GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第32話

 

 

さて、俺が北郷家に招かれてから既に10日が経過した。

 

もちろん俺や章香以外の第十二航空隊全隊員も短期的ながらそれぞれ休暇を取って来たようで皆の表情はとても良い。

 

ただその代わり「あの第十二航空隊のウィッチ!」ってことでもみくちゃにされた娘もいるようで良い意味で疲れたなど感想を頂いた。一年前までは北郷除いて俺たちはヒヨッコな集まりだったけど多くの活躍を通して扶桑ではそれなりに有名となった結果だろう。

 

あと「願那夢さんからサインを貰ってきて欲しかった」と声が多かったらしい。そのためウィッチから「大変だったんだから!」と俺に対しての苦情が飛び交う始末。

 

勘弁してくれ…

 

その後は改めて舞鶴に集合し、一年前と同じ舞鶴の講道館を一時拠点に活動を開始すると哨戒任務を中心に扶桑海域を任されることになった。

 

ウラル前線ほどの忙しさは無く、こちらも張り詰めない程度に活動している。それでも第十二航空隊は国民を安心させるため夏の日差しの中を飛び回り、ネウロイを警戒している。

 

 

その姿は講道館からも、伺える。

 

 

 

「あれは坂本と若本かな?それであっちの空は竹井達の編成か…」

 

 

 

この時、俺はやや異常だった。

 

 

 

「黒数、この場から見えるのか?」

 

「え?ああ…見える、けど……??」

 

「そうか。私には何も見えないな」

 

「そうなのか?」

 

 

章香には何も見えてないらしい。

 

あ、別に彼女の視力が悪いとか、体に異常が起きてるとかそんなことは関係なく、至って普通であり、可笑しいのは俺の方だった。

 

 

 

「君はそんなに視力良かったのか?」

 

「記憶の限りだと双方は1.8位だぞ?小学はフラッシュ暗算で、中学はビームライフル部で、高校は弓道で、視力には気をつけてた。まあ夜間哨戒ばかり続けてるから多少悪くはなってるかもだけど…」

 

「それなら私も同じくらいだ。後半は激化して夜は良く起きてた」

 

「でも、視えるんだよね……俺が変なのか?」

 

「そうなるな。だって…」

 

 

 

__空には何も誰もいないぞ?

 

 

 

彼女にそう言われて窓から外を見る。

 

たしかに、()()()()何も無いように見える光景だ。

 

あるのは晴天の空と舞鶴の優しい空気だけ。

 

あとは海面にポツンと赤城の船が停泊してるのみ。それ以外は殺風景だ。

 

 

でも……

 

俺にはここからでも見える…

 

いや()える。

 

もしくは『分かる』と言った方が正しいか。

 

 

 

「なら黒数、あまりウィッチを意識せずに空を見てほしい」

 

「意識せずか?うーん……」

 

 

 

ぼんやり…とかな?

 

そうだな。

例えば…気持ちは縁側で座ってる時の俺。

 

北郷家で飲んだ冷茶は美味しかった。

 

そう考えながらボーと空を見る。

 

 

……たしかに。

特に何も見えない。

 

この先にある扶桑海をウィッチ達が飛んでいるのだろう。

 

 

 

「なら次に、何処か空を飛んでいるだろう坂本達を意識してほしい」

 

「…」

 

 

 

そう言われて意識をウィッチに。

 

箒で空を飛ぶ魔女の存在を。

 

空を通して、遠くを視る、感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

「__!!」

 

 

 

一瞬だけ、体が浮いたような感覚。

 

実際には何も浮いていない。

俺は椅子に座ったまま。

 

 

でも、意識が、認識が…

 

一瞬だけ重力をそこに置いて__浮いた。

 

 

まるで見ている世界が変わった……

 

いや増えたようだ。

 

もちろんココが舞鶴なのはたしかだ。

 

変わりない光景が広がっている。

 

見慣れた水平線。

 

優しい舞鶴の風。

 

でも視界のフィルターが違う。

 

外部から別のカートリッジを差し込まれたことで映るものが増えたようなそんな感覚。

 

