「逃げろ!逃げろ!!」
「避難を早く!急げ!!」
「余計な荷物は置いて行くんだ!」
「敵の数が多すぎるだろ!?」
「うあああああああ!!!」
1939年9月9日 、ネウロイの巣が黒海に現れてから早くも30日が経過する。
休みのないネウロイの侵攻にて既にダキア、モエシアが陥落してしまい、そしてここオストマルクもオラーシャを巻き込む形でレンベルクは陥落してしまうと軍組織を含めた政治体制はトランシルバニアを残して麻痺を起こし、そして多くの国民達がオストマルクを捨てカールスラントか、もしくはオストマルクから南下してギリシアまで逃げようと避難に勤しむ。
「…ネウロイも、避難民も、数が多いな……」
「ゴロプ大尉!報告です!アルトラント北の防衛線は崩壊!そのままカルパディア山脈を越えたネウロイ達は次にオストマルクに向けて侵攻を開始!この辺りも数が更に増える模様!」
「!…… 住人の避難を急がせろ。もし避難先に余計な物を持ち運ぼうとする輩がいたら避難先に蹴飛ばして構わん。一人でも多く逃せ」
「はっ!」
「戦闘部隊は地上隊のウィッチと連携し、再度西に広がれ。これ以上ネウロイの侵入を許すな。街の時計台を崩してでもその足を止めさせるんだ」
「「「了解!!」」」
段々と指示を出すウィッチ。
それはオストマルク空軍所属グレーテ・M・ゴロプ。
使い魔にワタリガラスを使役した固有魔法『空間把握』を行い、街に踏み入れるネウロイと街から逃れようとする国民達の位置を広範囲に割り出し、無線を通して的確な指示を行う彼女はエースウィッチの名に恥じない強さを持ち、ネウロイの撃破数は二桁を超えている。
しかしこれまで得たことない物量が突如黒海から押し寄せてきた。
オストマルク国内で特に防衛を固めているココはトランシルバニアであるが、カルパディア山脈を乗り越えて現れるネウロイとダキアとモエシアを蹂躙したネウロイの二方向の防衛を強いられているこの現状、オストマルク国民を逃すのはともかくネウロイを抑えるのは熾烈を極める。国どころか世界の崩壊をいまこの最前線でゴロプは肌を感じていた。
彼女は不安な表情を一切見せず、常に現状を捉えながら次へ次へと策を講じ、最適解を目指し続ける。しかしそれ以上の現実が押し寄せる中で敗走の未来が脳裏によぎる。
__いや、そうなるつもりは全くない。
ゴロプはツノのように伸びるワタリガラスの羽をカサッと揺らし、上空から急速に現れたネウロイに体を即座に向かせると機関銃で狂いなく撃ち抜く。これもカールスラントのストライカーユニットが高性能なお陰だ。
それに伴いネウロイを倒すための腕もある。
奴らを相手にそうそう遅れは取らない。
だが……
『うあぁっ!?』
『ああ、少尉!!?』
『誰か援護に向かって!』
『トート!後ろにネウロイ!』
『なっ、先輩が撃ち落とされたの!?』
『あのネウロイ、なんて速さなの…!』
ネウロイは同時に進化して現れる。
どれだけ人間が優秀だろうと、ネウロイもまた優秀な敵機として人間を屠ろうとする。
「奴らの戦力圧が増しているな……戦いは数とでも言うのか…」
それでも幸運なことに現れるネウロイはどれも地上タイプばかりであり、地雷や降下爆撃は効果的であった。
またオストマルクは少数ながらも空を制する空挺ウィッチをこの戦線ではしっかりと保有してるため火力面ではネウロイに遅れは取らない。
しかしそれでも長い戦闘は人間にとって降りを極め続ける。
またゴロプ自身も長い戦闘から段々と少なくなる魔力量に思わず表情を顰めてしまう。
もう何時間、空を飛んだだろうか?
もう何時間、指揮を行っただろうか?
教育したウィッチも次々と戦線を離脱する。
民間の避難はまだ終えていない。
数字にすればあと20%か。
しかしその残り20%は凌げるか?
