GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第33話

 

 

「あ、あの!サインください!」

「わ、私もです!」

「わたしにもお願いします!」

「握手してください!」

 

 

 

陸と海の煽り合いがメインとなった御前会議から3日経過した。

 

扶桑の命運を賭けた海上決戦に参戦する多くのウィッチが京都府に集結し、その数は約120名となる。一応これでも多い方である。

 

もうこれは何度も言ってるが航空ウィッチは大変希少な存在であり、扶桑皇国のウィッチの比率を見ると陸型ウィッチが92%ならストライカーユニットを履いて飛べる飛行ウィッチは約8%である。

 

その中でまだ戦える飛行ウィッチを集めた結果として120名だが、陸海問わず疲弊した扶桑皇国軍から三桁はよく集めた方だと思う。

 

まあ、山を叩くことが本命な航空ウィッチだから数的に充分だと思う。心配なのは数より全体の練度くらい。しかし去年の夏から始まる長い戦いの中でここまで生き延びてるならウィッチも手練れの者ばかりだろう。あんまり心配するのも彼女達に失礼だ。

 

 

「やった!やった!」

「願那夢さんのサインだ!」

「ありがとうございます!」

「か、家宝にします!」

 

 

「家宝にしたいならこの先の戦いで生き残るんだな。さもないと意味ないぞ?」

 

 

「は、はい!」

「それなら大丈夫ですよ!

「願那夢さんがいるから平気です!」

「これから一緒に頑張りましょう!」

 

 

「ああ、よろしくな」

 

 

決戦前なので緊張するウィッチが多い。

 

緊張感を保つのは悪くないのだが、緊張しすぎても仕方ない。なので緊張を解せるため士気向上の貢献を表向きにファンサービスを行いながら「頑張ろう」とこの先の戦いに彼女達を向けて励ます。

 

そうすればアイドルに出会えたファンのようにお目目をキラッキラして喜ぶウィッチ達。その姿は年行かぬ少女達に変わりないことを改めて再確認する。この先の戦いで死んでほしくないな。まだ捨てるに早い命だ。

 

 

 

「黒数、順調だな」

 

「ファンサのことか?みんな良い子だな」

 

「君の力だよ。集った者に余裕が出ている」

 

「北郷も同じだろうに。扶桑の軍神が近くにいるなら心強いことこの上ない」

 

「私は軍神と言われるほどのことはしてないと思うがね。いつも精一杯自分の出来ることをやっているだけだよ」

 

「それが慕われる理由だろ?北郷は先生の器」

 

「ふふっ、そう言われると素直に嬉しいな」

 

 

 

 

「初めて見たわね、あの方達のツーショット」

「ねぇ、あのお二人はつまりそう言うこと?」

「浮ついた話は無いけど、多分そうだよね?」

「あれで付き合ってないなんて絶対嘘だよ!」

「あの場所だけ雰囲気が良すぎるんだけど…」

「うんうん!噂通りに彗星と魔女って感じ!」

「いいなー、私もあんな風になりたいなー」

「いつかなれるよ!」

 

 

それから作戦立案者の加藤武子が招集するとノートとペンを用意したウィッチ達は会議室の席について作戦内容を頭に入れる。

 

まあ作戦に関しては難しくない。

 

単純に海軍の主力艦を囮に小型ネウロイを引きつけてもらい、能動的に動けるウィッチ達でガラ空きになる山を強襲する。

 

空いた懐には機動力に優れた零戦で戦果を上げ続けた第十二航空隊、あと混合隊としてウラルで組んだ陸軍第一戦隊を率いる江藤敏子中佐の部隊を合わせた魔女小隊で潜り込み、坂本美緒の固有魔法『魔眼』で山にある『コア』を見つけてこれを破壊する作戦。

 

扶桑の命運はウィッチに掛かっている。

 

 

それから作戦を頭に入れると、決戦日までは新兵を混ぜた飛行訓練。

 

