…」

 

「今となっては偏らせることは無理だ。どこかが潰れてしまえば絶えることない物量が雪崩れ込んでくる。そうなるといよいよ扶桑皇国軍は浦島を捨てるようになる」

 

 

 

二人同時にため息が出る。

 

緑茶を飲み直して気持ちを入れ替える。

 

北郷はスッと飲み、俺はゆっくり飲む。

 

すると北郷がここでとんでもない情報を言い渡してきた。

 

 

 

「それと黒数に報告がある」

 

「?」

 

 

 

 

湯呑みに口をつけたまま、耳を傾けて……

 

 

 

 

「明日、()()()()がこの基地に来る」

 

「ぶふっ!!!???」

 

 

 

 

鼻にお茶が入り込む。

 

花粉症よりも苦しかった。

 

 

 

 

つづく

 






一応扶桑会事変の頃に坂本美緒は宮藤一郎博士とウラルで出会ってるらしいが、あまり資料が無いんだよね…

まぁ半分オリジナルってことで。


ではまた
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