GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第31話

 

 

正直、何が目的で章香に北郷家へ連れて来られたのか今のところはっきりしてないが、とりあえず俺のことを紹介したくてご両親に会わせたのは確かだと思う。なにせ同じ部隊に所属する副隊長として隊長である章香と常に連携を取ってきた関係だ。そのため軍人家系な北郷家に紹介するのはごく自然な流れなんだと思う。

 

ただ急にご両親と会合果たすのはかなり神経使った。事前に知らせてくれたらもっと気が利いた言葉とか交わし会えたのだが、なし崩しに物事が進み、気づいた時には北郷家と食事を一緒にしていた。

 

ああもう無茶苦茶だよ。

 

その後は父親の茂史さんとは食後に酒盃を交わして、最終的には気に入られてしまった…… のか??まあ章香のこと任せると言われたので信頼に値してるってことだろう。頑張ろう。

 

まあ海軍少将に酒盃を注いでもらったことは一生忘れられない思い出になってしまった。恐れ多すぎる。もう終わった話だけど俺としてはもう少しソフトなのご希望だった。

 

 

 

さて、北郷家に来て2日目。

 

前夜はただの布団じゃなく、"お"布団って言いたくなるレベルの寝心地。

 

本当に久しぶりだと思う。

 

あと湯船。

 

北郷家の立派な風呂だ。

 

肩まで浸かったのはいつぶりだ??

 

宮藤家に行った時以来か?

 

そうなると半年以上前??

 

いや待て。

 

よく考えたら一年以上前の話だぞ。

 

だって宮藤家にお手紙届けにお邪魔したの去年の梅雨明けの頃だし。その後はウラルに向かい、途中でハッパさんに呼ばれて舞鶴に向かったがそこでも湯船に浸からずシャワーで済ませ、その後は佐世保に出向いたけど長崎の皿うどんだけ楽しむと直ぐに戦線へと戻ったからな。湯船はもうあまり記憶にない。

 

あと佐世保と言えば皿うどん娘こと黒田那佳は元気だろうか?半ば無理して退院してきたジュンコさんがいるから大丈夫だと思うが、もうあの教官代理みたいな奴が魔女候補生の指導者にならないことを祈るとしよう。同じ指導者としてそこは心配だ。

 

 

「章香、おはよう」

 

「おはよう黒数、よく眠れたか?」

 

「眠れた。お酒も回ってグッスリだった」

 

「ふふっ、そうか。あとその浴衣も似合っているぞ。深めの紺色は大変君らしい色だ」

 

「ありがとう。この浴衣涼しくて助かる。あと章香は今日も振袖姿なんだな」

 

「そうだな、ここに君といる間は着てるつもりだ。あ、それと今日は下街まで行かないか?ここでゆっくりするのもいいが君のことだ。体動かしてないと少し不安だろう?」

 

「それ章香が言う?どうせ朝起きたら素振りしてたんだろ?俺は寝てたけど、微かに聞こえてたぞ木刀の音。慰安旅行って名目なのに鍛錬をやめないとは困った隊長さんだ」

 

「はっはっは、それを言われると耳が痛い限りだな。ま、それで、どうだ?出かけるか?」

 

「せっかくのお誘いだ。案内して貰おうかな」

 

「ふふっ、わかった。と、言っても幼少期の記憶が頼りだからな、あまり自信ないが案内させて貰おう」

 

「適当に歩けば良いさ。時間はある」

 

「そうだな」

 

 

その後は朝食を頂き、予定までしばらく寛ぐ。

 

お借りした部屋の縁側から外を眺め、浴衣姿を夏風に靡かせる。

 

差し掛かる夏の暑さは既に石川まで届いてるみたいで、蝉の鳴き声が響き渡っている。

 

 

 

「……やばい、暇ってこんなに辛かったか…?」

 

 

章香と出かけるまでぼーっと座っているのだが、軽くワーカーホリック拗らせてしまってるため少しソワソワしてしまう。

 

まあそれもそうだ。

 

いつも朝起きたら考えるのは第十二航空隊のことばかりであり、これも章香から准尉の階級と副隊長の地位を渡されて始まった。

 

しかしこれに関しては別に苦痛ではない。

 

自ら戦争の間に飛び込んだ身であるが彼女との空は楽しいし、苦楽を共有にして部隊を率いる毎日は充実している。

 

