GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第3話

 

 

 

時々だが…

 

扶桑に置いてきた泣きじゃくる愛娘を思い出してしまう。別れる前にあんなに泣いて、渡欧する前にこちらも少し泣きそうになったのは良い思い出かもしれない。

 

けれど今は人類のために私は動く。ブリタニアに集われし研究チームの一員として私はストライカーユニットを開発するために渡欧した。

 

そして始まるのは共同開発。

 

ブリタニアへ渡る前に扶桑で練り上げたユニットの開発論やそれに当たるプロセスを持ち込んで一気に研究を進めた。

 

最初は順調だった。

 

しかし途中手詰まりを起こしてしまう。

やはり難しい開発のようだ。

 

しかしこれがうまくいけば軽量化も捗り、魔法力の使用量も抑え、これを派生して可能性を広めることができる。

 

だから無理を押し通して完成させたいものだ。

 

 

 

ふー、それより、落ち着こうかな。

 

なにせココまで研究詰めだ。

 

周りも疲れている。

研究チームは二日ほど休暇を取ることにした。

 

私も続いて休暇を取る。

 

と、言っても散歩する程度かな。

 

適当に歩く。

 

ここは貿易盛んなブリタニアの街。

 

首都ロンドンから少し離れた場所だ。

 

人々は街を賑わせる。

 

この平和はウィッチ達が戦ってくれるから。

 

もちろん普通の軍人がいて成り立っている。

 

つまり人類皆が力を合わせた手に入れた平和だ。

 

たとえそれがひとときの平和だろうが、それをありがたく思いながら街の雰囲気を噛み締めて歩く。

 

 

「?」

 

 

一人の青年に目が付いた。

 

辿々しく喋るブリタニア語。

 

最初は扶桑の兵かと思った。

 

しかしその風貌はあまりにも異質だ。

 

そして時折

「なんでやねん!」とか

「ウッソだろお前ww」とか

「いやー、キツイっす」とか

「やめたくなりますよ…」とか

かなり愉快な言葉で苦闘を演じていた。

 

 

見た目不審者なんだけど、なんだかこの世界に無さそうな人間で少し気になったのが本音かな。

 

 

 

 

帰り道だ。

 

またその青年を見かけた。

 

芝生に座り、随分と落ち込んでいた。

 

そして困り果てていた。

あと目が死んでいた。

 

ブリタニアは漁業も盛んでありよく魚が水揚げされている。その水揚げされた魚と同じように死んだ目をしているこの青年に私は心配する。

 

もちろん彼と言う存在に対してほんの少し好奇心を混ぜ合わせながら声をかけるとやはり扶桑の言葉で返される。

 

彼が扶桑人であることが確かになった。

 

それからお茶に誘い、彼から色々と話を聞いた。

 

そして繰り出されたのは突拍子も無い話。

 

 

 

__異世界から来た。

 

 

 

まずブリタニアって国は無い。

 

住まいは日本と言う国名。

 

それから扶桑なんて国は存在しない。

 

またこの時代よりも豊かであり、少なからず平和であることを聞いた。

 

聞く話としては、とても羨ましい。

 

しかしそれを語る彼はこの世界と照らし合わせて随分と参った様にしていた。

 

戦争の世界に迷い込んだから。

 

 

それから彼は自身が異界から来たことを証拠を示すために案内された。

 

そこはまだ発見されてない洞窟。

 

そして洞窟の奥には……魔法陣があった。

 

これには私も驚いた。

 

 

 

「目が覚めたら、ココにいた」

 

 

疲れたように彼は言う。

 

それに関しても驚いたが、やはり目についたのは魔法陣だ。

 

魔法陣の事は聞いたことがある。

 

それは召喚の類であることも。しかし召喚する対象は人間ではなく、呼び起こされるのは英霊達が扱った武具…… であることが学会で広められている。

 

だから人物が魔法陣から来るのか?と疑った。

 

でも彼の様子は演技とかではなく、私に信じてほしくて余裕なく語っている。

 

 

 

__GUNDAM。

 

 

 

聞いたことない言葉。

 

刻まれた文字を私も見た。

 

しかし全く知らない単語。

 

だが、彼は知っている。

 

だとしたら、本当に、本当に、彼はこの魔法陣から来たというのか?

 

それも選ばれてこの場所にやってきたのか?

 

だとしたらこれは世界的驚愕の発見だろう。

 

でも彼は違うと言う。

 

自分はなんてことない一般人で英雄なんて大層な人間では無いことを。

 

 

__俺は人間だ!! 人間で沢山だ!!

 

 

 

彼は叫ぶ。

 

それは良くも悪くも、何もないそこらにいる人たちと変わらない生き物であることを主張する。

 

少し酷だったかもしれない。

 

でも許してほしい。何せこれ以上解明されていなかった魔法陣から誰かが現れた。

 

それはつまり、英雄としてこの世界を救いにきた人物なのでは、と、期待してしまう。

 

けれど違う。

 

彼は訳もわからず巻き込まれてやってきた。

 

戦争の世界に。

 

なんというか、かわいそうだ。

 

しかも見知らぬ大地に放り出された。ココは彼のいた世界と類似してるとは言ってたが、全く知らない土地に投げられては誰もが不安になるだろう。

 

それから私は一時的な保護も兼ねてしばらく彼を預かることにした。

 

深く感謝された。

少しだけ泣いてたように見えたね。

それも仕方ないだろう。

私が彼の立場ならそうなる筈だ。

 

 

それから彼は居候として家の家事を全面的に行って私の生活を助けた。

 

時代が違って少し戸惑っていたが、彼の生活力は随分と高く、何より彼は一人暮らしに慣れてるようで、すぐに順応した。

 

その結果としてかなり助かっている。

 

洗濯、掃除、料理。

 

 

正直に言うと…

 

 

大ッッッ変!!助かッッッてます!!