各地から集った混合部隊なので足並みを合わせる訓練は必須である。

 

その中で腕の立つウィッチは模擬戦を行なって力量を計り合い、この作戦で一時的に総司令官となった加藤武子はメモを片手に隊長の江藤敏子からアドバイスを貰いつつ、本作戦における編成を再度確認する。

 

一応編成は決まっているが再編の必要が有ればそれはドンドン炙り出して最適解に近づけるべきだろう。扶桑皇国軍にもう失敗はもう許されない。

 

 

そして、もう一つ。

 

腕が立つウィッチとは真逆で急遽実戦投入を受けたまだ経験浅いウィッチが本作戦に参戦してるわけだが、何もできずネウロイに撃ち落とされる可能性も充分に高く、それではただ死にに行くだけの飛行になってしまい大変好ましくない。

 

そのため舞鶴市で始動した舞鶴航空隊、もしくは第十二航空隊の指導者である北郷章香と、俺こと黒数強夏を中心に新人ウィッチの指導に舞鶴の空であたっているところだ。懐かしい気分になる。

 

ちなみに新兵ウィッチは約40名ほど。これでも急ぎ気味に実戦投入が認可されたメンバーである。認可と言っても水準は『とりあえず』満たしているって判定だろう。本当はもっと訓練を行い、練度を上げる必要もあるがそうも言ってられない現状。ストライカーユニットで真っ直ぐ飛べる子を集めた。つまり戦闘能力に期待は持たされてない。

 

 

「ジオン軍の学徒兵を思い出す…」

 

 

本戦でネウロイを一機だけでも落とせれば無問題(もうまんたい)と手を上げて言える程度のレベルを集めたヒヨッコ達だ。それは本作戦で数合わせとして集められた彼女達も理解してるだろう。決して楽観視されてない。

 

……絶対に捨て駒なんかにはさせないぞ。

ここにいる全員生かして扶桑に返してやる。

 

それが非現実的でも俺が許せない。

 

だからこれは一年前と同じ。北郷から准尉の階級を貰い受け、まだまだヒヨッコだった舞鶴航空隊のウィッチを育てたように、また同じ空でそれを繰り返す。この短い訓練期間もあの時と同じだ。第十二航空隊に再編されすぐにウラルに向かったから。だから似ている。今この現状も一年前のあの頃のように。

 

 

 

「角丸伍長、君の技術力なら敵機に銃口を定めたタイミングでもっと早めに引き金を引いて良い。それでほぼ当たるだろう」

 

「そ、そうですか?」

 

「ああ。翼に一撃入れれるならそれでネウロイの機動力はグンと落ちる。そうすればネウロイの機動も予測できるし、余裕を持ってコアを狙える。そうやって撃ち漏らしを減らせばそれだけ小隊の安全性が高まるから意識しておくようにな」

 

「は、はい!」

 

 

「次に樫田伍長は現段階で足を止めて撃ってしまうのは仕方ない。しかし孤立した時に移動しながらの射撃が出来ないとネウロイに挟まれてそこで終わりだ。後でフリスビーを使った射撃訓練を行うから魔法力はしっかり温存しておくように」

 

「フリスビーですか?」

 

「風に乗せる形でフリスビー投げて、フリスビーの真上を取りながら銃口を定め続けて、海面に墜落する寸前でフリスビーの手前を撃って水飛沫でフリスビーをひっくり返す訓練。これが出来ると移動しながらの射撃が楽になる。後で手本見せるから」

 

「はい、了解しました!……そんな訓練法があるんですね……」

 

 

「それと犬房伍長はユニットの転機からまだ一ヶ月だけど真っ直ぐ飛べてるのはかなりセンスある証拠だな。射撃も問題なし」

 

「うぇへへへ、そうですか?いやぁ〜、願那夢さんのお空を見て学びまして」

 