なんとも多く感じる数字だ。
ここまで追い込まれるのは……初めての経験だ。
『っ、中型ネウロイが西から出現!」
『なによあの馬鹿でかい羽…!』
『ミディアムサイズにしては大きいわ!』
『地上部隊被害損耗35%!』
『更に不明な熱量を一機感知!』
『高速でこちらに向かってます!』
高速で迫る物体……新手か。
ネウロイは慈悲なく人類を滅ぼすらしい。
「キィィィ!!」
「沈め」
ネウロイの翼を撃ち抜く。
クリーンヒット。
だが…
「!?」
コアの破壊には至らない。
ネウロイは再生を行いながら真上に逃げる。
それより己の射撃性能を疑ってしまう。
……っ、いや、これは流石に疲労だろう。
精神力で抑えきれないほどの疲労。
それでも再度、銃口を合わせ……ようとして固有魔法の空間把握が別個体を捉える。
先ほどウィッチを落とした早い奴か。
しかし、ソイツは…
「っ、なんだ…!!?」
そのネウロイは揉み切るように回転しながら横に伸びていた羽らしい装甲を解除すると胴体の先端から顔を出し、手元から光の刃を取り出すとコチラを睨む。
___人型のネウロイだ。
「!!」
「キィィィ!!」
人型ネウロイの左手に構えてある銃口はゴロプを狙い、それは高速弾として放たれる。
咄嗟にシールドで構え、そのビームライフルを受け止めるが、いつのまにか放たれていたミサイルがゴロプを追従する。背筋が凍る感触と共に機関銃でミサイルを迎撃するがそれは前後重なるように二発放たれていた。迎撃した爆風の中から残りのミサイルがゴロプを狙う。
ゴロプは空間把握魔法を解除し、シールドにエネルギーを集中させるとビームの裏に隠れていたミサイルを受け止めた。だが強い衝撃が小さな体に行き渡り、カールスラントのユニット性能でも抑えきれないほどの威力が襲い掛かる。これを受け止めきれずにシールドは崩れてしまうとゴロプの左手は熱によって焼けてしまった。
「ぐぁあ、ぁぁあ!!!」
『『『大尉…!!??』』』
これまであまりあげたことのない悲痛。
それが無線を通して部隊に浸透する。
だがネウロイはその程度で終わらない。
「!!??」
「キィィィ!キィィィ!!!」
いつのまにか変形していたネウロイはビームを放ちながらゴロプに突貫する。
ゴロプは体をそらすことでビームを回避するが次に肩を掠めてしまい、焼ける感覚と共に軍服は赤く染めてしまう…が、痛みを食いしばる。
苦痛の声は飲み込んだ。
だが機関銃を落としてしまったゴロプに攻撃手段は無い。
「大尉ぃ!!?」
「いや!逃げてェェ!!」
援護は間に合わない。
ネウロイは変形を解除するとゴロプの目の前に光の刃を構えていた。
__ああ、殺される。
そうやって忘れていた恐怖心を思い出す。
久しぶりの感覚だ。
命を奪われるこの死線というのは。
「……っ、すまない…」
無意識だろうか、そう声を小さく溢す。
ああ…無線は、今の小声を拾っただろうか?
