GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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申し訳ない、ストック切れた。
更新は再来週になるかもしれない。
なんかすまんな。


ではどうぞ


第39話

 

 

 

 

「…………………………辞めたい」

 

 

 

夜間戦闘航空団。

 

文字通り、夜の戦闘に特化した軍隊。

 

求められるのはナイトウィッチの力である。

 

 

 

……で??

……それで?

 

 

何処かにそんな都合の良いナイトウィッチは存在するのか?存在するわけがない。

 

そもそも飛べるウィッチ自体少なく、更にそこから純正100%のナイトウィッチを探すなど高望みも良いところ。更に言えば、飛行ウィッチ100人の中に10%程度の夜間適正を秘めたウィッチが1人存在すればまだ運が良いレベルである。そのくらい希少な存在。

 

そしてそれが私であること。私の場合は30%くらいはあった。しかし純正なナイトウィッチに比べたら手に届かないレベルだ。正直不安しか残らない。もちろん他にも私と同じように夜間戦闘航空団に配属したウィッチはいる。しかし片手で数える程度しか集まってない。当たり前だ。

 

さっきも言ったように夜間適正のあるウィッチなんてそう安易見つかるわけもない。

 

仮に50%以上の夜間適正能力を秘めたナイトウィッチがいたとしても、そこに戦える能力が無ければただ夜闇を飛ぶだけの魔女。

 

いや、それだけならまだ良い。

夜闇に視えるってのが重要だ。

 

仮に戦えなくても魔道針に情報共有してもらえばあとは戦闘ウィッチが戦えば良い。

 

いやでもその前にノウハウが無い。

 

夜間飛行中に非戦闘員を守りながら戦う飛び方なんて誰も知らない。むしろ被害を広めてしまう可能性だって存在するし、これなら一人自立して夜間を飛ぶ方がマシな話。

 

ああ、やっぱり非戦闘員の夜間飛行なんて現実的じゃない話だった。落ちるためだけに飛ぶなんて悲しすぎる。

 

 

「……ぅぅ……辛いよ…」

 

 

夜間飛行、夜間哨戒、夜間戦闘。

 

そのノウハウやドクトリンに関しては時代が解決してくれるだろうか?してほしい。

 

でもそれをするのは、私だ。

 

いま目指しているのはレーダー魔道針をユニット側で擬似的に発現の技術。

 

もしそれが可能じゃなくても副産物として夜間適正能力が50%程度、もしくはこれより低くても25%の夜間適正を秘めたナイトウィッチの魔道針を増幅させ、夜間適正力を一時的に増幅させるためのユニットシステムの開発。

 

簡単に言えば、夜間能力を高めるシステムを作り、それをストライカーユニットに搭載する。

 

しかしそのためには誰かが先立って夜間飛行中の感覚を肌で掴み、魔力行使の必要具合を記録し、それをデータに落とし込み、何度も何度も何度も洗い落とす。

 

とても、とても、それはとても長い計画だ。

 

何せ人間が見えない夜の世界を支配しようとするのだから。それだけの苦労が必要になる。

 

しかも完成するのに2年以上は掛かる予定。

 

下手すれば3年後には頓挫することだって…

 

 

 

「………」

 

 

しかも、コレを私程度のウィッチが役割を担う。

 

しかし私なんてのは数日前に訓練生を卒業したヒヨッコかつ、平時の実戦飛行なんて実のところ一度限りの経験しかない。

 

そんなヒヨッコに対してこれから夜間飛行のドクトリンを作り上げるために3日前に結成された夜間戦闘航空団の隊長なんて、重大任務に遣わされた。

 

 

……辛い、辛いよ……辛すぎるよ…

 

 

何も知らない。

何もわからない。

 

教本??

論文???

 

そりゃ読んだよ。

たくさん読んだ。

 

知らないことが恐ろしいから。

そんな世界を今飛ぶんだから。

 

でも、読んだところで実戦は話が違う。

 

もし読んだ程度で飛べるなら世話ないし、既に誰かが夜間飛行の技術を確立させてくれてる筈だ。でもそれがない。宮藤理論を導入したカールスラントにそんなの何一つないから今私がその先立てとして飛んでいるのだ。月明かり以外頼りにならない何も見えないこの世界に、闇の中で光を求めるからこんなにも不安が蝕むんだ。

 

 

「………っ」

 

 

 

代れるなら、誰か代わってほしい。

 

正直、辛すぎる。

 

怖すぎる。

 

でも、けれど、誰かが橋渡しとして先立ち、この計画の中で飛ばなければならない。

 

そうしてナイトウィッチの実用化を明らかにして詳細化を対策しなければならない。

 

 

だから耐える、この夜闇を。

 

だから飛んでる、この暗黒を。

 

 

 

 

「………私って、卑怯者だ………」

 

 

 

 

今、何を考えてるか?

