GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第35話

 

 

「っ、章香!もう、シールドが…!」

 

「ッッ!!」

 

 

北郷章香、江藤敏子。

 

扶桑の魔女はシールドを展開していた。

 

ウィッチを主軸とした挺身作戦を成功させるため、影の中で別働隊として横行していた扶桑の艦隊『紀伊』の砲撃を止めるために嵐の中で体を張る。

 

しかし悲しい現実が二人を襲う。

 

紀伊の砲撃を抑えるその魔女達は『アガリ』を迎え始めていた。

 

特に北郷章香は既にウラル戦線後期の頃からアガリによる魔法力の弱化を垣間見せており、今この場でもアガリの影響を強く受けてシールドは脆さを見せる。江藤敏子の支援が無ければとうの昔にシールドは破られていた。

 

しかし江藤敏子も同じくアガリの影響を受け始めている段階。懸命にシールドを展開しているが抑えれそうにも無い。故に大きな鉄の塊は少女ごとその後方にある元凶を破壊しようと作戦の遂行する。

 

 

「ぅぁ…!!ぅ、ぅぐっ!」

 

「章香!?」

 

 

限界まで振り絞った魔女のシールド。目の前で爆散する紀伊の砲弾。それと同時に親友の声が聞こえる。だが北郷章香は歯を食いしばり、絶えそうになる意識を繋ぎ止め、脆いこの魔法力で砲撃を止める。

 

しかし、もう、ダメだ。

 

これ以上は無理だ。

 

元々無茶な抑止である。

 

アガリを迎えようとする魔女なんかで止めれる訳がない。けれどウィッチの可能性を信じているからこそ挺身作戦を成功させたい。そして共に戦ってきた教え子達の空を守りたい。ここまで信じて飛んできた軌跡と、この先で掴み取れるだろう魔女の奇跡があるから、北郷章香はこの命を賭けてでもやり通そうとしていた。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ……げっほ……ッ!!」

 

「章香、それ以上は危険よ…!」

 

 

 

一撃目は、抑えた。

 

二撃目も、なんとか抑えた。

 

三撃目を、ボロボロになりながらも抑えた。

 

四撃目が、とうとう放たれようとしている。

 

 

 

『よもやここまで耐えるか……だがもう無理だ!装填の方を急げ!山は待ってくれぬぞ!』

 

 

 

これが放たれたら終わりだ。

 

しかしここを立ち去れば被害は食わない。

 

今なら逃れることはできるだろう。

 

けれど……

 

けれど…

 

ここを去れば魔女の可能性は潰える。

 

信じて向かった魔女の空は掻き消える。

 

それだけは先駆者として許されない。

 

 

 

「ッッッ!ォ、ォォッッ!!」

 

「っ、ふみか…!」

 

 

 

『こやつ!?まだやるというのか…!!』

 

 

 

その魔女は去らない。

 

だから誰かが『軍神』と言った。

 

その姿はまさしくその名に相応しいから。

 

しかしそんな名は関係ない。

 

彼女はその神名を意識しない。

 

全てを懸けてこの砲撃を止めるだけ。

 

 

 

『ッ、撃てェェ!!!』

 

 

「章香!」

 

「うおおおおオオオオ!!!」

 

 

 

シールドに稲妻が疾る。

 

全身全霊、これを最後とした振り絞り。

 

扶桑の紋章が描かれた魔女の盾。

 

 

 

 

しかし…

 

パキッ…

 

 

 

 

 

「_____ぁ」

 

 

 

 

意識が……遠のく。

 

魔法力を限界まで引き出した。

 

シールドはひび割れる。

 

力が抜ける。

 

 

 

「章香!章香ぁ!」

 

 

 

空から崩れ落ちそうになる北郷章香。

 

親友の江藤敏子が叫びながらその体を支える。

 

まだ辛うじて意識を保っていた。しかしユニットのプロペラは弱々しく周り、支えてもらなければそのまま海に落ちてしまう。

 

 

 

「!!」

 

 

耳をつん裂くような音。

 

紀伊の砲塔から砲弾が放たれた。

 

江藤敏子は北郷章香を抱きしめながら歯を食いしばり、シールドを展開する。

 