いや、そんなのもう関係なくなるだろう。
血が溢れる片腕を抑えながら光の刃を見る。
その青色は実に、人類が求めた空の色だ。
___それが私を殺すのか。
だから人類の希望は駆けつける。
桃色の閃光がネウロイを貫いた。
「キィィィ…!!?」
突如、どこからか放たれたビームがネウロイの片腕を突き砕き、その手で握りしめていた青色の光を放つ刃は宙を舞う。
すると、それを
そして…
「今日の俺は!阿修羅すら凌駕する存在だ!」
ゴロプを討とうと現れた人型ネウロイ。
それはユニオンフラッグカスタムである。
しかし、それは皮肉にも、斬られる側として彗星の魔女に赤い刃で胴体を斬り裂かれてしまう末路をこの世界で描きながら…
「お、おまえ、は…!」
「敢えて言わせてもらおう」
爆散する人型ネウロイを背景に彼は振り返る。
密かに手の甲を光らせながら…
「願那夢であると!」
その姿は実に9ヶ月ぶりの再会であった。
♢
乙女座の変人の代名詞でもあるユニットフラッグカスタムを阿修羅すら凌駕する勢いで斬り伏せて数時間が経過した。
この場所、オストマルクは民間人の避難に勤しまれている状況から更に二方向から迫りくるネウロイの侵攻を抑えているところでもあり、その惨状は酷いに尽きる。
しかしそんなネウロイの群を抑えながら民間人の避難を援護し続けていたオストマルクのウィッチ、ゴロプ大尉の活躍がなければもっと酷いことになっていただろう。
ちなみにそんな彼女とは2年前のウラル戦線の時と、9ヶ月前の扶桑亡命時に出会った以来の顔合わせであり、今回は助ける形で3回目のコンタクトを果たすことになった。
それにしても、しかし……
アレ相手に良く生きてたモノだ。
初見殺しの塊であるバーサス機。
俺が『紛い物』と呼んでいる奴ら。
そんな紛い物の中で特に人の目で反応するには到底追いつかない高速変形機のユニオンフラッグカスタムだが、これを初見相手に片腕の損傷だけで済んだのはさすがエースウィッチと言ったところか。
俺は機体に対する知識があるから幾らでも対策できるが、ゴロプは無知識の中であんな初見殺しの塊を相手にして生き残っていた。凄いな。
だが、もしあのフラッグ機にグラハムとかいう圧倒的にヤベーヤツが乗っている状態の性能だったらバーサスの知識がある俺もどうなるかわからないところだ。正直考えたくもない。
奴らの知能レベルが獣同然だから助かったと言える現状、やはりバンシィ・ノルンの時もそうだが紛い物の恐ろしいところは純粋な力から放たれる素直な武装は暴力性を正義とする。
それでも本質はネウロイに変わりないため対応力さえ備わっていれば絶対に勝てない敵って訳でも無いが、この世界の人間からしたらひたすらに初見殺しが多く襲いかかる。
一応、対人型ネウロイの論文やら記録書は章香に頼んで書いてもらっており、情報共有は済んでいる。扶桑から離れたオストマルクにもそれは重要項目として行き渡ってると思うが、まあだからといって完璧に対策ができるのかと聞かれるとそれは否、出来るはずがない。攻略本を読んだだけで対策できるならゲームセンターで台パンなんて起きてないし。うん。
さて。
紛い物を撃破後はそのままトランシルバニアの内部に位置する街の防衛に参加して、ネウロイの侵攻を抑えた。住民の避難は無事に終えて現在は南下準備に入っている。ネウロイの侵攻ルートになってしまった以上ココに住む訳にもいかないからだ。
しかしそうなるとこの街はもうネウロイを抑えるためだけに存在する市街戦地と化してしまうだろう。採掘地として豊かな土地だったのにこうも容易くネウロイが奪っていく。悪夢だな。
「助かった、礼をいう」
「気にするな。これも役目だ。それより腕はどうなんだ?」
「しばらく動かんが指揮に関しては特に問題はない。このまま黒海沿岸またカルパティア山脈の防衛の維持を行う。戦況次第ではこの辺りを放棄することになるだろうが…… しかし貴様は何故この辺りにいる?もしや去年に引き続きまだ島国から逃げてるとでもいうのか?」
「一度戻ったよ。でもまた飛ぶことを選んでコッチまでやってきた。ココまでの航路はかなり長かったが」
「当たり前だ。ココから扶桑までどれだけ離れてると思っている」
「それな!でもストライクユニットは優秀で航続距離はとんでもなく長く、あと脚も早い。燃料に関してもモスクワとかで補給してきたから、そんな感じに4日位かっとばして飛んでいれば自ずと黒海まで到達する。かなり疲れたけれど…」
「まるで野良犬だな」
「扶桑の魔女ってのは逞しいんだよ」
「ふん、よく吠えやがる」