 

そんなの簡単だ。

 

 

どうかネウロイと会いませんように。

どうかネウロイが現れませんように。

 

現れるなら昼でありますように。

現れるなら今でありませんように。

 

それは気のせいであってほしい。

それは勘違いで終わってほしい。

 

 

これはカールスラント軍人にあるまじき敵前逃亡前提の祈りだ。

 

その卑しさに心がすり減る。

 

誰にも明かされない夜闇の中で人知れずに死にたくない。それが心を蝕む。

 

闇の世界だから余計にそれが加速する。

 

 

 

「…ぁ」

 

 

 

でも……未熟な魔道針が捕らえた。

 

悪しき、人類の敵を。

 

 

 

 

 

 

 

「キィィィ??」

 

 

 

 

 

 

「____ぁぁ」

 

 

 

言葉が出ない。

 

だって現れたのは中型ネウロイだ。

 

哨戒範囲の北海に怪異が現れた。

 

なぜ?

 

何故、中型がこんなところに???

 

しかも小型ではない。

 

それ以上の強力な個体。

 

コレを……私がやるのか??慣れないこの夜闇で??また片手で数える程度しか夜の世界を飛んでないのに??そんなヒヨッコが挑むの??

 

無理だ……

無理だよ、勝てるわけが無い。

 

なら誰かに援軍を頼むの??

座標もはっきりしないこの場所に??

この暗闇でどうやって来させるの??

 

仮に呼んでも到着に数十分はかかる。

 

ではその間にコイツはどうする?

わたしが一人で抑える??

刺激して街に向かったらどうする??

 

そんなのどうやって責任取れる??

ならこのまま見逃すの??中型を??

脅威たるこのネウロイを??

 

 

「ッ……!!」

 

 

昼ならまだなんとかなるはず。

 

厳しい訓練を潜り抜けてカールスラント軍人として胸を張って卒業した私なら中型が相手でもやり遂げてみせる。

 

でもいまは現状が違う。

 

夜中の未熟なこの能力で、しかも一人だけで中型ネウロイと戦うなんて自殺行為に等しい。

 

ああ、どうしたら良い?

知ってるなら誰か教えてよ。

 

いや、知ってる者などいない。

 

だから外部から得ようとした。

 

例えば極東の島国、扶桑皇国。

 

扶桑軍人はどうやって夜間の中でネウロイと戦ってきたのか?

 

ウラル戦線の記録と参考書は幾らか読んだことがある。仮にコレが夜間飛行で無かろうとも数多い対ネウロイの論文は非常に興味深く読み耽ったことある。本国を賭けた扶桑海事変を戦ってきた扶桑はそれだけデータが多い。

 

 

しかしそれがカールスラントで活かされるかと聞かれたら私にはわからない。

 

ただ、私たちは扶桑人ではない。

 

カールスラントの飛び方とカールスラント製のユニットの性能が定められてるから。

 

だから扶桑から届いた論文や参考書の通りに出来るなんて誰が思うだろうか?

 

 

 

 

『使える利き手側から鋭く捻り込み、片翼を切断して装甲内部を露出させ、射撃をねじ込みつつ射線切りの維持を心がけながら、昼なら太陽の熱源を、夜なら月の明光を、時刻によって姿を表す惑星を利用することによりネウロイとの距離間隔を狂わせつつ強襲する。以上が中型以上のネウロイの戦術、これはその一つである』

 

 

 

 

いや、いやいやいや、何を言う。

 

そんな動きエースウィッチでも無い限り簡単にできるわけがない。

 

そんなデータが国外に届いたことは凄いことだけど、だが、それを実際にやるなど、そんな…

 

 

 

「キィィィ!」

 

「ッッ!!!」

 

 

 

やばい、思考に溺れて見つかった!

 

距離を誤った。

 

うぅっ!!

 

ココで戦うしか…!!