 

 

だから___より分かる(視える)

 

その『存在』をこの場からでも把握できる。

 

 

 

__あの辺りに坂本。

 

__その近くに若本。

 

__そこから離れた西側には竹井か。

 

__おや?アレはもしや新藤少尉か?

 

__ああ、加東中尉らしき人まで視える。

 

__これは穴拭?再編成で合流したのか。

 

__視える!俺にも視えるぞ!

 

__魔女が!

 

__鉄の箒が!

 

__白鳥が!

 

__宇宙が!!

 

この宇宙(そら)を通して、魔女達の姿が__

 

 

 

 

「きょうか」

 

 

 

 

女性の声。

 

柔らかく、甘く、耳たぶを撫でるように。

 

一瞬にして宇宙に向けた(飲まれる)意識は戻される。

 

 

 

「うぇああ!!?」

 

「!」

 

「あ、え?……ふ、章香か?な、なに?」

 

「あ、いや、呼んだだけだが…」

 

 

耳元で囁くように俺の名を呼んだ章香。

 

業務中の彼女はキリリと苗字(くろかず)の方で呼んでくれるから俺も上官の声って事でキリリと反応する。

 

しかし今の名前(きょうか)隊長(きたごう)ではなく、章香として呼んでくれたように感じ取れたため、かなり不意打ちだった…

 

あー、言いたいことわかる?

 

ともかく驚いたってことだ。

 

少し心臓がうるさい。

 

 

 

「かなり集中してたみたいだな?」

 

「集中……なのかな?まあでも見えないモノを視ようとしたからな」

 

「そうか…それで?やはり飛んでるウィッチは見えたのか?」

 

「ああ。見え… たと言うより分かったと言った方が正しいかな?視覚的に言えば当然姿は見えないけど、でも意識的に言えばその存在が分かるというべきか…」

 

「ふむ、なるほど。もしやこれはナイトウィッチとしての適正か?しかし魔道針(アンテナ)は何一つ立ってないな」

 

「でもそこは少なからず関係してると思うよ?夜間哨戒とかじゃこれまで暗闇で見えないモノを感じ取ろうとしてきたから、その環境に合わせて自然と感覚が鋭くなったのかもな。他者の魔法力やネウロイの熱量を感知する辺りナイトウィッチに近しいと思うが」

 

「だとしたら君自身の進化かもしれないな」

 

「おいおい、まるで『ニュータイプ』だな」

 

「ニュータイプ……??」

 

教材(ガンダム)の中にある世界の変化、もしくは変革をもたらすとある設定。いつだって世界の変化は人の手から始まる。だから人類は誤解を招いて人間同士で争うようになる。なのでその誤解を招くことない状態で人同士が立ち会い、そして分かり合う事がニュータイプとしての役割。もしくは思想。それは地球の引力に縛られない無重力に出ることで人類は解放と共に目覚めるのだが… まあこの辺はかなりオカルト(アニメ)だから省くよ。ともかく新たな人としての形がニュータイプって言葉になる」

 

「なるほど。まさに人類の進化だな。もしかしたら君の扱うガンダムはそこに紐付て備わった力かもしれないな」

 

「それはまだわからない。そもそも俺はニュータイプとしての素質があるかも不明だ。そもそもニュータイプは選ばれてそうなる。簡単に言えば特別な人だけの進化先だ」

 

「む、特別ってことなら私からしたら強夏は特別な人に見えるさ」

 

「俺はいつも必死なだけだって」

 

 

 

冷たい麦茶を喉に流す。

 

熱の高まった体が冷えていくようだ。

 

ちなみに熱の高まった原因の1割くらいは先ほどの章香のささやきだ。

 

正直に言えば冷静なフリしている。

 

 

「まあでもそうだな。ニュータイプの話は置いたとしてナイトウィッチとしての能力は関わってると思うぞ?見えないけどモノを視ようと体が変化してるなら、それはウィッチの存在を感知する能力を助長させてるはずだし。あとナイトウィッチとしての適正そのものに関連つけるなら『習い事』も原因の一つだろうし」

 