あと第十二航空隊のウィッチ達が はお利口さんだから頑張れたのもあるな。

 

恵まれてるわ。

 

 

 

「黒数さん、冷茶はいかがです?」

 

「二海さん、ありがとうございます」

 

「いえいえ。それにしてもお暑い中を石川まで来てくれてありがとうね。章香のやんちゃに付き合ってくれたみたいで」

 

「ははは、驚きましたよ。慰安旅行と言ってまさか実家に連れられるとは思わなかったですね。本人も到着するとイタズラ完了とばかりに笑み浮かべて。いやぁ、してやられた…」

 

「章香は喜んでました。振袖の裾を通す時もそれは嬉しそうに」

 

「娘さんはここにいる時いつも振袖なんですか?」

 

「どうでしょう?着たり、着なかったり、気分に寄ると思います。ただ…」

 

「?」

 

「今回の振袖は彼女にとって特別とだけ、言っておきますね」

 

 

クスクスとほんのりイタズラっぽく笑う二海さん。カラカラと笑う章香の姿と重なる。この性格はおそらく娘に引き継がれているのだろう。

 

 

 

「章香の振袖、どうでした?」

 

「とても綺麗でした」

 

「あら即答。でも良かった。気に入ったのならこれから毎日見れるわよ」

 

「?……ああ、なるほど。ここにいる間って事ですね。はい。彼女も軍服を一度置いて、ちゃんと休むことを選んでようでなによりです」

 

「あら、これは少し難題ね…」

 

 

 

冷茶を飲みながら二海さんとしばらく談笑。

 

願那夢のことも聞かれた。

 

何が始まりで、それは俺にとって何なのか。

 

黒数強夏をたらしめる大事な箒。

 

この世界に救いを願われた形。

 

約束事を果たすための宇宙(そら)…と。

 

 

 

「黒数、車の準備ができた。行こうか」

 

「わかった。では二海さん、しばし娘さんをお借りします」

 

「いえいえ、こちらこそ娘をよろしくお願いします」

 

「母上、夜には戻ってくる」

 

「わかったわ。気をつけて行ってらっしゃい」

 

 

二海さんに見送られながら車に乗り込み、北郷家のお屋敷を離れる。華族の中で北郷家は小さい方だと言われたがやはり俺からしたら充分に大きく感じる。背中に感じる家名の重みから離れて、振袖の章香と共に下町に。

 

 

 

「ほー!歌舞伎!」

 

「知ってるのか?なら見て行くか?」

 

「せっかくだ、お金落としておこう」

 

「ふふっ、了解した」

 

 

適当な屋台で水飴を購入して劇場の中に入る。

 

夏の暑さに負けぬ迫力満点の演技が繰り広げられ、台風のように長い髪の毛を頭を回す歌舞伎男の姿は盛り上がりを見せる。三味線の音に合わせて俺も水飴の割り箸を回して口の中に放り込み、この時代の大道芸を楽しむ。手拍子に合わせた演出は役者だけではなく観客すらも飲み込んだ。

 

そして…

 

 

 

「いぃ〜やぁ〜あぁ〜!

 わぁ〜れぇ〜こぉ〜そぉ〜わぁ〜!

 ふぅ〜そぉ〜うぅ〜のぉ〜そぉ〜らぁ〜!

 よぉおおおおぉぉお!!(ポポン)

 

 がぁぁ、んんん、だぁぁぁ、むぅぅうぅぅ、ぞぉ!!

 

 

カカン!と決めポーズ。

 

だがあまりの不意打ちに…

 

 

ブフーッッッ!?!?

 

「はっはっはっはっは!!!」

 

 

 

大歓声の中で俺は思わず吹き出し、章香はカラカラと大笑い。

 

まさかのガンダムだった。

 

そして終幕。

 

拍手の中で幕引き、時の流れも忘れてたっぷり一時間分の演劇は無事に終了した。

 

 

 

「ま、まさかここで願那夢が見られるとは…」

 

「ふふふっ、そうだな、まさか、ここで願那夢が見られ…ふふっ!黒数の驚いたあの顔!本当に面白くて!あっはっはっは!」

 

 

随分とご満悦な章香。

 

たしかに劇は面白かったけど俺からしたら最後のインパクトに全て持って行かれた。

 

願那夢からどれだけ影響を受けてんだよ。

 

 

 