俺の奇行に呆れながらもほんの少しわずかに表情が柔らかい……ような気がする。
いや、気のせいだな。
何せ、ユーモアのユの字もない面白みに欠ける冷酷な軍人さんだから。
まあでもそこまで張り詰めてないのはそれだけホッとしているのだろう。
あんな場面にで出会ったら、な。
助けれて良かったわ。
「一応尋ねるが、行き当たりばったりか?」
「いいや、そんなことない。その時、その時、行先はハッキリしている。だからこの場に飛んで来れた。まあでも、そうだな。一応ブリタニアの方を目指してるつもりだ。久方ぶり会いたい人がいるし」
「そうか」
「しばらくはオストマルクにはいると思うが急に何処かに飛び去ってしまう可能性も秘めつつも、それまでは願那夢として力を貸せる」
「首輪の付けようがないな。だが利用はさせてもらう。普通のネウロイならともかくあのような人型は貴様以外に交戦経験が乏しいからな」
「だろうな。と、言っても本質はネウロイだ。知能は獣程度だよ。純粋な力は危険極まりないがその分ネウロイも素直だ。次はゴロプ一人でも勝てる」
「ふん。わざわざ一人で負担を得るものか。次はそれ以上の数で蹂躙してやる」
部隊長…… と、いうか今は国境防衛部隊の指揮官として考えることが多いゴロプだが弱った表情は一つも見せず、次に備えようと思考を続ける姿は非常に頼りになるなウィッチだ。お陰で士気も高いままゴロプを中心にオストマルク軍は健在。なんなら俺すらも駒の一つにしようと冷徹に笑み浮かべる彼女は頼もし過ぎる。
俺に軟禁を言い渡したアホの堀井に比べたらなんとも素晴らしい上官だろうか。
「扶桑から来たというなら黒海北陸はどうなっていたか分かるか?」
「まず馬鹿でかい巣が海上に一つ。そして陸地は瘴気に包まれていた… が、山脈は瘴気に飲まれず生きていたな」
「ほぉ?」
「これ実はウラルでもあったことだ。低いところは瘴気に飲まれるけど高いところはあまり飲まれない。恐らくネウロイが低温の環境を嫌っているからだと思う。だから気温の低い山に瘴気は広めず低地に侵略地を広める。侵攻する時のみ山は使うんだろうけど大体が地上型だから制空権さえ確保すればネウロイの群れは敵じゃないし、親機を叩けば素直に帰るだろう。ここら辺はセオリー通りで良いと考えるべき」
「なるほど。まだ山脈は生きているか…」
「……もしや鼠取りでもする気か?」
「オストマルク、特にトランシルバニアは鉱脈の多い土地だ。鉱物を食らって繁殖するネウロイに対して使わん手はないな…」
「あ、これ、ただの鼠取りじゃないわ…」
それからこの10日間、ゴロプはダメージを受けた腕を治しながらトランシルバニアに駐屯するウィッチを可能な限り集め、更に各国からオストマルクの援軍として兵士もタイミング良く集まる。その中にはウィッチも数名ほどいた。
そうやってオストマルクの軍拡を進めるとトランシルバニア奪還のためゴロプは軍勢を率いて大攻勢を仕掛けることが決まった。
既に半分近く侵略されたオストマルクをこれ以上は脅かさせないためにもゴロプは反抗作戦の準備を進め、ネウロイの侵攻のタイミングを測り、そして…
…
…
反抗作戦の決行日。
俺はとある小隊の隊長として飛んでいた。
「なんでや。もっと適任者おるやろ」
「うふふっ、でも私、世界の
「へー?それならヴィーゼ少尉、いまからこの状態の隊長やっても構わないんだぞ?あ、もちろん俺は君の後ろで飛んでる。だから面倒事は頼んだぜ」
「ふふっ、殿方の申し出は大変魅力的ですがお断りしますね。こんな機会なかなかないので願那夢ちゃんの指示の元で飛ばさせてください」
「はいはい、そうかよ。なら今日の戦果だけ気にしてると良いさ。何せゴロプ大尉はカールスラント兵器に関して大層熱心なお方だ。オストマルクに来てなかなかに大変だな?」
「あらあら、試作型のBfがそんなにお気になりますか?でしたらカールスラントの開発技術を空戦技術を兼ね備えた飛行、この戦線でお見せしようかしらね」
彼女の名はヨハンナ・ヴィーゼ。
カールスラントの空挺ウィッチであり、短期遠征ながらもオストマルクのトランシルバニアまで援軍として参加してくれた。
日常面ではどこかほわほわとしているが、そんな彼女と反抗作戦の前に一度だけ模擬戦を行い実力を確認するとやはりカールスラントのウィッチだけあって空戦技術はかなり高く、またストライカーユニットで平地に直立してその場で射撃を行える技術も見せてくれた。彼女な戦闘面でも隙を全く見せない戦闘飛行は素晴らしく、実戦経験もしっかり積んでいることがよくわかる。
隊長やるなら彼女の方が良いのでは?