「習い事?ああ、フラッシュ暗算か」

 

「そうだな。あと中学の頃にビームライフルをやっていて、その後は高校で弓道だな」

 

「なるほど『視る』ことに関しては得意なる訳か。それがナイトウィッチとしての適正力の幅を広めたということか」

 

「あと孤児院暮らしとして幼少期は閉鎖的だったからな。そこも関係してそう」

 

「あらゆる要素がナイトウィッチとしての適正力に変わっているわけか。あ、これ論文に書いていいな?」

 

「お好きどうぞ」

 

 

 

ある程度休憩すると俺は仕事に意識を戻す。

 

章香も論文にまとめるメモ書きを終えると満足したのか、ポニーテールはご機嫌。

 

事務作業に戻る。

 

扇風機の風と冷たい麦茶で夏の暑さと戦う。

 

まあウィッチは暑さに強いからそこまで夏の暑さに怯えてはないが。

 

え?理由?

 

まずウィッチは身体に魔法力を秘めていることで『病』にかかり辛い。

 

風邪とかそう言った病状に強い。

 

そして"熱中症"って『病気』にもならない。

 

熱中症の原因は『熱』から。

 

なので外部から受ける熱を体の魔法力で弾いて比較的涼しい状態が保てる。

 

これは冬も同じ感じだ。

寒さを魔法力で弾いてる。

 

ちなみに俺も貰い物の魔法力とはいえ周りのウィッチと同じことができている。

 

暑さには強く寒さにも強い。

 

てかそうじゃなきゃ去年の12月冬真っ只中を浦塩から前線基地までストライクユニットで飛んで戻ってこなかった。

 

普通ならあの極寒で内側から凍りついている。

 

それでも飛んで戻ってこれたのは魔法力があるおかげだ。それでも寒かったけど。

 

とりあえずそんな感じにウィッチは夏の暑さに大変強いし、北の国スオムスで生まれ育ったウィッチなんかは、俺たちが極寒と感じる場所でも涼しい程度にしか思ってないらしい。

 

証拠としてスオムスから来たルーデルがそう。

 

肌寒さ目立つ秋頃に観戦武官としてやってきたルーデルなのだが、シャワー後はタオル一枚で廊下を歩き、しかし凍えた様子もなく彼女は平然としていた。

 

こんな感じにスオムスのウィッチは少しおかしいところある。

 

 

ちなみに俺はルーデルにアイアンクローして真っ裸を注意した。

 

 

 

え、上の階級??

 

倫理観ごと投下爆撃してしまった爆撃バカにそんなの関係ねぇゾ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8/20 扶桑大本営会議室。

 

夏の暑さが本格化する中で陸軍と海軍が顔を合わせた御前会議がこの日、開かれた。

 

簡単に言えばこの先、扶桑皇国軍はどのように運用するべきかを決定する大事な会議なのだが…

 

 

 

「(あ ほ く さ)」

 

 

すっっっごい、仲が悪そうな陸と海。

雰囲気だけでそれを物語っている。

 

それぞれのメンツとプライドがぶつかり合うこの会議をやる意味があるのか首を傾げたくなるが方針は定めないとこの先遅れを取り続けることになってしまい、そのまま共倒れなんてあり得る。

 

そこら辺は御前会議に参加した各軍の将校も理解してるため意見を交わそうと構えていた。

 

 

さて、今回の会議は『とある作戦』を認可してもらうために切り出された皇国軍の会合。

 

陸海双方は差し出された資料に目を通す。

 

しかし…

 

 

「ふん!何を言うか!奴等は大河を越えん!あの聳え立つネウロイの『山』も同じだ!この作戦は現実的ではない!!」

 

 

と、海軍側は主張。

叫んだこの人は『堀井』って名前の少将。

 

 

さて、現実的ではないと言われたこの作戦、立案したのはウラル戦線で第十二航空隊と混合軍隊を組んだ扶桑陸軍航空飛行隊の第一戦隊の加藤武子少尉である。

 

現在は再編成されて第二十四戦隊のウィッチになっている。

 