 

 

 

なんならお弁当すら貰っている。中身は簡単なサンドイッチだが、片手間に食べれるだけありがたい。

 

お陰で一気に生活水準が上がった気がした。お屋敷が使用人を雇うってこういうことなんだろうか?

 

随分と楽になり、研究が捗るようになっていた。

 

しかもちゃんとした食事を取れるようになったのか開発詰めで悪かった顔色も随分と良くなったと開発陣の仲間から言われた。

 

それだけ酷かったか?だとしたら扶桑に置いてきた愛娘に怒られてしまうな。

 

 

「いただきます」

 

 

今日も休憩を得て、お昼ご飯を取る。

 

そこまで量の多くないサンドイッチ。

しかし頭の栄養に充分だ。

元々少食だからこれでも充分すぎるくらいだ。

 

 

黒数(くろかず)くんは今回で三回目の調査だったかな。順調だろうか?」

 

 

私は国の技術開発者。故に国の命運を尊重して動くべき人間。そして魔法陣は国が管理対象として扱われるべきモノ。しかしそれを国の人間でもない、ましてや周りの一般人と変わりない彼に任せている。

 

普通なら私は魔法陣の存在を報告するべきだ。

 

世界の平和を願っている技術者だから。

 

けれど、私は黙認している。

一人の人間のために。

 

 

「彼を__黒数くんを信じよう」

 

 

その頑張りが報われることを願おう。

 

そう考えてお弁当箱を閉じる。

 

さて彼が頑張るように、私も今を頑張ろう。

 

白衣を着直して、開発室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ココは一人用の秘密基地だ。秘密であるために俺以外知る必要は無い。だからお引き取り願えないかな?軍人さん」

 

「それは難しい話だ。貴方の手に持っているモノがただの新聞紙ならまだ私も考えたが、それはどう見ても…… 論文だな?」

 

「なら一人で論文を読みたくなったんだ。秘密基地のような静かな場所、少し閉鎖的な空間でね。集中できるからさ。嘘は言ってない」

 

「………警告だ。()()()()()()()なら本当のことを話すといい」

 

「……気持ちはありがたいけど、この中は勘弁して欲しいな。必要な場所だ」

 

「そうか……なら、仕方ない」

 

 

 

すると静かに刀を構えるウィッチ。

 

牽制、または実力行使に出るのだろう。

 

 

 

「民間を守る刃を人に向けるか、ウィッチ」

 

「ああ、守るためだ。貴殿を()()()()()ため」

 

 

 

法、か。

 

そう言われたら、そこまでかな…

 

 

 

「…………引いて、くれませんか?」

 

「……」

 

「お願いします」

 

「…」

 

 

 

だから、俺は頭を下げる。

 

彼女はわかっている。

 

意味があって俺を守ろうとしていることを。

 

何故なら…

 

 

 

「世界が保持する管理対象ってのは分かる。でもこれは他の人に見つけられては困るんだ。頼む。全て終わってからなら幾らでも管理対象としてこの中にあるものを扱って構わない!だがまだ待ってくれ!頼むッッッ!お願いしますッッッ!!」

 

 

 

俺はランプと論文を置いて、土下座する。

 

しかも相手は年下のウィッチ。

 

それに対して俺は二十歳の人間。

 

まだ数日前まで同じ未成年だった。

 

けれど決められた社会に沿って、俺は大人になった人間だ。成人男子なんだ。

 

そんな自分は、年下の少女に土下座する。

 

 

「…」

 

 

これは、個人的な願い。

 

国の意思に反いた反逆者だ。

 

でも目の前にいるウィッチは軍人だから…

 

 

「それでも、知ってしまった以上は軍人として国と世界のために動かなければこの軍服は嘘になる。だからせめて同じ扶桑人として処置を取るんだ」

 

 

 

魔法陣は、世界の管理対象。

 

まだ魔法陣からは確かな実態を見たわけでは無い。しかし考古学会の叩き出した調査結果として対ネウロイのために扱えるモノだと判断された。

 

そのため国が、世界が、英知が残したこの遺産を保有して調査研究を進めようとする。

 

それが人類を救うための武器になるから。

 

だから国のために働く軍人は私情よりも役割として果たす。

 

 

「……」

 

 

願いは届かないみたいだ。

 

それも仕方ないか。

 

軍人たる彼女は何も悪くない。

 

むしろ同じ扶桑人として、警告してくるからこれ以上の荒事にならない。

 

だから俺は扶桑の人間に見つかったことが何よりも幸運なんだろう。

 

しかた、ない…か。

 

 

 

「っ……わかった。分かったよ。諦めるよ…」

 

「ありがとう…………すまないな」

 

 

 

俺は首を振る。

 

あなたは何も悪くないと伝える。

 

 

 

「………」

 

 

 

終わった…

 

終わってしまった…

 

見つかってしまった。

 

これで独り占めも叶わず、なんなら一般人が入ることすら許されなくなる。

 

俺は……無力だ。

 

 

 

「…だから、明後日までだ」

 

 

 

軍服ウィッチは口を開く。

 

 

 

「明後日までなら、待てる」

 

「!!」

 

「これは私情ではない。発見報告や調査動員など、それらを済ませるに当たって本格的にこの洞窟へ着手するのが明後日と言う話だ。私はあくまで今日の夜に『怪しい洞窟を見つけた』とまとめて報告するだけ。それから先はわからないがな」

 

「あ、あんた…」

 

「扶桑軍人とは言え、私がブリタニアに駐在してるのは戦技研究を進めるためだ。それ以上の役割を持つことは寧ろ軍規違反だな。然るべき者に対応してもらう。それだけだ」

 

 

そう言って扶桑のウィッチは去る。

 

最後にもう一度「明後日までだ」と言葉を残して森の奥に去って行った。

 

 

 

「…」

 

 

 

これは……彼女の慈悲だ。

 

ほんの数的な優しさ。

 

軍人ではない、一人の親切心だろう。

 

 

 

「……宮藤さん、ギリギリになるけど、ちゃんと夜は戻るから」

 