 

 

 

「キィィィ!」

 

「きゃっ!」

 

 

インカムに手を伸ばして戦闘開始の報告を行おうとしてビームが真横をすり抜けた。

 

ギリギリシールドが間に合うか間に合わないかの速度だ。何より威力が高い。

 

 

「はっ!はっ!ッ!あ、あああ!!うああああああ!!!」

 

 

 

軽い錯乱状態。

 

恐怖心が追いかけて支配する。

 

それを必死に抑える私。

 

 

ダメだ……

 

同時に援軍も請おうと考えたがこんな見えない夜闇で援軍を呼んでも被害を増やし過ぎてしまうだけだ。

 

……覚悟を決めるんだ。

 

倒せなくても命を引き換えに追い払って次の友軍にコレを託せるならっ!それなら夜間適正が少しでもある私がココで奴を暴いて…!!

 

 

 

 

 

 

__そういう時は、身を隠すんだ。

 

 

「え?」

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

すると、真上から弾丸が降り注いだ。

 

 

「キィィィ!!??」

 

 

 

「え?え!?」

 

 

ネウロイの背中の装甲が砕け散った。

 

一体何が…??

 

 

「!?」

 

 

すると真横を通り過ぎる影が一つ。

 

風に煽られる髪を抑えながらその先を見る。

 

 

 

 

「だ、誰!?」

 

 

 

夜闇の中でも良く見える光。

 

その姿はまるで彗星の如く。

 

空を飛んでいるし、ウィッチだろうか?

 

すると肩に抱えた大きな武器からミサイルを撃ち放ち中型ネウロイに追撃を加える。

 

綺麗な弾道を描いて直撃した。

 

砕け散るネウロイの装甲。

 

 

「!」

 

 

手応えはある。見事な強襲だ。

 

するとその彗星はこちらに振り向く。

 

 

「そこのナイトウィ… いや、君はナイトウィッチなのか?あと見たところ新兵のようだな…」

 

「!?」

 

 

驚いた。

 

その者は女性ではない。

 

空を飛ぶ男性だった。

 

 

「まあ良い。とりあえずまだ無事だな?」

 

「っ、はい!無事であります!」

 

「そうか。見たところカールスラント軍人だな。所属は何処だ?」

 

「わ、わたくし、カールスラント空軍第3夜間戦闘航空団所属しているヘルミーナ・レント少尉であります。それでええと、あなたは…」

 

「俺の名はジム。飛べるが今は訳あって無所属だ。でも世界にはそんな人間も一人くらい存在すると思っておけ。それよりネウロイだ。このままだと街に向かってしまう」

 

「!」

 

 

 

ネウロイを見る。

 

徐々に大陸側に向かっている。

 

あと装甲がみるみるうちに回復する。

 

流石に中型クラスのネウロイか。

 

 

 

「レント少尉、俺が前に出てコアを暴くから君がコアを狙い撃つんだ」

 

「ぇ……あ、いや、待ってください!あなたは、その… 無所属だというなら、守られるべき民間人です!ですから、ここは軍人である私に…!」

 

「ありがとう。でもネウロイは屠り慣れているから気にするな。任せておけ」

 

「!」

 

 

その言葉に嘘は感じなかった。

 

私と違ってとても落ち着いている。

 

まるで場慣れしているような佇まい。

 

あと……危険な役割を何度も背負ってきたような貫禄が横顔から伺える。その言葉は信用できる。

 

 

 

「俺が前に出てロックを集める。なに心配するな。夜間戦闘なんてのは月の角度を利用して一度飛び込めば後は流れで終わるものさ。そんじゃ行くぞヒヨッコ。しっかり定めろよ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

私は軍人の恥だ。

民間人を戦いに向かわせてしまった

 

でもプロペラ式とはまた違うストライカーユニットでネウロイに飛び込む男性ウィッチの動きに迷いも狂いも無い。

 

臆せず立ち向かう彼は月を真後ろに付けて一気に強襲する。

 

 

 

「キィィィ!!?」

 

 

通りすがりに翼を破壊し、ビームを誘いながら捻り込み、また装甲を破壊する。

 

後ろにいるわたしに集中させない動きはまさに前衛に相応しい。

 

 

「すごい…!」

 

 

完璧な前衛と位置取り。

 