しかし彼女もアガリを迎えようとする魔女。

 

そのシールドに力は無い。

 

だから彼女は悟った。

 

もう無理だと。

 

これは、どうにもならない。

 

だから親友の体を抱きしめて衝撃に備える。

 

……よく頑張った。

……よくここまでやった。

 

無茶無謀な阻止だけど、でも後悔はない。

 

約束もモットーも守れないような隊長失格であるが悲しくなんかない。

 

ただ少し寂しくなるだけ。

 

この空から箒を折られてしまうのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「きょうか…」

 

 

そして___魔女は想い人の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからそれが魔法(きせき)になった。

 

 

 

 

ポケットが緑色に光る。

 

 

 

「ぇ…?」

 

 

温かな光が溢れる。それはポケットから飛び出すと緑色のオーラを纏いながら空を奔り、穏やかな色をした天の川を描きながら宇宙(そら)をなぞった。

 

温かな__ 光。

 

暖かな__ 熱。

 

確かな__ 空。

 

想いが込められた優しい生命が魔女を包む。

 

 

 

「これは…?」

 

「あぁ…ぁ、ぁ、ああ…!」

 

 

江藤敏子は不思議な光に戸惑う。

 

しかし北郷章香は知っていた。

 

光の正体は『香水箱』だ。

 

想い人からの贈り物。

 

すると香水箱は開く。

 

翼を持った生き物が飛び出した。

 

その形は『白鳥』に見えた。

 

翼をはためかせ空を舞う。

 

ひび割れそうになるシールドを纏い、そのシールドは緑色に輝く。魔女達に飛んできた砲弾はシールドに直撃すると爆発した。強い衝撃が二人を襲いかかる。しかし白鳥は二人の周りを飛び回り、緑色の光が優しく守った。

 

 

 

『なんだとぉ…??何が起きている!??』

 

 

 

「これは……」

 

「___彼の魔法(きせき)だ」

 

 

 

北郷章香は安心したように呟く。

 

すると白鳥はとある場所に向かって飛び出す。

 

その羽ばたきは嵐の奥へと続き…

 

 

 

 

 

「キィィィ!」

 

 

赤色の絶望が願那夢を狙い、朽ちる寸前のバンシィ・ノルンは黒数強夏を道連れにしようとその大腕で締め付ける。深く色黒く染まるこの嵐の中に存在するのは願那夢と憎しみを形作ったネウロイのみ。誰の助けも期待できない。黒数強夏は絶対絶命の中で考える。

 

充分な身体強化からバンシィ・ノルンの拘束を引き剥がそうにも間に合わない。ならばストライクユニットの最大出力で無理やりバンシィ・ノルンごと動かして少しでも直撃を逸らす。

 

体の何処かは貫通するか、もしくは腕の一つはレーザーで千切れしてしまうだろ。

 

しかし腕一つで済むくらいで助かるならむしろ安い。

 

黒数強夏はその赤い光に覚悟を決める。

 

 

 

決めようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

「__!!!?」

 

 

 

 

鋭く脳裏を走る。

 

しかし柔らかに包み込むような閃光。

 

また安心するような感覚。

 

見えないが何かこちらに来る。

 

何か求めて疾っている。

 

まるでこの『存在』に呼応するように。

 

宇宙の『ガンダム』を導こうとしている。

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

胸元に滑り込ませた両手を重ね合う。

 

魔法力を解き放ち、それを奇跡(まほう)に変える。

 

 

出来る筈だ__ウィッチなら!

 

可能性な筈だ__ガンダムなら!

 

 

 

 

「キィィィ!!!」

 

 

憎悪に包まれた空っぽの器は憎き扶桑の願那夢を捕まえ、動くこともないその命を狙った。

 

 

__また堕ちるべきだ、願那夢。

 

__その概念は消え失せろ。

 

__この世界にイレギュラーは不要だ。

 

 

 

 

緑色の光が黒数強夏を包み込んだ。

 

____共振した。

 

 

 

 

ガンダムゥゥゥゥ!!!

