GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第4話

 

 

 

「宮藤さん、お世話になりました」

 

「行ってしまうのか」

 

「はい。こちらの方ではもう何も収穫もないので。魔法陣に刻まれた文字も消えた。あとは開きもしない空っぽな宝箱だろうそこに心燃やす考古学者達に託しますよ」

 

「そうか。わかった」

 

 

ケラケラと笑って答える。

 

ここに来たばかりの頃は相当余裕が無かった。

 

しかし今となっては色々と失って、でも得た物も幾つかあって、お陰で定まった。

 

この役割が。

 

 

 

「宮藤さん。本当にお世話になりました」

 

「気にしないでいい。短い間だったがとても楽しかったよ。なんならいつまでもいて欲しかったくらいかな?」

 

「でしたらこのお手紙に私生活の散らかし具合を書き加えておきますよ」

 

「あ、あははは……それは勘弁してほしいな?」

 

「冗談です。でも手紙はちゃんと届けます。扶桑に着いた後はしっかり宮藤診療所までお渡しに向かいますから」

 

「ああ、よろしく頼むよ。一応その手紙には君のことも書いてある。怪我などで困ったら力になってあげれるようにね」

 

「そうなんですか?ありがたいですけど些か贔屓が過ぎません…?」

 

「黒数くんは僕を大いに助けた。それで充分だよ」

 

「そんな、助けられたのは俺の方で…… いや、やっぱりなんでもありません。宮藤さん。ありがとうございます。その時は宮藤診療所まで頼らせて頂きます」

 

「うん。これからも頑張ってね」

 

 

 

扶桑行きの船、赤城。

 

そろそろ出発の頃だろう。

 

一週間程度のブリタニア生活だったが、宮藤さんとの生活は悪くはなかった。

 

そんな恩人さんと別れようとして、最後に問いかけられる。

 

 

「君は……黒数くんは」

 

「?」

 

「やはり、そういうことなんだろうか?」

 

「……」

 

 

潮風を浴びながら、その言葉は流れゆく。

 

その意味はこの世界で生きる人類としての願いなんだろうか。

 

でもこの世界の縋りに応えるなら…

 

 

「前も言った通りです。俺は英雄な筈がない。俺は普通の一般人。人間で沢山です。だから違うと思います」

 

「そう、か」

 

「……でも」

 

「?」

 

 

 

ブリタニアの街を見る。

 

突如現れたヒスパニアの怪異から逸れてやってきたネウロイ達によって被害を受けた部分を修復している。俺も少しだけ復旧を手伝ったがネウロイの被害は恐怖の傷跡なんだとこの目で理解した。

 

それから被害を受けたのは街だけでは無い。

 

ウィッチ達も被害を受けた。突如現れたネウロイは昔よりも強く、その機動力は今のストライカーユニットでは太刀打ちが難しいくらいに。

 

今回はなんとかして人海戦術で討ち取ったが人的資源の被害は大きかった。

 

またヒスパニアの方でも第一波は抑えたが武装面で戦力が足りず戦力強化に勤しまれている。

 

宮藤博士も急いでストライカーユニットの開発に勤しまなければならない。

 

恐らく翌年の1937年辺りからネウロイの進行は大幅に広まってしまうだろう。

 

軍ではそう予想が立てられて、世界はまた混沌を迎えようとするだろうから。

 

 

 

「俺がやるべきことは決まったな」

 

 

この世界と同時に俺も始まった。

 

画面越しの続きが。

 

これはトライアルモードではない。

 

俺がボタンを押して選んでしまった物語。

 

しかしそこにリセットボタンは無い。

 

終わりがわからないモード設定。

 

だからひとりのプレイヤーとして挑むだけだ。

 

それが帰る方法だと考えているから。

 

 

「俺は英雄であることを否定する。でもこの世界が望んだと言うのなら。人類が望んだことだと思うなら。勝手にそうすれば良いさ」

 

「君は英雄にはならないんだね」

 

「ああ。でもここにいる間はそれらしい事はしてみるよ。しかし俺は何度も否定しておく。俺はそうじゃないと言うことを」

 

「そっか」

 

 

宮藤一郎は笑う。俺の答えに。

 

俺も笑う。宮藤一郎に釣られて。

 

赤城の汽笛がブリタニアの港を響かせる。

 

 

そろそろ扶桑行きの船が動き出す頃だ。俺は乗り込んだ船から再度宮藤さんに頭を深く下げて手を振る。

 

 

すると…

 

 

 

 

「黒数おにいちゃぁん!」

 

「!」

 

 