しかも夜闇の中で綺麗に有効打を入れ、陸の被害を考慮しつつ海側に体を寄せてビームを回避している。

 

それからも腹元に容赦ない射撃を撃ち込み、コアの位置を確認しながら無駄弾を使わず、落ち着いてまた月を背後に作るよう正面に回り込みながらネウロイの迎撃のタイミングを合わせて雲の中に入り込む。

 

 

「は、速い…!動きに全く迷いがない…!」

 

 

すると雲の中から進行方向に合わせてネウロイに射撃、見事な偏差撃ちだ。

 

ネウロイが苦しんでる間にいつのまにか雲から脱して、真上を取っていた男性ウィッチは降下攻撃を行い、刀を振り抜いて一気に翼を両断。

 

海側に傾きながらネウロイの進行方向が陸から逸れていく。

 

 

「ッ!」

 

 

 

すごい、すごい…!

 

すごい!すごい!!すごいッ!!

 

まるで解体作業だ。

 

慣れたようにネウロイをバラしていく。

 

 

 

「ヒヨッコ!そこから撃てぇ!」

 

「!」

 

 

 

赤い光が見えた。

 

ネウロイのコアだ。

 

すると訓練通りに仕込まれた体が自然と動く。

 

照準を合わせて、赤い光に射撃した。

 

 

 

「キィィィ___ィ」

 

 

 

パキンと音が鳴った。

 

そしてネウロイは光になって散り散りになる。

 

 

 

 

撃破した…?

 

た、た、倒せた?

 

この私が?

 

初の夜間戦闘で??

 

しかもそれが中型ネウロイ??

 

 

 

「や、やった!倒せた!倒せたんだ!」

 

 

 

はじめての大物撃破。

 

今も動揺が止まらない。

 

高揚だってまったく収まらない。

 

もう何がなんだか。

 

そんな気持ちでいっぱいだ。

 

 

 

「中型とはいえ半端なはぐれ化だったな。あと飛んでいた時間帯が間違いだったな。力はあるのになんとも情けないネウロイだ」

 

 

 

初の中型撃破、更に夜の初戦闘、凡ゆる感情が押し寄せる私を他所に、その男性ウィッチは慣れたように状況分析を行なっていた。

 

 

「まぁいいか…レント少尉!」

 

「!」

 

「一度の射撃で狙えるあたりとても良い腕をしている。さすがカールスラント軍人だ」

 

「ッ、はっ!ありがとうございます!」

 

「あ、いや、別に敬礼はしなくて良いぞ…?」

 

「はっ!」

 

 

 

撃破できた安心感と疲労感に挟まれながらも軍人として体に刻まれた規律が体を正すと、無所属ながらも力を貸してくれたこの人に敬礼してしまう私はどこまでもカールスラント軍人らしい。でも敬意を示すほどのモノをこの人は見せてくれた。そして命も救われた。感謝に尽きるのみ。

 

 

「とりあえず今回のネウロイ撃破だが、コアを破壊したのはレント少尉だから手柄は君が持って帰ってくれ」

 

「っ!?いや、しかし、それは!!」

 

「撃破したのは君だ。このくらいの功績ひとつ構わない。ただひとつだけ頼みがあってな、今日俺が飛んでいたことは君だけの中に収めてほしいんだわ」

 

「……え?」

 

「訳あってな、いまは軍やお国に俺の存在が明かされると面倒なんだよ。だから俺のことはあまり語らないでくれると助かる」

 

「え、え?あの、それは…?」

 

「そんじゃ、頼むよ。じゃあさよなら!気をつけて任務に付けよ、ウィッチ!」

 

 

 

そう言ってその男性ウィッチは一気に去った。

 

 

 

「え…えええええ!?ままま、待って!待ってくださ………ぁぁ、行ってしまった……」

 

 

 

瞬く間に光となった。

 

もう見えないし、魔道針も捉えきれない。

 

一体なんだったのか?