 

 

 

全力で魔法力を体に流し込みながら叫ぶ。

 

手の甲に刻まれたcostと数字。

 

それは彼に刻まれた魔法陣。

 

武装を召喚するために刻まれた引き出し。

 

 

その数字は厄災を払いし英雄としての価値(コスト)

 

その数字は人類に願われた証としての価値(コスト)

 

その数字は自身を物語る軌跡としての価値(コスト)

 

 

それはこの世に呼ばれた黒数強夏(えいゆう)たらしめるための願いだから。

 

 

だから魔法陣は応えた。

 

英雄の___願那夢の叫びに。

 

 

 

「キィ!?」

 

 

青白く光る翼が嵐の中で輝きながら黒数強夏を包み込む。目を眩ませるような瞬き。それは黒数強夏を中心に広がるプレッシャーとしてバンシィ・ノルンを弾き飛ばす。すると颱風による風圧とプレッシャーによる圧力に押しつぶされ、ネウロイ装甲はバラバラに砕け散る。

 

更にその光はバンシィ・ノルンの盾に寄生したネウロイから放たれたビームも弾き、黒数強夏を護る。まるでユニコーンガンダム2号機(バンシィ・ノルン)に続いた『不死鳥(3号機)』のような奇跡の光だ。

 

 

 

「うおおおおおおお!!!」

 

 

解き放たれたオーラを手で掴み取り、それを振り下ろす。黒数強夏の手元から光の刃が鋭く伸び、それをバンシィ・ノルンに叩きつけると全ての装甲を破壊した。黒数強夏は振り向く。その眼は怪しく光っている。

 

 

 

「キィ!?」

 

「ァァァアアアア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!」

 

 

 

ストライクユニットがこれまでに無いほどエーテルの光を解き放つ。不死鳥の光と共に嵐を突き破り、黒数強夏は彗星の如く一気にネウロイの元へ詰め寄る。

 

伸ばしたその手はコアを掴み、握りしめた。

 

 

 

「キィィィ!?!!!」

 

 

 

捕まえた。

 

これで逃げられない。

 

 

 

「!!!」

 

 

黒数強夏は見る。

 

緑色の光が天の川を描いている。

 

その先には『白鳥』が飛んでいた。

 

まるで願那夢を導くように。

 

だから黒数強夏は従った。

 

不死鳥のように惹かれて。

 

 

 

「ギィギ!?ギギギギギ!?ギギギ!?」

 

 

 

ネウロイの悲鳴と共に光へ従って突き進む。

 

青白い光、それはまるで彗星のように。

 

 

そして進む先には、二人の魔女の元。

 

 

見えるのは紀伊の艦隊。

 

魔女の可能性を奪う鉄の塊。

 

 

 

「え…うそっ……!」

 

「く、黒数…なのか!?」

 

 

『な、なんの光!?』

 

 

 

嵐の奥に続いた緑色の光に乗せ、この場所に現れたのは武装の願那夢として謳われる、彗星の魔女。

 

 

 

『は、放てェェ!!』

 

「「!?!?」」

 

 

 

紀伊から五発目の砲撃が放たれた。

 

それは山に向けて。

 

しかし、その弾道に北郷章香達の姿。

 

そこにはもう奇跡が起きていない。

 

魔力が無くなりシールドも使えない。

 

だからその砲弾は無慈悲に魔女を貫くだろう。

 

 

けれど英雄はそれを許さない。

 

 

 

「ここからァァァ!いなくなれぇェェ!!!」

 

「ギギギギギギギギギギギギ!!!!」

 

 

盾の形をしたネウロイを本当の意味で盾として扱い、紀伊から放たれた砲弾にネウロイを押しつけた。

 

 

 

『なにィィィィ!??!!!??』

 

 

緑色の光が砲弾ごと包み込み、爆発することなく、ただ重たいだけの錘と化した砲撃がネウロイを押し潰していた。

 

そして…

 

 

 

「ギ______

 

 

 

コアは押しつぶされ、ネウロイは消滅する。

 

だが砲弾はまだ生きていた。

 

しかしもう勢いは無い。

 

だから彗星は躊躇わずに突き進んだ。

 

 

 

ヤツらに裁きをオオオオ!!!

 

 

うああああアアアああ!!!!????