「第十二航空隊の自慢の副隊長がこうして皆に笑顔を与えてくれる。良いことだと思うな」

 

「だからと言ってまさか石川で歌舞伎られるとは思わなんだ…」

 

「はっはっは!たしかに。私も初めて見たよ」

 

「では収穫の一つとして受け止める。ええと…こうだっけ? いぃ〜やぁ〜!がぁ、ん、だぁ、むぅぅうぅ!!」

 

 

脳内でカカン!と音が鳴った気がする。

 

そして隣の章香は「あっはっはっは!」と歌舞伎で見た光景を思い出すように笑う。

 

年相応な笑みを浮かべる彼女は素敵だろう。

 

 

それからも町々を歩き回り、道の途中で見られる大道芸や屋台を巡り、時には日陰で涼みながらかき氷のシロップで舌を青くし、綿飴を口に頬張る。昔ながらって味が口の中に広がる。

 

そしてお昼時には食堂に来店して二人で味噌鍋を囲いながら笑談しつつ石川は名物を楽しむ。

 

その後は店を出て、特に買い物をする予定はないが市場まで足を運び、人々の活気を眺めるながら歩く。

 

それから近くに足湯を見つけたので歩き疲れた脚を癒すため二人並んで腰掛けた。

 

蝉の音と元気な子供の声、足湯に流れるお湯の音が響く。

 

結局市場で購入した温泉饅頭を齧り、俺たちは食べてばかりだと冗談を言いながらしっかり体を休めて英気を養う。

 

時間は流れる。

 

気づいた時には夕日が落ちて行こうとする。

 

そして俺たちは……砂浜の前にいた。

 

 

 

「陽も落ちてくると流石に涼しいな。これが8月の真っ只中ならまだ明るくたまらない… って章香、振袖姿で砂浜っていいのか?それ特別なんだろ?」

 

「!……ふふっ、それは大丈夫だ。走ったり、飛び跳ねたりしなければいい」

 

「風が強くなったら戻るぞ。流石に砂風でその振袖は汚したくない」

 

「優しいんだな。わかった」

 

 

 

適当なベンチに腰掛ける。

 

柔らかな夏風。

 

まだ涼しいが来月には今よりも暑くなる。

 

そんな空は晴天。

 

夕日に染まったオレンジ色だが、眺めても飽きない色をしている。

 

しばらく二人で静観して……

 

 

俺は口を開いた。

 

 

 

「やっと落ち着いて、()()と話せるな」

 

「!!……そうだな、ここまでドタバタとしてたからな」

 

 

バンシィを撃退後も浦塩にいる民間人を輸送船に移動させて続けて、ネウロイの追撃を警戒するため哨戒も休まずに飛び続けて、腰を落ち着けて色々と話したいのに互いに休まらぬまま舞鶴に戻ってきて、今やっとこうして話せる。

 

 

 

「君は断片的にも言ってくれた。落ちた先は魔法陣で、そこから一度元の世界に戻れて、そして再び戻ってきたと」

 

「本当はこの世界を忘れてしまっていたりもしていたがな。でも思い出してさ。それで全て置いて俺はこちらを選んだ」

 

「…… なぜ?君は願ってた筈だ。元の世界に帰れることを。それはネウロイを討ちながら、呼ばれた意味を全うすれば、おのずとそこに行き着く筈だと考えて、その時は訪れた筈だ。しかも何もかも忘れることができた。戦争の中にあった記憶も、経験も、苦痛も、君は平和な世界に戻れた…筈だ!」

 

「…」

 

「黒数は… 充分にやった。多くのネウロイを倒し、救い出し、人類に希望を与え、願那夢として心に刻ませてきた。君は充分すぎることをやった。そう思えば……っ、それでよかったのに…なぜ思い出してしまったんだ!?」

 

「それは__」

 

「事実を聞けばそれは君が帰還できたことに喜びだって感じていてる。君の願いだ。もう戦わなくたってよかった筈だ。それでよかった筈なんだ。でも…ぁぁ、でもっ…!」

 

 

 

彼女は震える。

 

これまで伝えたかった思いを込めて。

 

 

「私は、君が戻ってきたことを、嬉しがってしまって、それで『ただいま』と返せたことに強く安心してしまった。けど君がそのまま忘れてくれたのなら、縛る必要も、約束だって空に消えて、それは私だって諦めれた筈で…」