 

でもそれはまるで『彗星』のようだったから…

 

 

 

 

「彗星の、男性ウィッチ??」

 

 

 

 

解かれた緊張から脳がゆっくりと働く。

 

それを、言葉に出せば先程までいっぱいいっぱいだった情報量はまとまりピースが一つずつハマっていく。

 

男性ウィッチ。

普通じゃないストライカーユニット。

 

ほんの少しだけ辿々しいブリタニア語。

しかも軍人じゃないただの民間人。

 

けれど様になっていたその姿。

 

 

そして__彗星。

 

つまり…

 

 

 

 

「彗星の……魔女??」

 

 

 

聞いたことある言葉が口から飛び出した。

 

それは一年前に届いた英雄の知らせ。

 

東から届いたとある男性ウィッチの話。

 

その英雄は人類の希望たらんコトを。

 

 

 

「まさか……いや、でも、まさか……」

 

 

 

過去実際に見た訳じゃない、その姿を。

 

でも現在この場で初めて見た、その戦い。

 

その名に恥じる事無い、その勇姿を。

 

そして夜闇に映った、その彗星を。

 

だから、まさか、もしかしたら。

 

そう言葉が次々と流れる。

 

だからこそ、信じられなかった。

 

 

 

「もし、これが本当だとして、何故こんなところに…??」

 

 

 

それは、その彗星にしかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから私は報告書に残す。

 

・北海を夜間哨戒中に中型ネウロイの衝突。

・所属不明なとあるウィッチとの共闘。

・苦戦なく無事に撃破、また被害なし。

・また中型ネウロイの撃破。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

報告は絶対だから、今回のことを伝えた。

 

でも……所属不明の正体は濁した。

 

正体不明なことは間違いじゃない事実。

 

まだ確かじゃないため。

 

 

 

 

 

でも、しかし、もしも…

 

もしも、その人が本当で本物なら…

 

 

 

「この論文を書いた………人…??」

 

 

 

テーブルの上にある資料に目を移す。

 

対ネウロイ戦術の論文。

 

扶桑の軍神『北郷章香』が記述したもの。

 

しかし最後の一行に「またこの資料は側近の者が収集した戦闘経験を含め作成される」と書かれてあった。とても読みやすく、とてもわかりやすい論文に対して、一つの謎を生んだ要素。

 

その【側近】とは??

 

しかし判断材料はある。

 

極東から届いたとあるウィッチの記録。

 

そして前日の唐突なエンカウント。

 

それから共闘。

 

高い実力。

 

あと彗星。

 

 

 

「も、もしかしたら……!」

 

 

 

アレはそうだったのかもしれない!

 

いや、そうに違いない!

 

私はそう感じている!

 

 

___ッッ〜!!!

 

 

 

「会いたい…っ!会って尋ねたい…!知らないことの多くを!もっと多くを!あの人から色々聞きたい…!」

 

 

 

それが夜間戦闘部隊として結成されたカールスラント空軍第3夜間戦闘航空団の助長になるなら、その経験が今すぐわたしに欲しい。

 

そうすればこの期待に押し潰されそうな恐怖だって乗り越えられる筈だから…!

 

 

 

 

 

 

 

魔女は____その彗星に、そう願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリア共和国は農業国として豊かな場所だ。

 

しかし近代化を含め軍備提供が遅れ気味であり軍力は他国に劣っているため、兵士どころかウィッチの育成も遅れ気味であり、隣国のブリタニアやカールスラントに比べて自国の軍事力は低めだ。

 

故にこの辺りは空を飛んでもあまりウィッチと出会うことはなく、なんなら偵察機もそう多く飛んでない。

 

ではコレを知って何が出来るのか?

 

 

日中を堂々と飛んで移動出来るって事だ。

やったぜ。

 

 

 

「まあスオムスでも似たような感じだったけどな」

 

 

俺はとある島国を出て旅をしている身分であるが、実のところ大陸を移ってからも空を飛んで移動していることが多い。割合としては徒歩が3割で、飛行は7割って感じだろう。

 

移動中に良く飛んでいる理由として、まず俺はストライクユニットを収納しているキャリーバッグを引きずって旅をしている。

 

もちろんガラガラとホイールを回せるタイプのトロリーバッグなのだが、この時代って道がちゃんとインフラ整備されておらず、そんな酷道でキャリーバッグのホイールを回すと壊れてしまう恐れがある。

 

これが都会近辺ならある程度のインフラ整備された綺麗な道が続いてるので、そういう時は降下してキャリーバッグを引いては観光客を演じている。この時に歩いてる感じだ。

 

しかしそれ以外は道を考えて飛んでいる。

 

だから割合として飛行7割で、歩行3割というわけだ。

 