「でも旋回するとかなり遅いからもっと体にユニットを慣らしておけよ?」

 

「はい、りょうかいであります!」

 

 

「あと……」

 

「ポリポリポリポリポリポリ………んへ?」

 

「『んへ』じゃねーよ!なに訓練中に何味付きラーメンをパリパリ食ってんだよ。ジュンコ教官はそんなこと学ばせてないだろ!教えはどうなってんだ教えは!?」

 

「これも長崎の賜物ですね!それと待ってる間に食べてる方が効率がいいと思いまして。あと前も言いましたが黒田は嫌です!黒数さんには那佳って呼んで欲しいです!てかそう呼んでください!だから引き続きお代わりの麺を頂きますね!ポリポリポリポリポリポリ」

 

 

皿うどん娘(黒田那佳)に拳骨喰らわせた後も新兵の飛行技術を洗い出し、北郷の方でも基礎固めを済ませたりと、ウィッチの生存率を少しでも高めるため力を尽くす。

 

作戦まで10日ほど時間はあるが全てを学ばせることは難しいため、絶対に守るべき部分と、個人で抱えてる悪い癖、いわば戦死に直結する要因のみを指摘してそれを修正させる。

 

そのため戦果を上げさせるための戦いは何一つ学ばせてない。それは北郷も同じで戦場で間違わない飛び方を改めてウィッチに教えている。

 

 

「今回初陣の者もいるだろう。でもそれは隣も同じ。だから助けてやれ。もしくは誰かに助けさせろ。それが連携。皆で不安と戦っていればそこまで怖くないから」

 

「「「はい!!」」」

「「「は、はい……!」」」

 

 

言葉も大事。

 

伝えることはニュータイプのような特別が無くても出来ること。

 

それでもまだ難しい顔してるウィッチもいる。

 

それは不安からか、経験不足からか、翼の広げ方に戸惑うヒヨッコの表情はまだ幾らか硬い。

 

 

「もっと簡単に伝えよう。黒田伍長!」

 

「は、はい!」

 

「食い逃げは良くないことだよな?」

 

「え?…あっ、そ、それはもちろんですよ!」

 

「でも皆で食い逃げすれば怖くないよな?」

 

「なんで私を見て言うんですか!?」

 

「「「あはははは!!」」」

 

 

 

大事なことは多い。

 

でもその中で選び取るなら…

 

 

 

「この先は簡単な戦いじゃない!でも難しいことは考えすぎるな!これは考えじゃなくて気持ちの問題だ!だから敢えて言おう!皆で生きて帰るぞ!」

 

「「「「 おおー!!! 」」」」

 

 

士気は充分だ。

 

経験は追って付けるしかない。

 

だから生きて帰ること。

 

それが自身にとって大きな報酬になるから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

そして……

 

決戦の時は来た。

 

 

 

 

「章香」

 

「!」

 

 

舞鶴近海で山を迎え撃つため、作戦通りに軍を展開しようとウィッチ達は舞鶴の格納庫で準備を開始する。作戦のため既に飛び出した者もいた。

 

もちろんウィッチだけではないエースを乗せた戦闘機も含めて舞鶴の空は鉄で埋め尽くされる。

 

そんな中で俺はまだ翼を足に纏わせず彼女に声をかけた。

 

 

 

「ど、どうしたんだ?黒数…」

 

「…」

 

 

 

一応、彼女にだけしか聞こえないようにその名を呼んだが、それでも苗字じゃない名前で呼ばれたことに驚き、トレードマークのポニーテールが動揺を示している。

 

 

 

「章香、君はこの10日間どこか思い詰めたような表情をする時がある。でもそれは章香にしかない悩みがあるんだと思ってる。何故なら章香はいつも俺に相談してくれるから」

 

「!!……君は私をよく見てるんだな」

 

「ああ。だから俺に何か言ってくれるまでは何も問わないつもりだった」

 

「そう…か…」

 

 

 

御前会議を終えてから章香は少しだけ様子が変わった……ような気がしてた。

 

恐らく竹井少将との会話で何かあったのだろうと考える。

 

何か佐官でしか抱えきれない内容が関わっているのだろうか?