 

 

 

それはウラルで見せた黒い悪魔。

 

また鳥になりたかった不死鳥の一撃。

 

紀伊の主砲に砲弾を押し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が起きたのか分からなかった。

 

ただ私はひとり無茶をする親友に手を貸すため場にやってきて、部下達を守るために私も同じくこの無茶に身を投じた。

 

戦艦の砲撃を止めるなんて正気の所業じゃないが私は章香とシールドを重ね合い3回の砲撃を受け止めた。しかしボロボロになっていく私と章香。もしこれがアガリを迎えてない全盛期ならもう少し頑張れたのかもしれないが、近代化改修された戦艦の砲撃となるとこればかりは魔女だろうと関係ないのだろう。

 

そして四撃目が放たれ、私は満身創痍な章香を抱きしめながら最後のシールドを展開した。

 

これで終わりだと思った。

 

最悪死ぬかもしれない。

 

しかし章香の軍服から小型の箱が飛び出した、するとその箱から白鳥と緑色のオーラが空を駆け巡り、砲撃から私たちを守った。誘爆による衝撃すらも掻き消し、温かな光が安心感を与える。

 

次に白鳥は嵐の中に飛び去る。まるで何かを呼び求めるようにその白鳥は意志が備わっていた。私含めて艦隊もしばらく戸惑いを見せていたが紀伊は再び装填する。奇跡のような魔法に救われた命だ。私は章香を支えながらこの場を去ろうと動き出す… が、乱気流の中で安定感が取れず、うまく動けないでいた。

 

一人だけならともかく章香を支えてるこの状態で飛ぶには非常に厳しい状況。

 

最悪海の中に落ちてしまうだろう。

 

 

「とめ、な、けれ…ば…」

 

「っ!もう無理よ!私も、貴方も…!」

 

「……は、はは……わたしは……むりょくだ…

 

「違う!そんなことないわ!」

 

まいずる、だけは…守れると…おもって…でも…わたしは……いまの…わたしは……

 

「っ…」

 

 

アガリを迎えて、現実がやってきた。もし今よりも3年ほど前の章香ならシールドで受け止めず扶桑刀で戦艦の砲弾を両断しているはずだ。彼女は海を破れる位の剣技を持っている。そこに洗練された魔法力を合わせれば怖いものはない。私はそれを知っている。章香の親友だから。けれど全盛期に対して時代が悪かった。章香のアガリに合わせてネウロイは活発に襲いかかってきた。だから章香は舞鶴航空隊の先生となってその力を後続に落とし込もうとしたのだろう。

 

 

 

「わたしを…置いていけ……」

 

「ダメ、わたしは貴方と帰るの。そのために来たんだから。置いてくくらいなら、共にその箒を折り切ってしまう方がまだマシよ」

 

 

シールドを展開する。

 

一絞り程度の魔法力。

 

これで受け止める。

 

すると章香も震える手を伸ばして、わたしのシールドに重ねた。

 

正直……私もアガリを感じている。

 

それでもアガリ迎える者同士なら少しくらいはシールドの強度もマシになるだろう。

 

だからこれが最後のシールド。

 

そして隊長失格だ。

 

失格の理由は簡単。この大バカの親友に釣られて自己犠牲を選んでしまったせいだ。でも隊長である前にこの親友と扶桑を守ると誓い合った魔女との約束だから。なら最後の意地と約束を優先する。

 

だからごめんなさい。

加藤武子、穴拭智子、黒江綾香、加東圭子。

 

わたしは貴方達の元に戻れないかもしれない。

 

運が良ければ魔法力がわたしを守ってくれる。

 

何処かに流れ着いて助かるかもしれない。

 

でもアガリを迎える私達にそれは高望み。

 

今から全てを使うのだから。

 

だから…

 

だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____きょう、か…?