 

 

 

俺はランプの光を再度灯して洞窟の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

「それでオレはアイツに言ったんだ。お前のマグナムは立派だけど夜に向けての弾数が足りないってな」

 

「おいおいマグナムってだけ勝ち組だろう?」

 

「弾と玉がなければ女は満足させれないぜ?夜は特に放火するんだ。照準よし、残量よし、装填よし、ってな」

 

「待て待て、残弾はともかく照準は些か危険や過ぎんか?打ち込んだ傷跡は責任を取らないとならないぜ?」

 

「最近の避妊具は高性能だ。薬もある。まあだからと言ってウィッチに垂らし込むのはタブーだがな。幾つか例外はあるが煩悩塗れで純白を落とすとそれは一発だ。なんなら知り合いの情欲スプリンクラー野郎はお縄についた。それから顔は見てないね」

 

「やれやれ、なんための娼館だ」

 

「最低でもオレたちがウィッチに打ち込んで墜とすのは構わない。しかしネウロイに撃ち込まれて堕とされるのは勘弁願いたい。そんなところだな」

 

「はは、違いねぇ!!………オイ、アレはなんだ??」

 

「ああん?…………まて、アレとの距離は?」

 

 

下世話に盛り上がった二人。

 

しかし真面目な口調に戻るとその眼は軍人。

 

怪しく集まる黒雲に偵察機を傾ける。

 

そして、現れた。

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

1937年。

 

ヒスパニアの北の海域に厄災は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで戻る。

 

陽が落ちる寸前だ。

 

帰る為の魔法陣も大事だが、命を繋いでくれた宮藤さんに対する義理も大事だ。

 

 

「はっ、はっ…!」

 

 

走りながら今日の調査を頭の中でまとめる。

 

ある程度の単語、または用語がわかった。

 

それは俺だけが知っている世界。

 

そして俺だけが自己投影して、扱える世界。

 

つまり、画面越しの世界。

 

そこまではよく分かったんだ。

 

 

「俺だから、動かせるんだ、アレを…!」

 

 

長時間の調査により半分以上がわかった。

 

しかし悠長なことも言ってられない。

 

何せあの軍服前面全開インナー扶桑ウィッチがどれだけ話してるかもわからない。

 

でも俺のことはおそらく話さないはず。

 

あくまで洞窟だけを見つけたと報告するだろう。

 

しかし、洞窟の中身を覗かずともあの中にあることはバレていたようだ。雰囲気からしてただ者じゃ無い感じだったからな。そうでなければ軍服なんて着れないのだろう。

 

でも、優しさはあった。

 

たとえ、それが軍規軍法に沿った行動だとしてもわざわざ「明後日」と伝えてくれるあたり有情だ。だからそれに応えるべきだ。

 

 

「すみません!戻りました」

 

「ああ、おかえり。私も丁度戻ってきた」

 

 

出迎えてくれた宮藤一郎博士。

 

俺は手と足だけ洗ってから薪に火を付ける。

 

肉じゃがの美味しい香りを漂わせて、主食としてミスマッチだがフランスパンを割いて、二人で夜ご飯を食べる。

 

 

それから宮藤さんに報告した。

 

調査結果を。

 

そして……軍人にバレたことを。

 

宮藤は「そうか…」と一緒に落ち込んでくれた。

 

本当に優しい人だ、この人は。

 

それから明日の覚悟を告げる。

 

 

「作り置きはします。家事も済ませます。だけど明日は夜遅くまで魔法陣の調査を進めます。わがままですが、どうか…」

 

「構わないよ。自分のために、頑張りなさい」

 

「っ…はい!」

 

「じゃ、今日は早く寝よう。実は私も今日早く切り上げた代わりに明日も早いからね。お互いに忙しくなりそうだ」

 

 

 

そう言って夜ご飯を食べて、就寝する。

 

与えられた小さな部屋で布に包まる。

 

 

 

「そういや、あの扶桑ウィッチって、誰なんだろう」

 

 

 

名前は聞いていない。

 

しかしなんと言うか"とある登場人物"に似ている気がした。

 

だがアニメ自体もう10年前だからあまり思い出せないが、しかしこうなんと言うか「はっはっはっ!」と豪快に笑いそうなイメージがあったような…

 

 

「思い出せないって事は、大したことじゃないんだろう。それより明日だ。早く寝よう」

 

 

原作キャラに関心を向けるのは大事かもしれないが、今は自分の事だ。

 

あの軍人さんには感謝してるが、今は俺自身をどうにかするんだ。

 

そう、明日だ。

 

明日、全てをつぎ込む。

 

 

 

「…」

 

 

 

帰ってみせる、元の世界に。

 

目を閉じて、眠りついた。

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

「いやいや、なんで昨日のアンタがいるんですか??もしや暇なんですか??暇なんか??」

 

「はっはっはっ!まあまあ良いでは無いか。それに今日は非番でな、君の言う通り暇ゆえに訓練するくらいしか予定がない。実のところ駐在武官として大凡の役割を終えていてな。あとは扶桑に戻って戦技研究の洗い直しを行い、舞鶴で落とし込むだけだ。それよりも中に入らないのか?」

 

「いや、入るけど…… それとは別としてアンタはそれなりに大役受けてる人だったんだな。もしかして上級大尉とかその辺りですか?」

 

「それはまた特殊な階級だ。いいや、私はまだ大尉だよ。大したことはない」

 

 

いやいやいや、大尉の階級で大したことないと何言ってんだコイツ??

 

大尉って、編隊を持てる人間だろうが。

 

わかりやすく言うなら逆襲のシャアに出てくるアムロの階級が大尉だ。

 

機体の開発研究行ったりと民間の出にしてはかなりデカい権限を持っていて、νガンダムを完成させた人間だ。

 

大尉に関しては偉いとかそんな簡単なレベルじゃねーぞ。めちゃくちゃすごいじゃないか。

 

 

しかし…

 

 

 

「まぁ……階級なんて、飾りさ」

 

「!!」

 

 

小さく呟いたそれを俺は拾う。

 

ほんの一瞬だけ、弱さを見せた。

それも、偽りなく、弱さを見せた。

 

しかしコロッと表情を変えてワクワクとしたように洞窟に目を輝かせる。

 

俺はその期待に応えるべきだだろうか、とりあえず古びた板を動かして中にはいる。

 

…お目付け役だろうか?