 

 

 

 

 

……とは、思っていない。

 

 

佐官にしか出来ない内容を抱えていたとしても彼女はキャリアを積んだ上級階級の軍人として堂々としている。不安な表情は見せない。これは同じ執務室で長い時間を共に仕事してきたからわかること。たまに上層部に対して愚痴のような事を溢してくれるが部下に不安を見せるような顔は滅多に出さない。

 

そのためいつだって困ったようにカラカラと笑い、もしくはやれやれとした感じに事をこなすのが俺たちの隊長、北郷章香だから。

 

そんな彼女がこの10日間で常に何か思い悩むような横顔を見せていた。もしくは見せないように強張っている。周りは気づかない。

 

でも俺はそれを悟っている。

 

そして章香もそれが悟られていた事をこの場で知り、とうとう諦めたように薄く笑いを浮かべながらどこか気まずそうに目線を逸らす。

 

 

「何か、俺に出来ることあるか?」

 

「……」

 

 

俺の問いかけの中でストライカーユニットの音が格納庫の中で響き渡る。

 

また一人ずつ空を飛び始める。

俺たちを置いて次々と空を駆け巡るウィッチ。

 

これから英雄になろうとする魔女達に向けて舞鶴市民や軍人達の讃える声が舞鶴の空で響き渡っている。

 

 

 

「大丈夫だ、私の心配はしなくていい」

 

「そうか…」

 

 

少し間を置いて彼女は答えた。

 

出た回答がそれなら。

 

今は頷くことが正解だろう。

 

でも、そのかわりに…

 

 

 

「なら章香、これあげる」

 

「これは……お守りかい?」

 

「それは"香水箱"だよ。加賀市で招かれた時に章香と街中で出かけて市場を散歩しただろ?そのあと俺はまた市場に行って買い物に出かけたんだ。そこで香水箱を買ったんだよ」

 

「なるほど。これを私に?」

 

「ああ。中身に【白鳥(はくちょう)】の折り紙が入ってる。焼け焦げた部分を裂いたからかなり小さな折り紙だけど」

 

「白鳥?鶴じゃないの無いかい?舞鶴ってことで折るなら鶴かと思ったが…君は不思議なことをことをするんだな」

 

「ちゃんと鶴も折れるよ。でも幼い頃に孤児院先生がとある物語の影響を受けて鶴じゃなくて白鳥の折り方を教えてくれてね、だから白鳥。先生曰く行先の目印になるってさ。お守りらしい」

 

「そうなのか……ふふっ、ありがとう」

 

 

 

空の風向きが扶桑を乗せてくれるなら、白鳥程度の簡単な翼でも、空高く飛べるはず。

 

俺はそれを願って彼女に渡す。

 

彼女の隣を飛ぶことが約束だから。

 

それが俺たちにとって目印になって欲しい。

 

それだけを思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8/31

 

舞鶴の空はいつかの夏空を思い出させる。

 

それは一人のウィザードが、一人のウィッチを追いかけ、夏の空を飛んでしまったことにより始まった物語。

 

 

これはのちに【扶桑海事変】といわれる皇国の命運を賭けた戦争の名前。

 

兵士が、戦士が、魔女が、血を流しながらも祖国のためにその命を持って怪異に抗い、祖国を奪わせまいと拮抗を保っていた。

 

しかし進化を繰り返すネウロイとの戦闘は突如として激化させると扶桑皇国軍はその物量に追い詰められてしまい、本土に押し返された。

 

そしてそのネウロイは占拠した浦塩から山を浮かび上げると、扶桑の本土を押し潰さんと扶桑海を渡る。

 