栗色の髪を靡かせたボブカットの小さな少女。

 

その名前はリネット、大商人の娘。

 

 

そして…

 

俺をネウロイから守ってくれた一人のウィッチ。

 

 

「わたし!ウィッチになって!お兄ちゃんみたいに守ってくれた英雄になるから!!だから!お兄ちゃぁぁぁん!わたしはウィッチになってみせるからぁぁ!」

 

 

 

小さな腕で精一杯振る。

 

しかしそんな腕でもシールドを貼ってネウロイの攻撃を受け止めて、俺を守った。

 

だから俺の中では、彼女が世界一のウィッチなんだ。

 

 

 

「大丈夫だ!君はウィッチだ!リネットォ!」

 

「!」

 

「俺の中では!もう君はウィッチだ!!」

 

「お兄ちゃぁぁぁぁん!!」

 

 

 

少女の声を聞きながら遠くなるブリタニア。

 

離れると少し寂しくなるな。

 

寂しさを誤魔化すようにため息をつく。

 

潮の香りが鼻をくすぐる。

 

それでもしばらくブリタニアの港町を眺めて、全てが小さくなってきた。

 

完全に別れの形になり、その港町を背にして甲板を歩いていると一人の扶桑ウィッチが近づいてきた。

 

 

「黒数、ここにいたか」

 

 

ポニーテールを揺らしながら目の前にやってきた少女、または扶桑のウィッチ。

 

 

 

「ああ、大尉か。どうした?」

 

「まず一つ。大尉はやめてくれ。わたしは_」

 

北郷 章香(きたごう ふみか)だろ?覚えてるよ、ちゃんと」

 

「お、 そうかそうか!あっはっはっは!覚えてくれてたか!それは良かった。うむ、その通り、わたしは北郷章香。しばらくの間だが扶桑までよろしく頼むぞ。黒数 強夏(くろかず、きょうか)

 

「ああ、よろしく」

 

 

互いに握手を行う。

 

赤城の甲板に穏やかな潮風が舞い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?じゃあ北郷は直接的に宮藤博士のストライカーユニットの研究を手伝ってたのか?」

 

「ああ、そうとも。前も言った通り技官として戦技研究を行う故、次世代のユニットを知る必要がある。まあブリタニアでは既に新ストライカーユニットの空戦ドクトリンは完成してたみたいだからな、テスト用のユニットを実際に履いて見て動きを合わせたりした。その時に技術開発チームと連携して使い心地や改善を行なってきた。その時に宮藤博士と何度か顔を合わせたかな。あと…君に頼まれた受け渡しの時だね?」

 

「それに関しては本当にありがとうございました」

 

「あっはっはっは!気にするな!わたしは嬉しかったからな!」

 

「…と、言うと?」

 

「んー?ふふん、そうだね。まあ、そこまで大した事じゃないよ。純粋に頼られて嬉しかっただけだからな。いやー、しかし、二ヶ月程度の駐在だったか有意義だったな。その分味噌汁が恋しい!」

 

 

駐在武官としてしっかり役割を果たした彼女は扶桑に戻れることが嬉しそうだ。そんな俺も日本をモデルとした扶桑が気になる。

 

でもそんな風に五体満足で望めるのは…

 

 

「北郷」

 

「んー?」

 

「ありがとうな。出会えたのが君でよかった」

 

「ぇ?…あ、あー、あはは?いやー、な、なんの感謝なのかなー? ちょっとわかんないかな」

 

「色々とだよ。根回しとか、あと色々黙秘してくれたりとか、北郷大尉の気遣いに大いに助けられたんだ」

 

「別に大したことはしてないさ。もちろん報告に嘘は言ってない。何せウィザードごっこをしようとした男の話をしても信じられないからそこら辺は省いたが、あの場所に魔法陣があることは伝えたさ。それに…」

 

「?」

 

「ネウロイを倒したなんて証拠はどこにもないからな、黒数」

 

「っ、まさか聞いてたのか!?」

 

「たまたまだよ。悪意はない。でも可愛い約束じゃないか。たしかリネットと言う女の子だったかな?ネウロイは二人で倒したから戦果はお二人で半分コ。だから撃墜数は1にならない。それに民兵でも何も無い一般人の活躍は正式に倒したものとしてカウントされない。なんともまあ大人の無茶苦茶な言い分だ」

 

「勘弁してくれ…… もし世界で生身の男がネウロイを倒したとかそんな話が広まったら魔法陣のところに居合わせたのと併せてややこしくなってしまう。俺はトチ狂った研究者達に解剖なんかされたくないぞ」

 

「まあ、それはそうだな」

 