彼女も後ろから着いてくる。

 

 

そして奥まで進み、たどり着いた。

 

 

 

「予想通りだと思うけど、魔法陣だ」

 

「おお、やはりか」

 

 

 

本当、興味だけでやってきたみたいだ。

 

実は案外自由な人なのでは?この大尉は。

 

 

 

「てか、魔法陣なのわかってたのか?」

 

「ん?いや、なんとなくだ」

 

「はい?」

 

「ただ一瞬だけ感知したんだ。見張っていた洞窟から感じたことない魔法力が鋭く頬を撫でたんだ。それで確信した。街中で見かけたウィッチではない男性が入ったこの奥で何かある。まあそれが魔法陣の類ではないかと決定付けたのは君の握りしめていたモノかな。それ魔法陣に関する論文だろ?一般人が持つには少し詳しすぎる…」

 

「それこそ詳しいんだな、大尉も」

 

「はっはっは!これでも戦技研究を行なっている身でね、机も得意になった。だからその資料や論文の出も正直に気になるところかな」

 

「……明後日には報告通り無かったことになるさ」

 

「ん、かも知れないな。だが安心すると良い。伝えたのはこの洞窟が怪しい、それだけだ。あとは詳しい者達に任せるとして… 時間は有限だ。取り掛からないのか?」

 

「言われなくてもやりますよ、大尉」

 

「ほう、それは楽しみだ」

 

 

 

彼女は軍人であるが、さっきも言った通り武官として頭脳を使った働きもしてきた故か、こう言った調査研究は好きみたいだ。

 

これ、彼女も見つかったら本人も危険では?

 

いや、その場合はトカゲの尻尾切りで逃れれば良いだろう。まあ俺がそうさせるつもりだ。

 

これは俺のわがまま。

 

宮藤さんや、この高笑いウィッチのご好意があって今のブリタニアで五体満足。

 

ならこれ以上望んで、その他を気にするのは危険だろう。

 

 

「やはりこの空欄が怪しいな。展開時に浮き上がる仕様か?手元の方角から見て最後は刻む方針か?しかしそうなると未使用であることが条件か、または使うたびに消えてしまうのか。でもそうなると既に刻まれているGUNDAM VERSUSの文字はやはり使用者を限定とした事になる。やはり、これは俺に_」

 

 

「がん、だむ?とはなんだ」

 

 

 

思わず躓いてしまう。

 

ちょっと、調査の邪魔だな。

 

それよりもガンダムに関してはやはり聞いたことない言葉か。まあ当たり前か。こちら側の創作から始まったおとぎ話なんだから。

 

さて、どうしたものか…

 

 

 

「異界の兵器かなんかじゃないですか?」

 

「異界の?何故そう思う?」

 

「なんとなくです。だって呼び寄せると言ってもこの世界の過去に活躍した英霊限定とは限らないじゃ無いですか?もしかしたらこの世界では無い別のところから来る可能性だって捨てきれない」

 

「ほぉ、それは確かに。しかしよくその発想に行き着いたな?なにかきっかけが?」

 

「俺が一瞬起動させたから」

 

「……なるほど」

 

「固定観念は捨てる。そもそも魔法陣はウィッチ限定で考えてることが悪い。もしかしたら男性だって魔法を使ってた可能性もある」

 

魔術師(ウィザード)か」

 

「そもそも魔法使い(ウィッチ)魔術師(ウィザード)は似て異なる。球技で言うベースボールとソフトボールくらいか?方向性は似ているがルールが違う」

 

「では君の考えるウィッチとウィザードの違いとは?」

 

「魔法使いは体に保有してる魔法を解き放ち、魔術師は術式を組んで魔法の構築する、そんな感じかな」

 

「それは個人の解釈かな?」

 

「ああ。だって時代が違うからな」

 

「?」

 

魔法使い(ウィッチ)は魔法力で何もかも強化するからすごいんだ。一方魔術師(ウィザード)は準備が必要だ。体に刺青とかすればそれが魔法力のパイプになるが… そんなの面倒すぎる。だったら銃火器背負って戦う男性の方が強い。簡単に言えばその時代における取り扱いの話だよ」

 

「なるほど。だから時代の変化か。そうなるとウィッチの方がいつの時代にも浸透するか。だがウィザードは簡易化が進んだ時代に取り残されると言うわけだね。面白い話だ。それこそ論文にするべきだな」

 

「大尉にお譲りしますよ。この世界の功績にはそこまで興味ないからね」

 

「……その大尉っての、やめないか?」

 

「いや、だって名前知らないからな」

 

「あ、そうか。なら__」

 

「いえ、大丈夫です。今日でお別れだ。俺のことは聞く必要ないです。大尉はとある日にブリタニアの洞窟でおかしなことをしていたウィザードごっこをしていた男が居たと思ってくれればそれだけで充分です……からね!」

 

 

 

魔法陣を掌で叩いた。

 

すると床が光り輝く。

 

 

 

「な、なんだと…!?」

 

「だから言ったじゃないですか。ブリタニアの洞窟でウィザードごっこしていた男がいるんだってね。さて、これが血を垂らす場所か?ナイフ持ってきて正解だったな」

 

「な、なにをす…」

 

「こうする」

 

 

親指にナイフの先端を突き立て、血を流す。

 

そして窪みに押し込んだ。

 

すると奥深くまでガコンと入り、石床の一部が盛り上がり、刻まれた文字の部分が更に浮き出た。

 

 

 

「GUNDAM VERSUS……刻まれた文字通りか」

 