そんな少尉陸軍が立案した作戦は『"山"が海を渡って扶桑皇国を攻めてくる可能性があるので早めの対策を行うことで本土決戦に持ち込ませずコレを海上で迎撃する』で『山のコアは陸海全てのウィッチで連携して破壊するため海軍は主力艦隊(おとり)でネウロイを押さえて欲しい』ってことだ。

 

前提として山が大河(うみ)を越えてくることなのだが、まずネウロイは水を嫌う性質がある。

 

これは共通認識。

実際にネウロイは水を嫌う。

 

だから山が海を通る筈がないと海軍は主張する。

 

しかも海軍は浦塩を失ったのは陸軍のせいだと責任転嫁する始末。ここはやや屁理屈すぎる。

 

すると陸軍は「ふざけるな!お前ら海軍はネウロイのコアの報告が遅いから!信憑性が薄いから!」と理由になってるからわからない理由を捏ねて亀裂が走る。

 

そしてレスバが開始。

 

ああもう無茶苦茶だよ。

 

北郷も見慣れた光景なのか「またか」とため息をついている。

 

そして同じく加藤武子を後方で見守っていた上官の江藤敏子も痺れを切らして「話を!聞け!」と一喝する始末。

 

それを聞いた海軍側は「保護者(加藤武子)が可愛いですか?」と陸軍の赤っ恥を広げようと煽り散らす。

 

これには江藤敏子も我慢の限界。

 

元々、江藤中佐は軍に対してあまり関心を抱いておらず、このような将校輩を見てきた。

 

特に部隊長として連体形の無さを非常に嫌う人なので陸海で言い争い、ましてや揚げ足取りに揚々とする将校(おっさん)に拳は静かに震える。

 

 

「まっ、どうしても船が欲しいと言うなら逃げ出すための水雷艇程度ならご用意できますよ」

 

「っ!!!!」

 

 

 

最後の余計な余計な煽り。

 

彼女はもう限界だ。

 

そんな輩を殴ろうと、踏み出す手前で……

 

 

 

 

「山は動くぞ」

 

 

 

「「「 !!!???? 」」」」

 

 

 

と、俺は口を挟む。

 

 

 

「まず貴様は誰だ!?そこのウィッチと共にいるようだが、もしや小娘と同じ参謀まがいな阿呆であるまいな??」

 

 

煽るための口は達者だ。

 

本当に呆れる。

 

しかし隣に立っている北郷は俺が口を開いたことに驚いていた。

 

俺は一瞬だけ目線で「任せろ」と言葉を投げ、二歩ほど前に出て手を伸ばす。

 

手のひらからビームフラッグを上に放った。

 

 

 

「なっ!?」

「魔法!?」

「男が!?」

 

 

コレには陸海関係なく将校達は驚きを示す。

 

 

 

「自分は第十二航空隊副隊長の黒数強夏准尉」

 

 

 

__またの名は…

 

ビームフラッグを握り潰しながら淡々と告げた。

 

 

 

願那夢と言われている者だ」

 

 

握りつぶした魔法力が拡散するとプレッシャーと同時に風圧が生まれ、配られた資料が少しだけ浮いて動く。

 

それが決定的になったのか魔法力を使える男性ウィッチってことで俺の正体を理解した将校は目を見開いて驚いていた。

 

それでも、小童程度に身を引かない海軍少将の堀井は再び叫ぶ。

 

 

 

「だ、だからなんだと言うんだ!?山が海を越えるだと!?バカバカしい!そこに証拠はあるのか!!」

 

「ある」

 

「なっ!!」

 

 

 

間を置かずに返し、堀井はそれに見開く。

 

 

 

「ネウロイは進化する。奴らは形を覚え、浮くことを覚え、戦い方を覚え、人類の真似ををする事で人類に近づき、その怪異と純粋な物量を活かし、人類を超越しようとする。そうして進化を繰り返し、最近では心臓(コア)を覚えることで俺たちを苦しめてきた。奴らは学ぶ」

 

「!」

 