これを決戦として扶桑皇国は陸海の主力を集結させ、山を討たんと迎え撃つことになる。

 

 

 

再度、繰り返そう。

 

 

 

それは一人のウィザードが、一人のウィッチを追いかけ、夏の空を飛んでしまったことにより始まった物語。

 

その羽ばたきから一年の刻が進み、同じ夏の空が扶桑を最後の戦いに招く。

 

 

扶桑海事変、最後の戦いが…

 

 

 

 

__ 艦隊出撃!!

__ 機関、第三船速!!

__ 我らは、皇国を守る盾と成らん!

 

 

 

 

魔女を中核にした挺身突撃作戦。

 

暗号名は”隼”。

 

そして作戦で使われる部隊は二つ。

 

まず、親玉を叩くために精鋭の魔女部隊で構成された小規模の第一戦隊。

 

次にその第一戦隊を親玉の元に向かわせるため多数の軍艦を中心に小型ネウロイを引き付ける役割を担う第二戦隊。

 

多くの艦隊が犠牲になるだろうこの作戦に猛反発をしていた海軍だったが、それ以上に不安なのは数名の少女に扶桑皇国の命運を委ねてしまうことに対する抵抗感があったからだ。

 

その大役を背負わせるにはあまりにも少女の背は小さく、たとえそこに願那夢たる扶桑唯一の男性ウィッチが健在だとしても、巨大なネウロイを魔女全てに託すことはあまりにも酷だ。

 

しかし、それでも…

 

 

__できるか否かではない!

__やってもらわねばならんのだ!

 

 

魔女に託された。

 

 

 

「第二戦隊は小型ネウロイの群れと戦闘を開始した!これより第一戦隊は一気に向かう!露払いのための魔女中隊は先行して!魔女小隊は私に続いて!扶桑を守るわよ!」

 

 

総司令官である加藤少尉の声が無線から届く。

 

士気は充分。

 

ウィッチはユニットを回す。

 

 

 

「っ…!」

 

「はぁ…はぁ…」

 

「く、訓練通りにやれば…」

 

「ふ、震えが止まらない…ね…」

 

「き、緊張しすぎるな…お、お前ら!」

 

 

今回初陣として参戦する新人ウィッチ全ては露払いの中隊に加えられている。

 

敵の懐に入る魔女小隊に比べて危険度は幾分かマシだが、それでも今回の作戦は特に激戦を免れず、更に今回で初陣となる新人ウィッチは舞鶴の空で緊張と重圧を相手に溺れそうになっていた。

 

飛ぶ前に緊張を抑えたつもりだった。

しかし無線の声を通して再度震えが出る。

 

実戦がすぐそこにある。

 

引き金を引けば始まる。

 

だから手が硬く、トリガーの指が震える。

 

不安が恐怖心に変わろうとしていた。

 

幼い体で恐怖心は押し殺せない。

 

 

だがそこに…

 

不安は突如取り除かれる。

 

 

 

「ビームフラッグ!」

 

 

「「「「!!!!」」」」

 

 

 

魔女小隊として参加するひとりの男性ウィッチは魔女小隊と魔女中隊の真上に移動すると腕を上に伸ばし、その手から武装を照らす太陽に向けて伸びた光の帆を広げた。

 

その帆は月の形をした扶桑皇国のシルエット。

 

それをグッと握りしめて魔法力を流すとまた一段と光が強くなり、夏の太陽に負けない熱量が魔女の頬を撫で、彼から力強さが伝わる。

 

そうして新兵ウィッチの不安はビームフラッグの光によって取り除かれ、気づいたときには震えが止まっていた。

 

 

 

『俺たちがガンダムだ!!』

 

 

「「「「 !!!? 」」」」

 

 

 

 

力強さが響く。

 

だが、口から言葉は何も放たれていない。

 

何も耳の中に声は通っていない。

 

けれど、心を通して響いた。

 

不思議な感覚。

 

しかしわかることはある。

 