「すごい……ほ、ほんとうに、うごいた、のか?」

 

「やはり俺専用か」

 

「っ……待て、き、きみは、一体……??」

 

「何度も言わせるな。ただのウィザードごっこをしている男だよ。明後日にはこの世界から消える予定のな」

 

「ま、待ってくれ! だとしたら君は__」

 

俺は人間だ

 

「!!」

 

「大尉は魔法陣の意味を知っているようだから言っておく。俺はこの世界の希望の光にはならない。何故なら望まずして降り立ったから。だから俺はこの魔法陣で帰るんだよ。だって… 普通の人間だからな」

 

 

 

彼女は何かを言いたくて、でも何も言えない。

 

その時の俺の表情を見て何を思ったのかはわからないが、でも俺がそう特別じゃ無いことを知ってほしい。

 

俺は戦争を知らない。

 

知ってるつもりの人間だ。

法に守られてつい数日前に二十歳となったばかりの人間だ。戦いを知らない。

 

だから俺は違うんだよ、扶桑の大尉。

 

 

「さあ興味だけならもう充分だろう。今日はもう帰ってくれ。仮にまた来るとしても明日にしてくれ。その時に何もなくなるし、何も無かったことになるからな」

 

「……」

 

「さあ、ここからは知らない方がいい。どうせ誰の希望にもならないからな」

 

「……………ああ、わかった」

 

 

 

深い沈黙を得て、彼女は頷く。

 

刀を揺らしながら後ろに振り向いた。

 

素直に出るみたいだ。

 

……そうだな。

 

 

 

「大尉、できれば最後に頼みがある」

 

「……なんだ?」

 

「この論文と参考書、宮藤博士に持っていってくれないか?」

 

「!?」

 

「それと、よろしく言っといてほしい。すごくお世話になったから。あとこれは覚えてたらでいいから伝えてほしい。夜ご飯は鍋に作り置きはしてあることも」

 

「………きみは」

 

「出会えた軍人があなたのような人でよかった。ありがとう」

 

 

頭を下げる。

 

本当は宮藤さんにも下げるべきだ。

 

でも、ここで決めるつもりだ。

 

もし仮に決まらなくても、俺はブリタニアから去ってどこか国外に逃れるつもりだ。

 

そうして姿を眩ませれば元の世界に戻れたと思ってくれる筈だし、魔法陣の光を目の当たりにした彼女の証言が有ればどの道戻れたんだと考えてくれるはずだ。

 

これ以上宮藤さんに迷惑かけたくないから、どんな結果であれ俺はここを去るよ。

 

 

 

「………わかった、頼まれよう」

 

「ありがとうございます」

 

「そのかわり……個人としての願いだ」

 

「?」

 

 

願い?

 

どうせいなくなる俺なんかに?

 

 

 

「貴殿の名前を教えてほしい」

 

 

 

名前…か。

 

いなくなる人間の名前なんかどうでもいいだろうに…

 

 

 

黒数(くろかず)

 

「そうか。なら、こちらも応えよう」

 

「?」

 

「私の名前は___」

 

 

 

 

ウゥゥゥゥウウウ!!!

ウゥゥゥゥウウウ!!!

 

 

 

 

 

「「!!?」」

 

 

 

この警報、まさか!?

 

 

 

「これって…」

 

「な、なぜ!?そんな… !ブリタニアにはここ半年ネウロイが近づいてこなかったはず!?何故今になって来たんだ!?」

 

 

 

彼女は驚く。

 

どうやらこの辺りは相当平和だったらしい。

 

しかし、それはサイレンの音で崩れ去る。

 

 

「大尉、行ってください」

 

「!」

 

「あなたは、貴方の役割を」

 

「ッ… さらばだ!君の帰還を祈る!」

 

 

そう言ってランプ以外持ち込んで走り出す。

 

そして俺一人になった。

 

……少しだけ、寂しいかな。

 

でも帰れば関係なくなる。

 

もしそうでなくとも、魔法陣の当てがブリタニアに無くなるならもう来ないから。

 

 

 

「さあ、動けよ…!ネウロイに殺されて戻れなくなったなんて笑えないからな…!!」

 

 

 

この世界から逃げる??

何を言うんだよ。

俺なんかに何ができるんだよ。

答えてみろよ。

 

ここはウィッチしか戦えない。

 

ここはそう言う世界だ。

 

主人公でもなんでも無い奴に活躍の場は無い。

 

だから、俺は去るんだ。

 

この世界から…

 

 

 

 

 

 

 

__だから、世界に人の心の光を見せなきゃならないんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

頭に響く。

 

モニター越しに見てきたものが。

 

 

 

 

 

__ああ、恐ろしいね!恐ろしくない方がどうにかしている!!

 

 

 

 

 

 

聞いたことある声が響く。

 

モニター越しに見てきた言葉が。

 

 

 

 

「や、やめろ、語るな…」

 

 

 

 

 

__それでも、仲間のためなら戦える!

 

 

 

 

魔法陣を通して訴える。

 

この世界に降り立った俺に向けた。

 

 

 

 

 

「来るな、俺に望むな…」

 

 

 

 

 

__人はね、自分を見るのが不愉快なのよ!

 

 

 

 

 

 

「訴えるな、俺に伝えるな…」

 

 

 

 

 

 

__あなたに、力を…

 

 

 

 

 

 

 

「望むなよ…!望まないでくれ…!俺はここに居たって何も出来やしないから!!」

 

 

 

 

 

 

 

__戦え、お前の信じるモノのために。

 

 

 

 

 

 

 

「信じない!信じない!ストライクウィッチーズの世界なんて!これで!どうせ終わりなんだから!帰れば、何もかもが…!!」

 

 

 

 

 

なぜ、こんなに必死なんだ。

 

いや、そりゃ、必死だ。

 

望まずしてやって来たから。

 

……一昔なら、もう少し喜んでいたさ。

 

だって異世界転移なんだから。

 

今流行りの展開だから。

 

 

でもね。

大人になるとね。

少し違うんだよ。

 

 

そりゃ、今だって時折想像する。

 

妄想の先で、自分が居たらこうなるのかな?って。

 

でもそんなわけない。

 

知らない国、知らない時代、知らない世界。

 

何も与えられずして、降り立って何がある?