「ならば次にするのはなんだと思う?山だから大河を渡れないと?それは断言できない!奴らはまずネウロイだ、奴らがこれまで何をしてきたのかは貴方達も見てきたはずだ!ネウロイは固定概念など投げ捨て、その悍ましさを形作る怪異だぞ!」

 

 

 

人前で大声など久しぶりだ。

 

しかし訴えを止めてはそこまでだ。

 

俺は続ける。

 

 

 

「ネウロイが黙って人類を生かしてるなど思えん。俺たちを!国民を!皇国を!全て!殺し尽くそうとネウロイはこの島に必ずやってくる! 故に加藤少尉の作戦案は実行すべきだ!これは扶桑皇国が本土決戦を免れるための重要な分岐点である!」

 

 

 

ただの准尉程度では何の意味も成さない場違いな発言になってしまうだろうが、こちらは願那夢として威光と威名が備わりその発言力はかなり大きい……と、思うが。

 

てかそうであってほしい。

 

まあ彼らも願那夢たる俺の活躍を知っているため虚言ではない事は承知の上だ。

 

実際に顎に手を置いて考えてる者もいる。

 

しかし未だ認めない将校もいる。

 

全員を納得させるのは至難の業だが俺は別に全員を認めさせようとは思ってない。

 

今回俺が口を挟んだのはあまりにも危険な認識が彼らにあるから。

 

ネウロイに固定概念は無くした方が良い。

 

 

 

「誰かがアレを『山』と名付けたと思うが、自分からしたら山に見えただけの要塞だ。今は山のようにどっしりと構えているが結局はネウロイだ。浮くくらい出来る。それに人型ネウロイの報告も入ってる筈だ。奴も人の形して空を飛んで襲いかかってきた。それはなぜか?ネウロイだからだ!固定概念は捨てるべきだ!山だろうが、人型だろうが、羽無しだろうか、本質はネウロイって事に変わりない。奴らは人類を滅ぼさんとするため姿形に囚われず襲いかかってくる。必ず来るぞ。あの山は扶桑皇国に」

 

 

 

俺はウラルの最前線で戦い抜いてきた。

 

凡ゆるネウロイのタイプを見てきた。

 

だから怪異の対応策として陸軍と連携しながらネウロイの情報をまとめ、俺や北郷は扶桑皇国軍やその他各国にも情報を提供してきた。

 

それは大本営にも伝わっていることであり、俺の発言に出鱈目はなく常に最前線で戦ってきた者の言葉として御前会議に響き渡る。

 

 

「どう思う…?」

「奴の言う事はわかる……」

「しかし仮にそれが本当だとしたら…」

「だがあの山を討てるのは空のみだろう…」

 

 

 

少し冷静が生まれたのか将校同士で話し合いが始まる。俺は大股で元の位置に戻り後は運営する彼らに任せることにした。

 

一度横を見る。

 

加藤武子と視線が合う。

 

俺は「後は頑張って」と口元だけニヤッと返して北郷の影に隠れた。

 

 

「突然驚いたぞ、黒数…」

 

「悪いな。でも断言させないためだ。ネウロイの可能性を考慮させないと、ただでさえ動きの遅い大本営は双方で揚げ足取りしながら共倒れになる。そんなの馬鹿げてる…」

 

 

今回、口を挟んだのは固定概念を消すため。

 

ネウロイの進化能力を改めさせるため。

 

奴らは侮れないことを…

 

バンシィ(ネウロイ)に落とされた者として伝えたかった。

 

すると時間からして2分ほどか、将校は隣同士で話し合う。

 

それでも陸は陸、海は海と話すだけ。

 

おいおい、目の前の人と話しなさいってお母さんに教えてもらわなかったのか?