 

「え?」

 

 

 

章香は不意に、垂れ落ちそうになる意識と、その頭を上げ、微かに残る緑色のオーラと空に視線を移し、何かを感じ取るように眺めながらその名を空の彼方に溢す。

 

 

 

『撃てェェ!!!』

 

 

 

紀伊から五発目の砲撃。

 

かろうじて保つシールド。

 

それはあまりにも弱さを見せる脆さ。

 

私達では、助からない。

 

 

 

 

だから彗星の如く、それは現れてくれた。

 

 

 

 

「ユニコォォォォン!!!」

 

「!!」

 

 

 

彗星の如く現れた黒数強夏。先ほど見られた緑色のオーラを纏いながら鋼鉄の塊を紀伊の砲撃に押し受ける。それは直ぐにネウロイのモノだと理解したが何処かしら盾に見えた。だがその盾は受けた衝撃で砕け散る。だが黒数強夏は盾が無くとも素手で砲弾を押さえつけていた。しかも緑色のオーラに包まれたおかげか砲弾は爆発することなく、そして黒数強夏は一気にスラスターの量を増やすと放たれた槍のように鋭く飛び出し…

 

 

 

 

「奴らに裁きをオオオオ!!!」

 

 

 

紀伊の主砲に捩じ込んだ。

 

艦隊は大きく揺れる。

 

乱気流すら飲み込むような衝撃波が発生。

 

全身を撫でるような魔力の電磁波が広がる。

 

この海域の船の大半が麻痺を起こした。

 

恐らく魔道エンジンに支障を起きたのだろう。

 

お陰で紀伊からゆっくりと離れる願那夢に対して恐れを抱いてパニックになっている。

 

 

__く、黒い悪魔…ッ!!

__ああああ!彗星の魔女だぁァァ…!!?

__こ、これが、機動戦士…願那夢…!!

 

 

どれもウラルで聞いた異名、もしくは威名。

 

私も正直……いまの彼が恐ろしい。

 

戦艦クラスの砲弾を素手で抑え、むしろ放たれたその砲弾を槍の如く主砲に捩じ込み返し、紀伊を中心に周りの艦隊を衝撃波で揺らすと機能麻痺まで起こさせる始末。未だ緑色オーラを纏いプレッシャーを解き放ち続けている。だからここからでもわかる。黒数を通して視線がこちらの方向に向けられていることも。それが恐れの感情であることも。

 

 

 

「くろ、かず…」

 

 

しかし一人だけ違う。

 

ここにいる魔女は彼の名を呼ぶ。

 

彼は振り返って、こちらに飛んでくる。

 

すると章香は一人で飛ぼうと腕から離れる。

 

しかし魔力切れを起こして落ちそうになる。

 

わたしは落ちる前に手を伸ばそうとして…

 

彗星 が 魔女を受け止めた。

 

 

 

「俺の名を呼んで、願ったから、ここまで来れたんだ」

 

「きょうか……わたしは…」

 

「もう良い。章香が…無事で良かった」

 

「っ…!!」

 

 

 

彼はその魔女を両手で抱きしめる。

 

 

 

「ぅ、ぅぅ…!うぁ、ぁぁっ…!!」

 

 

 

押し殺すような涙の声が聞こえる。

 

彼はその魔女の涙を受け止めながら、まるで無重力の宇宙のようにその場でゆっくりと回る。その存在をたしかにするようにじっくりと刻を流しながら、緑色のオーラと共に空を隣にする。

 

 

こんなにも泣き崩れた親友は初めて見た。

 

もしくは彼だから流せる涙なのだろう。

 

 

 

「きょ、うか…」

 

「わかってる。坂本達が待っている……江藤中佐」

 

 

「ええ、任せて。そのためにいるわ」

 

 

 

彼はわたしに章香を受け渡した。

 

親友の、ほんの少し涙で汚れた顔だ。

 

だから思わずホッとしてしまう。

 

とりあえずこの場から離れよう。

 

それから、あとはこの願那夢に任せよう。

 

 

 

「俺の魔女、また後でな」

 

「ぁ……………う…ん…」

 

 

 

最後に彼は、章香の頭をくしゃりと撫でる。

 

章香も小さく声を零すように答える。

てかもうお前ら早く結婚しろよ。

 

そして再び彗星の如く飛び出す。

 

乱気流すら掻き消すような速さ。

 

嵐の奥に消えて行った。

 

 

 

「まったく、貴方の願那夢ってのは…本当に」

 

 

 

空から落ちる前に 彼 に堕ちていた。

 

それだけの話なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

コアが破壊された音が扶桑海に響き渡った。

 

 

 

つづく

 






早く結婚しろ(2度刺す)

とりあえず本編は完全勝利ですね。


ではまた
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