 

ただ、ただ、不安を募らせただけ。

 

しまいには人に迷惑だけかけた。

 

そんなの、嫌になるに決まってる。

 

だから迷惑かけないように、するために去る。

 

俺がこの世界になかった事にするんだ。

 

だから…

 

だから…

 

俺に何も訴えかけないで……!!!

 

 

 

 

 

__やだ、やだぁ!助けて!パパぁ!!

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

声が聞こえた。

 

洞窟の外から。

 

小さな子供の声だ。

 

俺は出口に振り向く。

 

気のせい…か??

 

こんなところまで幻聴が__

 

 

 

__痛いよ、置いてかないでよ、助けて…!

 

 

 

 

「ッ!!」

 

 

 

俺は気づいたら、光っていた魔法陣を背にして飛び出した。

 

 

 

「っ」

 

 

 

ああ、何をやってるんだよ、オレ。

 

もしかしたら、もうすぐ帰れただろうに。

 

何故優先しなかった??

 

俺はこの世界に存在してたことをなくそうとしていたのに。

 

そうすれば何もない筈なのに。

 

 

 

助けを聞いてしまって、足が動いてしまった。

 

知らないフリができなかった。

 

俺って、案外バカだから。

 

 

 

「!」

 

 

 

声の主を見つけた。

 

駆け寄る。

 

 

 

「いや、いやぁぁ、ネウロイが…」

 

 

 

それより何故道端に子供が!?

 

親はどうした!?

 

 

「!」

 

 

地面を見る。

 

強く削られたタイヤの後。

 

まさか馬車か何かに振り落とされた!?

 

 

「きみ、怪我は!?」

 

「ひっ!」

 

「だ、大丈夫だ!安心しろ!声を聞いて駆けつけたんだ!そ、それより、きみの親は?」

 

「ぅ、ぅぅ、わかんない。パパは、どこ?」

 

「わからない。でもどうして一人なんだ??」

 

「わ、わたし、後ろで、乗って、そしたら、いきなり揺れて、そしたら、お空にネウロイの声が…」

 

 

 

馬車の一番後ろ、つまり荷車に乗っていた。

 

しかしネウロイの出現により慌てて走り出した荷車に女の子が振り落とされて、この状態ってことか!?

 

っ、この子の家族は!

 

いまどこだ!?

 

タイヤの跡を見てこれは街の方…か??

 

 

 

「とりあえず、街に逃げるぞ!立てるか!?」

 

「あ、足、が、いたい…!」

 

 

どうやら捻ってしまったようだ。

 

立ち上がるに苦労している。

 

 

 

「なら俺が君を背負う。そして街まで避難しよう!そしたらパパに会えるはず!一緒に探しに行こう!」

 

「!」

 

 

子供は目に涙を溜めながらもこの言葉に少しだけ目を見開いて、頷く。

 

俺は少しだけ泣き止んでくれたその姿にホッとして、目線を合わせるように跪き、背中を見せる。

 

 

「乗れる?」

 

「う…ん…」

 

 

子供を背負うなんて久しぶりだ。

 

懐かしいな。孤児院にいた頃は最年長だったから、良くちびっ子の相手してあげたっけか。

 

 

 

「お嬢ちゃん、名前は?」

 

「おなまえ?」

 

「ああ。俺は黒数。く、ろ、か、ず、って呼んで」

 

「う、うん。あのね、わたし……りねっと」

 

「リネットか。うん、優しそうでいい名前だな。とりあえず街に向か__」

 

 

 

 

ズドーン!!

 

 

 

向かおうと言って、安心させようとして、その安堵をたやすく断つ存在が現れた。

 

真上から落ちて来たんだ、ソレが。

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

小さな子供、またはリネットの名前の女の子を庇うように俺は砂煙を浴びる。

 

そして、ゆっくり目を開く。

 

真上を通過した黒い物体から解放されて強襲上陸した黒い物体。

 

それは…

 

 

 

「キィィィ…??」

 

 

「__ぁ」

 

 

 

 

ネウロイだ。

 

四足歩行の厄災が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中に逃げる。

 

逃げて、逃げる。

 

こんなにも足が苦しいのは初めてだ。

 

 

「くそっ!?アイツ!まだ追いかけて…!」

 

「やだ、やだっ…!」

 

 

怯えて背中にしがみつく少女、リネットを背負いながらネウロイの追跡を逃れようと走る。

 

四足歩行とはいえ狭い森の中はそう簡単に追いかけれないはず… だが、強引に森を突き進んでくるそれはまさに厄災そのものだ。

 

 

「リネット!口を閉じてろ!舌を噛むから!」

 

「ん〜!んんんー!んんんんん!」

 

 

賢い子供なのか言われた通りに口を閉じているが恐怖を押し殺すように声をこぼす。かわいそうに。怖いだろうに。

 

しかも親と一緒だったはずの馬車から振り落とされて、一人になって、そしたらネウロイ追いかけられて、今も狙われている。

 

だが、もし俺が彼女に駆けつけなかったら…

 

 

「ッッ!!」

 

 

嫌な光景を振り払い、ネウロイの追跡も振り払おうとする。

 

しかしたくさん走ったお陰なのかネウロイからどんどん離れていく。

 

森の中に逃げたのは正解だったみたいだ。

 

とりあえずこのまま洞窟まで避難して……

 

 

 

 

 

 

__後ろにも目をつけるんだ!!

 

 

 

 

 

「あ…むろ…?」

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

そして、その時、背筋が凍るような感覚。

 

それは、命の警告。

 

だから、体が真横に動いた。

 

 

 

「__!??」

 

 

 

先ほどいた場所にビームが通過する。

 

そして奥の木にぶつかり、弾け飛んだ。

 

 

 

「ッ〜!!」

 

 

撃った…??!