てかヨーロッパに着くまで大体が山なのでまともに歩ける場所なんてかなり限られている。そもそも戦時中に徒歩で世界を渡ろうなんて結構大変なんだぞ?ネウロイが荒らした道もあるんだからな。馬車でない限り移動は難しい。

あと飛んで移動すると言っても昼間堂々と飛ぶことはしない。他国の偵察機や空戦ウィッチとエンカウントを避けるため飛ぶ時は夜中から早朝の時間帯にしている。一人寂しい夜空に身を投じているが仕方ないことだ。でも夜なら出会う確率は少ない。だからそうしている。

 

移動するに便利な、俺だけの時間帯だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていた時期が僕にありました。

 

夜なら大丈夫だと慢心していたある日のこと。

 

とうとう一人のウィッチに見つかった。

 

 

 

「よりによってゴロプ中尉と()()出会うとはな…」

 

 

 

 

 

 

 

〜 三ヶ月ほど前の会話 〜

 

 

 

__ほぉ?私の能力(空間把握)に何か見知らぬ… いや違う、寧ろ知っていたかなり印象的な魔法力を捉えたから探りに飛んできたが、まさかこんなところで軍神の柱に出会えるとは思わなかった。

 

 

__うわでた。

 

 

__やれやれ、さっそくな挨拶だな?しかも勝手にこの辺りを飛ぼうなど相変わらず躾がなってないらしい。

 

 

__それはどうかな?むしろ躾よりもご主人気取りのご主人が愚かだったかもしれんな。

 

 

__ほぉ?さしずめ、その彗星を収める望遠鏡もなければ海に囲まれた天の川も彗星を奔らせるに小さかったと?

 

 

__結局はご主人気取りも人間だ。俺はその駒にならなかった。だからその枠組みから飛び出したんだよ。

 

 

__なら私が使いこなしてみせようか?瞬きを知らない彗星よ。オストマルクは常に優秀な人材(コマ)を欲っしている。

 

 

__君が、だろ?で、半年前の観戦から収穫はあったのか?俺が知る限り観戦武官として一番はしゃいでたのはガランドと素っ裸で廊下歩いてたルーデルくらいだったぞ。

 

 

__………………胸がなくても……別に困らん。

 

 

__なに張り合ってんだよぉ!え、今の俺が悪いのか!?(観戦武官としての)教えはどうなってんだ教えは!?

 

 

 

 

 

〜 回想以上 〜

 

 

 

 

まあそのあと「何も言わんし、何も望まん、構わんから、とっとと行け」と逃してもらった。

 

詳しく語らずともゴロプ中尉は俺が一人で飛んでいる理由を察してくれた。ほんとに頭はめちゃくちゃキレるんだよなぁあの人。あまり敵に回したくないタイプだ。

 

それからオストマルク辺りからは飛ぶのをやめて徒歩に切り替えた。ロマーニャのように交易盛んな場所はキャリーバッグを引けるほどインフラがしっかり整備されてたのでオストマルクの辺りからはほとんど歩いてた。

 

それでどうせ歩くなら見慣れた海沿いってことでアドリア海付近を徒歩で進み、ミラノからロマーニャ公国を横断、しばらく地中海を沿ってバルセロナに到着。そこから北に折り返してアンドラだった。

 

あ、それと片手で数える程度だが道中にネウロイもいた。ほとんど統率力を失った小型だったので倒すのに苦労しなかった。一撃だよあんなの。

 

 

ただし、前日の中型ネウロイは驚いた。

 

急に手の甲がヒリついて夜中にも関わらず飛び起きたわ。それで泊まっている小さな宿からストライクユニットで抜け出して、手の甲に感じる痛みの先に向かったら北海に現れたのは中型サイズのネウロイ。まだあんな残党戦力として残っていたのかと顔が引き攣った。一年戦争後のジオン軍かよ、お前は。

 

 

 

「まあこれも役割だ。北上して正解だな」

 

 

 

観光目的も含めて今はガリア共和国の北端にあるバス・ノルマンディ地方のバラントンに腰を落ち着けている。そこで小さな宿を見つけて一週間ほど滞在する予定。今日で3日目だ。

 

ちなみにアンドラを出たのは7日前。何故こんなに移動が早いかというと、ガリアはあまりウィッチがいないからリモージュ辺りまで一気に飛んで移動できた。

 

そこからは徒歩に切り替えた。道中はどこもブルーベリー畑が多く、農家さんから分けて貰いながら食べ歩いた。心なしが夜中飛びやすかったな。ブルーベリーを食べると目が良くなるは本当らしい。もちろん美味しかった。

 

ブルーベリー味のチェロスとか無いかな?