「そうだよ。ま… とりあえず北郷。俺は出逢えた軍人さんが君で良かったと心の底から思ってるよ」

 

「!……そっか、なら、良かったさ!」

 

 

満足気にからからと笑う北郷。

 

その姿は洗練された人格者のように感じる。

 

部下を持ったら慕われるタイプだ。

 

 

「ところで黒数、君はこれからどうするんだ?」

 

「俺か?まあとりあえず宮藤博士の手紙を渡してから… その後は未定だ。とりあえずどこか適当な場所に腰を落ち着けて、それでネウロイを葬るために模索する」

 

「そうなのか!?」

 

「ああ。魔法陣を通して知ったが、どうやら俺はそういう役目らしい。あの魔法陣から力を得てやるべき事は決まった」

 

 

半分は嘘だ。

 

でも全てを告げるとややこしくなるから今は「もしかしたら」の範囲で打ち明ける。

 

 

「俺はこの世界で厄災と戦う」

 

「!!」

 

「英霊の武具、その英知を呼び起こす魔法陣から出てきたからには、とりあえずその通りに沿ってみることが近道だ。どこまで時間がかかるかわからないがネウロイを倒していけば少しずつ迫れるはずだ」

 

 

北郷は俺のことを知っている。

 

てか、大体のことは打ち明けた。

 

俺はこの世界の人間じゃないことを。

 

そしてあの魔法陣から現れたこと。

 

その魔法陣は俺に反応したこと。

 

それから、この世界に俺に望まれていること。

 

しかし俺は英雄ではない。英雄にもならない。

 

でも望まれたから、この存在は戦う事になった。

 

そもそもそうしなければ帰れる気がしないから。

 

だから、らしいことだけを、してみるつもりだ。

 

 

 

「よし、それならわたしに良い考えがある」

 

「?」

 

 

不意に彼女は提案する。

 

俺は目線で首を傾げた。

 

彼女はポニーテールを揺らしながら告げる。

 

 

「黒数、わたしの道場に来ないか?」

 

「ど、道場?」

 

「ああ。これでも私は皇国の生まれでな、そこそこの融通が効く。あと微力ながら講道館剣術免許皆伝を持っている身でもある。扶桑に帰った暁には新たな軍務として一つの道場を請け負うように言われているんだ」

 

「それは凄いな。北郷は指導者となるのか」

 

「そうだ。そこでだ。舞鶴に着いたら黒数を門下生の一人として風下に置きたい」

 

「…風下?」

 

「居所を提供したいんだ。そこでなら衣食住は用意できる。それから対ネウロイの一員として私が直々に君を民兵として雇ってしまえば黒数の目的に近づけるはずだ」

 

「そんな簡単に動かせるのか?」

 

「扶桑に帰れば私は少佐になれる。そうなれば建前上として民兵志願者である君を少佐の権限で所在管理ができる筈だ」

 

「軍権の暴力だなオイ」

 

「はっはっは!階級は飾りとは言えどもこう言う時にしっかり使わないとな!」

 

 

しかし未成年の少女が少佐か。

 

とんでもねぇ時代だな。

 

いや、時代というより世界観か。

 

まあ、それはそれとして…

 

 

「しかし活動拠点があるならそれに越したことは無いな。正直ありがたい」

 

「おお、そうか!それは良かった!」

 

「だが俺はいつまでも扶桑にいる訳ではない。あくまでブリタニアから眩ませるために亡命してる訳で、扶桑語の会話に困らない中間地点として今回扶桑を選んだだけ。それだけだよ」

 

「む?それはつまり、そうで無くなった場合は扶桑ではなくとも別のところに向かうと言う訳なのか?」

 

「ああ。だって俺はこの世にない特別性だからな。狂いに狂った研究員に捕まって解剖なんて受けたら堪まったもんじゃない。人類に力は貸す。ネウロイは敵。そのための体。与えられた武装。人類の役割。しかしそこに(そむ)かれた意志が襲ってくるなら俺は扶桑から逃れる。そう決めている」

 

「そ、そうなのか………それは、仕方ない……か…」

 

「………そんな、残念がる…か?」

 

「………」

 

 

 

すると彼女の表情は少しだけ曇る。

 

 

 

「…北郷?」

 

 

 

彼女の名を呼ぶ。

 

北郷は甲板から海を眺めてしばらくして、重く口を開いた。

 

 

 

「…君がいれば、押し込まれるだけの世界は変われる、そんな気がするんだ…」

 

 

彼女は言う。

 

それは一般人の俺に向けてか。

 