 

今は亡き俺の母も俺が幼少の頃に教えてくれたぞ。

 

 

 

「願那夢の活躍は聞いている。その言葉は比較的真実だろう。しかし!大打撃を受けた今そう安安と船は動かせん!」

 

「なっ!貴様らぁ!」

「まさか臆病風に吹かれたか!?」

 

「やかましい!その根本は貴様ら陸軍だ!」

「その通り!扶桑皇国の財産を失ったのは貴様らの失態がトドメとなっている!」

 

「何を言うか!そこの願那夢が海軍所属とするならネウロイのコアの情報は海軍から!情報提供の遅さは貴様ら海軍の責である!」

「結果として我が軍を犬死させた!それが許されることではない!!」

 

「大動員したのは陸軍の判断!海軍に関係はない!」

「そうだ!その通りだ!貴様らが痺れを切らした結果だ!」

 

「あのまま膠着しては扶桑皇国軍は確実に負けていた!浦塩に住まう国民すらもネウロイに蹂躙されていた!」

 

「我が軍の働きを侮辱するな!!」

 

「大陸を抑えて来たのは私達だ!!」

 

 

 

ぎゃー!ぎゃー!

 

わー!わー!

 

怨!怨!怨!

 

コノヤロウ!

 

バカヤロウ!

 

おいゴラァ!

 

やべーよ、やべーよ。

 

ぎゃー!ぎゃー!

 

こっからいなくなれ!

 

お前を殺す(デデン!)

 

 

 

 

 

 

「………なぁ北郷、帰っていいか?」

 

「気持ちはわかるが待ってほしい…」

 

 

 

頭痛そうにする我が隊長。

 

ポニーテールも元気ない。

 

ああー、また江藤敏子少佐プルプルしてる。

 

加藤武子もせっかく渡されたバトンも握りしめたままオドオドし始めた。

 

そうして再び口論合戦となる御前会議。

扶桑皇国軍大丈夫これ??

 

すると…

 

 

 

「その作戦案、わたくしめは賛成でございます!!」

 

 

 

 

車椅子の音。

 

横を見る。

 

そこには…

 

 

「た、竹井少将!!?」

「なにぃ!?」

「なんだと!」

「た、退役されてたのでは!?」

「何故ここにあの方が…」

 

 

声の主は竹井醇子の叔父。

 

扶桑皇国を支えし名門(竹井)の大英雄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、結論からすると加藤少尉の作戦は認可された。

 

それは軽井沢でご療養中だった『竹井少将』の言葉があったから。

 

扶桑皇国に対する熱い想いが込められた言葉の数々により扶桑皇国の殿下の琴線に触れたのか延長線に凝り固まっていた御前会議は動く。

 

またタイミング良く浦塩で構えていたネウロイの『山』も浮遊する能力を得たのか建物を破壊しながら海面を移動し始めたと報告が入り、加藤少尉の作戦は無し崩しであるが認められることになった。

 

そうして御前会議は解散。

 

第十二航空隊は北郷隊長に率いられてこの場から退席する。

 

部屋を出て緊張感から解放されると背筋を伸ばし、とりあえずストレス発散のため竹井の頭が手元にあったから上から掴んでワシャワシャワとする。あと普通に竹井少将にお力添えを願った彼女のファインプレーだから褒める。やはりコネって大事。いやコネは少し違うか。

 

 

 

「しかし久しぶりだな、竹井爺さん」

 

「ほほほ、久しぶりじゃな」

 

「なっ、黒数知り合いなのか!?てか、この方に対して竹井爺さんだと!?」

 

「知り合ったのは舞鶴の病院生活の時だ。俺が舞鶴航空隊のウィッチってことを知って色々尋ねに訪れて、色々話したかな。あと竹井爺さんからは良くウラルまで差し入れが来てたぞ?例えばお茶した時に醇子と齧ったお煎餅とか」

 

「え?…ア、アレそうなの!?」*1

「あー!いつの間に!ずるいぞバカ数!」

「(副隊長とお煎餅……いいなぁ…)」

 

 

御前会議の時と打って変わって雰囲気がいつもの第十二航空隊になり、肩の力が抜ける。

 

北郷も竹井少将と思わぬコンタクトを果たしていた俺に対して「やれやれ…」と呆れ顔である。

 