 

「それだよ」

 

 

 

言葉を被せる。

 

彼女の『諦め(おわり)』を俺の『続きから』で被せる。

 

 

 

「俺が章香との約束を諦めれなくて戻ってきたんだ」

 

「!?」

 

「そこに願那夢だとか関係ない。ただ黒数強夏としての一人の人間が北郷章香を忘れることが出来なかっただけ」

 

 

 

目を見開く章香。

 

やっと意味を聞けたからこそ、驚きが多くを占める。

 

俺は続ける。

 

 

「そりゃ当初は元の世界に戻ることが正しいと思ってた。明らかに俺はこの世界のイレギュラーだから。そして実際に戻れた。それから都合よく忘れていた。だからそのまま何も無く終えること(ゲームオーバー)も可能だった。けれどさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒数強夏 の 物語り は 嘘 にならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界の黒数強夏は『続きから』を欲していた。

 画面(かべ)の向こうから俺が促していた。

 黒数の物語(エクバ)を続けろと。

 強夏の約束の空(ガンダム)を続けろと。

 そしたらさ、黒数強夏は次に何を思い出したと思う?」

 

「なにを…おもいだす…?」

 

 

 

ふと、海を見る。

 

ソレを思い出した時のように、水平線を眺める。

 

思い浮かべた、その名は…

 

 

 

 

北郷章香だった」

 

「!!」

 

「俺は君を忘れることはできなかった。この世界の黒数強夏は北郷章香を忘れることはできなかった。だから続けることを選んだ。だって俺が黒数強夏にそう()()()から」

 

 

 

 

この世界の黒数強夏は望まれてやって来た。

 

それが魔法陣の意味。

 

人類が怪異から救われること望んだから。

 

そしてそれは、俺も同じ。

 

人類(おれ)も望んだから。

 

黒数強夏がこの世界に来ることを。

 

 

 

「これが全てだ。ここにいる理由はそうだ」

 

「す、すべて…わたし、が」

 

「……これが答え、満足いかないか?」

 

 

彼女に視線を戻す。

 

しかし、まだその表情は優れず…

 

 

 

「その……でも、それって、結局は…」

 

 

その先の言葉は分かる。

 

俺が知る彼女の事だ。

 

 

 

「その口でまた『私が縛ってる』なんて戯言を述べるなら俺の口で塞ぐぞ」

 

「ぇ?」

 

 

 

彼女の手を握りしめ、立ち上がらせる。

 

舞鶴のような、海風が靡く。

 

まるであの時のように、俺と彼女だけを包み込むように、空がこの場を選び取った。

 

 

 

「いいか?よく聞け章香。

 『縛る』は無し。

 『でも』も無し。

 『なぜ』も無しだ。

 『君』が『俺』を否定するな。

 『北郷章香』が『黒数強夏』に惑うな。

 『彗星(ながれぼし)』に願われたこの存在(たましい)は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑 の 魔女(ふみか) に会いたくて戻って来たから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ____納得いかないかい??」

 

 

 

 

ほんの少し困ったように俺は笑う。

 

かなり一方的な感情だけど。

 

でもこの想いは間違いないから。

 

 

 

 

「黒数」

 

「なんだ?」

 

「君は…………」

 

「うん」

 

 

重たく、重く、言葉を乗せ…

 

 

 

「本当に、困った人だ」

 

「そうだな……心当たりしかないよ」

 

 

 

と、肯定して、あきらめたように笑うだけ。

 

自分でもわかってる。

 

これほど困ったウィザードはココにしかいないだろう。

 

だから彼女もあきらめたように、笑ってくれた。

 

 

 

 

「少し、私も君に困らせる…」

 

 

 

ストンっ、とコチラの胸に顔を落とす。

 

また、同じく両肩に彼女の拳が力なくと埋まる。

 

それと同時にひらりと揺れるポニーテール。

 

彼女の大事なトレードマーク。

 

静かな感情が比例して綺麗に靡いてる。

 

 

 

「黒数…お願いがある」

 

「なんだ?」

 

「あの時みたいに…つよく、このままだきしめてほしい」

 

「…」

 

「君をたしかにさせてほしいんだ…」

 

「……振袖、少しダメになるぞ?」

 

「かまわない。これは君だから…特別なんだ」

 

 

 

頷いて、ゆっくりと手を広げる。

 