パリまで行けばありそうだな。

 

 

 

「ジ、ジムさん、お水、如何ですか?」

 

「お?持ってきてくれたのか。ありがとう、助かるよ」

 

「い、いえ、お礼はコチラの方だと、わたしの母さまが」

 

「あー、なるほど?いやあまり気にしなくて良いぞ。体が鈍らないよう訓練も兼ねて薪割りしてるだけだ」

 

「……魔力行使の訓練ですか?」

 

「??あー、そういやジョーゼットちゃんはウィッチだったか。だとしたら魔法力は感知出来るんだったな」

 

「うん、最近なったの。でも男の人のお兄さんが魔法使えるなんて珍しいね?」

 

「俺は特別性だよ。あ、周りには内緒にしてくれよ?」

 

「うん、わかった。内緒」

 

「ありがとう。お礼としてまたお風呂上がりに髪梳かしてあげよう。子供は100%オフだ」

 

「ええと…タダってこと?」

 

「そう。サービスって奴だ」

 

 

手に取った薪を置いて、斧に魔力を伝わらせて切れ味鋭くする。

 

そして軽く振り下ろして薪を割る。

 

……うーん、割れ目がかなりズレたな。

ちょっと、普通…3点!

 

 

 

「………見ていて、面白い?」

 

「え?……うん。少しだけ」

 

「そう?ならよく見てろよ。この薪、実は綺麗に割ると中からブルーベリージュースが飛び出すからな!」

 

「え、そうなの!?」

 

「そんなわけないじゃん。嘘だよ」

 

「なっ!」

 

 

おとなしそうに見えて良い反応を見せるこの女の子の名前は『ジョーゼット・ルマール』であり、俺が泊まっている宿屋のひとり娘さん。

 

少しだけ人見知りな性格をしているけど、掃除やベッドメイクが得意だったりと、宿娘としてその腕は確かだ。

 

お陰で綺麗な部屋で毎日ぐっすりだぞ。

ありがたい。

 

それと先程も言ったように最近ウィッチになったばかりで、再来月には魔女学校に入学して魔女候補生になる予定だ。

 

 

「ジョーゼットは薪割りやったことあるのか?」

 

「ううん、お父さんが薪割り危ないからダメだって。でもジムさんが魔法力で簡単にできるなら私もできるかな?」

 

「魔力行使はあくまで付与。体の使い方を覚えないと難しいな」

 

「そうなんだ…」

 

「……魔法、使いたいのか?」

 

「うん……使って、誰かを助けれるようになりたい」

 

「そうか。それなら薪割りよりももっと簡単なのがあるぞ」

 

「ほんと!?」

 

「ああ」

 

 

 

 

夕方になり、大量の薪を屋根下に収納したあとルマール家の夫婦から感謝される。よく薪割りを行う父が腰を痛めてたため、薪が不足気味だったから。大変助かったようだ。

 

そんな感じにルマール家が経営する小さな宿でお世話になりつつ、俺も訓練がてらに薪割りを行ってご家族に貢献する。

 

そして時間が空き次第ジョーゼットには魔力行使の訓練を設けた。

 

と、いっても個室のカーペットの上に座ってやるだけだが。

 

 

 

「おー、上達したな。やっぱり上手いな」

 

「う、うん!!」

 

「ニャー」

 

 

バルセロナの魔女学校にいたイリスみたいに最初は苦戦すると思ってたが、ベッドメイクが上手なジョーゼットは魔力行使のブラッシングも得意だった。

 

毛並みを綺麗にするところはベッドメイクと似てイメージしやすく、そこに魔法の要素を追加するだけの話として受け止めてからは飲み込みが早い。

 

それと更に気づいたことが…

 

 

 

「まさか回復魔法か?これは珍しいな…」

 

「え?そうなの?」

 

「もしや無意識かい?なら早めに気づいてよかったよ。回復魔法はかなり多くの魔力を消費することになる。感覚に慣れないと気づかずに使い切って気絶するぞ」

 

「え!?そ、そうなんだ…」

 

 

 

そもそも回復魔法はかなり難しい魔法だ。

 