 

う、撃ってきたァァ!?

 

こ、怖い!!

 

怖すぎるだろ!?

 

あ、足を止めるな!

 

動け!!逃げろ!!

 

 

 

「ああああああ!??!」

 

 

 

射線を逸らすように動き、洞窟へ。

 

しかしその間にビームが乱射される。

 

その度に木々が薙ぎ倒される。

 

俺は急いだ。

 

急いで、急いだ。

 

 

 

「はぁ、はぁ!はぁ、はぁ!!」

 

「おにぃちゃん?」

 

「暗いのは我慢しろ!この、中なら!」

 

「ぅ、ぅぅ…うん」

 

古びた板をずらして入り口を隠す。

 

 

 

「痛っ…!」

 

「!?…どうした、どこが痛い?見せてみろ…」

 

「く、くび、が…」

 

「首?…………っ!」

 

 

 

先ほど避けたビームだろうか。

 

しかしほんの少し。

 

ほんの少しだけ、通り過ぎた時の余波がリネットの首筋に引っかかったようだ。

 

ああ、焼けている……

 

小さな子供の肌に、しかも女の子に…

 

 

 

「ッッ、ネウ、ロイッッ、貴様ら…!!」

 

「お兄ちゃん…」

 

 

 

ああ、なるほど。

 

そうか、これが失われる側。

 

戦争なんだ、これは。

 

これが、命の奪い合いであり、蹂躙である。

 

 

 

「は、はは、ははは…」

 

 

 

何がストライクウィッチーズだ。

 

何がパンツじゃないから恥ずかしくないだ。

 

その要素さえ除けば、惨たらしさが目の前に迫ってくる世界じゃないか。

 

優しくなんかない。

 

優しくなんかないんだよ、コレは。

 

人が奪われる。

 

ガンダムみたいに、ガンダムの戦争みたいに。

 

人が奪われてしまう。

 

 

 

「お兄ちゃん、ごめん…なさい」

 

「!!…何謝ってんだよ、誰も悪くないだろ」

 

「違うの、わたしね、行商人のパパとね、ロンドンから街に向かってね… それで、後ろの荷車で遊んでたら、ネウロイが襲って来て…」

 

「リネット。もういいよ。大丈夫だから」

 

「お、お兄ちゃん…」

 

 

怒りも悲しみもぐちゃぐちゃになるが、この少女のために俺は表情を柔らかくする。砂煙に汚れた頬を緩ませながら、その頭を撫でる。リネットはそれに少しだけ驚き、でも少しだけ恥ずかしそうに俯いて…

 

 

「あのね……助けてくれてありがとう

 

「!!!」

 

 

 

良かったんだ、これで。

 

俺は特段大事なことを、俺のために必要なことを置いて、小さな子供を助けた。

 

 

でも、それでよかったんだ。

 

多分…とかじゃなくて、恐らくだけど…

 

これで良かっ__

 

 

 

バキィッ!!

 

 

 

「!?」

「!!?」

 

 

 

板の割れる音。

 

それは厄災の音。

 

それはつまり、ネウロイの音。

 

 

 

洞窟の入り口から、それは覗いた。

 

 

 

「キィィィ??」

 

 

 

「うそ、だ、ろ…??」

 

「ぁ、ぁぁ…」

 

 

俺はすぐさまリネットを抱き上げて奥まで逃げる。ネウロイは大きくて入ってこれない。

 

しかしこの洞窟は真っ直ぐ一方通行。

 

光さえ灯せば奥が見える。

 

だから…

 

 

 

「やばい、ランプっ!」

 

 

しかしもう遅し、魔法陣の調査に使っていたランプの光でこの奥にいることがバレてしまった。

 

 

「キィィ!!」

 

 

「!」

 

「っ、リネット、俺の後ろに…」

 

 

 

彼女を背中に隠す。

 

しかし、もう、俺には睨むしかできない。

 

入り口の狭さに阻まれているネウロイ。

 

そして、目があった。

 

 

 

「来るな…」

 

 

「キィィィ?」

 

 

「来るな…!」

 

 

「キィィィ!」

 

 

「来るなっ…ぁ!!」

 

 

「キィィィィィ!!!!」

 

 

 

 

ネウロイの感激するような声が洞窟に響く。

 

するとネウロイの額から光が集まる。

 

レーザービームを放つためだ。

 

 

 

終わった。

 

そう感じた。

 

……出口はない。

 

ここは真っ直ぐ一方通行。

 

ネウロイのビームが襲ってくるだろう。

 

避ける場所もない。

 

ランプの光が消えた時が、俺の終わりだろう。

 

それを眺めてるしか出来なくて…

 

 

「っ!」

 

 

 

立ち尽くす俺の横を、誰かが通る。

 

それは俺よりも二回りほど小さな子供

 

 

「やら、せな、い!」

 

「!」

 

 

 

リネットは前に出て、展開した。

 

ウィッチだけが使えるシールドだ。

 

 

 

「リネット…!?」

 

「守ってくれたお兄ちゃんを!次はわたしが守るから!」

 

 

 

「キィィィ!」

 

 

 

ビームが襲いかかる。

 

リネットのシールドに直撃した。

 

ネウロイの攻撃はこちらまで飛んでこない。

 

しかし…

 

 

 

「きゃ!!」

 

「リネットッッ!」

 

 

小さな身体で抑えきれず吹き飛ぶ。

 

俺は咄嗟に飛びついてリネットのクッションになった。

 

魔法陣が刻まれた石床が背中に当たって痛い。

 

 

 

「ぅ、ぅぅ、お兄ちゃん、わたし、ごめんね、わたし、まだ、ウィッチに、なれない、だれも、守れない、から、ごめんね…」

 

「っ」

 

 

 

誰も悪くない。

 

誰も悪くないんだ。

 