胸の中に収まるこの魔女をつよく抱きしめる。

 

いつもは大きな存在として。

 

でも腕に収まり、今はとても小さい。

 

お互いの鼓動を分け合う。

 

そうしてここにいることを確かにする。

 

しばらく抱きしめ合い。

 

その温度を伝え合い。

 

空の風は二人だけを願って頬を撫でる。

 

彗星 と 魔女 は 宇宙(そら) に 祝福 されたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二海さん、お世話になりました。茂史さんにも言いたかったのですが…」

 

「ごめんなさい。既に皇都へ戻ってしまわれました。これから忙しくなると残すと早足で向かわれて…」

 

「まったく、父上は出る際に一言くらい告げてくれれば良いものを…」

 

「あの人はとても不器用だから。でも章香のこれからを願ってたわ。どうか頑張って」

 

「はい、母上」

 

「では二海さん。改めてお世話になりました。ありがとうございます」

 

「またいらっしゃい。次はもっとそれ以上になってね」

 

「!……もし、それが、願那夢で許されるなら」

 

「ええ、きっとね…」

 

「強夏、行くぞ、隊長が集合に遅れては示しつかないからな」

 

「わかった。では二海!また!」

 

「ええ、お気をつけて」

 

 

 

それから車に乗り込み石川を後にする。

 

この数日間、とても充実した。

 

温泉にも入って、名物を楽しんで、章香のご実家では道場をお借りしたり、一回だけだが茂史さんから二刀流を学んだ。流石剣術免許皆伝者として章香が嫉妬するくらいには剣の教えは上手く、厳しい手解きの中で非常に充実した鍛錬だった。そうやって身も心も英気を養う。

 

小一時間ほど走らせて、舞鶴が見えて来た。

 

すると…

 

 

 

 

「「「せんせーい!」」」

「「「黒数さーん!!」」」

 

 

並走してる電車から顔を出して元気よく手を振る魔女達が数名ほど。

 

第十二航空隊のウィッチ達だ。

 

俺たちも窓を開けて手を振り返す。

 

そしたら不意に章香はこんなことを言い出す。

 

 

 

「そういえば強夏」

 

「?」

 

「いつからわたしのことを『章香』って言うようになったんだ??」

 

「え?…… あー、たしかに、そう言えばいつも北郷って言ってたのに気づいたら章香って言うようになってたな。いつからだっけ?」

 

「舞鶴に戻った時…か?いや、浦塩…の時か?でもいつのまにかだったな」

 

「うーん……うん、わかんないな。でも気づいたら自然とだったな……あー、それはともかく嫌か?」

 

「??」

 

「いや、その、急に下の名で呼ばれて…」

 

「章香が良い」

 

「え?」

 

「君には章香と呼ばれたい」

 

「そ、そっか」

 

「うん、それでいい……あ、で、でも!集団行動中は流石に章香はマズイと思うから…」

 

「ああ、わかってる。第十二航空隊の隊長してる時は北郷隊長もしくは北郷少佐で、俺も黒数副隊長または黒数准尉だろ?住み分けはしておこう」

 

「ふふっ、そうだな。では…黒数准尉」

 

「はっ!」

 

「これからもよろしく頼むぞ」

 

「了解しました、北郷少佐!」

 

「…」

 

「…」

 

 

 

 

__くくっ!!

__ふふっ!!

 

 

 

「はっはははは!!あー、やっぱり俺に軍規は似合わないな、自分でも酷すぎると思う」

 

「はっはっは!まあ、私たち第十二航空隊の時だけはいつも通りで構わないさ」

 

「そうだな、()()

 

「!……う、うむ、そうだな」

 

「……」

 

 

 

反応が悪い。

 

まあ、理由はわかる。

 

なのでススっと横顔に口元を移して。

 

 

 

()()()、今日からまたがんばろうな」

 

「ッ〜!もう、君って人は、まったく!」

 

 

 

困ったように少し声を荒げて抵抗する。

 

そんな彼女は年相応に可愛らしい。

 

 

 

 

 

 

 

「(もうお前ら結婚しろ…)」

 

 

運転手は心の中でそう言った。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 






黒数強夏とかいう『無条件』な存在。
年端も行かぬ娘に対してあまりにも特攻ですね。


ちなみにあんなことしておいて
まだキスも婚姻もして無いです(は?)



ではまた
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