なんだよ?たしかに章香の父、北郷茂史と同じくらいめちゃくちゃ偉いの知ってるけど俺からしたら舞鶴の病院の療養中にアポ無しで入ってきた将校共と大差ないぞ?まあそれでも他の輩より人格者で澄んだ方だったから色々話を聞きたくなって会話したし、あと竹井醇子のことを任されたから承ったわけだし。わざわざ言われなくても副隊長として任されるつもりだったが、とりあえず竹井爺さんとはそこそこの関係を持っている。空から落ちた病人と車椅子のウィッチ好きなお爺さんって事でな。

 

 

それから北郷と竹井爺さんを残して、停めてある車まで足を進めると…

 

 

「あ、黒数准尉…」

 

「お?加藤少尉か。お疲れ様」

 

「え、ええ…お疲れ様」

 

「よかったな、立案通って。後日の作戦会議楽しみにしてるよ」

 

 

俺は用意された車まで移動しようとして…

 

 

「あの!」

 

「?」

 

 

加藤少尉から声をかけられる。

 

そして…

 

 

「ありがとう!あの時、貴方からも…!」

 

「気にするなよ。俺は思ったことを言っただけだ。加藤少尉の立案関係無くネウロイの固定概念をあの場で無くしておきたかった。あまりにもネウロイに対する認識が薄いからな」

 

 

そもそも誰かが『山』とか言ってるから地上に根付いて動くネウロイだと勘違いしてる訳であって、俺からしたら三角形のデカいネウロイって認識だぞ?

 

バンシィの時もそうだけど良い意味でも悪い意味でもネウロイに変わりない。

 

なら浮いたりするくらいそれは普通だ。

 

 

「頭の固い連中は現場を知らないからこまるなぁ?だろ?てかそこら辺は俺よりも加藤少尉が良く知ってたな」

 

「!!……ふふふっ、ええ…そうね!本ッッとうにそうね!!たしかに聞かん坊だもの!本当にもう!話を聞かないんだから!!」

 

 

相当フラストレーションが溜まっているらしい。

 

それから再度礼を言われ、また上官の江藤敏子中佐からも礼を言われ、陸海は一時解散。

 

またすぐに作戦会議で顔合わせになると思うが今は一息つくべきだろう。

 

出発までしばらく寛ぐ。

 

お菓子が用意されてたのでパリポリと。

 

お?このお煎餅のチョイス、竹井爺さんだな。

 

竹井も分かったのか目を見開いていた。

 

しばらくすると北郷が戻ってきた。

 

しかし、やや元気がない。

 

 

 

「北郷、おかえり」

 

「……え?あ、ああ……ただいま」

 

 

すこし反応が悪いな。

 

 

 

「疲れたか?」

 

「??…ふふっ、そうだな。やや、疲れたかな…」

 

 

 

少し困ったように彼女は笑う。

 

やはり気のせいか…?

 

まあこんなところ疲れるよな。

 

お偉いさんの怒声なんて精神的に参る。

 

ともかく早く舞鶴に帰りたい。

 

そう考えて、思考はここまで。

 

意識を次の作戦に切り替えて……

 

 

 

俺は気づかなかった。

 

彼女だけが抱えている問題に。

 

また彼女が覚悟していることに。

 

それに気づいた時は……

 

 

 

_____始まっていた。

 

彼女が一人で犠牲になろうとしてるところを。

 

 

 

俺はそれを、まだ知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ … …

 

 

 

 

 

 

その機体は___次へと進化する。

 

今は願那夢(ガンダム)を滅ぼすために。

 

 

 

つづく

 

*1
16話






Q_何が始まるんです?

A_第三次大戦だ。


まじめに説明すると

山の形をしたデカいネウロイが空を浮く→群れを引いて扶桑海を渡ってやってくる→海軍の主力艦隊を囮に海上決戦→その隙にウィッチが山のコアの破壊を目指す→しかしウィッチを信用しない海軍が存在する→作戦失敗を表向きに新型の艦[紀伊]で山を砲撃する→ウィッチが紀伊の砲撃に巻き込まれて危険なので北郷が単独で止めに入る→ああもう無茶苦茶だよ!ってこと。

これが原作の流れ。


で、原作では北郷が紀伊の砲撃を受けます。
撃ち落とされます。
わかって死ぬつもりです。
これが原作の流れ。



ではまた
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