大きく訓練を積まないとまともに使えない。

 

それに対して宮藤家が特別過ぎる。

 

あの家系は規格外だから参考にならないとする。

 

 

 

「ジムさんはどうやって気づいたの?」

 

「傷んでいた毛艶の治りがあまりにも早い。ここら辺は違和感だったのでジョゼの魔力を意識してみた。すると感じ取れたのは柔らかな熱であること。それから生き物を守るように包み込む緑色の光でいること。これに関しては俺も経験がある。だから回復魔法の類だとわかった」

 

「そうなんだ…」

 

「ただあまり強めの回復魔法じゃないな。今のところ応急処置程度か。ジョゼの血筋は魔女家系じゃないんだっけ?」

 

「うん。お母様は普通の人だよ。お父さんも普通」

 

「そうか。だとしたらジョゼの使い魔のペルシャ猫がその性質だったか。しかし…」

 

「ふぅ…ふー、……ん、からだが、熱い…」

 

「一旦中止だ。ほら、お水飲んで」

 

 

普通の魔法は問題ないが、回復魔法を使うと体温が上昇してしまうジョーゼット。

 

使い魔との相性が悪いって訳じゃないけど回復魔法の使用時は使いこなせてない分の魔力が熱に変わっている。

 

簡単に言えばカロリー的な奴だ。

 

回復魔法として放出されなかった不完全燃焼のエネルギーが体内に残ってしまいそれが改めて内側から燃やされている状態。

 

だから体温があがっている訳だ。

 

そうなるとつまり…

 

 

「ジョゼ自身の魔法圧がそんなに強くないのかなコレは。まあこれは使っていくうちに時間が解決するだろう。でも無意識はなかなか危なかったな。よかった早めに気づいて」

 

「ふぁぁぁぁ、なんだかあついよぉぉ、おにいちゃぁん…」

 

「待て待て待て、犯罪臭やばいって」

 

「ふらふらするぅぅ、おなかもすいたぁぁ…」

 

 

 

カーペットの上に座りながらふらふらと、そしてコチラにもたれかかるジョーゼット。その体温がまだ高い。あと魔法力を使っておなかも空いたらしい。君はそういうタイプか。

 

彼女を抱え、一度布団に寝かせる。

いまは放熱中だ。

体温はそのうち収まるだろう。

 

とは言え、魔女なりたての少女に少しばかし無理させてしまったか。

 

 

「ニャー?」

 

「猫さん、彼女と仲良くしてあげて。そしたら今よりも魔法が上手になって、この子は誰かを助けれるウィッチになれるはずだから」

 

「ニャ」

 

「ああ、よろしくな」

 

 

 

そしてジョーゼットの頬をペロペロと舐める使い魔のペルシャ猫。

 

そしてスリスリとゴロゴロと、鳴り響く。

 

俺と小さな魔女にしか聞こえない猫の声がこの部屋の中で響いていた。

 

 

 

 

 

 

つづく






【ヘルミーナ・レント】
正式にはヘルミーナ・ヨハンナ・ジークリンデ・レントという長い名前のカールスラント軍人であり、ナイトウィッチとしての適正力はそこまで高くないがそれでも適性があるだけマシといった具合なため、訓練学校を卒業するも間も無く夜間戦闘部隊に配属させられてしまった苦労人のウィッチ。常に手探り状態で夜の世界と戦わされるため度々メンタルが折れかけているところに泣きっ面の中型ネウロイだったが無事に彗星から助けられた。それ以降その彗星を探している。

【ジョーゼット・ルマール】
小さな宿の娘ちゃん。とある旅人から早い段階で魔法を教わり、ウィッチ入隊後も使い魔のブラッシングが習慣になったためか原作以上に魔法圧が安定する。後の502JFWとして参入。大怪我を負った雁淵孝美をその場で救ったことで原作が……??

【薪割り中の旅人】
アンドラからガリア共和国に足を踏み入れ一気に北上する。ルマール家が経営する宿屋で薪を割りを手伝ったり、宿娘のジョーゼット・ルマールにブラッシングを通して魔法力の使い方を指南したりと比較的平和な滞在期間中、ブリタニア東の北海から強い敵意を感知する。夜中飛び出したあと北海にてナイトウィッチと共闘し、難なく撃破。ただし急な運動により小腹が減ってチェロスが食べたくなった。




ではまた

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