舞鶴の空から始まった願那夢(ガンダム)の言葉だ。

 

それが全身を駆け巡る。

 

すると恐怖心は闘争心に変わり、震えは奮えに変わり、握りしめていた機関銃は恐怖を流し込むための道具でなく、願那夢と共に戦う兵士の証として握られ、吐く息は鋭く透き通る。

 

新兵は己の幼さを超えて、大地を立つ。

 

魔女は"機動"した、扶桑の"戦士"として。

 

そこに"願那夢"の遺伝子(想い)を乗せて。

 

 

 

「これが、機動戦士願那夢…」

 

 

 

総司令官の加藤武子はビームフラッグを展開する黒数強夏を見てそう呟く。

 

急な魔力行使に驚いたが、その目的を知ると光を見る中隊を眺める。

 

まだ新兵のウィッチには幾分か不安な様子を伺えるが、扶桑皇国の国旗を形作ったビームフラッグの熱量を浴びてからはそれぞれが握りしめる機関銃に機動戦士としての魂が込められていることを把握する。

 

 

これが、願那夢。

 

これが、黒数強夏。

 

 

そして、これが…

 

 

 

「第十二航空隊の副隊長……彗星の魔女」

 

 

 

負ける気がしない。

 

そう思う。

 

 

 

 

「あー、腕が疲れた…」

 

「おいおい…随分としまらねないな、バカ数」

 

「こういうのはメリハリが重要だ、若本」

 

「力の抜き方が大袈裟なんだよ」

 

「強張り過ぎてもなぁ……まあ、これだけ精鋭で集結しているんだ。そこまで恐れてもねぇよ」

 

「えへへ、そうですね。半年前みたいに第十二航空隊と陸軍第一戦隊の混合隊です!負ける気がしないね美緒ちゃん!」

 

「う、うん!そうだね…!醇ちゃん!」

 

「はっはっは、たしかにそうだな」

 

 

 

海上決戦。

 

扶桑皇国の命運を賭けた戦い。

 

だが第十二航空隊はいつも通りの姿を見せる。

 

一年前まではヨチヨチ歩きな集まりだった。

 

しかし今は堂々と舞鶴の空を飛ぶ。

 

そうなったのは間違いなく、一つのイレギュラーがそこにいるからだ。

 

 

 

 

 

だから、再度…

 

ああ、再度繰り返そう。

 

 

それは一人のウィザードが、一人のウィッチを追いかけ、夏の空を飛んでしまったことにより始まった物語。

 

 

扶桑海事変、終わりの始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギギギ…」

 

 

「お前はそうなってまで、目の前のガンダムを否定したいか?」

 

 

「ギギギギギギ!!」

 

 

「そうかよ。なら憎しみと共にガンダムを否定してみせろよ…

 バンシィ・ノルン…ッッ!!」

 

 

 

 

晩夏から秋にかけて発達した積乱雲。

 

乱流の地獄と化した異常気象。

 

全てを否定するような__颱風(たいふう)の中。

 

濁った黄金の色は視界の悪い戦場でも目立ち、憎しみを色持つ機体が願那夢の前に現れ、ネウロイの赤い光が二つのモノアイから怪しく湧き出ている。

 

それでもそこいる彗星は颱風渦巻くその憎しみの色に溺れず、堂々と見ていた。

 

 

 

 

生産性の無い怪異はここで朽ち果てろ!

 

ギギギギギギィィィ!!!!

 

 

 

 

 

___嵐の中で輝いて。

 

 

 

 

それはネウロイの光か。

 

もしくはガンダムの光か。

 

 

 

扶桑海事変もう一つの戦いである、

 

 

 

 

 

つづく

 

 






犬房と黒田は作者のお気に入りです。
ギャグ要員として使いやすい。
あと根っこが強くて普通に好きなキャラ。
どちらも未来では統合戦隊航空団の一員です。


ではまた
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