しかし「柄じゃないです」とやんわり断られた。
ええぇ……
「あの、願那夢さん!隊長経験は?」
「それなりにあるよトート伍長。まあ当時は副隊長だったが、これでもウラル戦線の時はことある毎に小隊を編成してはネウロイに強襲を仕掛けていた。だからその経験を活かしてオストマルクとカールスラントの編成なんだろう」
「?」
「簡単に言うと、この編成はカールスラントが開発したストライカーユニットの使い手で構成されている。周りよりもユニット性能が高く、そして高機動での戦術が組める。故に今からやるのは…」
「作戦会議で言った"電撃戦"……ですよね?」
「そうだ。しかしコレは空挺ウィッチのみ課せられた戦術ではなく全軍に要求された戦術であり、長期戦を望まないゴロプの考え。故にこの高機動部隊に課せられた本当の役割は電撃戦の最終フェイズに於ける【追い越し殲滅】がこの部隊の本命である。トランシルバニアに土足で入ってきた獲物は逃がさない、徹底的に殲滅すると言うわけだ…」
「殲滅…ごくり…」
「ふふっ、これは息つく間も無さそうね」
さて、オストマルクの新人ウィッチに説明を設けたところで俺はこの部隊に聞こえるように無線に手を掛ける。
すぅぅぅ…と、息を吸い、そして腕を真上に掲げるとビームフラッグで作り上げたオストマルクの旗が空に光る。
「この空挺部隊の全ウィッチに告げる!」
「「「!!??」」」
「これより願那夢を筆頭にネウロイの根絶を開始する!彗星と呼ばれる曇りなき威名はこの場でネウロイを討たん!だから遅れを取るなよお前らァ!!この部隊は選ばれてこの空に在る!ウィッチが人類の希望とならんことをこの戦いで示すんだ!!作戦を……開始する!!」
「「「了解!!」」」
それから再びトランシルバニア侵攻に現れたネウロイ達だが、ゴロプは侵攻のタイミングに合わせるとまだ瘴気が漂っていないカルパディア山脈でネウロイを殲滅を開始。
国同士で集まった混合軍隊であるがゴロプは性能差が出るユニットを選び抜き最大限に能力を引き出せるよう上手く編成しつつ、山脈に雪崩れ込んだネウロイと親機の撃破に成功した。早い撃破を望めたためか全軍の被害はほんの2%に抑えれた。作戦は順調である。
「これで六機……次ッ…!」
「おうおう、飛んでる時は随分と雰囲気が変わるな。表情も一つ変えることないときた」
「……あ、あら?? ……ふふふっ、別にお姉さんは怖がらせるつもりなんて全くないわよ願那夢ちゃん?ただいつものよくにネウロイを倒してるだけ」
「オーケー、オーケー、そのままで頼むぞ」
「ふふっ、了解したわ隊長ちゃん。それにしても願那夢ちゃんはネウロイの解体がとてもお上手なんですね。骨組みはどう理解してるのかしら?」
「これは陸に限った話だが、アイツらは陸の移動に適した姿を得るため動物やら昆虫を元に形を真似るんだよ。だから元の生き物を頼りに弱点からバラせばあとは勝手に体も最適解に動くし、同時にネウロイの死角とかも分かるようになるから、立ち回る際にネウロイの姿を意識してみると良い」
「ふむふむ、なるほど」
「もし考えるのが苦手ならとりあえず関節を狙えばいい。そうすれば大体の機動力は奪える」
「ええ、意識してみるわ」
「ネウロイの、関節を狙う…」
「ラウラ・トート、君の固有魔法は感覚加速だったな?それなら攻撃の回避後は一気に懐へ潜り込んでみろ。そうすりゃ関節くらい容易く狙える筈だ。もし反撃が難しいなら太陽を背に降下してみろ。ネウロイは基本的に熱感知で敵を視認しようとする。太陽光で阻害すれば随分と楽に迫れる筈だ」