強いて言うならネウロイが悪い。

 

 

「キィィ……キィィィ!」

 

 

ネウロイは『次は無い』とばかりに再びエネルギーを貯める。

 

次はさらに強いビームが襲ってきて、俺たちを消しとばす気だろう。

 

その光景はリネットも理解した。

 

 

 

__もう、終わりなんだって。

 

 

 

「リネット…」

 

「!」

 

 

 

俺は二回り以上小さなその体を抱きしめた。

 

リネットの視線はネウロイを見えないように隠して、俺の顔だけが見えるようにする。

 

そして、ぎこちなくだが、俺は柔らかく笑みんでみせる。

 

 

 

「ありがとう、ウィッチ」

 

「!」

 

 

小さな声だった。

 

些細な感謝だ。

 

でもちゃんと聞こえてたのか。

 

 

 

うん……」

 

 

彼女は応える。

 

その顔には恐怖心は無くなっていた。いや、違うか。死ぬのは誰だって怖い。今も少しだけ震えている。でも彼女は微笑んで、俺がつぶやいたような感謝の言葉に頷いてくれた。

 

この場所で一緒に消えてしまうことを受け入れた小さな手で俺の衣類を握りしめて、腕の中でリネットは目を閉ざした。

 

 

 

「……おれ、は

 

 

 

もう、手は尽くされた。

 

何もない。

 

俺たちは最後の抵抗をした。

 

そして、あとは迫り来る恐怖を受けるだけ。

 

 

 

 

「ぁぁ…」

 

 

 

父さん、母さん。

 

ココは世界は違うみたいだ。

 

でも、二人のいる天国は同じだと良いな。

 

そしたら、頑張って褒めてくれるかな?

 

あとね……

俺は二十歳になったんだ。

 

もう15年会ってないけど、お酒くらいは飲めるから、そしたら次はまた三人で色々語れるよね。

 

もうすぐそっちに、行くから…

 

 

 

「………」

 

 

 

ごめんね。

 

ごめんね…

 

ごめんね……

 

ほんとうに、ごめんね…

 

 

 

何に謝ってるのか、もうわからない。

 

恐らく、全てに対して。

 

俺も目を閉ざす。

 

ココでの終わりを受け入れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

__あなたに力を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__俺が、俺たちが、ガンダムだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は、響き渡る。

 

外側ではなく、内側から。

 

その声は、心の中に訴える。

 

肉体的ではなく、精神的に。

 

 

 

 

 

 

__君は、戦えるから、信じて、前を見て。

 

 

 

 

 

聞いたことある『 英雄 』達の声だ。

 

俺に次々と訴えかける。

 

まだ、終わらんよ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、も、だ。

 

 

もしも、そこにあるなら。

 

 

そこになくても、ここにあるなら。

 

 

ここになくても、しっかり持っているなら…

 

 

 

 

「お、にい、ちゃん?」

 

 

 

 

彼女の声を聞きながら、俺は手を伸ばす。

 

そうして______ 人 類() は願った。

 

 

 

「__!!」

 

 

 

魔法陣は応えるように輝く。

 

それは望まれた者に、当然のように与えるが如く、俺に反応している。

 

ネウロイは光に驚いて動きが止まった。しかしなにかを感知してビームのエネルギーが一気に集約する。

 

リネットはネウロイの攻撃に目を見開く。

 

だが今の俺に焦りも恐怖もない。

彼女の肩を抱きしめる。

 

なぜなら…

ここには…

 

確かなモノがあるのだから。

 

 

だからソレに__叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「ガンダムゥゥゥゥ!!!」

 

 

 

 

 

魔法陣はこれまでに無いほど光に包まれて、抑えきれないとばかりに溢れ出る。

 

溢れ出る光は俺の手のひらへ糸のように絡みつき、次のその魔法陣には文字が浮かび上がった。

 

 

「!」

 

 

 

見たことある、とある正式名称。

 

 

 

それを見て思い出す。

 

 

 

引き込まれる直前の話。

 

 

 

それに触れて思い出す。

 

それは俺が望んで、選んだ機体が。

 

 

そう、確か…

 

そう、確か!!

 

それは…!!

 

それは…!!

 

その 機体 は…!!!

 

 

 

 

「RGM、7、9、えぬ?」

 

 

 

浮かび上がった文字。

 

リネットが言葉にする。

 

ああ、その通りだよ。

 

これは、その通りの 機体 だ。

 

 

 

 

 

「人類の英知が作ったモノなら!人を救ってみせろぉぉぉオオ!!!

 

 

 

 

腕に絡みつく光の糸を引っ張りあげる。

 

すると光はさらに溢れ出た。

 

その風圧と光圧によってネウロイが集めていたエネルギーはかき消された。

 

俺はさらに光を引っ張りあげる。

 

その叫びに応えるが如く、ナニカがこの手に収まった。

 

 

 

「!」

 

 

 

連射式のライフル。

 

その名は、ジム・ライフル。

 

ジム・カスタムが扱う優秀なメイン武器。

 

 

 

「キィィィ!!」

 

「っ!」

 

 

 

ネウロイが威嚇するような声を上げる。

 

俺は歯を食いしばり、残っている片手で再度リネットを強く抱きしめながら、もう片方の手に握られているジム・ライフルを真っ直ぐネウロイに構えてポジションを確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

トライアルモードは、遊ぶ前に機体を選ぶ。

 

選んだのは低コストの中でも特に優秀な機体。

 

それはRGM-79N。

 

通称、ジム・カスタム。

 

五日前に画面越しに選んだそれは、ネウロイを撃ち倒すための、人類の希望となるらしい。

 

 

 

 

「ネウロイィィィ!!」

 

 

 

 

 

トリガーを引いた。

 

 

 

 

 

つづく






長過ぎんだろ!?(15600文字)
どんだけ妄想膨らませてんだよ、オイ。

そんなわけで…
ガンダムバーサス始めました。


ではまた
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