それとも…

魔法陣から現れし英雄に向けてなのか。

 

 

 

「英霊達の魔法陣からやって来た君なら、舞鶴だけじゃなくて、扶桑だって…」

 

 

 

それはこの世界に生きる人間の__願い。

 

 

 

「北郷…」

 

「っ……い、いや。すまない。なんでも無い。ブリタニアで色々あってちょっと考えてただけだ!あっ!あっはっはっは!」

 

 

笑って誤魔化す。

 

いつものようにカラカラと笑う。

 

それがほんの少しだけ……痛々しく感じた。

 

 

「だがその申し出はすごくありがたいよ。しばらくの間だがお世話になっていいか?」

 

「も、もちろんだとも!歓迎するよ」

 

「そうか。しかしそうなるとこれからは北郷が上官になるから呼び方としては北郷大尉になるのか?」

 

「いやいや、何を今更畏まるか。そこはあまり気にするな。ただ職務中に他の軍人と居合わせた場合は合わせて欲しい。それ以外なら君は軍人では無いため普通にして構わない。それに君と私の仲ではないか?だからわたしには躊躇うなよ!あっはっはっは!」

 

 

 

彼女の気持ちはありがたい。

 

そして、とても優しいことがわかる。

 

しかしそれでも彼女は軍人だ。彼女から危害はなくとも組織からの魔の手はあり得る。日本と近しい扶桑の環境に居るからと言って絶対に安全とは限らない。それこそ、アムロみたいに何か邪気を悟ったらその時は考えなければならないだろう。

 

 

 

「わたしは先に失礼するよ」

 

「ああ。わかった」

 

 

どこかホッとしたような表情の彼女はポニーテールを揺らしながら背を向けて軍服を揺らす。

 

俺は視線を外して甲板から何もない海を見渡した。

 

 

「どこかにネウロイがいるのか…」

 

 

この世界が前世のゲームの続きだとしてトライアルモードとして扱われる俺の物語なら、一人のプレイヤーとして行き着くところまで進むべきなんだ。それは果てしなき戦いなのかまだ分からない。

 

しかし間違いは無い。

 

前世でも、この世界でも見てきた。

 

モニター越しにも見てきた。

 

この世界に飛ばされる前に画面の右端から真っ黒に染め上げた『Νέυροι』の大軍。

 

プレイヤーの敵ならば…

 

プレイヤーであった俺の敵ならば…

 

それらは倒すべき相手だ。

 

 

「なんでこんなことになったんだろう。ただ懐かしくガンダムバーサスを起動しただけ。そしたら戦争に巻き込まれてこの様だ。それともこの状況を楽しめと言うのか?無茶を言う。素直に楽しめる訳ないだろう」

 

 

この世に対して余裕が出来れば、非日常なこの瞬間だって頑張れば楽しめるはず。

 

しかし今は、まだ、そんな気分になれない。

 

Gダイバーでもあるまいし、ガンプラバトルでもあるまいし、そこに気軽さなんて存在していない。これからもっと戦いが迫ってくるんだ。

 

平和ボケしていた人間はこれから先この世界で何を成せるのだろうか。

 

でも、少なからず、一つだけこの世界で出来た事と言えば…

 

 

子供(リネット)は助けれた、まずはそれで良いかもな」

 

 

ジム・ライフルの武装を握りしめた手のひらを眺める。それを手の甲がこちら側に見えるよう真上に翳して、視界に入る太陽の日差しを手のひらで遮り、その時、手の甲に見える『201 cost』と刻まれた薄い文字に目を通す。

 

太陽の眩しさに目を眩ましたのではない、その文字をよく見るために目を細める。

 

 

「…201、cost(コスト)か」

 

 

 

魔法陣の光に絡み付いたことで出来上がった謎の数値。これは何を意味するのか?

 

大凡の予想を浮かべながら赤城の舟に揺れる。

 

 

 

 

「ストライクウィッチーズ…か」

 

 

 

本当に……この世界に来てしまったんだ。

 

そう感じながら、潮風をしばらく浴びていた。

 

まだまだ扶桑まで時間は掛かるから。

 

 

 

 

 

つづく

 






黒数 強夏(くろかず きょうか)

黒数 → 『くろ』と『す』→ クロス
強夏 → 強化(きょうか)→ ブースト

それぞれを英語に変換。
つまり『クロスブースト』って事。

最初はクロブのつもりだったけどガンダムバーサスに多く登場する量産機の武装がストライクウィッチーズ風かなと思ってそっちに転換した。
名前はそのまま使った。

それより北郷章香…可愛くね?←この小説の目的
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