「りょ、了解です!」
片手間に解説しながらネウロイを撃ち落としているとネウロイは逃走を開始。
この場合、この戦いは勝ちであるが…
「さぁ、ここからだ」
ゴロプは撃退させた程度では終わらせず、空挺ウィッチを率いるとまだまだ元気な地上の友軍には統率力を失った正面のネウロイ残党を処理させ、また地上を支援していたウィッチ達も空からネウロイの退路を塞ぐように逃走経路に攻撃を加えると更にネウロイは混乱を起こし、そして俺たちは機動力を活かして制空権を奪い取りながら目につくネウロイを叩き潰す。
これにより何処かの戦略ゲームで聞いたことある【追い越し殲滅】ってやらの完成だ。隠れる場所もない山脈で反撃の隙も与えない高速戦闘のハマり具合にゴロプはニヤリと笑みを浮かべる。それからウィッチ隊は勢いよく山脈を超え、親機の反応を失い麓で屯していたネウロイを視認する。まだいた。
『森の中に逃すな。ネウロイはココで全て根絶する』
冷徹な声が無線から聞こえる。
その声にウィッチ達は気を引き締めるとバラけた残党を機関銃やらで撃ち抜き、ネウロイの侵攻路を完全に叩き潰した。
そして…
「状況終了。我々の勝利だ」
トランシルバニアはゴロプの反抗作戦によって無事に解放される。
彼女の頭脳は怪異すら敵ではないみたいだ。
そしてオストマルクは2ヶ月後に陥落した。
人類はまた一つ、国を失う。
例え、聡明な頭脳でネウロイを砕こうとも無限に湧き出る怪異に慈悲などなく、ひたすらに人類を追い込まんとする。
それがネウロイという厄災なのだから。
つづく
戦いは数だよ、とばかりにネウロイは人類を蹂躙する。
それでも人類は反抗できることをまた証明した。
それがトランシルバニアでの戦い。
そして『最も長い撤退戦』の始まりでもあった。
【黒数強夏】
オラーシャからオストマルクに向かう途中、乙女座の変態が乗り込む機体を発見し、これを強襲。それからお決まりのようにウィッチを助けると、しばらくオストマルクを止まり木にしつつ、ゴロプが考案した反抗作戦のウィッチ隊に参加するも、しれっと小隊長にされたりと顎で扱われてしまう。報酬はチェロスでいいぞ。
【グレーテ・M・ゴロプ】
オストマルクを代表する大エースのウィッチであり、指揮官としての能力が非常に高い。二年前のウラル戦線の観戦武官として滞在中に第十二航空隊を通して黒数と顔合わせになり、ある程度の関わりを持つようになる。本人は口に出さないが願那夢としての活動には目を見張っており、ウィッチの中では特に引き抜きたいらしい人材としてその強さと貢献力を高く評価している。あと体が小さい。
【ヨハンナ・ヴィーゼ】
普段は頼り甲斐あるぽわぽわ真面目系お姉さんオーラを纏っているが一度戦い出すと獅子のようにネウロイを喰らい撃墜する。願那夢のことを『ちゃん』付けするくらいには距離感が近く、反抗作戦前に良く黒数強夏と模擬戦をしていた。黒数曰く「実戦に強いウィッチ」としてヴィーゼのことを高く評価をしている。同期に怪力娘と偽伯爵がいるらしい。
【ラウラ・トート】
オストマルク軍の空挺ウィッチ。数ヶ月前に訓練生を卒業したばかりであり、実戦経験が少ない。男性ウィッチの黒数強夏のことを異質な存在としてやや警戒していたが、今回の反抗作戦にて願那夢としての獅子奮迅の活躍とその後ろ姿を見てしまいほんの少しだけ脳を焼かれてしまいそうになった。原作だと後に統合部隊として編成される501部隊の初期メンバーの一人。
ではまた